スポンジフィルターは底砂に埋めてもいいの?
アクアリウムには、慣れてくると誰しも一度は試してみたくなる“裏技”が、多々あります。
そのひとつが、スポンジフィルターの設置方法を少し変えて、底砂に埋め込んでしまうという手法。
見た目もすっきり、ろ過効率もアップ…なんて声もありますが、本当にうまくいくのでしょうか?
この記事では、実際にやってみた顛末をストーリーで紹介したいと思います。
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(これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語)
これは、ダブルブリラントを手に入れる少し前のことだった。
わたしは、「底面フィルター」という存在を初めて知った。
ガラスの底に"すのこ"状の板を敷き、その上から砂利系の底砂をかぶせる。
すると、底砂自体がろ材となり、通水によってろ過機能を発揮するという。
「なんということだ!」
今まで掃除の対象でしかなかった底砂が、ろ材になるなんて。
天地がひっくり返るほどの衝撃だった。
ろ過か掃除か問われ
底面フィルターという衝撃
しかし、次の瞬間、疑問が浮かんだ。
「はて、この底面フィルター、何かで代用できないものだろうか」
胸の奥がもぞもぞするような、奇妙な感覚に包まれる。
自室の白い天井を鋭くにらみつけ、集中していると、ふとひらめいた。
「スポンジフィルターだ!」
スポンジろ材の下部、1/4ほどを底砂に埋める。
こうすれば、水流は底砂を通過せざるを得ず、底面フィルターのような効果が得られるのではないか?
わたしはすぐに実行していた。
なるほど、たしかに汚れがフィルター周辺の底砂に引っかかるように集まっている。ろ過として、ある程度機能しているように見えた。
だが――。
口答えとわたしの責任
一週間後。
わたしの水槽の師匠、ロゼッタが自室にやってきた。
いつもなら明るい笑顔を見せながら水槽を覗き込み、アクア談義に花を咲かせるのだが、この日は様子が違った。
水槽を一目見るなりロゼッタは唇をかみ、低いトーンで声を震わせた。
「うーん、小型魚ならいいんだけどね……」
その一言に、わたしは思わず背筋を伸ばした。
どうやら、お師匠様の不興を買ってしまったようだった。
たしかに、底砂まで糞が入り込んで掃除は手間がかかる。
それでも、クリーナーで一生懸命にかき出せば、意外と綺麗になる。
生物ろ過の向上を狙った、意味のある挑戦だったと、わたしは信じていた。
しかし、ロゼッタはばっさりと言い切った。
「メンテナンスが大変で、失敗するのは目に見えている」
ぐうの音も出なかった。正論だ。
けれど、管理するのはロゼッタではない。わたしだ。
手も知恵も貸してくれるが、水槽のすべてを背負うのはこの手なのだ。
そう思うと、感情の昂りで胸が熱くなり、鼓動が早くなる。
だが、わたしのために時間を割いてくれる人。
その思いに報いようと、気持ちを抑えていた……。
「キミは魚とろ過、どっちが大切なんだい?」
その言葉を聞いた瞬間、咄嗟に反論していた。
「そんなこと、やってみなければ分からないじゃないですか!」
ロゼッタの目がきょとんと丸くなる。
そして、肩が落ちる。その背中が、小さく見えた。
あぁ、言ってしまった。
今まで一度たりとも、こんなに強い言葉で反論などしたことがない。
時間に追われる中、わざわざ別学科のわたしのために教えに来てくれたのに。
性別というしがらみを超えて、せっかく見つけたディープな友人なのに……
「すいません、少し強く言いすぎたかもしれません」
「いや、こちらこそ申し訳なかった。そんなつもりじゃなかったんだ」
互いに頭を下げ合うこととなったのだが、やはり空気は思い。
それでも、お師匠様は必死に口を動かしている。
きっと、伝えたいことがあるのだ。
底砂という問いかけ
「そもそも、底砂をどうとらえるかは、人によって違うんだ」
黒くて艶のあるショートヘアー。
それが前に傾き、どことなく寂しげであったが、声色はいつもの澄み渡っものに戻り始めた。
魚を落ち着かせる色彩効果を重視する人。
わたしのように硝化細菌の住処として使う人。
嫌気性菌が住むリスクを怖れる人もいれば、そこで脱窒を期待する人もいる。
水草の根を活着させる場所として、または、水質を調整するために活用する人もいる
「だからね、底砂はね、ただ敷いてあるものじゃないんだよ」
白くて細い指を柔らかな頬に手を添え、その先にあるスラリとした目の奥には、まだキラリとした水を湛えている。
だが、いつものような眼光が戻ってきているようだ。
ふと目が合う。
ふっと笑い、表情を整え、いつもの得意げな笑顔をしてみせた。
そして静かに語り続ける。
「でも、結局は全部、生体の命を守るため。どんなに完璧なろ過を作っても、水換えをしなければ、やがて破綻するんだよ」
わたしに配慮してか結論こそ明言はしなかったが、だからこそ、ろ過の邪魔になりうる工夫には、慎重であるべき――そう言いたかったのかもしれない。
そして、もう一度、やさしく言葉を重ねてきた。
「とはいえ……やってみないと分からないって気持ちも大切だね。頭ごなしに否定したのは、悪かったと思う」
少しうつむいたロゼッタを見て、わたしは素直に頭を下げた。
「いえ、いいんです。やっぱり、その考え方は大切だと再認識しましたから」
「そうでしょう? そうでしょう♪」
少し無理やりだが、ロゼッタはいつもの笑顔を見せてくれるのだった。
フィルターの行方
そして、数日後。
ロゼッタの予言通り、例のスポンジフィルターはあっという間に目詰まりを起こした。
汚れの蓄積がひどく、掃除しても掃除しても追いつかない。
このままではいけないと、わたしはようやく決断した。
フィルターはやはり、底砂に触れさせず浮かせて使うのが正しいのだろうか。
だが、戻してみても、もう以前の状態には戻らなかった。
原因はセルフィンプレコ。
最近、異様なほど食欲が増しているのだ。
外掛けとスポンジフィルターの組み合わせでは、もはや限界を迎えつつある。
こうして、わたしはツインブリラントフィルターの導入を決めたのだった。
けれど、それは――また別のお話。
まとめ
スポンジフィルターは、エアリフトの力を使って水を循環させるろ過装置で、主に生物ろ過の役割を担っています。設置が簡単で、小型水槽から繁殖用水槽まで幅広く使われる人気のフィルターです。
通常は底砂に接触しないように設置しますが、ろ過効率の向上を狙って、スポンジの一部を底砂に埋め込むという使い方を試すケースもあります。これは、底面フィルターのように、底砂を通して水を引き上げる仕組みに似ており、底砂全体をろ材として活用する意図があります。
実際に、スポンジフィルターの下部を1/4ほど底砂に埋めると、汚れが集まりやすくなるなど、一見すると効果的に思える面もあります。
ただし、この方法には注意点もあります。
底砂に糞やゴミが蓄積しやすくなり、清掃の手間が増えるようになります。
それだけでなく、フィルターが目詰まりを起こしやすくなることも。
また、底砂内部に嫌気性環境が生じると、水質悪化の原因にもなりかねません。
しかし、底砂の役割や考え方は人それぞれで、見た目を重視して魚の色飛びを防ぐために使う人、硝化細菌の定着や水草の活着を目的とする人、水質調整や脱窒を期待する人など、様々な捉え方があります。
どのようなろ過方式を採用するにしても、水換えや日常のメンテナンスを怠れば、いずれシステムは機能不全に陥ります。
このようなことから、スポンジフィルターを埋めるとするなら、底砂との相性や生体のサイズ、そして管理方法をしっかりと理解し、無理のない運用を行うことが重要だと言えるでしょう。
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