再利用しすぎていませんか?
外掛けフィルターを使っていて、「水がウールマットを通らずに横から流れている」ような現象に気づいたことはありませんか?
それはろ材の劣化による“素通り”のサインかもしれません。
再利用を重ねたウールマットは詰まりやへたりで通水性が落ち、水がろ材を通らなくなることがあります。交換の見極めが大切です。
今回は、そんな話をストーリーとともに紹介します。
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(これは20年前とフィクションが織りなす不思議な世界の物語)
セルフィンプレコは、今日も流木にぴったりと張りついていた。
この20Lの小さな水槽で、セルフィンプレコと暮らして、もうどれくらいになるだろう。
まだ1か月と半分しか経っていない。だが、そう思うほどにここまでの道のりは長かった。
外掛けフィルターと、スポンジフィルター。
小さな水槽に二つのろ過装置という、ちょっとした贅沢仕様。
それでも今まで、ろ材を交換して水が白濁したり、泡が消えなくなったりと、茶ゴケが出たりと、いろいろなトラブルに見舞われてきた。
そのたびに乗り越えて、美しい水槽に戻してきた。
……だが、今日のは少し様子が違う。
ウールの隙間をすり抜けて
いつもと違う落水音
【ルーパー】
ウォータースライダーのような形をした、外掛けフィルター特有の排水口だ。
そこから出る水の音が、なんだかおかしいのだ。
耳を澄ませると、
ピチョン♪ ピチョン♪
と水のしずくが垂れるような音が聞こえる。
「まさか……?」
と思って、よくフィルターの真下を観察をするのだが、水漏れは起きていないようだ。
「では、いったい?」
点検のためフィルターのフタをそっと開けると、予想外だった。
水が、ウールマットを通っていないのだ。
横からすり抜けるようにして、そのまま排水口やパイプ脇を流れている。
いわば、水がバイパスしている状態だ。
しかし、一番高い壁を水が乗り越えていなかったのは、まだ運がよかったのかもしれない。
おかげで、床にこぼれることなく、汲み上げた水は全て水槽に戻っている。
でも、先週ウールマットはちゃんと洗ったばかり。
もみ洗いしたあと、ぴったりと設置したはずなのに
――どうして?
![]() |
・赤の矢印のように、ウールマットの横を水が抜けてきた! |
ボロボロになったウール
「はいはいーい♪ 今日もやってるね~」
意気揚々と玄関をくぐり、階段を上がってくるのは、学友のロゼッタだった。
「わたしだって、好きでトラブってるんじゃないんです!」
思わず声が上ずると、ロゼッタはくすっと笑った。
「ふふん♪ わかってるさ」
アクアリウム談義が大好きなロゼッタは、困ったことがあったら何でも教えてくれる、善良な野次馬的存在で、敬愛をこめて”お師匠様”と呼んでいる。
今日も餌に釣られてやってきた――いや、違う。今日も助けてくれるようだ。
「さて、いまどういう状況かなぁ?」
ロゼッタがフタを開けて中を覗き込む。
それでは飽き足らず、外掛けフィルターを分解し始めた。
まず、パイプを取り外し、ストレーナーをよくチェック。次いで専用のウールマットを外しガラス蓋の上に置いて、まじまじと観察し始めた。
「随分、ウールがやれているね。それに色も黒い。これ何回再利用しているんだい?」
「毎週、やさしくもみ洗いしてて、これは……5~6回です」
「そんなに!?」
驚きの声とともに、彼女の小柄な体がぴょんと跳ねた。
でもその顔はすぐに明るくなり、目を輝かせた。
「ははーん、理由がわかったぞ!」
「今回の原因は、再利用のし過ぎだ!」
「えっ?」
わたしは、ひどく動揺した。
![]() |
・いろいろな理由で再利用を繰り返したくなるが…… |
だから別のフィルターと併用するべき
「うん? どうしたんだい??」
「だって、再利用を勧めたのは、お師匠様じゃないですか」
実際、立ち上げ当初に専用ろ材を一気に交換したことで、バクテリアが全滅し、魚たちが危機に瀕したことがあった。
それ以来、わたしはろ過バクテリアを守るために、ウールマットのもみ洗いだけで何度も使い回していたのだ。
一応予備の交換ろ材は持っているのだが、先の出来事がトラウマで、未だ交換できていない。
「その、ウールマットを捨てれば、大切なろ過細菌を全部捨てることになるんでしょう?」
「たしかに、それも大切なことさ」
深く頷きつつ、ロゼッタは少しだけ目を細めて、でも穏やかに言った。
「でもね、水がろ材を通らないようでは、正しくろ過できているとは言えないんだよ。キミはろ過をするために、そのろ材を使っているんだろう?」
そうなのだ。
わたしは、節約をしたくて、このろ材を再利用しているわけではない。
いきなり全て交換すると、ろ過が出来なくなると思ったからこそ、再利用をしているのだ。
現状、ろ材は詰まっている。この状態で正しいろ過なんて、できやしない。
「そのろ材はそういうものさ。もみ洗いでどうにもならなくなってきたら、きっぱり交換するのも必要なんだ」
そして、そっと肩をぽんと叩いて笑った。
「大丈夫、そんな時のために、スポンジフィルターが入ってるんじゃないか」
……あ。
そうだった。
生物ろ過強化という目的ばかりが、自分の中で独り歩きしていた。
外掛けフィルターのろ材交換時に生物ろ過を止めさせないという、「もう一つの目的」をすっかり忘れてしまっていたらしい。
いつかやってくるその日まで。
「だけどね、覚えていてほしいことがあるんだ!」
急にロゼッタの声が真剣になった。
いつものほほえみが消え、鋭いまなざしが注がれる。
「さっき、ストレーナースポンジを見た。かなりの汚れようだったね」
「それでも、数日前には入念に手で洗ったばかりなんですが……」
「キミが掃除に手を抜かないことは、わかってるさ!」
「ただね……」
「このプレコがもっと大きくなったら、外掛けフィルターだけでは、きっと間に合わなくなる」
その時は、水質に異変が出るかもしれない。あるいは、白濁や油膜。
それとも、今回のように水がろ材をすり抜けて、素通りしてしまう形で、警告を与えてくるかだろう。
「だから、今のうちに、いろんなフィルターを見ておくこと。勉強すること。そして、お金を貯めておくこと」
それが、今日のお師匠様からの最後のアドバイスだった。
それから数ヶ月後。
ついにわたしは、外部フィルターを購入した。
水槽も、45cm規格へとサイズアップ。
でも、それは――また別の機会に語ることにしよう。
まとめ
外掛けフィルターのろ材素通りとは?
外掛けフィルターで「水がウールマットを通らず、横から素通りしてしまう」現象は、ろ過機能が正しく働いていないサインです。
この記事のように、排水口以外からも水が流れている場合、水がウールマットを避けてすき間から流れ出している可能性があります。
これを放置すると、物理ろ過も生物ろ過も十分に機能せず、水質悪化につながります。
原因の多くは、ウールマットの詰まりや、繰り返しの使用によるへたりです。
とくに何回も洗浄して再利用したマットでは形が崩れ、ゴミが溜まり、通水性が悪化しています。
水の流れがおかしいと感じたら、まずフィルターを点検し、ろ材の設置状態や確認しましょう。
ウールマットの交換タイミングはいつ?
ウールマットは何度か再利用できますが、使用を重ねると目詰まりや形崩れが起こり、水の流れに支障をきたします。
記事の例では、5~6回再利用したウールマットが原因で水が素通りし、フィルターの動作が不完全になっていました。
これは、私個人の考えですが、再利用の目安は2~4回程度まで。
それ以上使うと、水通りが悪くなり、バクテリアがいてもろ過が機能しません。
重要なのは、「バクテリアを残すこと」や「節約」よりも「水がきちんとろ材を通ること」。
ろ過細菌が不調になり、魚が死滅してしまえば、元も子もありません。
もし洗っても水の流れが改善しない、またはマットがへたって密着しないなら、潔く交換するべきです。
予備の専用ろ材は常備しつつ、スポンジフィルターなどの補助ろ過を組み合わせておくのが、このフィルターとの付き合い方だと言えるでしょう。
というわけで、今回はここまで。
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