2025年8月14日木曜日

流木、土管、配置換え、さらに……?プレコの喧嘩を抑える4つの選択

プレコの喧嘩を抑える4つの選択肢

水槽の中で繰り広げられる、プレコたちの静かな小競り合い。「また始まった……」とため息をついたこと、ありませんか?

同じ空間に暮らす彼らの相性やテリトリー争いに、悩んでいる方は意外と多いように思えます。

でも、ちょっとした工夫でそのバトル、減らせるかもしれません。今回は、プレコ飼育で起こりがちな「喧嘩」の対処法をやさしく、ストーリーで解説します。

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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

パチン!
タイマーが切れると、水槽のライトがふっと消えた。

部屋の中に残るのは、カーテンの隙間から差し込む月明かりと、水面にかすかに揺れる反射光だけ。深夜の静けさに包まれながら、わたしはそっと椅子に腰を下ろした。
月の光が、ガラス越しに底を照らすと、今日もまた、その下で「おしくらまんじゅう」が始まった。

グリーンロイヤルプレコとセルフィンプレコが、流木の下で尾びれをねじらせ、グイグイと頭を寄せ合う。どちらかが押し込まれるまでの力比べは、押し合いへし合いでぶつかり合いを続け、わたしのことなど気にもせず、やがて前面のガラスへとたどり着く。
いまこそ観察のチャンスとばかりに、水槽を上からのぞくと、目が合ったセルフィンプレコがさっと水槽の奥へと逃げていった。

彼には申し訳ないが、これで勝負ありとなったようだ。



水面下の静かな戦いをやめさせたい!


リラクゼーションしたいからこそ……

力関係がはっきりすれば落ち着くと聞いていた。
だが、困ったことに、その「はっきり」がなかなか訪れない。お互いに10cm前後。どちらが上とも言えない絶妙なサイズ感が、争いに終わりを与えないのかもしれない。
とはいえ、たいてい2、3分で終わり、深く追いかけまわすようなことはないのが、せめてもの救いだ。

今日も、やや優勢に見えるグリーンロイヤルプレコの勝利で幕を閉じた。
勝ち誇るような仕草もなく、すっと流木の影に戻っていくその姿。
わたしは安堵するが、本来なら癒されるはずの水槽で起きた喧嘩。

いつまでももやもやとした気持ちが胸の中に残る。

「……何とかならないものだろうか……」

はっきりと見えるはずの秋月の光が、ゆらいで見える気がした。

・素焼きの土管は、底物ファンの強い味方!


流木と土管

「まぁ、なるほどね。それなら、いくつか選択肢があるよ?」

そう声をかけてきたのは、お師匠様ことロゼッタだった。彼女はわたしの水槽の大先生で、手取り足取りいろいろと教えてくれる。
その黒く艶やかなショートヘアを軽くかき上げながら、真剣な眼差しでわたしを見つめた。

「まず、試してほしいのは、シェルター、つまり身を隠せる場所を増やすことさ
「となれば、また流木を買ってきて煮るんでしょうか?」

わたしは思わず顔をしかめてしまった。
煮るだけだとはいえ、トータルで半日はかかるし、水を溜めた一斗缶での重労働だ。
以前、煮沸でアク抜きをしたときは、ロゼッタが転倒しそうになったし、一歩間違えれば火傷の危険だってある。

「まぁ、次もキミに助けてもらっても、ボクは一向に構わないけどね♪」
「なるべくなら、それは避けたいところです……」

「えぇ~、なんで~? また、後ろから抱きしめてくれないの~?」
「もし、あの時手を出さなかったら、全身大やけどだったんですよ?」

「んふふふっ、冗談、冗談♪」

お師匠様は、わたしの反応を読んだかのように含み笑いを浮かべると、いつもの得意げな顔になり、明るい声に変わった。

一斗缶一杯の熱湯は、重くて扱いがちょっと危ないから、今回は流木はやめて、別の方法を紹介するね。土管さ!」
「土管?」

初めて聞く単語に、思わず聞き返してしまったが、目線の先ではロゼッタがにやりと笑って見せた。その表情には、ちょっとした悪戯心すら感じられるが、胸を張って自信満々のいつもの顔だ。

「底物や細長い生き物用に、ショップでは陶器でできた小さな土管が売っているんだ。これを使えば、プレコがうろつくことも少なくなるし、喧嘩しても逃げ込めるんだよ」
「……あぁ! それはいい考えですね!」

思わず身を乗り出して、彼女の言ったことを想像してみる。ちょっと無骨で、でも機能的なその形状が、水槽の中でどんなふうに使われるのか考えるだけでも、わくわくする。

「ただし、プレコが気に入ってくれればの話だけどね」
「むむむ。」

――ナマズは英語でキャットフィッシュと言う。
それが直接関係しているわけではないが、プレコも猫に負けず劣らず、繊細で気まぐれな生き物だ。
わたしは、彼女の言った残念な但し書きに、思わず唸ってしまった。
プレコの機嫌次第、否定できない現実が横たわっているのは間違いない。

「そして次の選択肢が、レイアウトの頻繁な変更かな?
「頻繁な?」

「そう、その通り! 毎週流木の組み方を変えるのさ!」

お師匠様は自信ありげに、にっこりと笑った。

「プレコの生活空間はさ、平面のように見えて、いろんなところに貼り付けるから、実はテリトリーが三次元なのさ。ということは……だよ?」
「あぁ! なんとなく、わかりました!」

彼女の言いたいことが、なんとなくわかり、わたしも言葉を重ねる。

「流木の組み方を変えれば、同じ水槽でもプレコには、まったく違って見えるんですね?」
「その通り。結果として2匹は毎週テリトリーを探すところからスタートするので、喧嘩も少なくなるというわけさ」

お師匠様の口ぶりに、期待と興味が一気にふくらむ。

「まぁ、この2つが主力かな」
「主力?」

わたしはつい、聞き返してしまった。

「それ以外には何があるんですか?」

・流木に土管、水槽は一気に手狭になる


争いをなくすためには?

「ここから先は、大技さ! ちょっとやそっとじゃできないよ

お師匠様が口角を上げたその表情は、どこか得意げで、わたしは少し身構えた。

「第三の選択肢は、水槽そのものを大きいものに変更することだね」
「なるほど。大きくすれば、ライバルと遭遇する機会は減りますね」

うなずきかけたところで、彼女は言葉を挟んだ。

「とはいえ、わざわざ追いかけてまでぶつかり稽古する子もいるからね。大きくすれば万事解決というわけじゃないんだ。だから、前二つの合わせ技にするといいと思う」
「なるほど、水槽を大きくしたうえで、隠れ家を増やして、レイアウトを頻繁に変えれば、より効果的ということですね」

「その通り。そして、次の技が最終奥義」

お師匠様がわざと意味ありげに声を潜めた。

縄張り意識を麻痺させるのさ!

その真剣な目が、冗談ではないことを物語っていた。

「はい? 麻痺させるってどうやって?」
「それはね、プレコをたくさん入れるんだ」

「いえ、喧嘩が多発しそうな気がしますが……」

身振りを交えながら、お師匠様は楽しそうに言葉を続ける。

「違う違う、キミの想像以上にもっと入れるのさ! さぁどうなる?」

いたずら好きな子どものような顔をしていた。
が、プレコを大量にだなんて、そんなことをしていいのだろうか?
わたしは、困惑しながら考え込むと、ふと答えが閃いた。

「……あぁ! 分かりました! もしかして、無関心になりませんか?」
「お! よく分かったね。ライバルが多すぎて、テリトリーを確保する感覚が鈍ってしてしまうんだ

言われてみれば、たしかに理にかなっている。
しかし、気になるところもある。

「でも、それを実現するには、実力差があってはだめなような気がします」
「そうだね。そのためにも、サイズは同じぐらいのものを集めたいね」

それに、一歩間違えれば、血生臭い水槽になるような気も
「その通り。だから、なるべく喧嘩っ早い種類や、相手に怪我をさせるような特徴を持つものはNGだね」

少し笑いながら彼女は肩をすくめた。
全体のつながりがようやく見えた気がして、胸がすっと軽くなる。
そして、お師匠様はコホンと咳払いをすると、したり顔になる。

「まぁ、この考え方を応用したのが、キミの目指しているプレコ水槽というやつさ!」

――なるほど。
新しい知識が、自分の中に根を張る音がした気がした。
最後にこう付け加えた。

「今まで4つ紹介したけど、それでもダメなときは、隔離してね」



土管投入!

それ以来、水換えを終えるたびに、わたしは流木の組み方を少しずつ変えるようになった。
新しく導入した、2本の土管も、前後左右にわずかにずらして位置を変えてやる。それだけでも、プレコたちの行動範囲が微妙に変わる。

それでも、ときおり、流木の貼りつく位置をめぐって小さな衝突は起こる。けれど、幸いなことに、怪我をするほどの大げんかには発展していない。

静かな夜、セルフィンプレコが土管の中でぴたりと落ち着いている様子を見て、わたしは胸をなで下ろす。
グリーンロイヤルプレコは、土管よりも流木の裏側にご執心のようだ。

いずれ新しいプレコをお迎えして、60cm規格水槽に切り替えるつもりだ。
だが、それは、もう少し先の話になるはずだ。

今はただ、わずかに揺れる水面の下で、小さな平穏が続くことを祈るだけだった。



まとめ

「プレコ同士の喧嘩、どうしたらいいんだろう?」と悩んでいる方、多いのではないでしょうか。とくに同じくらいのサイズのプレコを複数飼っていると、力比べのような小競り合いが起きがちです。
でも、ちょっとした工夫で、その衝突をやわらげることができるんです。

まずは、隠れ家を増やすこと流木だけでなく、小型の土管などシェルターを用意してあげることで、プレコたちの逃げ場ができます。意外と、これだけでも安全性がぐっと高まることが多いのです。

次に、水槽内のレイアウトを頻繁に変えるのも効果的。プレコたちは平面(底床面)だけでなく3D空間で縄張り意識を持つので、流木の配置を変えるだけで「ここは誰の縄張り?」かわからなくなり、一過的ですが無駄な争いが起きにくくなります。

それでもダメな場合は、水槽自体を大きくするか、ちょっと裏技ですが個体数を増やすという方法もあります。ライバルが多すぎると、逆に縄張り意識が薄まり、次第に無関心になることもあるんです。

もちろん、サイズや性格の差によっては効果が出ないこともあるので、最終手段としては隔離を視野に入れておきましょう。

プレコ同士が平和に過ごせる水槽づくり、ぜひ工夫しながら楽しんでみてくださいね。



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