2025年9月27日土曜日

暗雲立ち込めるヘアーグラス栽培。黒ひげとソイルに疲れ果て……

暗雲立ち込めるヘアーグラス栽培。黒ひげとソイルに疲れ果て……

今回は、ヘアーグラスの栽培初期に起こったトラブル二選。

①、ある日、面白い情報を知る。「肥料分が邪魔ならソイルを洗えばいい!」。それを真に受けわたしは実行することにしたのだが…… .

②、ヘアーグラスに黒ひげ苔がやってきた。水流対策もばっちりで水質も悪くない。これ以上打つ手がないと嘆くと、お師匠様は最終手段に打って出る

の2本立てです!


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

三月の曇り空は、もうすぐ春だというのに薄暗く、北風に細かいみぞれを交じらせて家々の隙間を吹き抜けてくる。
今日は、魚たちを20L水槽に避難させ、30cmキューブハイタイプでの門出となる日のはずだった。敷き詰めていた大磯砂も撤去済みだ。

だが、わたしは窓越しにその白い粒を眺めながら、深くため息をつかざるを得なかった。
透明になるはずのバケツの水が、何度すすいでもコーヒー牛乳のように濁っていたからだ。沈黙したまま机の角にたたずむヘアーグラスの苗を見ると、思わず口に出てしまう。

「はぁ……計画は、失敗だな」



トラブルは続くよどこまでも


噂はどこまで行ってもウワサ……

気になる話がある。

ソイルは洗浄して使うものだ!

――そんな情報を、先日掴んでしまったのだ。
ゴシゴシ洗ってはいけない。優しく手でゆすぐように洗うだけでいい。
濁りも取れ、余分な肥料分が流れて水草が腐海に沈むことを防げるのだと、さも経験者めいた一文を信じ、行動に移してみたのだが……。

信じたわたしがバカだった。

そもそも、バケツに水を注ぐだけでソイルくずが舞い、一瞬で泥だらけになる。手で優しくかき回して洗うなど毛頭できるはずもなく、何度すすいでも濁りが取れる気配はなかった。

――ピンポーン♪

その瞬間、チャイムが鳴った。ドタドタと階段を下り慌ててドアを開けると、北風とともにロゼッタが立っていた。頬にかかったみぞれを拭いながら室内に入ってもらうと、彼女は柔らかく笑みを浮かべた。

「どうしてキミの家に行く日に限って、こんな天気が荒れるんだろうね? 桜の開花予報は出ているっていうのに」

バシャリとドアが閉じられると冷気が遮られ、わずかに暖められた空気の中で、彼女の凍った髪についた雪くずが肩に落ちていった。

「ごめん、実はお願いしたいことがあるんです……」
「わかってるさ! ヘアーグラスを植えるために、今日はソイルを入れるんでしょう?」

「それが……」

・10年後リベンジすることになる


ソイル濁りまずは水換え

二人で階段を上がり自室へ入ると、作っておいたコーヒーを勧めつつバケツの現状を話した。
すると、彼女は口に含んだコーヒーを吹き出しそうになるのを堪えながら、顔をくしゃりとさせて笑った。

「そりゃ、ガセ掴まされたね?」
「えっ?」

「まぁ、言ってることは半分は本当かな。でも、このソイルじゃ、それは良くないかもね」
「えーっ!?」

彼女はソイルをつまむと、軽く指で潰して見せた。指先にはしっとりとした黒い粒の円ができ、その柔らかさを示していた。

「でも、別のメーカーの硬いソイルなら、洗浄して使うっていうのもありかもしれないけどね?」
「どうしよう……このままじゃ、いつまでたっても植栽できない……」

「ん? 何を?」

わたしが机を指さすと、お師匠様もそちらを振り向き、目を丸くした。

「わぉ! そりゃ順番が違うよ! ソイルを入れるのも重労働だし、濁りが落ち着くのも時間がかかるんだ。キミだって知ってるだろう?」

机の上には、ヘアーグラスの苗が入ったプラパッケージが、先ほどと変わらずに無言で鎮座している。今日、ソイルを入れてついでに植えようと張り切って買ってきたものだ。
それを見たお師匠様は、渋い顔を浮かべ、苦言を呈した。

わたしは肩を落とすしかなかった。
前回のウォーターバコバでの失敗が頭をよぎる。もう慣れたはずだと思っていたのに、また同じソイルで過ちを繰り返してしまった。

「どうすれば……いいんでしょうか?」
「とにもかくにも、このままじゃヘアーグラスが傷んじゃうから、ソイルの準備を続けるしかないね。水換えを続けて、うっすら白く濁る程度になったら、そこからさらに植栽さ!

情けないわたしは、結局言われるままソイルを30cmキューブへ流し込み、カルキ抜きした水を注ぐ。予想通りのコーヒー牛乳。隣の20Lキューブに避難しているカージナルテトラたちが、不安そうに泳ぎながらこちらを見つめてくる。

「とにかくやるしかないね。ボクが水を注ぐから、キミは洗面所から水を運んできて? 二人でやれば、すぐ終わるから!」
「はい! ……お師匠様、ご迷惑をおかけします……」

「いいって、気にしないで。ヘアーグラスだって待ってるんでしょ?」

それから数時間。
外はすっかり夜になり、窓に街灯の光がにじむころ、水換えは終わった。
階段を往復し、すべてが終わる頃には身体がへとへとになっていた。

そんなわたしを見かねたお師匠様が、代わりに丁寧にヘアーグラスを植えてくれる。まるで小さな田植えのような光景をじっと見つめると、彼女は苦笑いしてみせた。

「これでうまくいくといいね?」

だが……それでも、うまくはいかなかった。

・お酢は手を出しやすい黒ひげ駆除剤だが……


黒ひげの襲来はお酢で

二週間後。
いまだにニュースでは桜が咲くかどうかで騒いでいる。

わたしの水槽は……やはり腐海に沈んでいた。ウォーターバコバと同様、ガラスの内側にあるヘアーグラスの葉先には、黒ひげ苔がまた生えてきてしまっている。

「シャワーパイプの穴は大きくしてあるし、水流もガラス側に向けてある。それなのに、どうして!?」

苛立ちを様子を見に来たお師匠様に吐き出すと、彼女は肩をすくめた。

それが水草の現実さ。苔は弱った部分を選んで生えてくる。ほら見てごらん? 新芽には苔がついてないだろう? だから、どこかで折り合いをつける必要があるんだ」

「じゃあ、このまま黒ひげを鑑賞するのがいいんですか?」
「そうは言ってない。水上葉が攻撃を受けているだけで、水中葉ばかりになれば少しは状況が変わるだろう」

「うーん、このまま待っていろと?」
「そういうこと。人事を尽くして天命を待つ。……とはいえ、気の短い人向けだけど、一応強引に解決する方法もある」

「どんな方法ですか?」
「危険だけど、お酢で直接駆除するのさ!」

「そんなことができるんですか? でも危険って?」
一歩間違うと、ヘアーグラスやフィルターまで不調になるよ? それでもいいのかな?

わたしは唇を噛みしめ、頷いた。水質も水流も、できる限りのことはした。それでも黒ひげは止まらない。残された道はこれしかなかった。

「お願いします」

藁にもすがる思いでそう告げると、彼女は頷き、素早く準備を始めた。
フィルターとヒーターを止め、水槽から飼育水をバケツに移す。なみなみと水が溜まると、同様に避難用の20L水槽に水を移し、そちらにカージナルテトラたちを避難させた。

計30Lを抜き取ると、水中からヘアーグラスが顔を出した。

「それじゃあ、いくよ!」

ロゼッタは携帯のタイマーを20秒にセットし、以前作った3倍希釈の穀物酢スプレーを黒ひげの生えた葉に一気に吹きかけた。

シュッ、シュッ、シュッ!

たちまちお酢の匂いが漂い始めた。
が……

ピピピ♪

もう20秒も経ったようだ。
タイマーが鳴るとすぐに、バケツの飼育水ですすぎ、さらにホースで別のバケツへサイフォンし、お酢が混じった飼育水を捨てる。これを数度繰り返すと、いよいよバケツに取っておいた飼育水は空になり、すすぎは完了となった。

「あとは、20Lの水槽の水とカージナルテトラを戻して、完成だね」
「なるほど……こうすれば苔を直接駆除できるんですね?」

しかし、彼女は大きく首を振った。

これはね、葉の分厚いヘアーグラスだからできることなんだ。葉の薄い陽性植物にやれば穴が開いて大変なことになるよ?

「うーん……それは困る。あっ! 今思いつきました。これを毎回やれば美しいヘアーグラスに?」
正直、毎回はおすすめできないな。水草は大丈夫でもフィルターに負担がかかるし、多かれ少なかれ生体にも影響がある。最終手段だと思ってほしいところだね」



そんなに簡単には話は進まない

それから一週間後。
黒ひげは赤くなり、勢いは確かに止まった。
しかし、ゆっくりではあるが確実に新芽を出していた姿はどこへやら、順調だった勢いも衰えてしまった。

ヘアーグラスは、終わってしまったのだろうか?
窓の外の風が冷たく、わたしの胸の奥まで染み込んでくる。もうこれ以上、できることはない気がした。

「あるとすれば……小型ボンベか?」

現在の添加方式は発酵式。
夜間に止めることはできない。

だから、どうしても夜にバカスカとエアレーションをかけてしまう。もしこれをやめられれば、黒ひげが蔓延する事態も防げる……かもしれない(?)。

しかし、それが実現できるだろうか。
一式買って2万円。
暗い水面に目を落としながら、わたしは立ち尽くしていた。



まとめ

アクアリウムを始めたばかりの頃に多くの人が直面するのが、ソイルの濁りと黒ひげ苔の問題です。どちらも水槽の見た目を大きく左右し、放っておくと管理のモチベーションまで下がってしまうことがあります。

まずソイルの濁りについて。インターネット上には「ソイルを洗ってから使うと良い」という情報もあります。とは言え、柔らかいタイプのソイルでは逆効果になることも十分考えられる話です。そういった物では、何度すすいでも水がコーヒー牛乳のように濁ってしまい、かえって作業が長引いてしまいます。
ソイルは基本的には無理に洗わず、水換えを繰り返して落ち着かせるのが安全な方法です。ソイルを敷いてから少し時間を置き、フィルターを回してあげると自然と澄んでいきます。

次に黒ひげ苔。水流や水質が整っていても、弱った葉や古い部分に発生してしまうのがやっかいなところです。新芽には付きにくいので、水草の状態を観察しながら古い葉を整理するのも効果的です。どうしても取れない場合、最終手段として、木酢液やお酢を薄めて直接スプレーするという方法もあります
ただしこれは水草の種類や水槽全体に負担がかかるため、本当に追い込まれたときの処置と考えたほうが安心です

ソイルの濁りも黒ひげ苔も、一度で解決できるものではありません。ですが、水換えやトリミング、そして少しの工夫を積み重ねることで、必ず落ち着いてきます。焦らず取り組むことが、長くアクアリウムを楽しむコツなのです。

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