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2025年9月3日水曜日

ヒーターはプレコの大好物?火傷はカバーで守る!しかし危険な事も?

ヒーターカバーは誰のため?

水槽のヒーターバーは魚や水草をヒータの熱から守る道具です。
しかし、使い方を間違えると、魚が火傷するリスクもあります。

今回はそんなヒーターカバーの基本と気をつけたい点を、ストーリーでわかりやすく紹介します。


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これは2000年代とフィクションが織りなす、不思議な世界の物語。

冬休み最終日。
窓の外は青く透き通った空が広がり、午後の弱い光がレースのカーテンに当たる。ほんのりと明るい部屋の奥では、水槽の水音が静かに響き、ヒーターのランプは10分単位のゆっくりとしたリズムで点滅を繰り返している。

お師匠様は、今日はいない。海を渡った向こう側……と言っても、湾を挟んだ半島の海沿いに帰省している。少し寂しさはあるけれど、こういう時こそ普段は手の届かない部分の掃除をじっくりしたいものだ。
心に決めると、目についたのは水槽内に灯る、赤色の通電ランプ。

「今日はヒーターの大掃除をするとしよう」

小さく呟くと、早速掃除用具を取り出した。



冬休み最終日のヒーター事件


また、やってしまいました

水換え作業はとんとん拍子で進み、気が付けばあとは水を注ぐのみ。
時刻を見計らいヒーターを手に取る。掃除スタートすると同時に、あらかじめヒーターのコードを抜いておいたのだ。優に20分以上経過しており、試しにと水槽内で手を近づけても、熱気はすでに消え去っている。

カバーを外す前に、深呼吸を一つすると、火傷した記憶が薄まっていく。
覚悟も決めてプラスチックの爪を軽く押すと、カチリと音を立ててカバーはあっけなく外れた。
白いセラミックの本体を手に取ると、表面はひんやりと冷たく、すっとした重みを感じさせる。いつぞや火傷したときの熱さとはまるで別物だ。

恐る恐る内部を覗き込むと、予想よりもずっと綺麗で拍子抜けする。
うっすらと着いた茶ゴケを歯ブラシで落とすと、すぐさま汚れの激しいカバーの掃除に取り掛かり、やがて、コードの汚れをスポンジで拭き取ったところで掃除は終了となった。

この水槽は昔ながらのグレーの金属製事務デスクの上にある。
親が骨董市で拾って来たものを、PCデスク用に押し付けられたのだ。
だが、人が乗ってもみしりとも言わぬほどの頑丈さで、いつの間にか水槽台としての役割を与えられている。

まさに水槽にうってつけの事務用品なのだが、問題点があるとすれば、その高さだ。
天板はまるで正座で使うような高さしかなく、水を注ぐだけならいいが、掃除のときは中腰やしゃがみ姿勢が続くのだ。
今日も、足がつりそうになりながら掃除を終え、綺麗になったカバーを足元に置くと、わたしは転がり込むように腰を下ろした。

「ふぅ!!」

と深呼吸をすると、本来なら脚も腰も楽になるのだが、どうにもお尻に鋭い痛みが走る。
そして、膝の力を抜くと……

――バギッ。

乾いた音が響き、何かが折れた感触。

「ぬあ!」

悲鳴を上げて立ち上がり、座った場所を見下ろすと、そこには無残にも真っ二つに割れたヒーターカバー。

どうしたものか……

20年前には、このモデルのヒーターはありませんでした。
画像はあくまでもイメージです。


ヒーターが大好物の魚

翌日。いつものサークル棟2階のバルコニー。
プラスチック製の白いベンチは冷えきっていて、座ると冬の空気がじんわりと体に染み込んでくる。
ここが、わたしとお師匠様ことロゼッタの定位置だ。

今日も二人してアクア談義を始めるのだが、そのお相手は珍しく遅刻をしてきた。

つば付き帽子の奥に光るブラウンの縁の眼鏡、古びたダッフルコートの下からはライトグリーンの作業着をのぞかせている。
ひゅるりとした北風に乗って漂ってくるのは、ヨードチンキのような焚火の煙の香り。
それが焚火なのか、それとも薪ストーブなのか、初めのころは講堂と実験室の往復しかないわたしには疑問だった。
しかし、キャンパス内を見渡せば、同じような恰好をした人の群れが煙で燻された香りを漂わせており、今や当然のことように思えてくるのだから、なんとも不思議なものだ。

そんなことすら気にする素振りもなく、年頃の娘は目を輝かせて口を開いた。

「それで、今ヒーターにはカバーがついていない状態なんだね?」
「そうなんです……不注意で壊してしまって」

わたしは肩を落としながらうなづいた。
しかし、すかさず、ヒーター自体は問題なく、真冬でも水温26度を保っていると伝えたかったのだが――

それはプレコにとって非常に良くないね! 今からでもショップに行こう!
「え!? どうしてですか!?」

食い気味に話を遮られ狼狽していると、彼女はメガネのツルを指で押し上げながら、髪を手櫛で整えた。

「アクアくん? それ本気で言ってる?」

やんわりとした響きの中にある鋭さ。
どうやら、今の状況に大きな問題があるらしい。

「まぁ、キミのヒーターは最初からカバーがついていたから、知らないのかもしれないけどさ……」

言葉に間を置き、口元に薄い笑みを浮かべると、そこにはいつものお師匠様の顔。

「実は、プレコはヒーターの棒が大好物なんだ!
「はぁっ!?」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまうと、放課後の人のまばらなキャンパスに声が響き渡った。

「だって、コケが付きやすいし、スラリと伸びているから貼りつきやすい『棒』でしょ?プレコが嫌いなわけがないじゃない?」

――たしかにそう……だ???

いやいや、待ってほしい。ヒーターは高温のはずだ。
忘れようと思っても忘れられない、焦げ付くような熱さと内側からゾクゾクした痛み。
いくらプレコとて、そんな場所に張り付くだなんて……理解に苦しみ、反論する。

「でもヒーターって、そもそも熱いじゃないですか?」

お師匠様は一瞬きょとんとした顔をしたあと、何かに納得したように頷いた。

「もしかしてキミ、ヒーターが常に高温だと勘違いしているんじゃないかい?



トラップの仕組み

「違うんですか!?」
「誤解してるようだけど、ヒーターって常時高温じゃないんだよ。サーモスタットが内蔵されてるでしょ?」

わたしが、驚きと戸惑い混じりの声を上げると、お師匠様は微笑みを浮かべながらも、真剣な眼差しで教え諭すように答えた。

だが、すぐに合点がいった。

「もしかして、制御で電気のON・OFFを繰り返しているから、冷えている時間もある……ってことですか?」
「その通り! つまりだ……」

彼女は胸を張りながら、まるで秘密を打ち明けるかのように言う。

冷えているときに張り付いてコケを食る。もし、その最中に通電が始まったら?
「……なるほど、たしかにそれだと、火傷するかもしれませんね」

彼女は帽子を脱ぎ、固まった髪を指先でほぐすと、バルコニーから黄昏に染まる町並みに目をやった。

「まぁ、ほとんどは熱くなり始めたら逃げるけどね。でも、たまに……」

言葉を濁しつつも、どこか諦めにも似た感情が混じるのだが、どこか真実味が込められているような気がした。

「たまにって……、もしかして、気づかないで舐め続けるのですか?」
「いや、そうじゃないんだ。時折ヒーターをテリトリーにする子がいてね。そのまま寝てしまうことがあるんだ

まるで見て来たかのような切なげな顔して、闇夜に沈む町並みから目を背けると、彼女の背中が小刻みに震えているような気がした。

「……危険すぎますね」

しかし、わたしが相槌を打つと、覚悟を決めたように帽子を深く被り、言葉を探しながらも話を続けた。まるで、その時の状況を吐露するように。

「火傷すると、腹部に白い跡が残るんだ。……もちろん、水槽が清潔なら自然治癒することも多よ。でも、悪化すれば……水カビ病になる」

お師匠様の言葉に覚悟と重みが込められていたが、わたしも動揺が隠せず声が震える。

「……そうなったら魚病薬で治療ですよね? フィルターもリセット……かぁ」

わたしがそう言い切ると、彼女はこちらを向いた。
あたりはすっかり止み包まれ、帽子の奥底にある顔がどのようになっている分からなかったが、決意のある太い声で返事が返ってくる。

「そうなんだよね。ナマズだからね。薬の使い方もちょっと特殊でね。まだキミには教えられない。だからこそ“転ばぬ先の杖”ではないけどヒーターカバーを甘く見ないでほしいんだ!」

口元は力強くにんまりと笑っているのだが、深くかぶった帽子の奥がハロゲン灯に照らされキラリと光っていた。

20年前、多くのモデルではヒーターカバーは別売りでした。
しかし、現在はどうでしょうか?アクアリウムという趣味は、確実に一歩ずつ進んでいます。


ヒーターカバーが大好きな魚たち

お師匠様は、顔を拭きにいくと部室へと戻っていった。
冬のキャンパスはまだ六時だというのに漆黒に包まれ、オレンジの街灯が赤いレンガが敷き詰められた地面を照らしている。

「おまたせ♪」

ふいに声を掛けられたので振り返ると、いつものロングスカートにチャコールグレーのコートを着た彼女が部室から戻ってきた。

「もちろん、ヒーターカバーを使わないほうがいいときもあるよ?」

――え? 今までの話と矛盾してませんか??

突然始まるアクア談義。
だが、お師匠様は待ってくれない。
それが、オタクの流儀なのだ。

白いタートルネックのセーターの先にある小さな顔は、もとの笑顔に戻っていた。

「でも火傷の危険性があるからって、さっき……」

まぁまぁ、最後まで聞きなさいと言わんばかりに、メガネをクイっと上げ顎に手を当てた。

「それがね、ごくまれに、カバーをシェルターにする生体がいるんだ
「えぇっ!? シェルター? ヒーターカバーとヒーターの隙間って、すごく狭いですよね?」

「そうなんだ。稚魚稚エビ、さらにクーリーローチとかね、カバーの中の狭いところが大好きなのさ。そんなところに身をひそめて、もしヒーターが通電でもしたら……」

ロゼッタは肩をすくめて、両方の手のひらを胸の高さで掲げてみせる。
わたしも相槌を打つように首を振るしかない。

「なんというか……一筋縄じゃいかないんですね」
「そうなんだよねぇ。もちろん、100均素材でカバーをさらに覆ったり、みんな工夫してるよ? でも、まぁ、あえて言うなら不確実さが――」
「水槽の奥深さ、ですね?」

「お! わかってきたじゃないか!」

そして彼女は、わたしをじっと見据えて言った。

「だからキミも、自分の水槽に合った最善策を今すぐ考えてほしい」

じっとりとわたしを見つめら目でにやりと笑いうと、どこか促すような雰囲気がある。

「ね?」

ここに至り、それが明らかな催促であると気が付き、わたしは慌てて返事をする。

「あ! はい、行きましょう!」

閉店にはまだ間に合う。
わたしたちは足早にキャンパスを抜けショップへ向かうのだった。



まとめ

水槽のヒーターは、熱帯魚や水草を健康に育てるための大切なアイテムです。
そのヒーターを守り、魚たちの安全にも役立つのが「ヒーターカバー」です。シンプルですが重要な役割を持っています。

ヒーターカバーの最大の目的は、魚が高温のヒーターに直接触れてやけどするのを防ぐことです。特に底ものの魚はヒーター周辺をよく動くため、カバーがあると安心感が増します。
たしかに、掃除やメンテナンス時にカバーが邪魔に感じることもありますが、使いやすさよりも安全面を優先するべきでしょう。

しかし、そんな、ヒーターカバーにも注意点があります。
まず、火傷です。本来は火傷を防ぐ道具ですが、対象を間違えるとトラップとなります。
とりわけ注意してほしいのは、稚魚や稚エビ、さらにはナマズの仲間などで小さな隙間を好む魚種です。こうした生体は、カバーの隙間に入り込んでしまい、飼育者が気づかぬうちに火傷を負うことが報告されています。
このような生体を飼育する際は、火傷のリスクを考慮して、カバーを外したり、カバーのカバーを自作する選ぶ必要があります。

また、気を付けてほしいのは、ヒーターカバーは必ずヒーターのメーカーが指定する純正品や推奨品を使用することです。適合しないカバーや非対応の素材を使うと、熱がこもり予期せぬトラブルの原因となるので、絶対に避けましょう。

まとめると、ヒーターカバーは魚のやけど防止やヒーター保護に役立つ、絶対的に必須ななアイテムですが、内部に魚が入り込むリスクがあるため、時と場合によっては柔軟な使い方を要します。安全のためにメーカー指定の製品を使い、自分の水槽環境に合った設置を心がけましょう。



2025年8月18日月曜日

あ!水温が低い!?ヒーター壊れた? いいえ、それはW数不足かも?

秋の夜のヒーター騒動

水槽用ヒーターは熱帯魚の健康維持に欠かせません。特に秋冬の冷え込みが厳しい時期は、水槽のサイズに合ったワット数を選ぶことが重要です。
力不足だと水温が安定せず、魚も電気代も負担がかかります。逆に大きすぎても水温変動が激しくなるため注意が必要です。

では、どのようにして最適なヒーターを見つければいいのでしょうか?
ストーリーで紹介したいと思います。

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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

夜の帳が降りると、虫の声が一斉に響きだした。
その騒がしさとは対照的に、空にはぽっかりと浮かぶ満月が、凪いだ水面のように静かに輝いている。
ほんの少しだけ窓を開けると、秋の風がカーテンを揺らし、頬を撫でて過ぎていった。
肌寒い。
季節は確かに進んでいる。

ふと、水槽に目をやると──

「……あれ?」

いやな予感がした。急いで水温計に目をやる。
表示されたのは「24.0℃」。
水温が低すぎる。
ヒーターが、壊れてしまったのだろうか。

以前使っていた20L水槽のヒーターをそのまま使っていたのだが、さすがに寿命なのかもしれない。月明かりの下、水槽の中でプレコがじっと身を潜めている。

「……ヒーターを、換えなきゃ」

小さく呟きながら、わたしは空を仰いだ。

――だが

それ以降、なぜか水温が下がることはなかった。
ヒーターは壊れていなかったのか? 
でも、なぜあの夜だけ24℃まで落ちたのだろう?

わたしの中に、疑問だけがぽっかりと残された。

・この時代には、縦置きできるヒーターはまだありませんでした。


秋の夜のヒーター騒動


季節は移ろうものだから……

それは故障じゃないかもね

流れる風景を眺めながら、わたしはその話を切り出した。
小さな車両の中で、わたしの隣に座っていたのはロゼッタ。
「ふむふむ」と頷きながら、苦笑いをして見せた

秋晴れの空のもと、今日は二人でちょっとした有名観光地にきている。
湾内に浮かぶ小さな島は、好まざる侵入者から防衛するための装置が置いてあったのだが、再開発されて今やベイエリア有数の商業観光地となっている。

今日は、その島にあるショッピングセンターに二人で来ている。

海岸沿いの公園からペデストリアンデッキでビルに入り、雑貨屋や喫茶店をかき分けて進むと、一瞬ロゼッタの黒髪の下でまなこが踊る。
だが、目の前に大きなペットショップが見えてくると、いつもの生物オタク然とした顔つきに戻った。

「さ、行こうか! ヒーターを見に来たのでしょう?」

若い男女、はたから見ればデートかもしれないが、これはれっきとした、熱帯魚マニアによるアクアショップ探訪なのである。



マニアたちとW数

大きなペットショップは、場所が場所なだけあり、デートスポットになっている。
しかし、アクアオタクの私たちには関係ない!
いちゃつくカップルをかき分け、熱帯魚用具売り場へと突き進むと、ピシっとお師匠様が指さした。
見えてきたのは、ヒーターをずらりと並べた鉄の棚だ。
そして、彼女はこちらを振り返ると、鋭い目つきとなった。

「それで、いま何W使ってるの?」
「わ、ワットって……電気の、あれですよね?」

「ワオ! そこから話さないといけないんだね?」

大げさなくらい肩を落として、彼女は首を振った。

「仕方ないなぁ~♪ 今日はボクがみっちりと教えてあげよう!」

いつにもまして瞳を輝かせ、にんまりと笑った。
完全にアクア談義モードに火をつけてしまったらしい。

ヒーターのW数っていうのは、消費電力のことなんだ。これは単位の通り消費電力のことなんだ
「えーっと……ってことは、低ければ電気代が安くて効率が良い……?」

「ブッブー! そう言うと思ったよ! これが違うんだなー♪」

小さく人差し指を振りながら、彼女は勝ち誇ったようにウィンクをしてみせた。
どうやら、彼女の思っていた通りに綺麗に間違えらしい。

「キミは、熱量を求める理科の実験を覚えているかい?」
「えぇーっと、あのJ(ジュール)を求める、ややこしい数式がいっぱい出てくるやつですよね?」

「そう! それなんだ。詳しい話は避けるけど、端的に言えばW数が高いほど、早く、たくさんの水を温められるんだ
「じゃあ、今の水槽ではそのW数が足らないということですか?」

「まぁ。そういうことになるね」

なんとなく、理解したつもりではある。
だが、気になっていることもある。

「じゃあ、わたしの水槽のヒーター、力不足……?」
「多分ね。で、あの日って、夜ちょっと肌寒くなかった?」

「……あ! そうかもしれません! 窓開けてて……冷たい風が……」
「なら、それが原因だよ。季節とは変わるものさ、きっと、気温が下がりすぎて、ヒーターの熱を上回る速度で水槽が冷やされちゃったんだね?

彼女の目が真剣さを帯びる。

「つまり、そのヒーター、もう秋や冬にはパワーが足りないってことだね」

そう言い切ると、少しだけ表情が穏やかなものになったった。

・その20年後、同様のトラブルに見舞われることに……


大きすぎても、小さすぎても

小春日和はデート日和。
体を密着させた男女が、所狭しと商業施設の中をたむろしている。
このヒーター売り場とて例外ではない。
展示水槽に見飽きたアベックが、何の気なしにふらりとこちらに向かうことだってある。
そうなれば途端、男女とは言え水槽という希薄な繋がりしかない、わたしたちの間に流れる空気は気まずいものになるだろう。

だが、肝心のロゼッタは随分と落ち着いている。
いや、場を楽しんでいる余裕さえある。
大したアクアリストだ。

――ジトっ

大いに感心していると、なんだか、ロゼッタに直接白い目で見られたような気がした。
だが、いつもの優しい声色はいつも通り。
適当に合いの手をいれつつ、ぼんやりとお師匠様とわたしの空間を楽しんでいると、急に声を掛けられ現実に戻された。

「ちょっと? ボクの話聞いてる?
「え? あぁ、ちょっと考え事しててね」

「もぉー! それじゃあヒーターのW数の話に戻すね?」

「キミの水槽は秋の夜の寒さで水温が低下するんでしょ? となれば、適正W数のものがついていないと考えられるね」

――適正とは?
思えば、ヒーターはセット品。自分で選んだものではなので、適正W数と言われてもさっぱりわからないのだ。

お師匠様は棚から1つのヒーターを取り出した。

「やっぱり、60cm規格水槽なら200~150W、その半分の水量の45cm規格水槽なら150~100Wかな
「これは……今使ってるものよりも、ちょっとより大きいですね!」

「ははぁん、なるほど!」

そういうと、大きく目を見開き、ぽんと手を叩いた。
なにか、思いつことがあるよで、そそくさともう1つ取り出した。

「キミこのメーカー好きでしょ? じゃあこれかな?」」

ブリスターパックから透けるその姿。
見覚えがある。

「あぁ……これです! 今これを使ってるんです!」
「やっぱりね。じゃあ50Wだね。これは30cmキューブ水槽用のヒーターで、もっと水量の少ない水槽で使われるタイプなんだ」

「でも、どうやって適正なW数を知ればいいんですか?」

すっと指をすべらせながら、透けて見えるヒーターの横のラベルを指し示した。

「あ……! 書いてある
「こうやってパッケージに書いてあるし、それ以外にも、ほら上を見てよ?」

顔を上げ什器のさらに上をみると、色鮮やかに大きく文字の下に、事細かになにやら書かれた看板が天井から吊り下がっていた。
どうやら、水槽サイズに合わせて、ヒーターの適正なW数がまとめあるようだ。
そして、しっかりと30cmキューブの欄には50~80Wと記されている。

「ただえさえ、白か黒の棒でしょう? 分かりずらい商品だからね。こうやって売り手も工夫してくれているのさ」

「50Wは……、やっぱり、力不足ですかね?」
「そうだね、夏はいいかもしれないけど、秋はちょっと心配。冬は明らかに力不足だね」

わたしの期待に応えるようにやわらかく笑いつつ、はっきり断言するように言い切った。

「あぁ……残念です」

しかし、ふと疑問に思う。

「じゃあ、W数は大きければ、大きいほどいいんですか?」
「そういうわけじゃないだ。今回のキミの水槽みたいに、気温に左右されるから、適正サイズ~1ランク上ぐらいがおすすめだよ

「キミの家って木造でしょ? 冬の朝は何度ぐらいになってるかな?」

唸りながら視線を上に向けて考え込むと、気温は分からないが1つの手がかりが浮かび上がってきた。

「詳しく調べたことないですけど、早朝だとアウターを来てちょうどいいくらいですね」
「であるなら、適正の100Wより少し大きなヒーターでもいいと思うんだ。その方が冬になってまた買い足すよりお得だしね」

たしかに、そうなのかもしれない。
それに、真冬にまたヒーターを買い直すということは極力避けたい。
が、1つの疑念が生まれた。

「でも、それって、余計に電気代がかかったりしませんか?」
「それがね、ヒーターの中にはサーモスタットがついているでしょ?」

少し得意げに胸を張って、にやりと笑った。

「あぁ! 自動でオンオフしてくれるから、そこまでかからないんですね!」
「そういうこと」

「もちろん、闇雲に大きければ良いというわけでもないんだよ? 水温が急激に変わるようになるからね?

にんまりと笑みを浮かべながら、お師匠様はまるでクイズの答えを語るように言葉を続けた。

「逆に、避けたいのは、今の君の状況だね。W数が低すぎていつまでも水温が上がりきらないから、ヒーターが通電しっぱなしになっていると思うよ?
「ひぇぇ!? 電気代かかりっぱなし!?

「そういうことだね♪」

思わずその場で後ずさりしそうになる。

「んははは! だから、今日決めていこう!」



冬支度

そのあと、わたしはすぐに新しい150Wのヒーターを慎重に設置した。

ご飯を食べたり、喫茶店で水槽について話し込んだりして、気が付けば時刻は午後9時を回っており、帰宅後は風呂にも寄らず真っすぐ布団に入りたい気持ちでいっぱいになったが、怠惰な気持ちを抑え込み、純白のヒーターをセットしたのだ。

本当はサーモスタット付きの外部タイプが欲しかったのだが……、何度お財布と相談しても予算オーバーで、なくなくプリセットタイプを選んだ。

だが、これで、秋の夜風が入っても、冬の寒波が到来しても、もう心配はいらない。
水槽の中には引き続き常夏の世界であり続けるだろう。



まとめ

水槽用ヒーターは、熱帯魚を健康に育てるためにとても大切なアイテムです。
水温が下がりやすい秋や冬の時期は、特に気をつけてあげたいところですよね。ヒーターを選ぶときは、水槽のサイズに合ったワット数(W数)を選ぶことがポイントです。

水槽の水量に対してヒーターの力が足りないと、いつまでも水温が上がらずヒーターがずっと動きっぱなしになってしまい、魚にも家計にも負担がかかります。
逆に、ワット数が大きすぎると、水温が急激に変わりやすくなり、健康面で魚にとってもよくありません。
そのため、「大は小を兼ねる」とは限りません。

実際のところ、45cm規格水槽なら100W~150W、60cm規格水槽なら150W~200W程度が一般的な目安です。しかし、特に寒い季節や水槽の設置環境によっては、少し余裕をもったワット数を選ぶのがおすすめです。

わたしの水槽では、それでも水温低下が止まらず、45cm規格水槽なのに200Wのヒーターが入っています。

とりわけ、秋風が吹き始め始める9月~10月、寒波が到来し急激に気温が低下し始める12月~1月は要注意。、今回のストーリーで起きたヒーターの低W数によるトラブルが露呈する季節でもあります。

ヒーターに限らず、冷却ファンも同じことが言えますが、季節の変わり目には、水温は必ずチェックし、器具の点検を行いたいものですね。



2025年7月5日土曜日

水槽の夏対策ヒーターは不要?キャンプ場で体感した真夏の本当の寒さ

夏にヒーターは不要? 実は「切ると危険」な意外な理由

「夏は暑いから水槽用ヒーターはいらない」、そう思っていませんか?
確かに日中の室温は高く、水温も上がりがちです。しかし、ヒーターを完全に切ってしまうことで、思わぬリスクを招くことがあります。
特に小型水槽で熱帯魚を飼育している方は要注意です。本記事では、夏でもヒーターを使い続けるべき理由を1つのストーリーとともに伝えたいと思います。

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「夏はヒーターはいらないですよね? 電気代も節約できるし」

しかし、お師匠様はわたしの顔をのぞきこみ、怪訝な目をした。

「キミ、それ本当に言っているのかい?」


2025年3月30日日曜日

テトラミニヒーターのLEDが光らないと思ったらズレて裏側に……

通電ランプが点灯しない?

今回は、テトラ 26℃ミニヒーター100Wにありがちなトラブルについて紹介したいと思います。
が、その前に、まずは簡単にレビューを述べておきたいと思います。


2025年3月2日日曜日

寒波の朝で突然の故障? ヒーター正しく使えていますか?

正しく作動する条件の1つがクリアしづらい件

さて、久しぶりの投稿となります。

その原因は、HDDの破損。厄介なことに突然ブルースクリーンになるようなことはなく、最初の症状は漢字変換のもたつきからでした。やがて、ファイルの読み込みエラーを起こしはじめ、ソフトの起動も怪しいものに。ここへきてやっとツールで調べたのですが、無限に湧き出る不良セクタの山、山、山。
これはドライブ交換を要しそうな気配。しかし、クローンで手を売ってみたものの状況は好転せず。再インストールという最悪の自体となりました。

クリーンインストール自体は若いころから幾度となくしたことがあるので、わたしとしてはハードルの低い作業になるのですが、作業環境の復元にはやはり時間がかかり、最後の記事から数か月たって、やっととこさの投稿となってしまいました。

というわけで、今回は故障のお話。え? PCの話かって?
いいえ、もちろんアクアリウムネタですよ。冬の故障の鉄板といえば、そう! ヒーターです。


2023年2月11日土曜日

エヴァリスオートヒーターをレビュー! これを選び続けるその理由は

エヴァリスオートヒーター100Wを選ばざるを得なかった理由

2月。一年の1/12が過ぎ去ってしまった事実をなかなか受け入れられない今日この頃。皆さんいかがおすごしでしょうか?
どうも、こんにちは。ごん太です。

さて前回は……

初心者さん向けのヒーターの選び方について。

アクア歴十数年のわたしの悩みを織り交ぜつつ、説明していきました。
今回は、前回登場しながらも紹介しきれなかった……

エヴァリス プリセットオートヒーターAR100。
(45cm規格水槽用 100W オートヒーター)

エヴァリス プリセットオートヒーターAR100

について、マトを絞って話してきたいと思います。

さて、アクアリウム器具の中でもヒーター、とりわけ温度固定でサーモスタット内蔵とも呼べるオートヒーターは、構造が実にシンプル。それゆえセールスポイントに決め手がなく、どれを選べばいいのか悩みやすくもあります。

まず前半では、購入したエヴァリス製ヒーターについて、写真を併用しつつ紹介していきます。
さらに記事後半では話をヒーター全般に広げ、「魔境」ともいえる各社ラインアップ、わたしがあえてそう呼ぶ理由について、述べていきたいと思います。


2023年1月29日日曜日

初心者さんのヒーターどれがいい? 経験10年以上わたしはなお悩む

ヒーターについて考えてみる

どんどん気温も下がり、真冬らしくなってきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
どうも、こんにちは。ごん太です。
さて、前回は水草の機器のお話。

WATER PLANT メタルCO2カウンターのレビュー。

CO2カウンターのジレンマを絡めつつ、レビューをしてみました。そして今回は、水槽のヒーターのお話。

つい最近、数年ぶりにヒーター交換をしました。
そこで今回は……、

「ヒーターどれ選べばいいのっ!?」

水槽用ヒーター

ということでお困りの初心者さんに向けて、その時の考察を元にアレコレと述べていきたいと思います。

なお、本文にて白点病について触れますが、当方獣医師ではございません。質問に対する返答は差し控えさせていただいております。あしからず。

また、魚の病気については、人間、畜産、ペットなどと違い、専門的な知識と経験をもち誰でも相談できる「有資格者」が圧倒的に少く、おいそれと巡り合えないのが現状です。
魚の治療・看病の際は多角的に情報を収集し、必ずご自身の責任のもとで行ってください。