水槽の見た目でわかる!水質悪化の4つのサインと対処のヒント
なんだか最近、水槽の様子がいつもと違う。
魚は元気そうだけれど、水が少し濁っていたり、コケがやたらと増えたり……
それはもしかすると、水質が悪化しているサインかもしれません。
今回は、水槽の見た目でわかる「水質悪化の兆候」をストーリーで4つご紹介します。毎日の観察で気づける小さな変化ですが、魚たちを守る大きなヒントになることもあります。
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(これは20年前の物語)
人生初のアクアリウム。主役はセルフィンプレコ。
悠々とガラスを貼りつくその姿、「よし、順調」と思ったのも束の間――。
「……え? 亜硝酸、出てる?」
試薬が見せたのは、疑いようのないオレンジ色。
焦った末、「ろ材がヘタってるのかも」と思い込み、外掛け専用ろ材を丸ごと交換。
結果、バクテリア退場、意図せず水槽リセット、とんだ愚行をしてしまった。
もはや、お手上げ状態だ。
立ち上げで良く起きる水質トラブル4つ
立ち上げ、即トラブルでスポンジフィルター
そこで、わたしは学友のアクアリウムの大先輩こと、「お師匠様」に助けを求めることにしのだが……
「それなら、スポンジフィルター入れたまえ」
天の声を授かり、すぐにテトラのスポンジフィルターが水槽に投入され、毎日の水換え生活がスタートした。
これは、そんな立ち上げ時に訪れた4つの危機を、紹介するストーリーです。
白く濁ってきたら
あれから数日後、水槽の水が、なんだか白っぽいような気がする。
それが証拠に、バックスクリーンのジャングルにも霧がかかっている。
「水換えしてるのに? なにこれ? もしや……」
調べてみると、案の定“白濁”という現象。
原因はエサのあげすぎや、掃除不足。さらにはフィルターが機能していない場合や、硝化作用がバランスを崩している場合に起きるらしい。
つまり、立ち上げ時には良く起こることのようだ。
念のため、お師匠様にメールしてみると、すぐに文面ではなく本人が来てくれた。
これは……と、大きく目を見開いた後、眉を曇らした。
「これは、有機物がうまく分解できずに残っていて、それを目当てに微生物が爆発的に増えているから、白く濁っているように見えるんだ」
「水槽の中が見えづらい以外に、何か問題があるんですか?」
どうやら、のんきなことを聞いてしまったようだ。お師匠様の眉間にしわがよった。
「ともかく、いろいろなパターンがあるんだけど、たぶんアンモニアも出ているはずだ」
アンモニア!?
と、一瞬驚いたものの、今は水槽立ち上げ中。
よくよく考えれば、アンモニアが検出されてもおかしくはない。
こちらだって覚悟は決まっている。
決まってる、のだが……
やはり意識すると、かすかに指が震えた。
「と、……となれば、や、やっぱり水換えですかね?」
「あぁ、その通りだね。今日は念入りに水換えしてね」
どこか動揺を隠せないわたしを見て、お師匠様は力強く言う。
「まぁ、そもそも立ち上げ中だしね。よくあることだよ。心配のし過ぎはよくないさ」
その上で、
「一つだけアドバイスをするなら、あまり水換えしすぎると魚の体力を奪うから、ほどほどにね。」
と穏やかな声で忠告をした。
そうなのだ。
水換えはもちろんとして、それをするたびに魚は体力を使ってしまう。
新しい水に適応しようとするからだ。
とは言え、水槽を眺めると、プレコは隅っこの方に身を隠しながらも、はぁはぁと荒い呼吸をしている。心配だ。
やはり、アンモニアは猛毒。水換えしないわけには、いかない。
前門の虎、後門の狼といった状態だ。
とにかく、今は水換えしかないのだ。
泡とにおいとエアレーション
立ち上げから10日ほど。
今度は、ふと気づくと、水槽の角に泡が溜まっていいた。
「……エアの泡、なんか消えてないよね?」
発生源を探すと、たしかにエアレーションなのだが……。
問題は、水面で弾けることなく、水流に乗って水槽の四つ角に集まっていることのようだ。
飼育水に問題があるのは間違いないようだ。
となれば、臭いはどうだろうか?
アンモニアが発生すると、アンモニア臭や甘ったるい香りがするらしいのだが、ちょっとツンとした実験で嗅ぐような匂い。
これはなんだ? ペーパークロマトグラフィーの実験で使った、フェノールのような香りだ。
すぐにお師匠様に聞くと、以前のように飛んできててくれた。
目をつむり、鼻ですんすんと水槽の臭いを嗅いでいる。
「このにおい、もしかすると亜硝酸が出てるかもね。」
亜硝酸試薬を持ってくると、たしかにオレンジ色に染まった。
とは言え、全部が全部、フェノールのような香りがするとは限らないらしい。
「あくまで個人の経験だし、ボクは人一倍鼻がいいからね、これが亜硝酸ってわかるんだ」
と俯きながら付け加えた。
「それよりも、この後が、ちょっと心配なんだ」
「この後? 泡の後ということですか?」
「そうなんだ。もしかしたら、続いて油膜がでるかもしれない」
曰く、どちらも、タンパク質や脂質が、水中で分解されずに残っているのが原因のようで、両方出ることもありうるらしい。
「もちろん、片方だけということも十分ある」
としたうえで、
「油膜が張ると、水槽にうまく酸素が溶けなくなくなってしまうんだ」
「なるほど、ということは、エアレーションを今より多めにした方がいいんですかね?」
「そうだね、何かと水槽の酸素量が必要な時期でもあるし、さらに、油膜そのものはエアレーションで解消可能だしね……」
と、頷きながらこちらの目を見て締めくくっる。
「結局は、水換えだね」
そう、水換えだ。
全ての基本は水換えなのだ。
そんなことを知ってか知らずか、プレコは最近流木がお気に入りのようだ。
茶色く長いアレをすると、さっそく外掛けのストレーナーに吸い込まれていった。
何とかうまくいってほしい。
悲報?朗報?ガラスが茶色に染まる
ついに立ち上げから約1か月。
ついに亜硝酸ゼロ、硝酸塩はしっかり出ている――つまり、ろ過が仕事をしてる!
「やった! 水換え地獄から解放だー!」
そう思ったのも束の間、すぐに水槽の壁に茶色いものがべったりと付いた。
「なにこれ、コケ? 茶色い……」
お師匠様に来てもらった。
ふぅ、とため息を付いた後、微笑んで見せた。
「これは“茶ゴケ”だね。硝酸が出始めても、まだバクテリアが安定してない時に、よく出るやつなんだ」
「ということは、立ち上げはまだまだということですか?」
「いや、そんなことはないんだよ。だけど、ふとした拍子にろ過のバランスが崩れる可能性が、未だ無きにしも非ずなんだ」
つまり、まだ油断はできないらしいが、定期的に水換えしていれば問題ないらしい。
「まあ、掃除でなんとかなる範囲だよ。それに、水槽を維持するということは、コケと戦い続けると同じことだからね。あはははっ!」
……ということで、今日もせっせとガラスを掃除し、底床掃除する日々。
プレコのヒレは、今日も立派にたなびいている。
「コケ取もいいけど、水換えもセットでね?」
せっせと水換えをして、水槽に慣れたこのプレコにより、茶ゴケが生えない環境になるのだが、それは数か月先のお話。
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・しつこい茶ゴケにはスクレーパーが便利! |
それは水質悪化のサインかも?
最後に、今回ストーリーに登場した4つの兆候をまとめてみたいと思います。
水が白く濁る・悪臭がする
水槽の水が白く濁るとき、もしかするとバクテリアバランスが崩れているサインかもしれません。
立ち上げ初期の水槽や、エサのあげすぎ、生体の死骸や掃除不足などが原因となります。この時、水中では有機物が分解しきれず、微生物が大発生し、白っぽい濁りとなって現れるのです。
また、鼻につくようなアンモニア臭やフェノール臭、酸っぱいにおいがする場合、ろ過が追いついておらず、アンモニアや亜硝酸が発生しており、魚にとって危険な環境になっている可能性もあります。
とくに臭いの変化は見逃されやすいですが、かなりの異常事態を知らせてくれる警告灯的存在です。安全な水質をキープするためにも、日常的なにおいのチェックとこまめなメンテナンスが大切です。
魚の状態を見つつ積極的に換水して、水質の改善に努めましょう。
水面に油膜や泡がたまりやすくなる
水面にうっすらと油膜が広がっていたり、泡がいつまでも消えないときは、水槽の中でタンパク質や脂質が過剰にたまっているサインです。
ろ過細菌のバランスが崩れ、エサの残りや魚の排せつ物がうまく分解されていないとき、こうした現象が起こりやすくなります。特にろ過が弱い水槽や、酸素不足の状態、さらには夏場の高水温で発生しやすくなります。
油膜も同様です。水面に薄い膜を作るため、空気とのガス交換を妨げになり、酸素量が減少して魚にストレスがかかる原因にもなります。
表面の泡や油膜に気づいたら、まずはエサの量や換水の頻度を見直し、必要であれば水面を揺らすエアレーションを追加してみましょう。
酸素量を増やすばかりでなく、油膜そのものを水面に落とす効果があります。
ガラス面や底砂に異常なコケが発生する
いつの間にかガラス面が茶色くなっていたり、底砂の隙間に緑色の膜が広がっていたりしませんか?
それは栄養が過剰に蓄積しているサインです。
茶ゴケは立ち上げ初期の水槽に多く、バクテリアが不安定なことに起因しています。
緑色の糸状コケや増えてきた場合は、栄養バランスの偏りや、照明時間が長すぎることが原因かもしれません。
黒髭コケは、栄養や照明時間に加え、水流が強すぎるのが原因かもしれません。
コケ自体は魚に直接害を及ぼすわけではありませんが、水質の不安定さを映す鏡です。発生のスピードが早くなったと感じたら、水換えや照明時間の見直しを考えるタイミングかもしれません。
それでも完全撲滅はほぼ不可能です。
水槽を維持するということは、コケと戦い続けるといっても過言ではありません。
というわけで、今回はここまで。
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