2025年7月30日水曜日

粗目フィルターパッドはおまけじゃない!だから安心して使ってほしい

青スポンジの底力

エーハイムの外部フィルターを手に入れたものの、ろ材の高さにびっくりしたことはありませんか? 
また、付属の粗目フィルターパッドをただのおまけだと思っていませんか?

実はこの青いスポンジ、使い方次第で頼れる相棒になるんです。工夫次第でコストも抑えられ、水質も安定。今回は、そんな"青スポンジ"の実力をストーリーでご紹介します。

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(これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語)

窓の外には夏の陽が差し、薄いカーテンを透かして柔らかな光が部屋の床を照らしていた。静まり返った秋の午後、部屋の片隅に置いたばかりの45cm水槽が、まるで宝石のようにきらきらと揺らめいている。

水中にはプレコの影、とうとうとした水の流れを陽光が反射し、きらりとした波紋だけが天井に映っている。

とりあえずの設置はした。だが、戸惑っていた。
ようやく手に入れた念願の外部フィルター。そして、45cm水槽。
これさえあれば、憧れの本格的な濾過システムが組めると思っていたのに、肝心のろ材が、とんでもなく高かったのだ。

「どうしてこんなに高いの……」

※(時代背景として)
20年前は、やっとガラスろ材の出始めで、プラスチックろ材なんてものは、まだありませんでした。そのため、高価なセラミックろ材を買わざるを得なかったのです。



青いスポンジの奇跡



不安

今、フィルターの中には詰まっているのは、おまけでついてきた、青いスポンジのろ材だけ。それはコンテナの隙間を埋めるためのような、あくまでも“仮”の存在のにしか思えない。

期待と喜びで膨らんでいた心が、徐々に重たく苦しくなり、スポンジのように潰れていく。
まるで高級車を買ったのに、ガソリン代が払えず走れないような気分だ。

机の上には、ろ材の価格を書き殴ったメモが散乱している。何度も電卓を叩き、何度も溜息をついた形跡が、そこにははっきりと残っていた。

「こんなスポンジで、本当に大丈夫なの……?」

わたしは頼りない青いスポンジを手に取り、不安そうに透かしてみた。けれど、どれだけ眺めたところで、答えが見えるわけではなかった。



相場

そんなとき、玄関のチャイムが鳴った。

控えめな音に続いて、カチャリとドアが開く音。
慣れ親しんだ足音が廊下を進んでくるのを聞いて、わたしはほっと息をついた。

「どーも、こんにちわ。調子どうだい?」

わたしが勝手に“お師匠様”と呼んでいるロゼッタだ。
中学生から、熱帯魚歴5年以上のベテランだ。

今日は、新しい水槽とフィルターのお披露目会と称して呼んだのだが、思いのほか相談することが生まれてしまったようだ。

ロゼッタがわたしの横を通り水槽へと近づくと、ふわりと懐かしい香りが漂ってきた。石鹸とほんの少しの湿った空気の匂い。

わたしは、堪えきれなくなり、先ほどまで抱えていた不安をすべて打ち明けた。ろ材の価格のこと、維持費のこと、そしてスポンジしかない絶望感。
自分でも驚くほど情けない声が口から漏れてしまう。

だが、ロゼッタはいつも以上に、真剣な表情で話を聞いてくれた。
わたしの悩みを理解しようと、時折うなずきながら、まるで自分の問題のように考えてくれているのが伝わってきた。

話をひとしきり聞き終わると、いつもの頼もしく得意げな顔に戻っていた。

「なるほど。ろ材が1.5L入るなら、2箱必要だね。でも大丈夫!」

お師匠様は、常に店の隅々までチェックをしている。
そのため器具の相場にも明るい。

やはり、メモ書きの通り、高価なセラミックろ材は1Lで3000円から、ものによっては5000円以上まで。さらにウールや活性炭などの消耗品も必要で、維持費は想像以上にかさむという。

「んふふ、だから、あの時相談してくれればよかったのに~♪」

少しだけ意地悪な顔をしつつも、ふんと鼻で笑って見せた。
まるで、やんちゃな子どもを諭すかのように。

――だが、

「うわぁ……」

わたしは具体的な金額を前に、額に手を当て絶望した。
やっぱり、このフィルターは無理だったのかもしれない。
心のなかで「詰んだ」の三文字が点滅している。

「どうしよう!?」

つい叫んでしまった。
けれど、ロゼッタは変わらず穏やかな表情のまま、静かに手を肩に乗せてくれた。

「大丈夫」



青スポンジはおまけじゃない

「まぁまぁ、落ち着いて」

ロゼッタはそう言って、手慣れた手つきでフィルターを停止させ、中からろ材コンテナを取り出した。

「とりあえず、中身をよく見てみよう?」

エーハイム2231のろ材コンテナは、白いプラスチックでできた上下2段からなっている。

「実はね、このスポンジでも、それなりに働いてくれるんだよ。まず見てごらん。2枚で1段になってるの、知ってるでしょ?」

ロゼッタは、反時計回りに回すと下段が外れ、その中身を取り出した。
青いスポンジは1枚でろ材コンテナの半分、2枚で1段埋まる計算となる。

「つまり、1枚抜けば、同じ段に半分に別のろ材を入れることができるんだ

ロゼッタは指先でスポンジをつまむと、目尻に小さな笑みを浮かべた。
どこか誇らしげで、でも押しつけがましさのない、ちょっと得意気な表情。

「ね、よくできてるでしょ?」

コロンブスの卵のようなことかもしれないが、わたしは、今まで気づかなかった当たり前のことに小さく驚いた。

「この一段、抜いてみて。ここに、以前使ってた外掛けフィルター、あれのときに買ったセラミックろ材が、まだ残ってるでしょう?」

――そうか、スポンジろ材なら、同じバスケットに入れてもごちゃ混ぜにならない!

小さな箱で買ったろ材が、部屋に眠っていたはず。
改造に失敗し、失意のなか道具箱に押し込んだのだ。

さらにロゼッタの説明は続く。
わたしの希望の光を灯すように。

どうやらこの青いスポンジの正体は「粗目フィルターパッド」というもので、 耐久性も通水性もよく、1年くらいは保つという。

「メーカーは6か月と言っているけどね。硬いからよく洗浄すれば、まだまだ使えるよ?」

「はい、どうぞ」と手渡されたので、再度よく触れてみる。
たしかにゴワゴワとして硬い。ふわふわのテトラのスポンジとはまるで違って、ざらりとした質感をもち頑丈であることがうかがえた。

よく水を切り部屋のライトにかざすと、ほのかに光が透けた。なるほど、目が粗くて、水の通りも良さそう。

「つまりね、今あるものでしばらくは大丈夫ってこと。1年のうちに、少しずつ理想を目指していけばいい。焦らなくていいんだよ」

ロゼッタの優しい声に、わたしはふっと肩の力が抜けた。胸の中に溜まっていた重いものが、ようやくほどけた気がした。

「ボクなんて、2年も使っちゃったよ! あはは」

どうやら、このろ材は頼れる相棒のようだ。
ここにきて、ようやく希望が持てた気がした。



立ち上がりと新たな決意

水槽は、順調に立ち上がった。

思いのほか順調だったのは、スポンジフィルターも補助として使ったおかげかもしれない。一度も水質に変調をきたすことなく、数日もすると水は澄み渡り、やがてセルフィンプレコは深夜に我が世の春を謳歌するように、元気に泳ぎ……いや、舐め回っていた。

けれど、わたしの心の中には、まだどこかに引っかかるものがあった。

せっかくの外部フィルターなのに、セラミックろ材を満載にできていない。
完璧を目指せていないような、そんなもどかしさだった。

「いつか絶対、ちゃんと揃えよう」

そう決意したのだった。

大丈夫だ。今はこの青いスポンジで大丈夫。でも、いつかはきっと……

青いスポンジは、わたしにとって最初の学びだった。
高価な機材がすべてではない。
工夫と知恵で、目の前のものを最大限に活かすことができる。
そんな当たり前だけれど、忘れがちなことを、教えてくれた存在だった。



まとめ

青いスポンジろ材、いわゆる「粗目フィルターパッド」は、外部フィルター購入時におまけのように付属していることが多く、つい軽視されがちです。

しかしこのスポンジ、実はそれなりに優秀なろ材です。

円盤に成型されたろ材であるため、融通の利いた利用方法が可能です。
たとえば、半分取り出してセラミックろ材を併用したり、吸水パイプ側にだけ配置して物理ろ過を任せたり、1枚を取り出してパワーヘッド直下にスペースを作り、そこに活性炭やヤシャブシの実を入れるなど、簡単に取り付け取り外しができることも相まって、非常に便利なろ材です。

素材は硬めで耐久性があり、メーカーは6か月ごとの交換を推奨していますが、私感ではありますが、しっかり洗えば1年程度は使用可能です。
また、目が粗く通水性にも優れているため、目詰まりしにくく、生物ろ材としてはもちろん、物理ろ材としても活躍します。

もちろん、理想は専用のセラミックろ材でコンテナを満たすことですが、立ち上げ初期や予算の都合などで一時的に使うには十分すぎる性能です。

おまけ扱いにせず、上手に活用して水槽管理の安定化に役立てましょう。



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