2025年10月21日火曜日

水中ポンプどれにする?水陸両用?サーキュレーター?それとも?

知っているようで知らない水中ポンプの世界

水槽で水流が好きな魚種が気持ちよく泳ぐためには、水の流れがとても大切です。
その流れを作るのが水中ポンプです。種類や使い方を知ると、魚が快適に過ごせる環境を整えやすくなり、水槽の管理もぐっと楽になります。初めての方でも安心して選べるポイントをストーリーでやさしく紹介したいと思います。


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

今、部屋のすみには、空っぽの60cm規格水槽がある。
無機質な容器に取り付けられたのは2台のフィルターは、新しい世界を支える二本の柱となるを今か今かと待っているような気がした。

しかし、わたしは眉をひそめた。
この水槽には、セルフィンプレコとグリーンロイヤルプレコを引っ越しさせ、さらにサタンプレコを迎え入れる予定である。すでに外部フィルターは2台、水槽台も用意済み。役者は揃っている。

だが、心の奥にひっかかるものがあり、しばらく立ち尽くしてしまった。



水中ポンプの3パターン


プレコに水流あればより生き生きと

「……水流、か」

プレコは流れの中に生きる魚だ。強い流れを好み、そこで生活をしている。
外部フィルター2台体制なら十分と思いたいが、プレコ3匹の木くずが混じる圧倒的な糞量でろ材が詰まれば、あっという間に流量はすぐに落ちてしまうだろう。

自然河川のような勢いを保つには、ろ過とは別系統の流れ――つまり、水中ポンプが必要かもしれない。

水槽のガラス越しに空虚な中身をのぞくと、未来の妄想で夢が膨らんだ。エアを纏った美しい流れの中で、プレコたちが気持ちよさそうに泳ぐ姿が見える。

こうしてはいられない! このイメージを現実のものとしなくては!

と、わたしは息まいてケータイを握るのであった。

・水中ポンプはこんな風に、排水アクセサリと組み合わせられる


水中ポンプの役割

港町の磯風は、春の陽気でいよいよ潮の香りを帯び始めている。
今日も、アクアリウムのお師匠様であるロゼッタと一緒に、いつもの港町のショップに向かっている。
駅を出て強い海風に逆らいながら、ふたりで高架の動く歩道を大股で進むと、グレーの塔が見えてきた。今日の目的地はその根元だ。まるでコンクリートでできた大樹の下に、季節外れに咲いた花のように自然を湛えたショップがあるのだから、つくづくこの趣味は不思議なものだ。
ゴールデンウイークを前にして、道行く人はわたしたちと幾ばくも年の差のないカップルとすれ違う。だが、わたしたちはそんなことを気に留めることはない。風に歯向かうように前へ前へと進むのであった。


「あー! これこれ!」

と声を上げたのはロゼッタ――わたしのお師匠様だ。
曇った眼鏡を直しながら、紙箱を手に取る彼女の表情は、まるで宝石を見つけた子供のようだ。冷静に見れば年頃の美しい女性なのだが、こと水槽の話となると獣と化す。
この人物を一言で言い表せば、“生物オタク”という言葉がぴったりだろう。
そんな彼女が、嬉々として口を開いた。

「さてさて、アクアくん? 水中ポンプの効果は何だと思うかい?」
「それはもちろん、水流を作り出すことです」

すると彼女はうっすら微笑みを浮かべた。

「そうだよね。でもそれ以外に何か、ない?」
「?」

「ほら? 水流という言葉が出たら、ぜひセットで覚えておきたいことがあるでしょう?」

そして、首をかしげるわたしの目を見つめながら、いつもの得意げな顔となる。

「思い出して? 夏の水温対策の話をしたでしょ」
「あ……酸素、ですか?」

「正解!」

ぱんっと手を叩く音が水音に重なった。

「水中ポンプはね、酸素をよく溶け込ませる効果もあるんだよ。プレコが住んでいるような流れのある水域では、たくさんの酸素が川の流れで溶け込んでいると考えられているよ」

わたしは小さくうなずいた。
アマゾンの茶色い流れ、ひとつの流木の裏に無数のプレコたちが身を預けている。その姿に思いを馳せると、不思議と胸が高鳴る。自分の中のオタクとしての素性を再認識せざるを得ない。

空想がもたらした静寂を打ち破るように、お師匠様は再び話し始めた。

「それじゃ、ちょっと話をまとめてみようか?」

眼鏡のフレームを指でくいっと上げ、熱を帯びた声で語る。

水中ポンプの役割は二つ。まずは水流を生み出すこと。もうひとつは、水槽内の水を循環させ、取り込まれた酸素を拡散することなんだ
「つまり、水流を作れば、酸素も自然に増えるということですね?」

「その通り!」

満足そうに頷いた彼女は、少しだけ間をおいて、ふっと微笑んだ。

「実はね、中型魚~大型魚では、もうひとつ便利な使い方があるんだ」
「え?」

「プレコの糞、見たことあるでしょ?」

その言葉に、水槽のある光景を思い出す。
流木を動かした瞬間、茶色い塊がくるくると舞い上がり、水槽の角でぐるぐると竜巻のように回っていたのだ。

「まさか……水流で集めることができるんですか?」
「ご名答! 流れをうまく調節すれば、糞が集まり掃除が格段に楽になるんだ。でも、うまく微妙な調節が必要だけどね」

水中ポンプ。単純に見えて、なかなか奥が深そうだ。

本当はSEIOの写真を載せたかったのだが、現物は20年前に廃棄、商品自体も終売となっており、ネット上にも画像はほとんどなかった。


どのタイプのポンプが必要なのか?

「で、どれを選ぶの?」

ロゼッタの言葉に、目の前の棚を見回した。箱がずらりと並び、どれも同じように見える。わたしは再び頭を抱えた。

「種類が多すぎて……わからないです!」
「だよねぇ。じゃあ、タイプごとに説明してあげようか」

そう言うと彼女は箱をひとつ持ち上げ、表面を指でなぞる。

「水中ポンプはね、大きく3タイプあるんだ。スタンダードタイプ、水陸両用タイプ、そしてサーキュレーター」

彼女の声には、まるで授業のようなリズムがあった。

「まずスタンダードタイプ。といっても、ボクがそう呼んでいるだけどね。一般的な水中ポンプって言えばこれ。吸水口と排水口があって、アクセサリーも豊富。ディフューザーや底面ろ過に接続できるし、オーバーフローやアクアテラリウムにも使える
「万能型、って感じですね」

「そうそう。一家に一台あれば困らないタイプだね♪」

ロゼッタは箱を棚に戻し、次の大きな箱を取り出した。

次は水陸両用タイプ。これはね、エーハイムが有名かな。毎時1000~3000Lと大流量なものが多いから、オーバーフローのろ過槽に使うことが多いんだ
「えーっと、つまり大型水槽向け、ってことですかね?」

「一応はね。でも、300~600Lの小型モデル……といってもサイズはおっきいけどね? そういった物なら60cm規格でも使えることがあるかな。例えばクーラーや、パワーヘッドを持たないサブフィルターの循環ポンプとしてね?」

「なるほど……揚水用って感じなんですね」
「そうそう♪ そういうこと!」

そして彼女は最後の一箱を手に取る。

「これがサーキュレーター。プロペラで太くて強い水流を作るタイプ。水流専門機っていったところだね
「自然の川みたいな流れを作れる、ってことですか?」

「その通り。だけど、まぁろ過に関する吸排水アクセサリーは絶望的かな……」

と、彼女は少し寂しげに笑った。

「それにね、これが必須条件な魚を飼う人って意外と少なくてね。結構ニッチな世界なんだ。だから、驚くほど高価なものがあったり、首振り機能とか、UV殺菌とか、各メーカーがいろいろ工夫してる不思議な世界なんだよね」
「……すごく深い世界なんですね」

がっかり……と言わんばかりのため息交じりの低いトーンだったが、眼鏡越しに見えるロゼッタの瞳は、きらりと光っていた。彼女の話は、いつも理屈の中に愛情がある。魚たちであっても、道具であっても。どんなものでも慈しむ姿に、わたしはいつも惹かれてしまう。

「結論はひとつ。適材適所、だね。タハハハ!」



カミハタseio2400という化け物

ガラスのパーテーションから館内をのぞくと、すっかりスーツ姿の人ばかりになっている。どうやら熱中しすぎて、いつのまにか帰宅ラッシュになっていたようだ。
しかし、それでもわたしたちのアクア談義は止まりそうにない。

「それで、どう? 疑問は解けた?」

と大きく目を見開いて、にんまりと笑うのはお師匠様。

「ええ。外部フィルターが2台あって、エアポンプも大型のものを持っています。だからこれ以上のろ過装置やディフューザーは不要だと思うんです。となれば……」

「やっぱり、サーキュレータータイプかな?」
「……そうなんです」

ロゼッタは少し笑って、「うんうん」と頷いた。

「たしかに融通は利かないけど、プレコにはいい選択肢だよ。彼らは流れを欲しがるからね」

そして、その数日後、カミハタseio2400というサーキュレーターを手にすることになる。
その数字を口にした瞬間、心が踊る。毎時2400L――小さな水槽の中で、まるで川のような流れを生み出す力を持つ化け物だ。

流量は過剰のように思えたのだが、やがてプレコたちは強い水流もどこ吹く風で水槽内を暴れまわることになる。
今後、2213にトラブルが生じ、未曾有の危機のが訪れるのだが、大惨事の一歩手前で踏みとどまらせてくれる立役者となる。

だが……それはまた別の機会に。



まとめ

水中ポンプは、水槽内の水を循環させる便利な器具です。

まず大きな役割は、水流を生み出すことです。水流があることで、魚たちはより自然に近い環境で泳ぐことができます。また、水流により水中の酸素が均一になることも重要な利点です。特にプレコのような流れを好む魚は、豊富な酸素を必要とする場合が多く、快適な生活空間を作るうえで水中ポンプは欠かせません。

水中ポンプには大きく分けて三つのタイプがあります。 スタンダードタイプは汎用性が高く、吸水口や排水口を備え、ディフューザーや底面ろ過に接続できるほか、オーバーフローやアクアテラリウムでも活躍します。 水陸両用タイプは大流量で、エーハイムなどの製品が有名です。大型水槽やオーバーフローろ過槽での循環に向いており、クーラーやサブフィルターの揚水ポンプとしても利用できます。 サーキュレーターは、強い水流を作ることに特化したタイプで、川の流れのような水流を再現できます。ただし、吸排水アクセサリのラインナップが少ない点は注意が必要です。

選ぶ際には、設置する水槽のサイズや目的、魚の種類に合わせて最適なタイプを選ぶことが大切です。スタンダードタイプは汎用性が高く初めての方にも安心、サーキュレーターは水流重視の環境に、そして水陸両用タイプは大型水槽や循環重視のシステムに向いています。水中ポンプを上手に使うことで、水槽内の環境を格段に快適にできるでしょう。



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