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2025年11月13日木曜日

コスパとは?ミドボンが欲しくて真剣に検討すると見えてくること

コスパのパは何を指すのか?

水槽の中で揺れる水草を見て、「もっと元気に育てられたら…」と思ったことはありませんか?そんなときに耳にするのが「ミドボン」です。でも、その大きさや扱い方に不安を感じる方も多いでしょう。

今回は、一度は検討し、現実に直面して諦める一部始終を、ストーリー形式でご紹介したいと思います。


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

夏の気配が水槽の水面にもじわりと近づいていた。
照明の熱がガラス蓋をチリチリと焼き付けると、わたしはあの出来事を思い出して、小さくため息をつく。

CO₂ボンベの交換は、これで2回目だ。初回は不用意に電磁弁を触ってしまい、驚くほど熱く不本意ながら「あっち」と情けない声を上げてしまったのだ。あの痛みを思い出し、わたしは慎重に手を動かしていく。

水槽内では、細い気泡がキラキラと揺れながら昇る。
ガラスの中の世界は一足先に常夏だ。いや、常に真夏の世界なのかもしれない。しかし、すっかり伸び切った淡い緑のマツモが静かに揺れると、人工的な水の中ですら、季節の移り変わりがあるように知らせているような気がする。

シュ♪

レギュレーターのバルブが開く音を聴いたあと、手元でボンベを外しながらカレンダーを見る。まだ2か月しかたっていない。こんなにも早く交換することになるなんて、胸の奥でじりじりした焦りを覚える。

だが、この感覚は本当だろうか。
実は、悠々2か月も使えたということはないだろうか。

考えるほどに釈然とせず、お師匠に相談することにした。
わたしに手取り足取り教えてくれる水槽の先生とも言うべき存在だ。



ミドボンの夢と現実


疑惑の小型ボンベ

翌日。わたしはいつものベンチに座り込んで空を見上げ、昨日交換したボンベのことをぼんやりと思い出していた。そこへ授業終わりのロゼッタが、いつもの落ち着いた声で話しかけてくる。

彼女は隣に座るなり、声を発した。

1本600円の小型ボンベ、どうだい? やっぱり高いと思う?

急に問われ、思わず視線を泳がせた。

「うーん、正直よくわかりません。ただ、2か月で600円。よく検討してみないと……」

少し曖昧に答えると、お師匠様は小さく笑った。

「まぁ、そうだろうね。でも、実はね、CO₂添加の中では一番維持コストが高い方法なんだ

「え?そうなんですか?」

驚いて身を乗り出すと、彼女は肩をすくめて話を続けた。

「一番安いのは発酵式。ただね、もう経験したと思うけど、添加量が不安定だし、タイマーだって使えない。掃除だって面倒」

確かにそれは地味に嫌だ。わたしは顔をしかめる。

「それが嫌で小型ボンベ式にしたんですが……。2か月で600円。これが妥当なのか、本当に良かったのか、どうにもわたしには推し量れないのです」

「なるほどね。なら、これはどうだい?」

・そろばんを弾けば安いのが分かるが…… 


ミドボンの誘惑

彼女は、突然ケータイの画像を見せてきた。
その写真は、なにやら緑のボンベを写しているようだが……。

「実はまだキミには紹介していないけど、大型ボンベ式というものがある。大きな緑色のボンベを使うから、ミドボンって呼んでいる人も多いかな」

――が……そんな名前聞いたことがない。
1年間足繁くアクアショップに通っているのに……だ。

「ミドボン? はて、ショップでは見たことがありません。それってどこで買えるんですか?」
「まぁまぁ、それを今から話すから」

初めて聞く単語に思わず質問攻めにするのだが、お師匠様は脚を組んで、ゆっくりとした口調で説明を続けた。

「このボンベはレンタルでしか取り扱いがないんだ。初期費用はちょっと掛かるけど、大量に使える。具体的には、5kgのボンベなら、CO₂が5kg入っている。5,000÷60で小型ボンベ80回分くらいかな
「えぇ……それはいいじゃないですか! うちなら2か月に1回の交換だから年間6本、だから、えーっと、単純計算で10年以上!?」

思わず声が弾む。わたしの水草と懐事情が喜びそうな話だ。

「それで、いくらくらいなんですか?」
「CO₂の充填だけなら5,000円程度かな」

80回分が5,000円!? 小型ボンベの1/10の値段じゃないですか。どうしてそんなに安いのを教えてくれなかったんですか!?」

わたしが興奮して言うと、お師匠様は苦笑いを浮かべた。

「でもね、初期費用に最低でも15,000円。充填するのは当然のこととして、ボンベの点検にだってお金が掛かるんだ」

――が、80回分の値段を考えれば、それだって十分に元が取れるような気がするのだが。

「ところで、どこで貸し出しているか知っているかい?」
「え……アクアショップじゃないですか?」

「違うよ。もっと炭酸をいっぱい使うところだよ。キミも好きでしょう? カンパーイってね?」
「あ、もしかして酒屋さんですか?」

「その通り。ビールサーバーで使うものと同じだからね。同じCO₂なら利用できるという理屈さ」

わたしは頭の中で、最寄り駅から歩くルートを思い浮かべる。何とかなるような気もしてきた。

「それじゃあ、隣町の酒屋さんに電車で……」

が、お師匠様は真顔で大きく首を振った。

「ダメだよ。そもそも5kgのボンベなら、総重量は12~14kgはある。CO₂には可燃性がないけど、高圧ガスの危険物扱いだから電車に持ち込めないよ
「え……じゃあ小型ボンベは?!」

「あれは2kg以内だからセーフ。実は国交省によって細かい規則が設けられているんだ」

お師匠様は優しく、でもはっきりと言った。その言葉に苦笑いするしかなかった。

……レンタルするまではいい。
だが、大学生のわたしには、致命的なほど運搬手段がないのだ。

「……わたしとミドボンって、相性最悪ですね?」
「最近は配送してくれる所もあるけどね。それでもボクが止めるのは別の理由があるからさ」

・小型ボンベでもコストに対するパフォーマンス(サイズや手軽さ)は十分良い


検討して見えてきたこと

「実はどれもボンベは背が高いんだ。5kgで60cmそこら、1kgだって50cmはある」
「50cm!? ということは、60cm規格で作ったプレコ水槽の水槽台の下にギリギリ入るか入らないかのサイズですね!?」

結構大きいでしょう?

わたしは、地下街の最奥にある店を思い出していた。
あの大きな水槽の中には、びっしりと水草が生えており、選ばれし少数の魚たちがゆらりと泳いでいた。わたしは頬杖をつきながら、ボンベの容量、値段、そしてサイズ。ひとしきり考え終えると、一つの結論に至る。

もしかしてミドボンって……大型水槽向けの道具ってことですか?

問いかけると、お師匠様は軽く頷いた。

「そうなんだ。たしかに維持費は安いけど初期費用が掛かる分、あくまで60cmより大きな水槽でバンバン添加する人向けさ」
「もしかして、コストコみたいな? 大量に使う人にはコストパフォーマンスが良いってことです?

わたしの例えに、お師匠様は声を立てて笑った。

「お、気が付いたね。そういうこと。単位当たりの値段だけ見れば良好だけど、小さな水槽や一般家庭では少々手に余る代物ってことさ

安いという言葉で一瞬でも夢を見ていたが、どうやら今のわたしには不釣り合いなものかもしれない。

「結局、大型水草水槽や、コンテストに出す予定がないなら用がないかもしれない。キミはその予定は?」
「うーん、残念ながらないです。わが家の水槽は30cmキューブのハイタイプで、マツモとアヌビアス・コーヒーフォリアしか入っていないんですよ?」

肩をすくめて言うと、お師匠様は優しく目を細めた。

「あはは…確かにそうだったね。なら、過剰装備かもしれないね」
「今までの話を聞いている限り、少なくとも、わたしはそう思います」

わたしの小さな水草水槽には、わたしに合ったやり方がある。それが、おぼろげに分かってきたような気がした。

「ところで、キミのボンベはいまどんな感じなの?」
「3秒に1滴くらい。だから、さっき言った通り、交換は2か月に1回程度です」

「ってことは、年間で3,600円ぐらいかな?」
「そうです。飲み会1回分くらい」

「となれば、10年で36,000円、やっぱりミドボンはやりすぎかもね?」
「そう……だと思います。わが家では使いきれる量じゃないし、10年も先まで水槽をやっているかどうか」

「あはは、それはそうだね」

そう言って笑うと、お師匠様も口元を緩めた。

「こんなふうに、添加量や水槽サイズによっては、小型ボンベでも十分なこともあるんだよ。維持費が安いとか、コスパが良いと言われる大型ボンベより、手軽で安全に扱える」

「うーん、コスパって言葉の裏側まで考えないといけませんね?」

「そうだね。決して安いという意味じゃない。あくまで費用に対して得られる効果が良いという話でしかないんだからね。何の効果なのか、それが自分にマッチしているのか、もう一度よく考える必要があるね



現実を知る

結局、わたしは小型ボンベ式のまま落ち着いている。
ものは試しにミドボンを導入していたら、もしかしたら世界が変わったかもしれない。けれど、いまのわたしにはこのサイズがちょうどいいのだ。

30cmキューブのハイタイプは、古いグレーのスチール製の事務デスクの上に鎮座している。正座で使うことを想定して作られたもので、少しばかり骨董品の匂いをまとっている机だ。水槽台のように収納やホースを通す穴があるわけでもなく、外部フィルターは剥き出しのまま床に置いてある。

そんな具合に、自室には所せましと水槽が3つ並ぶ。この限られた空間には、5kgどころか1kgのミドボンすら置く余地がない。コスパに惑わされて大きなボンベを招き入れたなら、それこそ生活する空間が削られてしまう。

何事も適材適所というやつ大切なのかもしれない。



まとめ

アクアリウムを続けていると、一度は耳にする「ミドボン」。正式には業務用の炭酸ガスボンベで、通称ミドボンと呼ばれています。小型の使い切りボンベと比べてガス量がたっぷり入っているので、長く使えて経済的。コスパの良さは確かに魅力です。

ただ、導入を考えるときに悩ましいのが、そのサイズ感。一般的に5kgのボンベが多く、1kgでもなかなかの存在感があります。ワンルームや6畳ほどのお部屋だと、どこに置くかがまず大問題です。見た目も業務用の無骨さがあるので、部屋の雰囲気に馴染ませる工夫が必要になります。

さらに、取り扱いには少し注意が必要です。高圧ガスなので、転倒防止や直射日光を避けることは必須ですし、設置場所が限定されてしまうこともあります。アクアリウム用品の一つというより、設備機器に近い感覚になりますね。

その点、小型ボンベは設置が気軽で、場所にも困りにくいです。小さな水槽ならこれで十分なケースも多く、日常のメンテナンスに収まります。交換の頻度は増えますが、置き場所に悩まされない気楽さは大きなメリットです。

ミドボンは確かに便利なアイテムです。水草の育成を本格的に楽しみたい人、複数水槽でCO₂を使う人には強い味方になります。ただ、コスパが良いからというだけで飛びつかず、自分の生活空間や管理スタイルに合うかどうかを見極めることが大事です

アクアリウムは暮らしの一部。無理なく続けられる選択が結果的に一番の満足につながります。あなたの水槽にぴったりのスタイルを見つけて、楽しく水草育成を続けてくださいね。



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