発酵式かタブレットか?
「水草をもっと元気に育てたいけど、CO₂添加って難しそう…」そんなふうに感じたことはありませんか?本格的なボンベ式まではちょっと…という方にぴったりなのが、手軽に始められる“発酵式CO₂”と“CO₂タブレット”という選択肢。この記事では、それぞれの特徴やメリット・注意点をストーリーでわかりやすくご紹介します。
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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語
守りたい命がある……。
と言えば少し大げさかもしれないが、実はアヌビアス・コーヒーフォリアのことで悩んでいる。
彼? いや、彼女? とにかく、この水草はプレコの喧嘩の一番の被害者なのだ。
安くCO₂を添加したい!
大相撲"熱帯魚"場所?
水槽に夜が訪れると、グリーンロイヤルプレコとセルフィンプレコが、押し合いへし合いのぶつかり稽古を始める。
その苛烈とも言える勢力争いも、最近ではグリーンロイヤルがセルフィンにちょっかいを出してすぐに終わるようになった。
だが、その小競り合いの中で事件が起きた。
せっかく活着していたコーヒーフォリアが、ついに外されてしまったのだ。
仕方がないのでビニタイで固定してみるものの、三日に一度はおしくらまんじゅうの被害を受けて、流木から外れてしまう。
ずんぐりむっくりなナマズたちにボディアタックでも水草は折れることなく無事だし、活着が外れてふよふよ漂う程度なら、枯死のリスクはさほど高くないようにも思える。
しかし、落ち着かない環境が続いているせいか、コーヒーフォリアはぱったりと新芽を出さなくなってしまった。
もしかすると、ストレスを与えてしまっているのかもしれない――。
かくして水槽は増えてゆく
――ニヤリ。
口角をぐいっと上げながら、彼女は得意げに言い放った。
「ま、そういうことなら、――水槽を増やすしかないね!」
そう力説するのは、わたしのアクアリウムの師匠・ロゼッタだ。
どこにでもいそうな、普通の女子大生に見えるが、その実態は極度の生き物オタクである。
大学のサークル棟で毎日アクア談義に花を咲かせている。
が――。
ひゅるりと風が吹き抜ける。
初冬のバルコニーは午後の日差しこそ暖かいものの、時折吹き荒ぶ空っ風が首筋を冷やす。
冬の訪れを告げるように。
「……んくしゅっ!」
突然、お師匠様が小さなくしゃみをした。
小顔をゆがめて、数度ずぴずぴと鼻をすすっている。
「風邪、ですか?」
「そうなんだよぉ……。実習中にね、暑いからってジャケット脱いで作業してたら、このざまだよ……。ああ、早く熱帯魚屋さん行きたいなあ~」
「ははは、たしかに。あそこは年中、常夏ですからね」
ため息混じりの声には、ほんのりと後悔のにおいがあった。
が、鼻をツンと上げると、再び"師匠モード"に戻っていた。
「それで? 今日はアヌビアス・コーヒーフォリアの話でしょ? それなら、新しい水槽で保護するのがいいかもね?」
「えっ? 冗談ですよね? 水槽なんて、どこに……?」
思わず漏れた疑問に、彼女は勝ち誇ったように笑って言った。
「ふふん♪ あるじゃん。使わなくなった20L水槽が♪♪」
――ああ、そうだった。
夏にセルフィンプレコをお迎えして、45cm水槽へ引っ越してから、今は使われていない水槽がひとつある。
器具はどうだろう?
外掛けフィルターが余っているし、ヒーターも50Wのものが引退して保管してある。
底砂は使っていない大磯砂、ライトは蛍光灯がひとつ。
となれば、あとはCO₂だけ。これさえなんとかなれば――。
と、思考を巡らせていると、ひとつの妙案がひらめいた。
――せっかく水槽を増やすなら、生体も何か入れてみようか?
カージナルテトラ? いや、ミナミヌマエビ?
それとも、オトシンクルス?
「んふふっ。本当に考え始めちゃった?」
とロゼッタは口元を押さえてくすくすと笑った。
……変な顔をしていたのだろうか?
「え、違うんですか!? てっきり本気で言ってたんだと……」
「まさか! ボクだったら、アヌビアスの活着方法を、もうちょっと強化するけどね?」
「そんなぁ~~。本気で新しい水槽のこと、考えちゃいましたよ」
軽く肩を落とし、口を尖らせる。
「あはは! ようこそ、熱帯魚の世界へ! なんちゃって♪」
ロゼッタは満面の笑みでウィンクしてみせたが、その眼の奥には鋭い光が宿っていた。
おそらくこうして、水槽はまたひとつ増えていくのだろう。
彼女が「活着を強くするべき」と言ってくれたのは、せめてもの良心なのかもしれない。
――ひゅぅぅぅ!
強風が土埃を巻き上げる。
ロゼッタの太ももに、ひらりとモミジの葉が落ちた。
季節が移ろうように、わたしの水槽生活も、新たなステージに進むのかもしれない。
安くCO₂を添加したい!
「……あの、質問があります!」
意を決して口を開くと、ロゼッタの目がきらりと輝いた。
「おやおや! 珍しいじゃないか、キミがボクに質問だなんて! ちょっと待って、当ててみせよう……そうだね……」
ベンチから立ち上がると、足を開いて腕を組み、宙を見つめる。
そして数秒後――。
「安くCO₂を添加したいんでしょ?」
――!?
あまりの図星に、返す言葉が出ない。
「よ、よくわかりましたね?」
「昔取った杵柄だからね?♪」
得意げに髪をかき上げて咳払いひとつ。
「ボクのオススメは2つ。発酵式と、タブレットだよ」
「発酵式? タブレット?」
「順番に説明しよう」
ロゼッタは指を立てて語りはじめた。
「発酵式は、酵母のアルコール発酵を利用してCO₂を作るんだ。パン作りに使うイースト菌を、寒天と砂糖の培地に入れてペットボトルで培養する」
「あれ? この材料、スーパーで全部揃いますね!?」
「その通り!」
「でも……作るのも片付けるのも、面倒じゃないですか?」
「うむ、そこが問題だ。材料費は安いが、慣れてないと作るのに1時間、掃除に30分はかかるかなぁ~」
……やはり、時間と手間の問題はある。
大学でも寒天培地、家でも寒天培地――少しうんざりだ。
「でもね、CO₂をガスとして添加できるのは、魅力的だと思わないかい?」
「……はぁ?」
が、ロゼッタは肩をすくめて首を振った。
「いや、今のは言葉は、忘れてくれたまえ」
![]() |
・実際はもっと小粒です |
もっと簡単にCO₂を添加したい!
「その、……もっと、簡単な方法ってないんですか?」
「まあ、そんなことだろうと思ったよ。そこでCO₂タブレットさ!」
「タブレット?」
「フ●スクみたいな錠剤で、炭酸カルシウムとか重炭酸ナトリウムが主成分なんだ。水に入れると、ゆっくりとCO₂を出してくれる」
「うーん、それって、化学的なCO₂添加ってことですよね?」
「正解!」
ただし――と、彼女の表情が少し曇る。
「大きな水槽では、効果を出すにはタブレットをたくさん使わないといけない。コストも上がる」
「えぇ……」
「大丈夫、安心して。キミの水槽は20Lでしょ? 超有名なブランドの舶来品を使っても1月300円、しかもチューブにディフューザーなどの器具は一切不要だよ?」
それは魅力的な話に思えるのだが……。
「そんなに、うまく行く話があるなら、なんてみんなは使わないんでしょうか?」
「それはだね……、そのCO₂ガスを直接添加する方式に比べて、その場での強弱が付けづらいからなんだ」
「うん? と言いますと?」
「タブレットは二酸化炭素を直接水に溶かす方法なんだ。だから、一見効てないように見えるし、実際の成分的にも添加速度は緩やかなもののように思える。でも確実にKHに作用するものだから、入れすぎれば、当然水質急変のリスクもある」
「……???」
「まぁ、それが効果を示すには、水が弱酸性に…………大磯砂の……アヌビアスでは……※」
彼女から飛び出す化学的な単語の量に、頭がくらくらする。
だが、果たして、そんな化学薬品を水槽に持ち込んで大丈夫なのだろうか?
カージナルテトラはプレコと同じ、アマゾン原産の小型魚だ。
やはり、白い錠剤など似つかわしくない。
とは言え、アヌビアス・コーヒーフォリアには、最適な環境を提供したい。
――バシ!
突然二の腕を多々かられたので振り返ると、お師匠様がこちらをのぞきこんでいた。
「ねぇ~? 聞いてる?」
「……あ、はい!?」
「ゴメン♪ まだ、キミにはちょっと早かった話だったかもしれない」
わたしの考えを察するように、彼女はにやりと笑った。
「でも安心して。正しく使えば大丈夫だから。炭酸カルシウムだって大磯砂に含まれる貝殻と同じ成分だし、重炭酸ナトリウムだって重曹のことだしね」
「あぁ! そんな身近にあるもので作られいるんですね?」
「そうなんだよ。でも繰り返すけどね、水質の変化に敏感な生体は、十分に気を付けたほうがいいかもね」
「……んくしゅっ!」
冷たい風に背筋をすくめながら、わたしはもう一度くしゃみをした。ロゼッタは苦笑いしていた。
※
CO₂ガス、KH、pHの話は切っても切れない話です。しかし、需要が極めて少ない話だということが今までのブログ運営の経験的に分かっていますので、今回は割愛します。
興味を持ってくれたあなたに、幸あれ!
CO₂器具は五月雨のように……
それから一週間後――
新しい水槽が、できてしまった。
20Lの小型水槽に、大磯砂。
その中心には、アヌビアス・コーヒーフォリアが揺れている。
生体はまだ迎えていない。
カージナルテトラを入れようとしていたが、ネオンテトラとの見分けがつかず、お師匠様から「時期尚早」と一蹴されたからだ。
水底には、崩れかけたタブレット。
まるで盛り塩のように佇んでいる。
新芽が展開してくれることを、祈るばかりだ。
――このあと、矢継ぎ早に発酵式、ボンベ式、ソイル導入、そして水草水槽2本目へと続いていくのだが……
この時のわたしは、まだその運命を知らなかった。
まとめ
アクアリウムを始めると、「水草の成長にCO₂が必要らしい」と耳にすること、ありますよね。とはいえ、本格的なCO₂添加器具はちょっとハードルが高い……。そんなときに検討したいのが「発酵式CO₂」と「CO₂タブレット」です。
まず、発酵式CO₂は、酵母と砂糖を使ったアルコール発酵でCO₂を発生させる方法です。仕組みはシンプルで、パンをふくらませるのと同じ酵母の力を利用します。材料はスーパーで揃うし、コストもとても安いのが魅力。ただし、自作する手間がかかるのと、発酵の勢いによってCO₂の量が不安定になることも。掃除や管理も少しだけ面倒かもしれません。
一方、CO₂タブレットは、錠剤タイプの添加剤を水槽にポンっと入れるだけ。とってもお手軽です。成分は重炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムなどで、水に溶けると少しずつCO₂の元になる成分が放出されます。器具も配線も不要なので、初心者さんや小型水槽にはぴったりです。ただし、CO₂の量を細かく調整しにくいのがデメリットで、過剰添加には注意が必要です。
どちらも「まずはCO₂添加を試してみたい!」という方には、導入しやすい選択肢。あなたのスタイルに合った方法で、気軽に水草ライフを楽しんでみてくださいね。
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