2025年9月11日木曜日

カージナルテトラ?ネオンテトラ?どう見分ける?(初心者さん向け)

カージナルテトラとネオンテトラは違いは?

熱帯魚を始めたばかりの方が最初に悩むのが、ネオンテトラとカージナルテトラの見分け方。青と赤のラインが美しく似ている二種類ですが、ほんの少しの違いで見分けられるんです。
赤色のラインの入り方や長さを押さえるだけで、どちらを選ぶか迷わず決められます。これからその違いと選び方のポイントをやさしくストーリーので紹介していきます。


**********************************


これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

新春を迎えた街並みに、吐く息が白く空に溶け込んでいく。潮の香りを含んだ風が地下広場に吹き抜けると、人々の群れは一斉に肩をすくめ、大きな時計の下の入口へと吸い込まれていった。

デパートの1階、バスターミナルの片隅とガラス戸一枚で隔てられるそここそが集合場所だ。白地に赤いラインを数本あしらい、地面に接する部分には淡い青を配したバス。排気音とともにプラグドアが開くと、お揃いのボストンバッグを持ったカップルや、スーツケースをだらだらと引きずるサラリーマンといった乗客たちがぞろぞろと出て来る。
その群衆の中に、やけに手荷物の少ない女性がひとり。

ロゼッタだ。

遠路はるばる実家から戻ってきたばかりだというのに、手荷物は小さなバックパックをひとつだけ。肩にかけたそれは頼りなげに揺れ、長旅の趣を微塵も感じさせない。

彼女の生家は、この湾の向こうに広がる街にあり、大規模な製鉄所で知られている。大学からは特急で三時間もかかる道のりのはずだが……。

長大な海底トンネルが開通してからは、わずか一時間に短縮された。

「湾の向こうの●●市ですよね? 随分と近くなったんですね」

感心してそう口にすると、彼女は軽やかに肩をすくめて首を振った。

「もう4、5年も前の話だよ? そんな時代錯誤なこと言ってたら、置いていかれるよ?」

どうやら、わたしは窘められてしまったようだ。



メジャーな2種の見た目の違いは?


帰省がえりに向う店

デパートを抜け、電車に乗って数駅。改札を抜けると、二人はビル群の中にある商業施設へ向かう遊歩道を並んで歩いた。

海風は刺すように冷たい。
普段なら遊歩道を途中で降り、数百メートル大通りを歩いてから路地に面した入口から店舗に入るのだが、今日はあまりの寒さに逃げるようにビルの中に足を踏み入れた。
ここからビルの地下道を伝って行けば大回りになるが、目的の店にたどり着ける。

ビル内部は一転、外気の鋭さはなく、ぬるくも冷たくもない穏やかな空気で満たされていた。わたしが胸をなでおろす間もなく、ロゼッタはロングブーツをツカツカと鳴らし、小走りで先へ進んでいく。

「せっかく来たんだから! 楽しまないとねっ!」

振り返った彼女の目は期待で輝いていた。
その笑みを見た瞬間、わたしは困惑した。ダッフルコートにチェックのロングスカート。見目麗しい女性の姿そのものだが、浮かべた得意げな顔は紛れもなく「生物オタク」のそれだったからだ。
何を隠そう、わたしをアクアリウムという趣味に引き込んだのは、このロゼッタだ。彼女はわたしにとって、アクアリウムの世界のお師匠様である。

「アクアくん? 今日の目的は何を見るつもりなのかな?」

不意に再び振り返ったので、ぼんやりと美しい後ろ姿に見とれていたから心臓が跳ねる。

「で? 何を見るのさ?」

(カージナルテトラを)

――だが、わたしはその名前のを口にすることができなかった。



あの時のお題

商業施設と店舗を隔てるガラス張りの白い壁。
その奥の自動ドアが開いた瞬間、わたしはむわりと押し寄せる湿気に思わず瞬きをした。肌にまとわりつく水蒸気、かすかに混じるアンモニアの匂い。それは土を思わせる香りで、生臭いというより、水槽を嗜む者だけが知る、あの独特の“生き物の気配”だった。

だが、ここが整然とした観光地の商業施設の中であることを思えば、どうしても異質なものに感じざるを得ない。胸の奥に小さな戸惑いを抱えつつも、今はわたしが先頭に立ってショップの奥にある生体コーナーへと足を進めている。

目当ての魚がいるのだ。
カージナルテトラだ。

お師匠様に悟られぬよう水槽の前で立ち止まり、一瞬凝視する。
透き通る水の中、小さな光の粒のような魚たちが群れをなし、青と赤の鮮やかな線を走らせていた。けれど、わたしは口を閉ざしたまま、その前を無言で通り過ぎる。

それを欲しいとはっきり言うのが憚られたのだ。なぜなら、過去に課せられたお題がまだ解けていなからだ。

カージナルテトラとネオンテトラの違いはナニかな?

耳の奥にこだまするお師匠様の声。その問いは、いまだに解けず、わたしの胸につっかえたままだ。

カージナルテトラとネオンテトラ。
双方とも体長は1~3センチ。アマゾン原産のカラシン科で、背には青、腹には赤を配している。その姿はまるで鏡写しのようで、わたしの目にはどうしても同じに映ってしまう。

だが、違いを見抜けなければ、カージナルテトラを迎えることは許されない――それがお師匠様の厳しい教えだった。

「同じ色で、同じサイズ、同じ分類に属する魚なら、ネオンテトラでもよくないかな?」

思い出すのは、嘲笑うかのように言い放つ彼女の横顔。

確かにその通りだ。
だが、わたしは自分でも不思議なほどカージナルテトラに惹かれていた。
理由は自分でも分からない。ただ、胸の奥に引き寄せられる感覚がある。困惑と渇望だけが膨らんでいった。

今分かっている違いをあえて言えば、値段ぐらいなものだ。
カージナルテトラの方がネオンテトラよりも2~3倍高価だ。
だが、お師匠様が言っていることは、そんな単純な話ではないはずだ。

無言のまま水槽の列を半周すると、ネオンテトラの水槽を見つけた。
その群れを目に焼き付けつつ、さらにもう半周して、カージナルテトラのもとに戻り、じっくりと見つめてみる。

――しかし、違いは分からない。

肩を落としてもう一周しようと歩き始めたところで、隣のミナミヌマエビを見ていたお師匠様に声を掛けられた。

「あ? もしかしてカージナルテトラ? ネオンテトラとの違いがわかったのかな?」

驚きと期待が入り混じったその声に、ドキリと胸が一瞬跳ねた。
だが、わたしは小さく首を横に振ることしかできなかった。

狼狽えて欲望が抜けた空虚な心には、情けなさが満ちあふれる。
思わず、わたしはわずかに唇を噛むんだ。

まだ答えは見つからない――その事実だけが、わたしを彼女の前に釘づけにしていた。



伸びる赤はどこまでか?

「ええっ!? まだ分からないの? もう、大昔の問題だから答えを言うよ? 違いは……っ!」

得意げに口を開いたお師匠様に、思わず叫んだ。

「ストップ! ちょっと待ってください! もう少し、もう少しだけ時間をください」

必死の声に、彼女はこちらをチラリと見て肩をすくめたが、お互いに目と目で見つめ合うと、わたしの気持ちを汲むように深く頷いた。

「よし、わかった。あと十五分待つよ。それまでに分からなかったら、ボクが直々に教えてあげよう♪」

与えられた猶予は15分。
水槽の列で作られた細長い島を再び周回する。カージナルテトラとネオンテトラは、この島の6時と12時にあり、反対側に位置している。おそらく、見誤って購入する客や、安いほうのカージナルテトラぐらいにしか思わぬ客もいるから、離してあるのだろう。

だが、未だにその違いが分からない。
ロゼッタの口ぶりからして、簡単な間違い探しのはずなのだが……。
何度となくグルグルと周回し、違いを確かめるのだが、一向に分かる気配がしてこない。時間ばかりが進み、汗が額を伝い落ち、焦燥感が募る。

――ポン♪

そんなわたしを気遣ってか、お師匠様は肩をたたいてから軽やかに口を開いた。

ヒントは色だよ!

その言葉に目を凝らす。
カージナルテトラを何度見ても、いや、見れば見るほど、煌びやかな青と腹部の燃えるような赤。ため息をつくような鮮やかな体色だ。

――だが、分からない。

残り五分。諦めの気持ちで、今度はネオンテトラの水槽をのぞいてみた。
小さな体がこちらを窺うように泳ぎ、「どうしたんですか?」と問いかけているように見えた。

「こっちだって聞きたいよ」

小さく呟き、目を凝らすと、バクリバクリと規則正しく銀のエラが動いている。

――銀?

あれ? ここは赤じゃなかったか?
カージナルテトラの水槽に駆け寄り、思わず声を漏らした。

「あぁ……そうだったんですね」

タイミングを見計らったように、ロゼッタが笑った。

「どうやら分かったみたいだね?」
「はい!」

「違いは何かな?」
赤色です。尾びれからエラまで伸びているのがカージナルテトラ。赤が途中で途切れて銀色になるのがネオンテトラです!

はっきりと言い切ると、お師匠様はパチパチパチと短く拍手をしつつ、苦笑いをした。

「んははっ、大正解! やっと気づけたね!?」
「でも……正直、大差ないですよね?」

「んふふ、そうかもね♪ でも、その少しの違いで、値段は大きく変わることだってあるんだよ? 特にプレコとかね?」

そう断言すると、満面の笑みでわたしの首根っこを掴んでグラグラと揺らしてくるお師匠様に、軽い悲鳴を上げつつも思わず笑っていた。



初めても水草水槽

――チャッポンチャッポン♪

中で跳ねる水音。
紙袋を開けると新聞紙、さらにそれを剥がすとビニール袋が姿を現す。そこには愛しいカージナルテトラたちが揺れていた。

「プレコに比べたら簡単さ! でも、しばらくは水質をチェックしてあげてね?」

お師匠様の言葉に頷き、その場で五匹を迎えることに決めた。

「一、二、三、四、五」

口ずさみながら数え、袋を切ってバケツへ移す。エアチューブをキスゴムで20Lの水槽に固定し、サイフォンで水を落とす。三又分岐で流量を調整し、水合わせが終わるのを待った。

わたしの、新しい水槽が始まった。
アヌビアス・コーヒーフォリアの緑に、カージナルテトラの赤と青が映える。

標準的な熱帯魚と水草の水槽は、何度見ても胸を打つほど美しかった。
そして、その時は気づいていなかったけれど――これが、わたしにとって水草水槽との出会いだった。



まとめ

熱帯魚を始めたばかりの方がまず目にすることの多いのが、ネオンテトラとカージナルテトラ。この二つの小さな魚は、見た目がとても似ていて、一見するとどちらも青と赤のきれいなラインを持つ、小さな光の粒のような存在です。でも、よく観察するとちゃんと違いがあるんです。

まず、赤いラインの位置がポイントです。ネオンテトラは背びれの手前で赤色が途切れ、そこから先は銀色に変わります。一方でカージナルテトラは背びれ先、エラまで赤色が続くのが特徴です。このちょっとした違いが、見分ける最大のポイントになります。青色のラインはどちらも背中側に入っていて美しい光沢を放ちますが、赤色のラインの長さをチェックすれば、迷わず識別できます。

サイズや体形はほぼ同じで、どちらも1~3センチ程度。水質や飼育環境の要求も似ているので、混泳させても問題ありません。ただし、値段には若干の差があります。カージナルテトラの方がやや高価で、ネオンテトラより2~3倍することもあります。とはいえ、一匹数百円程度ですので、数匹なら高額になることはなく、気に入った子をお迎えするのが楽しみ方の一つでしょう。

初心者の方が水槽を彩るために購入するなら、どちらでも十分楽しめます。でも、「せっかくだから違いを見分けてみたい!」という稀有な遊び心をお持ちなら、双方を購入するのもおすすめです。水槽の前で赤ラインの途切れ方をじっくり観察するだけでも、小さな魚たちの世界がぐっと身近に感じられるはずです。



0 件のコメント:

コメントを投稿