2025年7月23日水曜日

スポンジフィルターを底砂に埋めてわかった、アクアリウムの懐の深さ

スポンジフィルターは底砂に埋めてもいいの?

アクアリウムには、慣れてくると誰しも一度は試してみたくなる“裏技”が、多々あります。

そのひとつが、スポンジフィルターの設置方法を少し変えて、底砂に埋め込んでしまうという手法。
見た目もすっきり、ろ過効率もアップ…なんて声もありますが、本当にうまくいくのでしょうか?

この記事では、実際にやってみた顛末をストーリーで紹介したいと思います。

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(これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語)

これは、ダブルブリラントを手に入れる少し前のことだった。

わたしは、「底面フィルター」という存在を初めて知った。
ガラスの底に"すのこ"状の板を敷き、その上から砂利系の底砂をかぶせる。
すると、底砂自体がろ材となり、通水によってろ過機能を発揮するという。

「なんということだ!」

今まで掃除の対象でしかなかった底砂が、ろ材になるなんて。
天地がひっくり返るほどの衝撃だった。



ろ過か掃除か問われ


底面フィルターという衝撃

しかし、次の瞬間、疑問が浮かんだ。

「はて、この底面フィルター、何かで代用できないものだろうか」

胸の奥がもぞもぞするような、奇妙な感覚に包まれる。
自室の白い天井を鋭くにらみつけ、集中していると、ふとひらめいた。

「スポンジフィルターだ!」

スポンジろ材の下部、1/4ほどを底砂に埋める。
こうすれば、水流は底砂を通過せざるを得ず、底面フィルターのような効果が得られるのではないか?

わたしはすぐに実行していた。
なるほど、たしかに汚れがフィルター周辺の底砂に引っかかるように集まっている。ろ過として、ある程度機能しているように見えた。

だが――。



口答えとわたしの責任

一週間後。
わたしの水槽の師匠、ロゼッタが自室にやってきた。
いつもなら明るい笑顔を見せながら水槽を覗き込み、アクア談義に花を咲かせるのだが、この日は様子が違った。

水槽を一目見るなりロゼッタは唇をかみ、低いトーンで声を震わせた。

「うーん、小型魚ならいいんだけどね……」

その一言に、わたしは思わず背筋を伸ばした。
どうやら、お師匠様の不興を買ってしまったようだった。

たしかに、底砂まで糞が入り込んで掃除は手間がかかる。
それでも、クリーナーで一生懸命にかき出せば、意外と綺麗になる。
生物ろ過の向上を狙った、意味のある挑戦だったと、わたしは信じていた。

しかし、ロゼッタはばっさりと言い切った。

「メンテナンスが大変で、失敗するのは目に見えている」

ぐうの音も出なかった。正論だ。
けれど、管理するのはロゼッタではない。わたしだ。
手も知恵も貸してくれるが、水槽のすべてを背負うのはこの手なのだ。
そう思うと、感情の昂りで胸が熱くなり、鼓動が早くなる。

だが、わたしのために時間を割いてくれる人。
その思いに報いようと、気持ちを抑えていた……。

「キミは魚とろ過、どっちが大切なんだい?」

その言葉を聞いた瞬間、咄嗟に反論していた。

「そんなこと、やってみなければ分からないじゃないですか!」

ロゼッタの目がきょとんと丸くなる。
そして、肩が落ちる。その背中が、小さく見えた。

あぁ、言ってしまった。
今まで一度たりとも、こんなに強い言葉で反論などしたことがない。
時間に追われる中、わざわざ別学科のわたしのために教えに来てくれたのに。
性別というしがらみを超えて、せっかく見つけたディープな友人なのに……

「すいません、少し強く言いすぎたかもしれません」

「いや、こちらこそ申し訳なかった。そんなつもりじゃなかったんだ」

互いに頭を下げ合うこととなったのだが、やはり空気は思い。
それでも、お師匠様は必死に口を動かしている。
きっと、伝えたいことがあるのだ。



底砂という問いかけ

「そもそも、底砂をどうとらえるかは、人によって違うんだ」

黒くて艶のあるショートヘアー。
それが前に傾き、どことなく寂しげであったが、声色はいつもの澄み渡っものに戻り始めた。

魚を落ち着かせる色彩効果を重視する人。
わたしのように硝化細菌の住処として使う人。
嫌気性菌が住むリスクを怖れる人もいれば、そこで脱窒を期待する人もいる。
水草の根を活着させる場所として、または、水質を調整するために活用する人もいる

「だからね、底砂はね、ただ敷いてあるものじゃないんだよ」

白くて細い指を柔らかな頬に手を添え、その先にあるスラリとした目の奥には、まだキラリとした水を湛えている。
だが、いつものような眼光が戻ってきているようだ。

ふと目が合う。
ふっと笑い、表情を整え、いつもの得意げな笑顔をしてみせた。

そして静かに語り続ける。

「でも、結局は全部、生体の命を守るため。どんなに完璧なろ過を作っても、水換えをしなければ、やがて破綻するんだよ」

わたしに配慮してか結論こそ明言はしなかったが、だからこそ、ろ過の邪魔になりうる工夫には、慎重であるべき――そう言いたかったのかもしれない。

そして、もう一度、やさしく言葉を重ねてきた。

「とはいえ……やってみないと分からないって気持ちも大切だね。頭ごなしに否定したのは、悪かったと思う」

少しうつむいたロゼッタを見て、わたしは素直に頭を下げた。

「いえ、いいんです。やっぱり、その考え方は大切だと再認識しましたから」

「そうでしょう? そうでしょう♪」

少し無理やりだが、ロゼッタはいつもの笑顔を見せてくれるのだった。



フィルターの行方

そして、数日後。
ロゼッタの予言通り、例のスポンジフィルターはあっという間に目詰まりを起こした。
汚れの蓄積がひどく、掃除しても掃除しても追いつかない。

このままではいけないと、わたしはようやく決断した。
フィルターはやはり、底砂に触れさせず浮かせて使うのが正しいのだろうか。

だが、戻してみても、もう以前の状態には戻らなかった。

原因はセルフィンプレコ。
最近、異様なほど食欲が増しているのだ。
外掛けとスポンジフィルターの組み合わせでは、もはや限界を迎えつつある。

こうして、わたしはツインブリラントフィルターの導入を決めたのだった。
けれど、それは――また別のお話。



まとめ

スポンジフィルターは、エアリフトの力を使って水を循環させるろ過装置で、主に生物ろ過の役割を担っています。設置が簡単で、小型水槽から繁殖用水槽まで幅広く使われる人気のフィルターです。

通常は底砂に接触しないように設置しますが、ろ過効率の向上を狙って、スポンジの一部を底砂に埋め込むという使い方を試すケースもあります。これは、底面フィルターのように、底砂を通して水を引き上げる仕組みに似ており、底砂全体をろ材として活用する意図があります。
実際に、スポンジフィルターの下部を1/4ほど底砂に埋めると、汚れが集まりやすくなるなど、一見すると効果的に思える面もあります。

ただし、この方法には注意点もあります。
底砂に糞やゴミが蓄積しやすくなり、清掃の手間が増えるようになります。
それだけでなく、フィルターが目詰まりを起こしやすくなることも。

また、底砂内部に嫌気性環境が生じると、水質悪化の原因にもなりかねません。

しかし、底砂の役割や考え方は人それぞれで、見た目を重視して魚の色飛びを防ぐために使う人、硝化細菌の定着や水草の活着を目的とする人、水質調整や脱窒を期待する人など、様々な捉え方があります。

どのようなろ過方式を採用するにしても、水換えや日常のメンテナンスを怠れば、いずれシステムは機能不全に陥ります。

このようなことから、スポンジフィルターを埋めるとするなら、底砂との相性や生体のサイズ、そして管理方法をしっかりと理解し、無理のない運用を行うことが重要だと言えるでしょう。



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