2025年9月15日月曜日

発酵式CO2の寒天培地を作る!その注意点と一部始終を分かりやすく

発酵式CO2の作成時の注意点をストーリーで

水草水槽を始めると、「CO2添加って難しそう」と思う方も多いはず。でも、発酵式CO2なら家庭で手軽に作れて、材料も身近なものばかり。電気や高価な器具を使わず、酵母と砂糖の力で二酸化炭素を発生させ、水草の成長をサポートできます。
今回はその培地の作り方について、ストーリーで詳しく紹介したいと思います。


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

サークル棟がある大学の裏口から出て、すっかり冬の姿になった桜並木を抜け、Y字路のある少しばかりの坂道を上り、大通りを通り過ぎ、さらに数分歩いたところで、久しぶりにロゼッタの家へとたどり着いた。

今日ここにやってきた理由は、水槽のお師匠様である彼女から、直々に発酵式CO2添加の寒天培地の作り方を教わるためである。

アヌビアス・コーヒーフォリアは新しい水槽で順調だ。
黒ひげの勢いも衰えているし、白みがかった茶色の新芽も出始めている。
もちろん、ネオンテトラたちも全員健康だ。

その中で、ひとつ困ったこと、いや、モヤモヤしていることがある。
それはCO2タブレットだ。

水草は好ましい状況になっている。おそらく効果があるのだろう。
だがパンチが足らず、いまひとつ効いているのか効いていないのか、どうにも釈然としない。

電磁弁のようにON/OFFがあるわけでもなく、エアストーンから気泡が出ることもない。
砕けた白い残骸が水槽に残るのみだ。

そんなことはわかっていたことなのだが……やはり懸念した通りの結果となってしまったのだ。


2025年9月13日土曜日

アヌビアスについた憎い憎い黒ひげ苔を撃退したい!なら食酢でしょ?

黒ひげ苔をお酢で駆除する

水槽をのぞき込んだとき、緑の葉を覆い尽くすように黒々としたフサフサの苔が広がっていたら、がっかりしてしまいますよね。それが「黒ひげ苔」です。

根元は硬くて取りづらく、気付けば水槽全体の景観を乱すやっかい者。そんな黒ひげ苔に、実は身近な「食酢」が効果を発揮するって知っていましたか?
今回はストーリーでやさしく紹介していきます。


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

薄曇りの朝、部屋の奥に置かれた水槽は仄暗く、さながら早朝の清流のようであった。
中央にたたずむアヌビアスの葉は、黒いフサフサにびっしりと覆われている。
時折ネオンテトラが葉に触れると、ぐらぐらと悶絶するように揺れ、窮地を訴えて助けを求めているようだった。


2025年9月11日木曜日

カージナルテトラ?ネオンテトラ?どう見分ける?(初心者さん向け)

カージナルテトラとネオンテトラは違いは?

熱帯魚を始めたばかりの方が最初に悩むのが、ネオンテトラとカージナルテトラの見分け方。青と赤のラインが美しく似ている二種類ですが、ほんの少しの違いで見分けられるんです。
赤色のラインの入り方や長さを押さえるだけで、どちらを選ぶか迷わず決められます。これからその違いと選び方のポイントをやさしくストーリーので紹介していきます。


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

新春を迎えた街並みに、吐く息が白く空に溶け込んでいく。潮の香りを含んだ風が地下広場に吹き抜けると、人々の群れは一斉に肩をすくめ、大きな時計の下の入口へと吸い込まれていった。

デパートの1階、バスターミナルの片隅とガラス戸一枚で隔てられるそここそが集合場所だ。白地に赤いラインを数本あしらい、地面に接する部分には淡い青を配したバス。排気音とともにプラグドアが開くと、お揃いのボストンバッグを持ったカップルや、スーツケースをだらだらと引きずるサラリーマンといった乗客たちがぞろぞろと出て来る。
その群衆の中に、やけに手荷物の少ない女性がひとり。

ロゼッタだ。

遠路はるばる実家から戻ってきたばかりだというのに、手荷物は小さなバックパックをひとつだけ。肩にかけたそれは頼りなげに揺れ、長旅の趣を微塵も感じさせない。

彼女の生家は、この湾の向こうに広がる街にあり、大規模な製鉄所で知られている。大学からは特急で三時間もかかる道のりのはずだが……。

長大な海底トンネルが開通してからは、わずか一時間に短縮された。

「湾の向こうの●●市ですよね? 随分と近くなったんですね」

感心してそう口にすると、彼女は軽やかに肩をすくめて首を振った。

「もう4、5年も前の話だよ? そんな時代錯誤なこと言ってたら、置いていかれるよ?」

どうやら、わたしは窘められてしまったようだ。


2025年9月9日火曜日

水槽台を買うならスチール製?それとも木製?それぞれ利点と欠点

水槽台は意外と悩みやすいお買い物

水槽台って、意外とどれを選ぶか迷いますよね。
スチール製は軽くて安価、木製は見た目や静けさが魅力的。
どちらも長所と短所があり、知っておくと後悔しません。

今回は、その選び方のヒントをストーリーでわかりやすくお届けします。


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三月の放課後。
春が近づいているはずなのに、街の空気はまだひんやりとしている。
大学の講義を終えた足で、わたしは今日もお師匠様と一緒に、いつもの熱帯魚店へと向かう。

別れの季節の飲み屋街には、宴を控えた人々のざわめきが早くも広がり、客寄せの電子音が奏でるエレクトリカルパレードが一人寂しく流れている。
通りは笑い声や乾いた靴音が重なり、不思議な高揚感に包まれていた。

わたしたちは、早歩きで飲み屋街を抜け、高架橋のさらに先にある大通りへと向かう。
やがて、街路樹が立ち並ぶ左側にガラスの壁が見えてきた。張り付けられた日除け代わりのポスターからは、水の光がこぼれている。
ホームグラウンドの変わらぬ光景に安堵しつつ、ドアを引いた。


2025年9月7日日曜日

キスゴムが劣化した?そうなる前のローテーション、復活の裏技の現実

キスゴムは全ての重要パーツの礎だ

水槽を見ていると、小さなパーツひとつで魚たちの安全や水槽の安定が左右されることに気づきます。
中でも「キスゴム」は、目立たないけれど実は大切な存在。しっかり固定してくれるおかげで、プレコや他の魚が元気に泳いでもフィルターは安全に動き続けられます。

今日は、そのキスゴムの寿命やちょっとしたお手入れ法をストーリーでわかりやすくご紹介します。


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

ついこのあいだまで冬将軍が居座っていたはずなのに、気が付けばキャンパス奥にある農場の梅がほころび始めている。朝にはさえずりがサラリーマンでごった返すホームを癒し、電車で通り過ぎる小川には人々を見送るように一羽のシラサギが立っていた。
風はまだ冷たいが、日差しにほんのりと春の匂いが混ざっているのがわかる。

一歩ずつ、季節は春へと歩み始めているようだ。


2025年9月5日金曜日

ディフューザーでエアポンプの騒音知らず?知っておきたい利点・欠点

ディフューザーという魔法が解けた日

アクアリウムを楽しむうえで、「ディフューザー」というアイテムをご存じですか?
名前だけ聞くとちょっと難しそうに感じるかもしれませんが、実はとってもシンプルなエアレーション器具なんです。
今回は、ディフューザーについて、ストーリーでやさしく解説していきたいと思います。


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

窓の外は、粉雪が舞うように静かに降り続けていた。
街全体を薄く覆う透き通る白が、月に照らされた夜を明るく彩っている。

大寒波。

雪など滅多に降らぬ地域だが、いつもなら車が絶えない大通りも人影がなく、遠くから聞こえるのは雪をかき分け帰宅を急ぐ足音だけとなる。深夜になるとついに鉄道も止まり、ただ、冷え切った空気が支配する静寂の世界となった。

だが、耳を澄ますと――

――ブーン……。

部屋の片隅でエアポンプの動く音が、やけに大きく感じられる。
普段なら生活の一部でしかない低い機械音が、雪に包まれた夜の静けさに包まれて、逆に鮮明に浮かび上がってくる。
なんとも耳にまとわりつくこの音で、その日はなかなか寝付くことができなかった。



ディフューザーならエアポンプの騒音から解放される?


本日休講

翌朝、無事に電車も動いたので不慣れな雪道に悪戦苦闘しつつ大学に向かうと、キャンパスの掲示板に人だかりができている。

《本日、全講義休講》

拍子抜けするほど簡潔な文字。
仕方ないのでメールで学科の友人に知らようと手に取ると、とあるある人物からその旨を告げる連絡が着ていた。その人は、わたしの水槽のお師匠様ことロゼッタだ。

どうやら、大学周辺に一人暮らしをしていた学友たちは、早々に掲示板から休講を事前に察知していたらしい。無駄になった通学時間、何度肩をすくめても、やるせなさは晴れる気がしない。

であるなら、丸々空いた時間をどうにか過ごして、元を取ろうと考えるのが人というもの。

「そうだ、せっかくなら……!」



エアチューブの先はどこへ?

わたしたちは、まだ日も明るい昼間から、アクアショップ巡りをすることになった。

鉄道を乗り継ぎ、いつもの港町の数駅の数個先で降りる。
駅を出ると、そこはいきなり県内有数の要注意地帯。ケータイで地図と方位を何度も確認しながら、ほんの数百メートルの道のりを慎重に進む。
ここは、古くから荒くれ者の労働者が集まる街が広がり、酒と暴力が支配する一角となっている。幸い、水路や高速道路、さらには二車線で、ビルとマンション群からは隔てられているが、それでもズシリと重い雰囲気を漂わせているのだ。

そんな、人の心が荒んでゆく場所には、心の隙間を埋めるものが必ずある。
アクアショップもその一つだ。

慎重に歩を進めると、やがて白い小さなビルが見え、胸の奥でようやく緊張が解けていく。
お師匠様も、ドアをくぐると広がった既視感のある光景に、背を伸ばして深呼吸をした。


しばらくは二人して、リラックスしながらゆっくりと店内を物色する。棚から棚へ、水槽から水槽へ。すると突然、お師匠様が明るい声を上げた。

「あぁ! これこれ♪ これキミのプレコ水槽にピッタリだと思うんだよね!」

声には弾むような喜びが混じっていて、嬉しそうに水槽のガラス面に向かって空を切るようにつんつんと指し示した。

――シャラシャラシャラ~♪

耳をくすぐる細やかな水音。
視線の先の日淡水槽には、排水パイプの先に大砲のようなパーツが取り付けられており、そこから勢いよくエアが噴き出している。
よく見ると、胴体部分にエアチューブがつながっているが――。

顔を近づけ、パーツの形をじっと観察しながら尋ねる。

「これはいったい何ですか?」



すると、お師匠様は得意げに顎を少し上げ、
小さな笑みを浮かべながら答えた。

ディフューザーだよ!

――名前は分かった。
だが、依然釈然としないことがある。

「あの、外部フィルターの排水パイプについているやつですよね?」
「ん? そうだよ? その先端についているのがディフューザーさ!」

「うーん……、だとするとこのエアはどこから? あぁ! このチューブの先がエアポンプがつながっているんですよね?」

首を傾げた後早合点をすると、お師匠様は身をかがめ、指先である一点を示す。

「そうじゃない、ほら! ここから見てほしいんだ?」

そのまま、ロゼッタに言われた通りに場所を入れ替わり、再度ディフューザーから伸びるチューブの行方を追うと……。

エアチューブがどこにも繋がって……ない!?

視線は途中で止まり、思わず声が裏返った。

「空気を送ってないのに、どうして!?」



とにもかくにも水は空気を引く

「キミったら、目をぱちくりしちゃって、そんなに不思議だった?」

どうやら、開いた口が塞がらず、奇妙な仕組みを我を忘れて見入ってしまったようだ。
よほど可笑しかったのか、ロゼッタは目を細めて笑った。

「そりゃあだって、どこにもエアポンプがついていないんですよ? どうしてエアが出るんですか? ポンプで押していないのなら……あぁ、そうです。エア引いているんですね?」

自問自答しつつ1つの結論に至ると、彼女は大きく首を縦に振った。

「そう! それなんだ!」

そうして、身振り手振りを交えて説明を始めた。

「ほら、この内部にはね、キュッとすぼまっている部分があるんだ。そこに水を通すとどうなると思う?」

彼女は空中で指先を丸めて円にすると、指を折り曲げてクっと小さくして見せた。
それにつられるように、わたしも唇をすぼめて息を吹き、自身の直感を試してみる。おそらく、それだけでこんなにもたくさんのエアが出ると言いたいのだろうが……。

「うーん、水流は強くなると思うのですが……。果たして、それだけで空気を引けるかとなると……、わたしは疑問です」

途中でお師匠様が首を傾げたので一気に自信を失ったが、いたずらっぽく笑ってからウィンクをしてみせた。どうやら正解のようだ。

「んふふ♪ そうだよね? とにかく、空気や水などの流体が早く流れる、圧力が下がって周りのものを引っ張る性質があるんだ

「……なんか、スラっと物理学的なことを言いましたよね? ちょっと頭がクラクラします」

「ごめん、そうだよね? でも、これはね、『ベルヌーイの定理』によって起きることなんだ」

お師匠様は少し声を落とし、解説口調になる。

「まあ、ちょっと難しいよね。でも、飛行機の羽もこの法則で気圧を下げて、あの鉄の塊を空中へと引っ張っているって説もあるくらいなんだ! もちろん羽つながりで、レーシングカーにも応用されているし、実は『ディフューザー』という同じ名前のパーツもあるんだ!」

――そんなことにも?
なんだか信じられなかったが、ふと水の流れで空気を引っ張るという仕組みを聞いた時、苦しんでいたあの学生実験の器具を思い出した。

「えっと……うん、不思議としかいいようがないです。でも、なんとなく化学実験で使うアスピレーターとそっくりなような気がします」

そう答えると、お師匠様は横髪を手櫛で梳いて、にんまりとした笑顔となる。

「あぁ! それそれ! ブフナー漏斗と吸引ろ過だね! 空気を吸う力で素早く液体と固体の分離を……」

と、そこまで話したうえで突然話すのを止めてしまった。

「いや、この話は止めておこう。どの単語も水槽用語と被っていて、あらぬ誤解が生まれそうだ」
「そうかもしれません。吸引ろ過だのとアクアショップで話したら、みんな初めて聞くそれっぽい単語にびっくりするかもしれませんからね」

・水草水槽に使うと、黒ひげ苔対策に追われることになる

「あはは! その通りだね、まぁ、それでだ、この利点は何だと思う?」

エアチューブの先はどこにも繋がっていない。
となれば、答えはただ1つ。

「それは……うるさいエアポンプが不要なことですよね?」
「正解! これを使えばエアポンプなしでエアレーションが可能なんだ!」

お師匠様は力強く答えを言うと、急に肩をすくめてわたしの目を見ながらゆっくりと首を振った。

「でもね、デメリットもあるんだ~?」
「水流が強すぎるとか……ですか??」

「おしいね、半分正解! 水流と言ったら、どんな厄介者が来るかな?」
「あ! 黒ひげ苔ですね?

「その通り! ほら、この日淡水槽のここを見てごらん?」

指先を水槽に置かれた立方体のシェルターに向けると、黒ひげ苔が所狭しと生えて、フサフサと水流でなびいていた。

「もちろん、キミの言った通り、水流が強すぎるから、それに弱い魚はもちろん、水草にも使いづらい道具なのさ
「なるほど……もっと勢いを弱められれば、エアポンプいらずのアクアリウムが広がると思うんだけどなぁ……」

「そうなるんだけどね。空気を引っ張るのに、強い水流が必要だから、きっと至難の業なんだよね~」

お師匠様はぼやきつつも、さらなる注意点を挙げていく。
強い水流を作れるポンプが必要なこと、それ専用のディフューザーでなければならないこと。そんなわたしは、話を聞きながらも、すっかり目の前の機械に魅了されていた。

値段も手頃で、不思議な仕組みに心を奪われるし、なによりこれであのうるさいエアポンプとおさらばできる! 
わたしは迷わず購入を決意し、家に持ち帰ることにしたのだった。



ディフューザーとの生活のリアル

そうして、導入してからの数週間、確かに部屋は静かになった。

――シャラシャラシャラ~♪

可憐な水音が、日常のBGMとして心地よく響く。
だが、ある夜――。

シュー……♪

静寂の中に紛れ込んでいた、異音が耳につくようになる。
吸気音だ。

最初は気にならなかったその音が、だんだんと耳に残るようになっていく。
人間とは不思議なもので、一度静けさを知ってしまうと、小さな音でも我慢できなくなる。
いまや、壁の反対にある部屋にすら漏れていない小さな音に、睡眠の邪魔をされている。

あぁ、あの大きなブーン音でも眠れた夜が懐かしい。

音に慣れることの大切さを、身をもって知った気がした。
この「シュー……♪」も、きっとそのうち当たり前になるだろう。
そう信じて、わたしは研ぎ澄まされた耳を誤魔化すように、頭まで布団に包まり目を瞑るしかできないのであった。



まとめ

ディフューザーは、水槽内に空気を細かい泡として送り込む装置のことです。
ベルヌーイの定理を利用したディフューザーは、水が速く流れる部分で圧力が下がる仕組みを活かしています。
エアポンプがなくても水の流れる力のみで空気を自然に引き込めるため、比較的静かな環境を実現できます。
また、強い水流を生み出すため、水槽内に対流を生み出して、満遍なく溶存酸素量を上昇させる効果があります。

エアと対流、そして静音性。
まさしく、願ったりかなったりなエアレーション器具だと言えるでしょう。

とは言え、ディフューザーは万能ではありません。

まず、水流が強くなるので、水草や繊細な魚に負担がかかるほか、黒ヒゲ苔が増えすぎて手に負えなくなる場合もあります。こういった場合は、微調整の利くエアポンプ式に軍配があがります。

また、ディフューザーは専用のものを使うことが重要です。
パイプ径が同じであっても、各外部フィルターや水中ポンプが生み出す水流の強さに最適化されてあるため、うまくエアを巻き込まないことがあるからです。

そして最後に気を付けてほしいのが、ディフューザーが必ずしも静かなわけではないということです。大きな外部フィルターになると、強い水流で勢よくエアチューブから空気を吸い込むため、常に「シューッ」という吸気音が聞こえたり、水流が極端に強い場合には「ジョボジョボ」とした水の音が生じることもあります。

したがって、目的や外部フィルターのサイズ、設置場所や飼育している魚の種類に応じて、エアポンプかディフューザーか適切に選ぶことが望ましいでしょう。



2025年9月3日水曜日

ヒーターはプレコの大好物?火傷はカバーで守る!しかし危険な事も?

ヒーターカバーは誰のため?

水槽のヒーターバーは魚や水草をヒータの熱から守る道具です。
しかし、使い方を間違えると、魚が火傷するリスクもあります。

今回はそんなヒーターカバーの基本と気をつけたい点を、ストーリーでわかりやすく紹介します。


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これは2000年代とフィクションが織りなす、不思議な世界の物語。

冬休み最終日。
窓の外は青く透き通った空が広がり、午後の弱い光がレースのカーテンに当たる。ほんのりと明るい部屋の奥では、水槽の水音が静かに響き、ヒーターのランプは10分単位のゆっくりとしたリズムで点滅を繰り返している。

お師匠様は、今日はいない。海を渡った向こう側……と言っても、湾を挟んだ半島の海沿いに帰省している。少し寂しさはあるけれど、こういう時こそ普段は手の届かない部分の掃除をじっくりしたいものだ。
心に決めると、目についたのは水槽内に灯る、赤色の通電ランプ。

「今日はヒーターの大掃除をするとしよう」

小さく呟くと、早速掃除用具を取り出した。



冬休み最終日のヒーター事件


また、やってしまいました

水換え作業はとんとん拍子で進み、気が付けばあとは水を注ぐのみ。
時刻を見計らいヒーターを手に取る。掃除スタートすると同時に、あらかじめヒーターのコードを抜いておいたのだ。優に20分以上経過しており、試しにと水槽内で手を近づけても、熱気はすでに消え去っている。

カバーを外す前に、深呼吸を一つすると、火傷した記憶が薄まっていく。
覚悟も決めてプラスチックの爪を軽く押すと、カチリと音を立ててカバーはあっけなく外れた。
白いセラミックの本体を手に取ると、表面はひんやりと冷たく、すっとした重みを感じさせる。いつぞや火傷したときの熱さとはまるで別物だ。

恐る恐る内部を覗き込むと、予想よりもずっと綺麗で拍子抜けする。
うっすらと着いた茶ゴケを歯ブラシで落とすと、すぐさま汚れの激しいカバーの掃除に取り掛かり、やがて、コードの汚れをスポンジで拭き取ったところで掃除は終了となった。

この水槽は昔ながらのグレーの金属製事務デスクの上にある。
親が骨董市で拾って来たものを、PCデスク用に押し付けられたのだ。
だが、人が乗ってもみしりとも言わぬほどの頑丈さで、いつの間にか水槽台としての役割を与えられている。

まさに水槽にうってつけの事務用品なのだが、問題点があるとすれば、その高さだ。
天板はまるで正座で使うような高さしかなく、水を注ぐだけならいいが、掃除のときは中腰やしゃがみ姿勢が続くのだ。
今日も、足がつりそうになりながら掃除を終え、綺麗になったカバーを足元に置くと、わたしは転がり込むように腰を下ろした。

「ふぅ!!」

と深呼吸をすると、本来なら脚も腰も楽になるのだが、どうにもお尻に鋭い痛みが走る。
そして、膝の力を抜くと……

――バギッ。

乾いた音が響き、何かが折れた感触。

「ぬあ!」

悲鳴を上げて立ち上がり、座った場所を見下ろすと、そこには無残にも真っ二つに割れたヒーターカバー。

どうしたものか……

20年前には、このモデルのヒーターはありませんでした。
画像はあくまでもイメージです。


ヒーターが大好物の魚

翌日。いつものサークル棟2階のバルコニー。
プラスチック製の白いベンチは冷えきっていて、座ると冬の空気がじんわりと体に染み込んでくる。
ここが、わたしとお師匠様ことロゼッタの定位置だ。

今日も二人してアクア談義を始めるのだが、そのお相手は珍しく遅刻をしてきた。

つば付き帽子の奥に光るブラウンの縁の眼鏡、古びたダッフルコートの下からはライトグリーンの作業着をのぞかせている。
ひゅるりとした北風に乗って漂ってくるのは、ヨードチンキのような焚火の煙の香り。
それが焚火なのか、それとも薪ストーブなのか、初めのころは講堂と実験室の往復しかないわたしには疑問だった。
しかし、キャンパス内を見渡せば、同じような恰好をした人の群れが煙で燻された香りを漂わせており、今や当然のことように思えてくるのだから、なんとも不思議なものだ。

そんなことすら気にする素振りもなく、年頃の娘は目を輝かせて口を開いた。

「それで、今ヒーターにはカバーがついていない状態なんだね?」
「そうなんです……不注意で壊してしまって」

わたしは肩を落としながらうなづいた。
しかし、すかさず、ヒーター自体は問題なく、真冬でも水温26度を保っていると伝えたかったのだが――

それはプレコにとって非常に良くないね! 今からでもショップに行こう!
「え!? どうしてですか!?」

食い気味に話を遮られ狼狽していると、彼女はメガネのツルを指で押し上げながら、髪を手櫛で整えた。

「アクアくん? それ本気で言ってる?」

やんわりとした響きの中にある鋭さ。
どうやら、今の状況に大きな問題があるらしい。

「まぁ、キミのヒーターは最初からカバーがついていたから、知らないのかもしれないけどさ……」

言葉に間を置き、口元に薄い笑みを浮かべると、そこにはいつものお師匠様の顔。

「実は、プレコはヒーターの棒が大好物なんだ!
「はぁっ!?」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまうと、放課後の人のまばらなキャンパスに声が響き渡った。

「だって、コケが付きやすいし、スラリと伸びているから貼りつきやすい『棒』でしょ?プレコが嫌いなわけがないじゃない?」

――たしかにそう……だ???

いやいや、待ってほしい。ヒーターは高温のはずだ。
忘れようと思っても忘れられない、焦げ付くような熱さと内側からゾクゾクした痛み。
いくらプレコとて、そんな場所に張り付くだなんて……理解に苦しみ、反論する。

「でもヒーターって、そもそも熱いじゃないですか?」

お師匠様は一瞬きょとんとした顔をしたあと、何かに納得したように頷いた。

「もしかしてキミ、ヒーターが常に高温だと勘違いしているんじゃないかい?



トラップの仕組み

「違うんですか!?」
「誤解してるようだけど、ヒーターって常時高温じゃないんだよ。サーモスタットが内蔵されてるでしょ?」

わたしが、驚きと戸惑い混じりの声を上げると、お師匠様は微笑みを浮かべながらも、真剣な眼差しで教え諭すように答えた。

だが、すぐに合点がいった。

「もしかして、制御で電気のON・OFFを繰り返しているから、冷えている時間もある……ってことですか?」
「その通り! つまりだ……」

彼女は胸を張りながら、まるで秘密を打ち明けるかのように言う。

冷えているときに張り付いてコケを食る。もし、その最中に通電が始まったら?
「……なるほど、たしかにそれだと、火傷するかもしれませんね」

彼女は帽子を脱ぎ、固まった髪を指先でほぐすと、バルコニーから黄昏に染まる町並みに目をやった。

「まぁ、ほとんどは熱くなり始めたら逃げるけどね。でも、たまに……」

言葉を濁しつつも、どこか諦めにも似た感情が混じるのだが、どこか真実味が込められているような気がした。

「たまにって……、もしかして、気づかないで舐め続けるのですか?」
「いや、そうじゃないんだ。時折ヒーターをテリトリーにする子がいてね。そのまま寝てしまうことがあるんだ

まるで見て来たかのような切なげな顔して、闇夜に沈む町並みから目を背けると、彼女の背中が小刻みに震えているような気がした。

「……危険すぎますね」

しかし、わたしが相槌を打つと、覚悟を決めたように帽子を深く被り、言葉を探しながらも話を続けた。まるで、その時の状況を吐露するように。

「火傷すると、腹部に白い跡が残るんだ。……もちろん、水槽が清潔なら自然治癒することも多よ。でも、悪化すれば……水カビ病になる」

お師匠様の言葉に覚悟と重みが込められていたが、わたしも動揺が隠せず声が震える。

「……そうなったら魚病薬で治療ですよね? フィルターもリセット……かぁ」

わたしがそう言い切ると、彼女はこちらを向いた。
あたりはすっかり止み包まれ、帽子の奥底にある顔がどのようになっている分からなかったが、決意のある太い声で返事が返ってくる。

「そうなんだよね。ナマズだからね。薬の使い方もちょっと特殊でね。まだキミには教えられない。だからこそ“転ばぬ先の杖”ではないけどヒーターカバーを甘く見ないでほしいんだ!」

口元は力強くにんまりと笑っているのだが、深くかぶった帽子の奥がハロゲン灯に照らされキラリと光っていた。

20年前、多くのモデルではヒーターカバーは別売りでした。
しかし、現在はどうでしょうか?アクアリウムという趣味は、確実に一歩ずつ進んでいます。


ヒーターカバーが大好きな魚たち

お師匠様は、顔を拭きにいくと部室へと戻っていった。
冬のキャンパスはまだ六時だというのに漆黒に包まれ、オレンジの街灯が赤いレンガが敷き詰められた地面を照らしている。

「おまたせ♪」

ふいに声を掛けられたので振り返ると、いつものロングスカートにチャコールグレーのコートを着た彼女が部室から戻ってきた。

「もちろん、ヒーターカバーを使わないほうがいいときもあるよ?」

――え? 今までの話と矛盾してませんか??

突然始まるアクア談義。
だが、お師匠様は待ってくれない。
それが、オタクの流儀なのだ。

白いタートルネックのセーターの先にある小さな顔は、もとの笑顔に戻っていた。

「でも火傷の危険性があるからって、さっき……」

まぁまぁ、最後まで聞きなさいと言わんばかりに、メガネをクイっと上げ顎に手を当てた。

「それがね、ごくまれに、カバーをシェルターにする生体がいるんだ
「えぇっ!? シェルター? ヒーターカバーとヒーターの隙間って、すごく狭いですよね?」

「そうなんだ。稚魚稚エビ、さらにクーリーローチとかね、カバーの中の狭いところが大好きなのさ。そんなところに身をひそめて、もしヒーターが通電でもしたら……」

ロゼッタは肩をすくめて、両方の手のひらを胸の高さで掲げてみせる。
わたしも相槌を打つように首を振るしかない。

「なんというか……一筋縄じゃいかないんですね」
「そうなんだよねぇ。もちろん、100均素材でカバーをさらに覆ったり、みんな工夫してるよ? でも、まぁ、あえて言うなら不確実さが――」
「水槽の奥深さ、ですね?」

「お! わかってきたじゃないか!」

そして彼女は、わたしをじっと見据えて言った。

「だからキミも、自分の水槽に合った最善策を今すぐ考えてほしい」

じっとりとわたしを見つめら目でにやりと笑いうと、どこか促すような雰囲気がある。

「ね?」

ここに至り、それが明らかな催促であると気が付き、わたしは慌てて返事をする。

「あ! はい、行きましょう!」

閉店にはまだ間に合う。
わたしたちは足早にキャンパスを抜けショップへ向かうのだった。



まとめ

水槽のヒーターは、熱帯魚や水草を健康に育てるための大切なアイテムです。
そのヒーターを守り、魚たちの安全にも役立つのが「ヒーターカバー」です。シンプルですが重要な役割を持っています。

ヒーターカバーの最大の目的は、魚が高温のヒーターに直接触れてやけどするのを防ぐことです。特に底ものの魚はヒーター周辺をよく動くため、カバーがあると安心感が増します。
たしかに、掃除やメンテナンス時にカバーが邪魔に感じることもありますが、使いやすさよりも安全面を優先するべきでしょう。

しかし、そんな、ヒーターカバーにも注意点があります。
まず、火傷です。本来は火傷を防ぐ道具ですが、対象を間違えるとトラップとなります。
とりわけ注意してほしいのは、稚魚や稚エビ、さらにはナマズの仲間などで小さな隙間を好む魚種です。こうした生体は、カバーの隙間に入り込んでしまい、飼育者が気づかぬうちに火傷を負うことが報告されています。
このような生体を飼育する際は、火傷のリスクを考慮して、カバーを外したり、カバーのカバーを自作する選ぶ必要があります。

また、気を付けてほしいのは、ヒーターカバーは必ずヒーターのメーカーが指定する純正品や推奨品を使用することです。適合しないカバーや非対応の素材を使うと、熱がこもり予期せぬトラブルの原因となるので、絶対に避けましょう。

まとめると、ヒーターカバーは魚のやけど防止やヒーター保護に役立つ、絶対的に必須ななアイテムですが、内部に魚が入り込むリスクがあるため、時と場合によっては柔軟な使い方を要します。安全のためにメーカー指定の製品を使い、自分の水槽環境に合った設置を心がけましょう。