知っているようで知らないφ○○/□□mm
アクアリウムを始めたばかりの頃、「ホース径って何のこと?」と戸惑った経験はありませんか?
外部フィルターの世界では、φ12/16mmや、φ16/22mmといった数字が当たり前のように並べれています。
でもその意味、ちゃんと理解できていますか?
思わぬ落とし穴があるかもしれません。
今回は、ホースやパイプに用いられる、この表記についてストーリでやさしく紹介したいと思います。
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街の風景は、いつもの大学の最寄駅とはまるで違う。たった二駅しか離れていないのに、時代の厚みすら感じさせるこの街並みには、不思議な魅力がある。
だらしなくアスファルトがはげた道はなんとなく魅力的ですらあり、朝から買い物客があふれ、威勢のいい掛け声や香ばしい煙が細路地からふわりと漂ってくる。
古くから続く飲食店の前で猫が大あくびをするのを見届けると、わたしは歩み始めた。
φ○○/□□mmの意味とは?
初冬の旧市街
舞い落ちるプラタナスの葉が、ひらりと風に乗ってロゼッタの肩にとまった。
その大きな葉を手でそっと払い落とすと、彼女は小さくはにかんだ。
雲ひとつない初冬の空を背景に、揺れる黒髪の下に隠れる瞳は、太陽の光を浴びると美しいアンバーとなった。細く整った目元と淡く紅をさした頬――その姿はまさしく若い女性そのものだ。
……だが。
赤い大屋根を見つけると、ロゼッタは歩調を速めた。
やがて見えてきたベージュ色の大きな建物。その2階こそが、今日の目的地。
グロスのついた柔らかい唇をきゅっと結びつつも、薄紅色の頬を上げて目を輝かせた。
そして……
「……んふ、……んふふっ」
小さな声で薄ら笑いをするその顔は、キャンパスに輝く麗しい一輪の花から、研究室に棲息するどろりと動く謎生物、「生き物マニア」へと変貌を遂げていた。
少々残念ではあったが、それが彼女の本性。わたしの熱帯魚のお師匠様なのだ。
今日の目的は、シャワーパイプ。だが、話は思わぬ方向へ転がっていく。
ホース径?
「アクアくん? 外部フィルターは好きかい?」
ふいに立ち止まり、目を輝かせながら、お師匠様が問いかけてきた。
面食らって目を瞬かせながら、反射的に返した。
「はい? 急に何を言い出すんですか……?」
わたしたちは先ほどから、外部フィルター売り場にいる。
棚には名も知れぬ小さなパーツがびっしりと並び、今さっき、その中からシャワーパイプを選んでひとつカゴに入れたばかり。
だが、片手を腰に、得意げに箱を指さして、彼女は続けた。
「このペースでキミの水槽が増え続けたら、いつかはこの子のお世話になるかもしれないでしょ?」
「エーハイム……2217? ずいぶんと大きな箱ですね?」
「もちろんだとも。90cm規格水槽用なんだから!」
胸を張って自信満々に言うと、彼女は白い箱を手に取り、くるりと横向きにして棚に戻した。その箱の側面には、ぎっしりと細かな情報が並んでいる。
その一点を白くて小さな指が示したので、わたしも箱を覗き込み、文字を追ってつぶやいた。
「定格周波数、本体重量、ろ材容量、適合水槽、最大揚程……うーん、情報がありすぎて、頭がパンパンです……」
苦笑しながら眉をしかめると、お師匠様は声を弾ませ、小さく笑いながら首を振る。
「ふふっ、まぁいろいろポイントはあるんだけどね。ボクが言いたいのは、そこじゃないんだ!」
わざとらしくわたしと目をそらしながら、彼女の指と視線はある一角を指した。
「ホース径……?」
わたしが小さく首をかしげると、彼女は大きく頷いた。
「そうなんだ! そこを読んでくれないか?」
「あ、はい。えっと、吸水φ16/22mm、排水φ12/16mm?」
お師匠様は嬉しそうに微笑んで、こうつぶやいた。
「あぁ、なんて素敵なんだ!」
ホースの太さ? パイプの太さ?
「これって……さっき言ってたやつですよね?」
「そうなんだ! 実はすごく大切なポイントなんだよ。特にエーハイム製品ではね」
「はぁ……?」
「だから、おさらいしてみようじゃないか?」
わたしが目を合わせて話を聞く姿勢をとると、ショートヘアの横髪をさらりとかき上げて、ぱぁっと笑顔になる。そして、目をきらきらと輝かせて、一心不乱に話し始めた。
「それじゃあ、ここに書いてあるφ○○/□□って表記、これは何を示しているのかな?」
「前が内径、後ろが外径……ですよね?」
「うーん、まぁ正解としよう。それじゃあ、φ12/16mmっていうのはどういう意味かな?」
なぜか少し眉をひそめて言いよどんだ気がするが、彼女はすぐさま次の質問を投げかけてきた。
「内径12mm、外径16mmという意味ですよね」
「大正解! と言いたいところだけど……」
「……キミ、さっきから何か重要なポイントを抜かしていないかな?」
何かが足りないようだ。
お師匠様はため息をつき、肩をすくめると、わたしの顔を覗き込むようにして問いかけてきた。
「そもそも、キミの話は、パイプとホース、どっちの話かな?」
――あぁ! そういうことか!
カゴに入っているシャワーパイプを持ち上げ、自分の小指と太さを比べてみる。
もし外径16mmなら、自分の小指より遥かに太いことになるのだが……。
「えーっと……エーハイムだから、ホース径ですね?」
「大当たり! よくできたね!」
12/16用と書かれたパイプは、明らかに小指よりも細かった。
一連の動作を見届けた彼女は、満面の笑みで拍手しながら得意げにうなずいた。
「その通り! エーハイムのホース・パイプ類の呼び径は、ホースが基準なんだ。つまり、そのホースに合うように、パイプ類は一回り小さく作られてるってわけさ!」
「なるほど……たしかに、同じ太さだったら差し込めないですよね」
「そうそう! よく気が付いたね! じゃあ、アクアくん? 話をまとめてみてくれたまえ!」
――そう言われても……。
とは言え、お師匠様はすでに、腕を組んで期待に満ちた目でこちらを見ている。
やるしかなさそうだ。
「はい。えっと……φ12/16mmはホースの太さで、それに対応するパイプは、一回り細く作られている。だから12/16『用』パイプと呼ばれてるわけで、実際の直径はもう少し細い……ということですね!」
「完璧じゃないか! アクアくん!!」
![]() |
・エーハイムはホース径が基準 |
給排水のオプションパーツを購入するときは要注意!
お師匠様は満面の笑みで深く頷くと、再び白い箱に向き直り、能書きをトントンと指ではじきながら示してみせた。
「ん? 2217ですか? えっと、吸水φ16/22mm、排水φ12/16mm……ですよね?」
とさりげなく読んだが、奇妙な感覚に苛まれた。
わが家にあるエーハイムエコS(2231)を思い起こすと、どう考えても吸水と排水も同じ太さだ。
だが、これは違う。
「あぁ! これは、吸水の方が太く作られているんですね? 不思議です」
「そうなんだ。おそらくろ材で詰まりやすい、吸水側に余裕を持たせた作りになっているということだね」
「ちなみに、キミのエーハイムエコSは両方ともφ12/16mm。つまりさっきからボクが言いたい事はだね……?」
彼女はカゴに入っていたシャワーパイプを手に取ると、わたしの顔の前でゆらゆらと注意を引くように振って見せた。
「外部フィルターには、ときどき吸水と排水でパイプ径が違う機種もあるんだ。シャワーパイプのような給・排水アクセサリーを買うときは要注意ってことさ」
――なるほど。
それが言いたいがために、さっきから内径と外径の話をしていたのか!
「いつかは、こういった機種のお世話になる日が来るかもしれませんから……しっかり覚えておきます!」
背筋を伸ばし、真剣な表情でわたしが言うと、お師匠様はにやりと笑った。
その時、たしかにわたしは理解したつもりだった。
しかし、それは思ったより早くやってきた。
目の前に鎮座する、エーハイム2211の外部フィルター。
吸水φ9/12mm、排水φ12/16mmとちょっと変わっているが、スレンダーなフィルターケースが魅惑的な外部ろ過器である。
なぜ、わたしの部屋にこれがあるのか――。
それを説明するには、45cm規格水槽に沈めていた流木とアヌビアス・コーヒーフォリアの行方を語らなければならない。
だが、それはまた、別の機会にするとしよう。
まとめ
外部フィルターに興味を持つと、思った以上に難しいのが「ホース径」の話です。
特に、外部フィルターを使い始めると、「φ12/16mm」や「φ16/22mm」みたいな表記が当たり前のように出てきます。でもこれ、とりわけエーハイム製品には、ちょっとした“落とし穴”があるんです。
まず、「φ12/16mm」とは、基本的にはどのようなものであれも内径が12mm、外径が16mmという意味です。
しかし、エーハイムに限っては注意しなくてはなりません。
たとえば「12/16用パイプ」と書かれていたら、そのパイプ自体の太さが内径12mm/外径16mmあるわけではありません。
実際には、ホースの内径に差し込めるよう、パイプの外径は少し細めに作られてあります。
これを勘違いして、ホームセンターなどで農業用ホースを「パイプの外径は16mmだからピッタリだろう」と買ってしまうと、
「あれ? ゆるい? というかホース太すぎっ!?」
なんてトラブルになることもあります。なので、一部の製品はパイプの直径はホースのサイズが基準、ということをぜひ覚えておいてください。
また、ややこしいことに、吸水と排水でホース径が違うフィルターがあります。
たとえばエーハイム2217だと、吸水がφ16/22mm、排水がφ12/16mm、エーハイム2211で吸水がφ12/16mm、排水がφ9/12mmとなっています。
とにもかくにも、ホースやパイプ、アクセサリーは安い物ではありませんから、購入する際はよく確認することが大事です。
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