2025年10月13日月曜日

プレコに外部フィルターは、ろ過に問題なく飼育者に安眠をもたらす

結局、外部フィルターでプレコ水槽を作った顛末

水槽の底で流木をかじったり、のんびり泳ぐ姿が魅力のプレコ。
けれどその一方で「フンが多くて水がすぐ汚れる」という特徴をもつ魚です。
だからこそ、飼育に欠かせないのがフィルター選び。水質を守るためには、どんな種類を選ぶかで快適さが大きく変わってきます。

今回は、60cm規格水槽でプレコ水槽を作るにあたり、上部フィルターと外部フィルターの違いについて、ストーリーでやさしく紹介したいと思います。


**********************************


これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

薄明かりの差し込む部屋に、小さな気泡の音が規則正しく響いていた。
30Lの水草水槽では、透き通る青をまとったラミノーズテトラが群れをなし、揺らめく葉の間を縫うように行き交っている。水面には光の粒がきらめき、ガラス越しに差す照明が柔らかく揺れながら反射していた。

隣には45cm規格の水槽があり、底には黒い影のようなプレコが身を潜め、ときおりガラス面を吸いながら静かに移動していた。その姿は不動の岩のように落ち着いていて、なおかつ確かな生の鼓動を伝えていた。

その光景に心を和ませながら、わたしは視線を横へと移した。
そこには、すでに組み立て済みのスチール製水槽台が、空いたスペースを支配するように黒く輝きながら鎮座している。冷たい金属の脚は鈍く光り、ただそこにあるだけで存在感を放っていた。60cm規格用として購入したものだ。



プレコ水槽作るなら上部フィルター? 外部フィルター?


現在検討中の選択

だが、その上にはまだ何も置かれていない。

次に迎えるべき存在は決まっている。
水槽か、それともフィルターかと迷いもしたが、水槽サイズは60センチ規格と決めていたため、ほぼ結論は出ていた。メーカーによって細部は異なるものの、基本的なサイズはどれも同じ。だからこそ、今わたしの心を占めている問題は一点に集中していた。

そこに命を支える「心臓部」、つまりフィルターをどうするかということだ。

選択を誤れば、せっかくの水景が揺らぎ、魚たちの命さえ左右しかねない。頬杖をつきながら水槽台を見つめ、しばらく考え込んでみる。それでも埒が明かず、指先で冷たい金属をなぞると、黒色の塗装がぎらりと光り、何かを暗示しているようにさえ思えた。

その無機質な硬さの向こうに、まだ見ぬ未来の水景の夢が見えた気がした。

エコSを60cm規格のプレコ水槽に設置しようと思ったのだが……


上部フィルターはやっぱり便利だが……

「迷ってるわけだね? 上部フィルターか、それとも外部フィルターか」

お師匠様ことロゼッタは、バルコニーのベンチに身を預け、春の風に長い脚を揺らしながらそう問いかけた。彼女の声は夕暮れの空気に溶け込むように柔らかく、それでいて核心を突く。

わたしは膝の上に手を重ね、視線を落としたまま答える。

「そうなんです。だって……」

頭では理解している。フィルターの選定はただの機材選びではなく、水槽そのものの命運を握る重要な選択だと。けれど、どうしても彼女に"背中を押してもらいたかった"のだ。

お師匠様はのけぞった上体を片手で支えながら、青空を仰いだ。大学のキャンパスでは授業を終えた学生がまばらに行き交い、花の香りを含んだ春風が流れている。

「フィルターひとつで、メンテナンス性も音も、魚たちとの調和も、全部変わってしまう。水景そのものに大きく影響する。……だから迷ってるんだろう?」

ある部分では、図星だったのかもしれない。思わず小さくうなずく。

エーハイムエコS(2231)に60cm規格水槽のメインフィルターを任せる計画もあった。だが、流量が300L/hでは心もとなく、新たに設置するフィルターを選定することにしたのだ。そんな背景を見透かすように、彼女は続けた。

「まぁ、ボクならプレコ水槽のフィルターは、上部フィルターで決まりかな?」

その一言に、胸の奥で半分戸惑いつつも、何かがすとんと落ちるような感覚が広がった。

「まぁそもそも、上部フィルターはメンテナンスが簡単で……ろ材やウールマットの掃除もしやすいよね? これだけでもプレコ向きのフィルターだってわけるでしょう?

お師匠様は軽く笑いながら続ける。

「さらにだ、酸素供給にも優れている。水が落ちるときに酸素を取り込み、戻るときにも再び混ざる。魚たちにとって心地よい環境を作るんだ」

そうした利点はもう知っているし、雑誌や書籍で何度も目にしてきている。だが、やはり胸の内は違うのか、彼女の言葉はなぜか微かに胸に引っかかる。
とりあえず、一般的な常識に同意をしてなんとか体裁を取り繕ってみるものの……。

「だからわたしは……、ろ材の容量がちょっと少ないのは欠点ですが……酸素の行き届いた効率的なろ過は魅力的だと思っています」
「おぉ! よくわかっているね! 性能もよく価格も安い。多くのアクアリストに愛されてきた理由さ

そんな気持ちを意に介さず、お師匠様の真っ当な答えが返ってくる。しかし、答えが見つかって、心が晴れ晴れという心境にはなりそうもない。こうなってしまった以上、勇気を出して聞いてみないと、納得できないだろう。

「しかし、お言葉ですが……実際にショップで上部フィルターを目で見て、稼働音を耳で聞くと、少し怖くなってしまいました」

口にしてみると、不思議と安心感がわたしを包んだ。しかし同時に、ロゼッタは首をかしげる。

「どういうことだい?」

彼女は目をまっすぐに見つめる。その優しい瞳に押されるように、恐る恐る告げた。

「やっぱり外部フィルターはダメなんでしょうか。あの……上部フィルターの音が気になって仕方なくて……

静寂がバルコニーを包む。わたしの声が風に流されると、彼女はしばし口をつぐむ。その沈黙が、心臓を締めつけるほど長く感じられる。

「うーん……、つまり?」

小さな唸り声だけが落ちてきた。キャンパスに灯り始めた蛍光灯がわたしたちを照らし、影を伸ばす。わたしはズボンの布地を握りしめることしかできなかった。

当時至った考え方から紆余曲折あり、現在ではサブフィルター+外部フィルターという組み合わせを愛用中。


どうしても外部フィルターでないとダメな理由

太陽が沈み始めると、渡り鳥がねぐらを求めて騒ぎ始めた。昼間は愛らしく響くはずの声も、群れになればギャアギャアと掻き消される。耳を澄ますほど不快に感じられ、わたしは思わず眉をひそめた。

これと同じなのだ。

上部フィルターを導入すれば、夜になった途端、いままで気に留めなかった音が騒音となる。モーターの低い唸り、ろ過槽から落ちる水の轟き、排水口からこぼれる気泡の破裂音――それらが重なり合い、夜の静寂を切り裂くだろう。

想像しただけで胸がざわめいた。ベッドに横たわっても目を閉じられず、天井を見つめながら眠れぬ夜に悶絶する自分の姿がありありと浮かぶ。20L水槽のブルーテトラは静かに漂い、45cm規格水槽のプレコは流木の陰から姿を現す。彼らにとって心地よい環境でも、わたしにとっては安眠を奪う雑音でしかないはずだ。

意を決して、ロゼッタにわたしの真意を打ち明けた。

「その……上部フィルターの騒音が気になって、眠れそうにないかもしれないんです……

声を落としながらも、心臓が速く打つのを感じた。黙って聞いていたお師匠様はやがて大きくうなずき、肩の力を抜いたように言った。

「ふーむ。それなら、外部フィルターしかないねぇ……」

彼女の言葉は穏やかでありながらも確信を含んでいた。外部フィルターは静音性に優れ、ろ材も大量に詰め込める。わたしの心も一瞬安堵しかける。けれど同時に、胸の奥で別の懸念が疼いた。

「ですが……プレコは木くずを撒き散らします。外部フィルターで受け止めきれるのでしょうか? 45cm規格ならともかく、60cm規格の水槽でプレコを飼うとなれば、詰まりやすくなる気がして……」

思わず口をついて出た弱音に、お師匠様はわたしの肩を軽く叩き、真っ直ぐに見つめ返した。

「なるほど、そこを悩んでいたんだねぇ」

彼女のショートヘアがかすかに揺れ、いつもの得意げな表情が戻ってくる。その顔を見ると、不思議と胸の重石が少し軽くなる。

「それは厄介な問題だね。たしかに、キミが持っていたP1フィルターのようなプレフィルターを利用すれば、多少は目詰まりを軽減できるだろう。でも、木くずは細かいから、それすら通過する。となれば……」

声が少し低くなり、表情も引き締まった。

外部フィルターを2台併用するか、1台であれば1~2ランク上のものを選ぶしかないね。どちらにせよ、ろ材次第ではすぐ詰まることもある。安全を考えるなら、やはり2台並列のほうがいい」

「でも……水量も魚の数も倍に増える予定です。本当にそれで大丈夫なんでしょうか?」

自分でも弱気だと思う問いを投げると、お師匠様は堪えきれないように笑い声をあげた。

「んふふふっ! 臆病風に吹かれてるね? 45cm規格でもプレコ水槽を外部フィルターで管理できているじゃないか。しっかりメンテナンスすれば、不可能なはずないさ!

彼女の言葉は力強く、笑みは頼もしかった。わたしの胸に残る迷いを払いのけてくれるようだ。

「だからこそ、ろ材の組み合わせは慎重に選ばなきゃね。物理ろ材を多めにして、掃除の手間を軽くするのがいい」

――やっぱりそうか。
結局はメンテナンス性を第一に考えることになるのだ。けれど、お師匠様が同じ結論に至ったのなら、それは正しい道なのだろう。心の底から少し安心が広がっていった。

「つまり……物理ろ材を中心に組み合わせ、ワンサイズ大きめの外部フィルターを導入する。あるいは2台を併用する。そういうことですね?」

「その通り。ボクは後者を推すよ。片方が詰まっても魚たちを守れるし、プレコが好む強い水流を再現できるからね」

「なるほど……」

「ただし、外部フィルターはエアレーションを兼ねない。だから、エアポンプやディフューザーを別に設けて酸素を送らなきゃいけない。場合によっては水中ポンプを足して、その流れにディフューザーを取り付ける必要もあるかもしれない」

「水中ポンプまで……」

思わず声が漏れる。そこまで水流を強めてよいのか、わたしにはまだ答えが出せない。だが同時に、知らなかった世界がまた一つ開かれていくようにも感じた。

「手間は確かに増える。できないわけではない。やってみてから少しずつ修正してみてもいいのかもしれないよ?」

お師匠様はそう言って微笑む。その笑顔に励まされながら、わたしは深くうなずいた。

話を終え、わたしたちは並んで校門へ向かう。夜の帳が静かに降り、キャンパスはオレンジのハロゲンライトに照らされている。赤いレンガに映る影は長く伸び、秋の風が頬をなでた。わたしは小さく拳を握る。選択の重さが胸にのしかかるが、それは同時に未来へ進む力にも変わっていく。

外部フィルタでプレコ水槽をろ過する際キーアイテムが”プレフィルター”だ。どんなものでもいいので、これがあるのとないのではメンテナンスの苦労が違う。


物語が始まる

窓から差し込む光が部屋を満たしていた。春の早朝、冷えた空気に頬をなでられながら、水槽台の前に立つ。

奥ではブルーテトラが青い光をまとうように泳ぎ、流木の陰からはプレコの丸い目がじっとこちらを見つめていた。その眼差しは言葉を持たぬはずなのに、不思議とわたしの心を落ち着かせた。

「決めた。外部フィルターにしよう」

声に出すと、胸の奥に小さな決意が芽生えた。
上部フィルターの利点は分かっている。だが、飼育者であるわたしが安らげなければ、魚たちを守ることはできない。だからこそ、静けさを優先する。それが彼らにとっても最善につながるはずだ。

残された課題は、どの機種を選ぶかという点。
だが今は焦る必要はない。選択肢を広げ、じっくり検討していけばいい。水槽台の無骨な金属が、これから始まる新しい物語の舞台を静かに支えている。

カージナルテトラの群れが散ると、朝の光を浴びたマツモが踊った。命の流れに耳を澄ませながらふぅと息を吐くと、生まれたばかりの気持ちは揺らがないものになった。
未来はまだ白紙だ。けれど、確かな第一歩を踏み出したことだけは胸を張って言える。

新しい水景の物語は、これから始まっていくのだ。



まとめ

プレコを飼育していると、どうしても気になるのがフィルターの選び方です。
流木をかじったり、底砂を掘ったりする習性があるため、水槽内は想像以上に汚れやすくなります。特にフンの量が多い魚として知られているため、濾過能力が不十分だとすぐに水質が悪化してしまいます。

そのため、多くの人が上部フィルターを選びたくなりますが、実は一見不向きに見える外部フィルターでも、工夫次第で十分に飼育可能です。

外部フィルターは水槽の外に設置し、濾過槽を水が通過する際にろ材で汚れを取り除く仕組みになっています。容量が大きく、ろ材をたっぷり詰められるので、生物ろ過の安定感が魅力です。プレコのように排泄量が多い魚を飼う場合には、この「ろ材を多く入れられる」点が特に重要となります。また、水槽内に器具を置かなくてすむため、レイアウトの自由度が高いのも嬉しい特徴です。

一方で、外部フィルターを選ぶ際にはいくつか注意点があります。
まず、水槽のサイズに余裕を持った濾過能力を持つものを選ぶこと。たとえば60cm規格水槽であれば、ろ材容量が十分で流量がやや強めの機種、あるいは2台を並列で稼働させる方法が安心です。さらに、メンテナンス性の低さも課題となります。プレコ飼育ではどうしてもフィルター内に汚れがたまりやすいため、ホースやろ材が外しにくいタイプでは、上部フィルターに比べて掃除の手間がかかります。そのため、水換えと合わせて定期的にフィルターを点検することが欠かせません。

こうした点に注意して使えば、豊富なろ材容量のおかげで水質は安定し、プレコにとって快適な環境を維持できます。

確かに上部フィルターは、プレコ飼育における「頼れる相棒」といえる存在です。
しかし、外部フィルターも弱点を補えば十分に活躍できます。水槽の規模や飼育している魚、さらに自分の生活スタイルに合わせてフィルターを選び、長く安心してプレコとの暮らしを楽しみましょう。



0 件のコメント:

コメントを投稿