2025年10月11日土曜日

ボンベ式でCO₂添加するなら、持っておきたい電磁弁は安心感の塊

わたしがボンベ式の手動添加制御を挫折した理由

水草を元気に育てたいと思ったとき、まず考えるのがCO₂の添加。
しかし、手動で添加のON/OFFをしていては、「止め忘れたらどうしよう」「夜もそのまま出ていたら危険かも」と、不安になることもありますよね。
そんなときに心強い味方になってくれるのが電磁弁。安全に、そして快適にアクアリウムを楽しむための大切なアイテムなんです。

そんな電磁弁について、ストーリーでやさしく説明したいと思います。


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

朝の光はまだやわらかく、実験室の窓から差し込む日差しが、黒い机の上に白い帯を描いていた。学生たちは眠そうな顔をしながら列になり、教壇に置かれた試薬を取りに向かう。そのたびにカタカタとガラス器具がこすれる音が教室いっぱいに響き始める。
今日の実験が始まったのだ。わたしは冷えた空気を胸いっぱいに吸い込み、背筋を伸ばした。

時間はあっという間に過ぎていく。淡々と続く実験、冷静に手元の実験ノートと結果を見つめてはいたが、心の奥には落ち着かないものを抱えていた。試薬の刺激臭と規則正しく並ぶ器具に囲まれながら、別の思いが頭を支配していたのだ。

CO₂添加、止め忘れてないよね?



電磁弁は安心・安全な理由


止まらぬ疑念

疑念が一度浮かぶと胸の鼓動は早まり、耳の奥で脈打つ音が響き始めた。もし止め忘れていたらどうなる? 想像するたびに冷や汗が背筋を伝う。
仕方なく昼休憩の合間に家族へ連絡すると、返信は「止まってる」とのことだった。

だが、安心できるはずの言葉を受け取ったのに、胸の奥では逆に不安が膨らんでいく。

このあと、サークルの新入生歓迎会が控えている。二十歳を超えたばかり者が揃えば、ついついお酒が進みすぎてしまうだろう。泥酔したわたしに、果たして水槽のことを正しく判断できるだろうか。もしそのときCO₂が止まっていなかったら? 魚たちはどうなるのだろう。

最悪の想像がよぎる。二酸化炭素中毒。小さな命が水面でパクパクと鼻上げしている光景が脳裏に浮かび、思わず頭を振った。

「いやいや、タイマーでエアレーション入れてるから……」

そう自分に言い聞かせる。しかし、なぜか安心はできなかった。朝から胸の奥で膨らみ続ける不安は、ただの杞憂なのか、それとも――。

20年前、実店舗で¥7,000で購入したが(上)、正直にいってAmazonで¥2,900で購入したもの(下)でも品質的に十分だった。購入から6年たっても稼働中。国産品や国内メーカー品は高品質で安心だが、過剰品質なきらいもある。適材適所で選んでいきたい。


CO₂はやっぱり危ない。だからこそ……

翌日の放課後。
友人と新歓の結果を整理して部室を後にすると、夕方の柔らかな風がサークル棟の吹き抜けを通り抜けていく。ドーナツ型の通路で心地よい風に背伸びをしながら反対側をのぞくと、ちょうどその向こうからお師匠様が出てくるところだった。彼女はわたしの水槽の先生であり、名をロゼッタという。

「そろそろ、電磁弁を買わないとね?」

バルコニーのベンチに二人並んで座ると、彼女は唐突な言葉を投げかけてきた。わたしは思わず苦笑いを浮かべるしかない。

「……はい。そうなんですが、でも値段が……」

軽い返事のつもりだったのに、彼女の視線は真剣だった。

「そうは言っても、場合によっては魚の命に関わるからさ~」

柔らかな口調だが、「命」という一言が胸に刺さる。実験室で生まれたあの焦燥感を思い出すと、わたしは思わず唾を飲み込んだ。
やっぱりそうか。自分の不安は間違っていなかった。そこで勇気を出して尋ねた。

「エアレーションのタイマーが入っているから、そういったことにはならないと思っていたんです。が、やはりいざそれを示唆するようなことが起きると……」

お師匠様は穏やかに首を縦に振る。

「そうでしょう? CO₂って魚にとっては毒だからさ。忘れた時のことを考えると、やっぱりちょっと気が落ち着かないよね?」

もちろん、エアレーションをしているので、そんなことは起きないはずだ。
だが、実際に実験中はずっと気がかりで、改めてその現実を見返すと、思わず声を上げてしまった。

「たしかに!」

けれど彼女はすぐに笑みを浮かべた。

「とは言え、キミは発酵式をやってたから、そんなこと全然気にしないタイプだと思ってたけどさ~」

わたしはうつむき、指先をぎゅっと握った。ボンベのCO₂が止まらないだけであのストレス感。思い返せば、発酵式CO₂に取り組んだのは冬から春にかけてのほんの数か月。あのまま夏を迎えていたらと思うと、自分の考えが浅はかだったようで、恥ずかしさと同時に妙な安堵感が広がった。

「そうかもしれません。もし真夏で発酵が進みすぎて過剰添加が起きれば……」
「そうだよね。そういった観点だと、発酵式はちょっとリスクのある方法かもしれないね」

――しかし……。静かに頷くわたしの胸に、電磁弁に興味を持った過去の思いが浮かぶ。

「本当は節約目的で購入する予定だったんです。一日最大で6時間添加。これを常時添加で発酵式のようにエアレーションでコントロールすると4倍の消費量になるはず。だから、電磁弁で……」

言葉を重ねると、彼女は静かにわたしを見つめた。

「言いたいことはわかるよ。でも、お金よりもやっぱり魚たちの安全だよね? それに、ちょっとでも不安に思う気持ちがあるのなら、そちらを優先した方が学業にも身が入るんじゃないかな?」

傷んでいた胸の内が、優しい声で消えていくような感じがした。

「そうですよね……」

お師匠様はハンドバッグからタンブラーを取り出し一口飲むと、ふぅと軽い溜息をついてから口を開いた。

「まぁ、ちょっとやそっとのミスでは事故は起きないんだけど、この趣味は人によっては何十年と続けるものなんだ。いつかはそういったことが起きるかもしれないし、起きないかもしれない。だからこそ、不安要素はなるべく排除したいものだね」

研究棟の谷間に夕日が落ち、二人だけの静かな空間を赤く染めていた。

画像中央付近にあるのが電磁弁。タイマーと組み合わせればCO₂添加を自動で制御してくれる優れものだ!


電磁弁の仕組み、取り付け方

「というわけで、ここからは電磁弁本体の説明をしていくよ」

すっかり夜の帳が落ち、バルコニーからのぞく街並みは白い光に包まれている。もともとは喫煙所として作られたこの場所だが、それが撤廃された今、近寄るのはわたしとお師匠様くらいなものだ。

まだ夜虫も鳴いていない静かな春の夜、わたしは彼女の言葉に熱心に耳を傾けていた。

「そもそも、電磁弁ってどういうものか分かる?」
「電気でON/OFFする弁ですよね? 開けばボンベから来ているCO₂が通るし、閉まればCO₂が遮断される。そんなイメージですよね?」

自信なげに答えると、彼女は唇に笑みを浮かべた。

「その通り。じゃあ電気が止まるとON? それともOFF? どっちかな?」

急に問われ、わたしは慌てた。

「うーん、えーっと……」

視線が泳ぐと、彼女は楽しそうに肩を揺らした。

んふふ♪、電気が通るとON、電気が止まるとOFFさ」

その言葉を聞いた瞬間、それが合理的で安全であることに気付いた。

「つまり、もしコンセントが抜けたり、停電が起きたら、自動的に添加が止まるってこと?」
「もちろんさ! 電気が通らなければOFFだから、安全性を高めてくれる器具だと言えるね

胸の奥に光が灯ったように、視界が開ける。

「なるほどぉ。電磁弁って不安を取り払ってくれる道具でもあるんですね!」
「その通り!」

声が弾み、思わず笑みがこぼれる。わたしの水槽に、新しい世界が広がる予感がした。
ところが次の瞬間、お師匠様がにやりと笑った。

「さて、その取り付けはどこになるでしょうか?」
「えぇ!?」

思わず声が裏返る。

改めて思い返してみる。
ボンベ式CO₂には大きく2つの系統がある。1つはレギュレーターからスピードコントローラーまで。ボンベから減圧されたものの、依然として高い圧力を持ち、耐圧チューブを用いる場所。
もう1つはスピードコントローラーからディフューザーまで。圧力が弱まり、エアチューブでもよい場所。

ここで電磁弁の形を思い出す。
チューブがつながる場所に、大きな筒がついていたような気がする。

「もしかして、ワンタッチ継ぎ手がついてますか?」

問いかけると、彼女は無言で頷いた。

「であるなら、レギュレーターとスピードコントローラーの間ですね!」

自信を持って答えると、彼女の瞳が輝いた。

「正解! どうやらキミは取り付けるチューブから答えを導き出したみたいだね。とにもかくにも、電磁弁はボンベの近くに取り付ける。そうすれば、チューブの圧力も変化しやすく、ON/OFFの制御がしやすいってわけさ

褒められた嬉しさで胸が熱くなる。小さな知識がつながり、ひとつの理解へと結びつく瞬間は、なによりも甘美だった。



安く買うなら?

だらだらと話し続けていたせいで、すっかり20時を過ぎていた。
守衛さんに追い出されるようにサークル棟を出ると、その足で夕飯を食べることになり、裏口から街へと向かっていた。連なる宅地からは夕飯のおいしそうな香りが漏れ出していたが、そんなことはお構いなしに、二人は会話を続けていた。

「とにもかくにも、電磁弁を買わなければ。心が落ち着きません」

そう断言してみたものの、財布の中身を思い出すと、足取りは自然と重くなる。

1個5,000円前後もします。安く手に入れる方法はないんですかね?
「そーだねぇ……」

お師匠様は小さく呟いたのち、夜空を見上げながら切り出した。

通販のAMAZONで中華製を買うか、それともネットショップのグリーンズかなぁ。後者はいろいろと安くCO₂器具が手に入るから、覚えておいて損はないかもね」

そう言い切ると、数歩前に出て振り返り、にんまりと笑って見せた。

学業と趣味の両立は簡単ではない。時間も足りないし、お金も掛かる。だが魚たちの小さな命を守るために、できることを一つずつ整えていこう。
わたしはそう心に誓ったのだった。



まとめ

アクアリウムでCO₂を添加するとき、意外と見落とされがちなのが「電磁弁」です。
名前だけ聞くと難しそうですが、仕組みはとてもシンプル。電気の力でON/OFFを切り替える弁で、電気が通ればガスが流れ、電気が止まればガスが遮断される仕組みです。つまり、もし停電やコンセント抜けが起きても自動的にCO₂の添加が止まるので、水槽を守ってくれる安全装置でもあるのです

特に初心者の方にありがちなのが「うっかり止め忘れ」問題。
水草にとって夜は光合成が止まり、酸素を取り込む時間です。そこにCO₂が供給され続けると、魚たちが酸欠になる危険があります。電磁弁をタイマーと組み合わせれば、照明の点灯・消灯に合わせて自動でガスを制御できるので安心です。わざわざ手動でバルブを回す必要もなく、管理の手間もぐっと減ります。

取り付け位置は「レギュレーターとスピードコントローラーの間」が基本。ボンベからの高圧ガスを減圧したあと、電磁弁を通して制御することで、安定したON/OFFが可能になります。多くの製品にはワンタッチ継ぎ手が付いており、耐圧チューブを差し込むだけで接続できるので扱いやすいです。

気になるのは価格ですが、一般的に1個5,000円前後が目安。
ネットを使えば、中華製の手頃な製品から、信頼性の高い国内ショップまで、幅広い選択肢があるので、予算に合ったものを選びましょう。2,000円前後で手に入るショップもあります。

高価で導入で少し迷うかもしれませんが、安全性と安心感を得られると考えれば、十分に価値のある投資です。電磁弁は派手さこそないものの、水草レイアウトを長く楽しむためには欠かせないパートナーだと言えるでしょう。



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