ろ材ネットの注意点
外部フィルターを使っていると、「掃除のとき、ろ材の扱いが面倒だな」と感じたことはありませんか? バケツにガラガラと中身をあけ、手で掬い直す作業は、正直ちょっとしたストレスになります。そんな悩みを一気に解決してくれるのが「ろ材ネット」。小さな工夫ですが、知っているかどうかでメンテナンスの快適さが大きく変わってきます。
今回は、そんなろ材ネットについてストーリーでやさしく解説していきたいと思います。
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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。
2211を購入した。
すっかりエーハイムという外部フィルターの虜になってしまい、わたしはエコSに続いてクラシックシリーズにも手を出したのだ。
利点と欠点
絶望の2211
いくつか気になる点はある。
例えば、吸水ホース径12mm/16mm、排水ホース径9mm/12mmと給排水が異径であり、パーツの融通が利きづらいことや、小型ゆえに床との設置面積が少なく倒れやすい点など、挙げればきりがない。
とは言え、30cmキューブハイタイプには(2000年代において)実質的にはこれしか選択肢がなかったのだから仕方がない。
いや、もちろん、エーハイムエコS(2331)という手もあった。だが、同じフィルターを2台も置くのは、何かつまらないし、それにこれは趣味なのだ。合理性と嗜好性が程よくマッチしたところで選びたい。
そこで行き着いたのが、このフィルターなのだが。
しかし、いまわたしは絶望している。
先ほど紹介した、こまごまとした弱点のことではない。
はっきり言おう、問題はろ材コンテナがないのだ!
コンテナがない!
2月のキャンパスは人が疎ら。
学期末のテストは終わり、教授や講師は自身の研究と年度末の忙しさに追われ、大学では受験生を迎え入れる準備をしている。
蚊帳の外に置かれた我々は、ぽかんと口を開けて少し長めのお休みを甘んじて受けるしかない。
もちろん、押し付けられた長期休暇に黙っている学生ばかりではない。そう、サークル活動だ!
……と行きたいところなのだが、実はこちらも大したことが出来ずに悶々と過ごすことが多い。なぜなら、実家に帰ってしまう部員がいるからだ。
そんなわけで、今日もわたしはサークル棟内で悶々と過ごしている。
アウターを着込んで、ガラガラのバルコニーに腰を落ち着けると、スッキリとした晴天を通り抜ける暖かい日差しとヒヨドリの声。時折、土埃を巻き上げた北風に揉まれるが、なるほど冬のキャンパスも悪くない。
「よっ! アクアくん?」
と、いきなり水槽のお師匠様ことロゼッタの声。
大慌てで振り向くと、今日も土埃にまみれた作業着の上に古びたダッフルコート。
彼女もサークル活動があったらしい。
「てっきり、実家に帰っているのかと思ってました!」
「いや実はね、うっかりアルバイトを入れちゃって、帰るに帰れなくなっちゃったんだ♪そのついでにサークルに出てきたのさ、あはは」
と苦笑いしながらも明るい声。
わたしたち生物系の人間には、やはり自然の中で作業をするのに勝るものはないのかもしれない。
「そんなことより、エーハイム2211の調子はどうだい?」
「それが……」
気が付けば、ついついアクア談義。
場所を選ばず熱く語り始めるのは、生物系のみならずオタクの悪い癖である。
現在の困った状況を口に出すと、彼女は眼鏡を外してからショートヘアをかき上げた。
「だいたい、キミの2211はまだ粗目フィルターパッドしか入ってないよね?」
「……そうですけど?」
「なら、簡単に取り出せるし、まだろ材コンテナはいらないんじゃないかな?」
――図星だ。
とは言え……
「でも、これでは外部フィルターにセラミックろ材を入れたとき、大きな問題になるような気がするんです!」
「ははん、つまりキミが言いたいのは、ろ材清掃するときや交換するときに、いちいちザラザラとバケツに出した挙句、スコップやチリトリでかき集めて入れなおすのが面倒な気がする、そう言いたいんだね?」
「いや、そこまでは……」
「大丈夫、そんな時にはろ材ネットがぴったりさ!」
どうやら、あのフィルターの問題点を見抜いていたらしい。
小さな体がすっとわたしの隣に座ると、にっこりと笑って目を輝かせこちらを見てくる。
その得意そうな顔。
「それじゃあ、よく聞いてくれたまえよ?」
「え、いや?」
もしかしたら、ろ材ネットについて話したいだけなのかもしれない。
バイトとアパートの往復ばかりしている彼女からしたら、鉄道ファンの鉄分ならぬ、水槽オタクの水分補給をしたいのだろう。
ろ材ネットとは?
「ろ材ネットとは、ろ材を入れるネットで出来た袋のことなんだ」
一人でヒートアップする彼女。
それを窘めるように、手を付けていない買ったばかりのホットドリンクを手渡すと、クピクピとあっという間に飲み干してから、ブルブルっと身震いをした。
真冬の午後2時。いくらその道を目指している学生と言えど、冷気は骨身にこたえるようだ。
「それで、ろ材ネットを使うと、何がいいんですか?」
「そうだね、さっき言った通り、詰めたろ材をまとめて取り出せることだね」
「だから、ろ材清掃、ろ材交換にぴったりって言ってたんですね?」
お師匠様はうんうんと数度頷きつつ鼻を擦ると、ポンと手を打った。
「なにかと便利な道具なんだけど、購入時には色々と注意が必要なものなんだ。まずはそのサイズに注意だね」
「はぁ。でも、サイズって書いてありますよね?」
「もちろんだとも。ただ、思っていたものより大きかった、小さかったというのがよくある道具なんだ」
――どうしてそんなことが?
と合いの手を打つ前に、彼女は口を開いた。
「オーバーフローから外掛けフィルターまで、幅広いサイズのラインアップがあるからね。寸法をよく見ないで『Sサイズ』を買ったらオーバーフローのろ過槽用で全然小さくなかったとかね?……そんなこともあるぐらいなのさ」
「うーん、それはさすがに困りますね」
「それ以外にも注意点があってね……」
彼女が口を開くと、西の山に陽が落ち始め、空、ビル、窓、キャンパス内のありとあらゆる物が一日の集大成とばかりに茜色に輝いている。
二人で息をのんで見守っていると、ふつりと陽は途絶え、東の隅から闇がやってきた。
「あまりにも目が小さなものはお勧めできないな。だってネットだしね」
ハロゲンランプが付いたバルコニー。だが彼女は未だ熱っぽく語るので、それに負けて話の意味を必死に考えてみる。
――ろ過槽のなかでネット……ネットがある、ネットがあると??
あぁ! そういうことか。
何度か心の中で繰り返すと、1つの答えが出た。
「もしかして、ゴミがネットに絡まる……とかですかね?」
「おっ! よくわかったね。その通りなんだ。せっかく目詰まりしないような大きなろ材を用意しても、目の細かいろ材ネットに入れたら、通水性は悪化しやすくなるよねぇ」
「ですよねぇ……」
たしかにその通りだ。
わたしは頷くことしかできない。
「とにかく、ネットの目は、ろ材が飛び出さない程度に荒いほうがいいと、ボクは思うんだ!」
キャンパスに日は暮れて……
「ところで……だ。ここまできて今更言うのもなんだけどさ?」
「はい?」
「そもそも、まだ30cmキューブのハイタイプ水槽、セットしてないよね? それどころか、ソイルだってまだ買ってないじゃない?」
痛いところを突かれてしまった。
「それはそれ、これはこれです」
と言い逃れをすると、お師匠様はにやりと笑ってみせた。
「まぁね、趣味だからいいんだけどさぁ~。でも心配するにも順番ってものがあるじゃない?」
すっかり暗くなったキャンパス。
二人はバルコニーを後にすると、キャンパスの正門へと向かうのだった。
まとめ
外部フィルターを使っていると、必ず気になってくるのが「ろ材ネット」。
名前のとおり、ろ材を入れるネット状の袋のことで、使ってみると意外なほど便利なアイテムです。
まずメリットは、ろ材の出し入れが簡単になること。外部フィルターは定期的に掃除や交換が必要ですが、そのたびにバケツにざらざらと中身をあけて、手やスコップで掬い直すのは大変です。ろ材ネットにまとめておけば、そのまま引き上げて洗えるので作業がスムーズになります。
ただし、購入時には注意点もあります。まずサイズ。パッケージには「S」「M」などと書かれていても、メーカーや用途によって大きさがかなり違います。
外掛けフィルター用の小ぶりなものから、大型水槽のオーバーフローろ過槽向けまで幅広く存在するため、寸法を確認せずに買うと「思ったより大きすぎた/小さすぎた」という失敗が起こりがちです。
もうひとつ大事なのはネットの「目の粗さ」。目が細かすぎると、せっかく通水性の良いセラミックろ材を使っていても、ネット自体にゴミが詰まりやすくなり、水の流れが悪くなってしまいます。
逆に粗めであれば、ろ材が飛び出さない範囲で水通りがよく、フィルター本来の性能を活かしやすくなります。
つまり、ろ材ネットは「便利だけど選び方を間違えると逆効果」になりかねない道具です。フィルターや水槽のサイズ、使うろ材との相性を考えながら選ぶことで、メンテナンスの負担をぐっと減らすことができます。
外部フィルターを使っている方なら、毛嫌いせずにぜひ一度導入を検討してみる価値あると思います。
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