エアポンプはエアチューブで吊るそう!
アクアリウムを始めてしばらく経つと、どうしても気になってくるのが「エアポンプの音」。
「ブーン……」という低い振動音が夜中に響いて、眠れなかった経験ありますよね?
じつはその音、ちょっとした工夫でぐっと静かにできるのです。
今回は、エアポンプを“吊るして使う”という意外なテクニックについて、ストーリーで紹介したいと思います。
振動音の軽減だけでなく、熱対策やスペースの有効活用、さらには故障リスクの回避まで、メリットは盛りだくさん。
「えっ、そんなことで?」と思うかもしれませんが、知っておくときっと役立つ、小さなコツのひとつです。
さっそく、その効果と理由を詳しく見ていきましょう。
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(これは20年前の物語)
明日はテストだ。
夜の三時まで、ひたすら暗記。
アセチルコリン受容体には、ムスカリン受容体とニコチン受容体がある。アゴニストはムスカリンとニコチンで、アンタゴニストはツボクラリン、アトロピン、スコポラミン……。
意味不明なカタカナの羅列が脳内で踊るようになったころ、ついにわたしはベッドに潜り込んだ。
……寝よう。いや、寝なきゃ。
――が、
ブーン……
「……うるさい! エアポンプ、うるさすぎるって!!」
すべてのエアポンプに静寂を
眠れぬ夜
小さな水槽の片隅で、律儀に空気を送り続けるエアポンプ。
その健気さは讃えたい。だが、今は眠りたい。わたしは眠れないと人間性が崩壊するタイプなのだ。
コンセントを引き抜きたい衝動に駆られるが、中の魚たちを思うと、絶対にそんなことはできない。
仕方なく枕を頭に乗せて目を閉じたが、結局一睡もできず、朝を迎えてしまった。
梅雨の廊下とお師匠様
翌日、夏の雨に閉じ込められたような教室で、目の下にクマを携え、どうにかテストを終えた。
廊下に出ると、偶然にも“お師匠様”がいた。いつもわたしに水槽のレクチャーをしてくれる他学科の学友だ。次の時限が同じ教室らしく、壁にもたれながら背を伸ばして待っていた。
「おや、おはよう。どうしたんだ、こんなところで? それに……その顔!?」
「もぉ! 聞いてくださいよぉ!」
わたしの口から思わず不満が噴き出す。夜中、エアポンプがうるさくて一睡もできなかったのだと。
お師匠様は含み笑いをしながらも、頷きながら聞いてくれた。
「あはは、そんなことで悩んでたんだ~?」
「コホン! ちゃんと話、聞いてましたか? ひどい目にあったんですよ?」
「ごめんごめん。ンハハ、いやぁ、懐かしい悩みだなってね」
「じゃあ、お師匠様はもう解決してるってことですか?」
「もちろん! と言いたいところだけど……“軽減した”が正しいかな。知ってるかい?」
お師匠様の話では、一部のエアポンプには取っ手のような部分に小さな穴が開いており、そこにS字フックなどを通せば、本体を“吊るして”使えるという。
「工夫すれば水槽台の内側にも取り付けられるし、水が伝い漏れて本体が濡れる心配も少ない。さらに熱も逃がしやすい。いいことずくめなんだ」
たしかに、先端に用途不明の穴が空いていたのは見たことがあった。でも、それが吊るすためのものだったなんて思いもしなかった。
でも、どうしてそれで“音”が消えるのだろう。
「ふふっ、焦らない焦らない。輪ゴムをその穴に通して、クリップで固定するのさ。すると振動はどうなると思う?」
「んもう! もったいぶらずに教えてください、お師匠様!!
」
廊下に“お師匠様”という言葉が響き渡り、他学生たちの視線が集まった。
やってしまった。ああ、顔から火が出る。穴があったら入りたい。
もちろん、お師匠様も照れくさそうに頭をかいていた。
「まあ、ここじゃなんだし、上の階の休憩所で話そうか」
![]() |
・太い輪ゴムで吊るしてもよいが…… |
輪ゴムと振動とエアチューブ
休憩所のベンチで、お師匠様は語り始めた。
「エアポンプの中には、ダイアフラムというふいごのような部品が付いていて、電磁石の振動でそれを動かしている。この振動こそが騒音の元凶さ」
だから、その振動を床や壁に伝えず、空中に“逃がす”ために、輪ゴムが役に立つというわけだ。
だが、話はそう単純でもなかった。
「普通の輪ゴムだとすぐ切れちゃうんだ。だから、魚を買ったときの袋をとめている、あの太い輪ゴムを使うんだよ。ただし……」
それでも半年から一年ほどで劣化して切れてしまうという。
お師匠様も、過去に深夜と夕食中の2回、落下の憂き目に遭ったそうだ。
「ボクは木造アパートで一人暮らしだからね。自分がいない間にエアポンプが落ちて、騒音を撒き散らしていたと考えると……ゾッとするよ」
「ということは……その輪ゴムも万能じゃないってことですよね?」
話が振り出しに戻った――かに見えた。
わたしが深いため息をつこうとしたその時、お師匠様がすかさず話を挟む。
「だから、エアチューブなんだよ」
「ほぁ?? それで吊るすんですか?」
エアチューブが付いているエアポンプを、エアチューブで吊るす。
もはや何を言っているのか分からない。
だが、お師匠様は微笑んだ。
「エアチューブって、柔軟だけど丈夫だろ? つまり、それを輪にして吊るせば、振動を吸収しながら本体を支えられるんだ」
なるほど。
よもやそんな方法があろうと。ただひたすら感心していると、
「まぁ、何事も経験ってやつだね♪」
と話を締めくくった。
![]() |
・エアチューブなら何年使っても千切れない |
静寂のその先に
帰宅後、さっそく水槽のエアポンプを、余っていたエアチューブで吊るしてみた。
……静かだった。本当に、あれだけ悩まされた“ブーン”が、まるで嘘のようだった。
「水槽って、こんなに静かだったんだ……」
それからというもの、わたしは勉強も睡眠も集中してできるようになった。
エアポンプの騒音という悩みは、エアチューブと目玉クリップというローテクであっさりと解決してしまったのであった。
エアポンプを吊るす利点
というわけで、ここからは、上のストーリーをまとめていきたいと思います。
「ブーン」が消える? 振動音の軽減
エアポンプを床や棚に直接置くと、その振動が設置面に伝わり、「ブーン……」という共鳴音を引き起こすことがあります。特に木製の棚や水槽台では共鳴が起きやすく、深夜になると意外と気になるものです。
吊るして使用することで、設置面からの振動伝達がなくなり、音がかなり静かになります。夜ぐっすり眠りたい方や、静かなリビングでアクアリウムを楽しみたい方におすすめの対策です。
ただし、音の感じ方は体調やストレスによっても大きく変化するため、過信は禁物です。
熱がこもらない! 本体の冷却効果
エアポンプは動作中、内部のモーターや電磁石が発熱します。これを棚の中など密閉された空間に置いておくと、熱がこもって故障の遠い原因になることもあります。
吊るして浮かせておけば、本体周囲の空気が流れやすくなり、熱がこもりにくくなります。結果として、機器の寿命を延ばすことにもつながるでしょう。
水槽台まわりがスッキリ! スペースの有効活用
水槽まわりには、意外と多くの機材が集まります。フィルター、ヒーター、エサ、メンテナンスグッズなど。
エアポンプを吊るすことで、棚の上や収納スペースを占領せずにすみ、他の機材の設置場所を確保できます。
小型水槽や小さな水槽台、さらには省スペースレイアウトを目指している方にとっては、大きなメリットとなるでしょう。
停電時も安心! 逆流リスクの軽減
あまり知られていませんが、停電やポンプの故障時にエアチューブを伝って水がポンプ側へ逆流することがあります。
ひどい場合は、ポンプ内部に水が入り、故障の原因になることも。
エアポンプを吊るして水面より高い位置に設置すれば、逆流のリスクを抑えられます。
とはいえ、これだけでは不十分なこともあるため、必ず逆流防止弁を併用しましょう。
というわけで、「ちょっとした工夫」で、毎日のアクアリウムがもっと快適になります。
エアポンプに小さな穴や取っ手があるタイプであれば、エアチューブと目玉クリップで簡単に吊るすことが可能です。
まだ試したことがない方は、ぜひ一度チャレンジしてみてください。
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