フチあり水槽の利点
水槽選びで迷ったことはありませんか?
たしかに、オールガラス水槽は見た目が美しく、透明感抜群ですが、取り扱いには注意が必要です。
では、フチあり水槽はどうでしょう?
実はこちら、丈夫で扱いやすく、初心者さんにもおすすめなものとなっています。
この記事ではフチあり水槽についてストーリーで紹介したいと思います。
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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。
秋の夕方は、ため息のような静けさに包まれていた。
乾いた風が頬を撫で、空気は軽やかに澄みきっている。けれども、街路樹の影に足を踏み入れた途端、Tシャツ越しにひやりとした感触が肌にしみた。
そんな外気とは対照的に、引き戸を開けた途端、わたしの体は一気に湿気の塊に包まれた。もわりとした空気。アクアショップ独特の香り、フィルター音、そして漂う湿気。
ここに来ると、夏に戻ってきた気がするのだ。
フチあり水槽とプレコの夢
崩壊しつつあるタンク
「今日は、水槽だよね」
水槽のお師匠様ロゼッタも、メガネを曇らせつつ水槽コーナーへ一直線に進んで行く。
相変わらずの足取りの軽さに、わたしは一歩遅れてついていく。
わが家のセルフィンプレコ、20リットル水槽で限界を迎えつつある。
見た目はそこまで大きくなっていないけれど、食べる量と出る量がすごいのだ。
水がスピードも速く、泡が立ち苔も生える。毎日のように水換えしていても、ガラス面は茶色く曇り、底砂が糞だらけだ。
手始めに、外掛けフィルターを外し、小型水槽でも使える外部フィルターへと変更した。
たしかに、それで水質は安定したともいえる。
だが、それでも汚れが蓄積するスピードには叶わない。
考えてみてほしい。たかだか20Lの水槽に毎晩プレコタブレットが入るのだ。
もう打つ手は、水量を増やすことしかない。
過渡期の水槽売り場
だが、水槽コーナーに並んだガラスの列を前に、わたしは立ちすくんでいた。
(しまった! 値段が高くて、今の財布の中身では厳しいかも!?)
オールガラスの30cmキューブも、45cm規格水槽も、ひそひそと「そんな金額では足らないよ?」と言っている。どうやら、あの20L水槽セットがあまりにも安値であったため、勘違いをしてしまったようだ。
どの水槽も、学生であるわたしには、手が届きそうで届かない。
驚きを隠せず目でも泳いでいたのだろう、ここでお師匠様から声がかかった。
「はいはーい、こちらでーす♪」
わたしの手を引き、軽やかに店の出口をくぐり抜けた。
どうやら、財布の中身を用意せずにここに来てしまったわたしを見て、彼女は怒ってしまったらしい。このまま即刻退場で強制帰還だ。
が、店に背を向け駅に向かい歩き始めると、ぐいんと左腕を捻るように引っ張られた。
「ちょっ、どこ行くの!?」
「え? 駅じゃないんですか?」
背後から悲鳴が上がった。
振り返ると、彼女が目を丸くしてこちらを見ている。
わたしも呆然としていると、外の風がまた秋を知らせてくる。
夕陽がマンションの山並みから差し込み、アスファルトの上に長い影を落としていた。
「もうっ! こっち、こっち!」
「はぃぃい?」
まだ何が起きたかわからず、身動きできずにいると、彼女は絡みついた手をするするとほどいた。そして、駅とは反対方向にしばらく歩き、店の角にある交差点手前でこちらを振り返り手招きしてみせた。
どうやら、あの角を左に曲がった先になにかあるらしい。
その壁沿いには簡易的な屋根がしてあり、埃をかぶった水槽たちが、まるで忘れられたように並んでいた。
「これは……」
「フチあり水槽って言うんだ~。フレーム付き水槽ともいうけどね」
わたしは目を凝らして姿かたちを眺めると、懐かしい思い出があふれ出てきた。
餌を与えすぎて先生に怒られたあの日
生臭いのを我慢できずに涙目になった砂利掃除
ズシリと響いたバケツ一杯の水の感触
色こそ違うが、昔、小学校の教室の隅にあったものだ。
ランドセルロッカーの上で、金魚が泳いでいて、時折わたしたち子どもにも尻尾を振ってくれた、あの水槽。
「懐かしい……。これ、売り物なんですね」
「もちろんだとも。ちょっとこの店は特殊でね。外に出してあるんだ~」
右下には、白い値札シールが貼られている。
「1,980円」
(※20年前価格です)
思わず声が出た。
「安い!」
「そうでしょう?」
ロゼッタは誇らしげに笑った。
「これなら、キミでも買えると思ってね」
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・遠目ではごつごつとしたフレームが気になるのだが…… |
フチあり水槽の秘密
遠目から、目の前の水槽をじっと見つめる。
たしかに45cm規格のようだ。
その隣には60cm規格水槽もある。
あれ、そのさらに先には……30cmキューブもあるようだ。
どれも、数千円安い。
「なんで、こんなに値段が違うんですか?」
「ここを見てよ?」
ロゼッタは、水槽の上辺を指でなぞった。黒いプラスチックのフレームが、がっしりと水槽を上から囲っている。
大きく開いた口、その先には底面も余すことなく見えている。
ガラス板の奥にはっきりと見えている白い布らしきものは、おそらく保温材だろう。
そして底面にも、厚みのあるプラスチック板ががっちりとガラスをホールドするように接着されている。
「すごく……補強されてるんですね」
「その通り。フチあり水槽は、この補強フレームがあるから、強度が高いんだ。接着だけで作るオールガラスとは違って、ガラスが割れにくいし、多少雑に扱っても大丈夫」
そう言いつつ、今度はロゼッタは直角に曲がった黒ブチから、底に向って指をつーっとすべらせて見せた。なぞった指は前面と右側面が作り出すラインを通り、すとんと空を切った。
――ん?
「もしかして、この部分にも?」
「そうなんだ♪」
水槽の天と地をつなぐように立つ4本のライン。そこにも、目立たぬよう補強の柱が入っていた。
「ところで、さっき見てた、オールガラスの水槽はどうだったかな?」
――あッ!
「シリコンで直接接着されていました!」
「よく見てたね。つまり、丁寧に接着しないと水漏れするし強度もでないということだよね?」
なるほど、そういうことか。
目の前の水槽をみる。
強度的な弱点になるガラスのつなぎ目には、全てフレームの筋が通っていた。
「だからフチあり水槽の方が、強度があって値段も安いんですね!」
お師匠様は首を大きく振って頷いた。
「その通り! もし、プレコ飼育し続けるのなら、覚えておいた方がいいかもね」
60cm水槽ならまだしも、それ以上となれば途端に水量が増えて重量もかさむ。ともなれば、その器を支える強度は、生体の命どころか個人の人生さえ左右することにもなる
が……
「でも、やっぱり見た目は……」
わたしは口を濁す。フレームが目立つぶん、どこか古臭さがあった。
すると、彼女は口をへの字に曲げて首を苦笑いをした。
「まぁ、言っちゃ悪いけど、ださいよね?」
そして、大きなため息を着いた。
「でもね。水草水槽みたいにレイアウトが水槽ならともかく、プレコみたいな魚が主役なら話は別だと思うんだ」
「どうしてですか?」
「だって、キミは動物園で、檻の柵が目に入るかい? 視線は生体に集中しやすいでしょ?」
「そうか! たしかに、檻があっても迫力は満点ですもんね」
そう言うと、お師匠様はいつもの得意げな顔で、んふふと笑って見せた。
しかし、わたしの脳裏にはもう1つ別のものが浮かんだ。
ロッカーの上に置かれた金魚の水槽が浮かぶ。あのチープなブルーのフチの中、無邪気に泳いでいた金魚たち。尻尾をフリフリとして餌を訴えている姿を思い出すと、懐かしさが溢れ目頭が熱くなった。
購入!
「……決めました」
その中でもひと際状態が良いもの選び、力いっぱい両腕で抱え持ち上げた。
水槽はガラスで出来ている。重量物と相場が決まっているのだ。
これは今使っている20Lのオールガラス水槽から学んだ事であるのだが……、思いのほか軽く、すっと持ち上がるとそのまま後ろ重心が傾いた。
――あぁ!
と思った瞬間、傾き始めていた腰がピタリと止まった。
「ちょっと気を付けて! フチあり水槽はオールガラス水槽よりも軽いんだからさぁ!」
お師匠様がさっと手を出し体が倒れるのを止めてくらたらしい。
まいった、成すこと全てお見通しのようだ。
「それでも、水を入れた両者の重量差なんて誤差だけどさ~」
彼女はそういうと、胸を張って、にやりとして見せた。
帰宅後、わたしは丁寧にその水槽を洗った。外のスス、内側の水垢、すべてを落とし、タオルで拭き上げたのだ。
水槽はあの時教室で見た姿を取り戻していた。
さぁ、新しい世界へ。
わたしとプレコの物語は、またひとつ、ページをめくることになる。
まとめ
水槽を選ぶ際によく耳にする「フチあり水槽(フレーム付き水槽)」と「オールガラス水槽(フレームレス水槽)」は、どちらもガラス製ですが、それぞれ特徴やメリットに大きな違いがあります。
最後に、両者の違いを触れつつ、話を終えたいと思います。
まず、「フチあり水槽」は、ガラスの上下や四辺をプラスチックや金属のフレーム(=フチ)が囲んでいるタイプの水槽です。このフレームが水槽の強度をしっかりサポートしているため、衝撃や圧力に強く割れにくいのが特徴です。また、フレームがあることで水槽自体が堅牢で、長期間使用しても変形しにくいという安心感があります。
価格も比較的手頃なものが多く、初心者や学生の方にもおすすめしやすいタイプです。
一方、「オールガラス水槽」は、その名の通りガラスのみで作られたフレームレスの水槽です。見た目の透明感や美しさを追求したい方に人気があり、水槽の縁が細く視界を邪魔しないのが魅力です。水草水槽やレイアウト重視のアクアリウムでは、このスタイリッシュな見た目が活きてきます。
ただし、ガラス同士がシリコンで接着されているため、衝撃に弱く割れやすく丁寧な取り扱いが求められます。また、長期間使用していると、わずかな傾斜でガラスの接着面が少しずつズレてくることもあるため、水槽用マットの使用が必須です。
ただし、その値段については、最近こなれてきてた感じがあるものの、依然として学生や初心者さんが気軽に選べるものありません。
PB(プライベートブランド)やセール期間中など、よく吟味して購入することをお勧めします。
(ポンと出せる大人にとっては、随分と安くなったと感じますが。)
まとめると、フチあり水槽は強度や扱いやすさ、コスト面で優れており実用的です。一方、オールガラス水槽は見た目の美しさが際立ちますが、取り扱いに気を使う必要があります。飼育する魚や環境、予算に合わせて選ぶことがポイントです。どちらも魅力的なので、自分のスタイルに合った水槽を見つけましょう。
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