2025年7月20日日曜日

外掛けフィルターを改造し、セラミックろ材を入れてがっかり?

外掛けフィルターにセラミックろ材を入れるとき、知っておきたいこと

水槽のろ過を強化しようと思って、「外掛けフィルターにセラミックろ材を入れてみよう!」という方、けっこう多いのではないでしょうか。わたしもその一人でした。
でも、実際にやってみると楽しい反面、意外と……

今回はそんな話をストーリーにしてお届けします。

**********************************

(これは20年前とフィクションが織りなす不思議な世界の物語)

わたしの小さな水槽――たった20リットルのプレコ水槽に異変が起こり始めたのは、セルフィンプレコが10cmに迫ろうかという頃だった。

食欲も排泄も日に日に盛んになり、それに比例してフィルターたちがついに悲鳴を上げ始めた。スポンジにウール、どれも茶色く目詰まりし、水の勢いが落ちるたびにもみ洗い。山となって出てくるのは、細かい木くずだった。

「もう、どうしようもない!」

と、手始めにブリラントをツイン仕様に変更した。
次は、外掛けフィルターの改造だろう。スポンジストレーナーはすでに付いているが、木くずを完全に防げるわけではない。

ウールで詰まるなら、もっと通水性の高いろ材を使うべきだろう。

――あの裏技を使うしかない。



セラミックの夢は詰まりやすい


旧市街の先へ

電車に揺られること5分。目的地は、大学と同じ市にある旧市街。急な坂を下りきった先に広がる、古き良き街並みだ。
観光客は駅前か、県内でも有名な名所に流れてしまうため、この一帯は同県民にもあまり知られていない。何を隠そう、わたしもその一人だ。

だが、ホームに降り立った途端、うなぎの香ばしい匂いが鼻先をくすぐった。細路地には古い家々が寄り添い、所狭しと人でにぎわっている。やがて大通りを抜けると、大きな神社が視界に広がった。なるほど、この街にもまだ秘密があったらしい。

わたしをここに連れてきたのは、水槽のお師匠様こと――ロゼッタだ。
無類の水槽好きで、少し話が長いのが玉に瑕だが、性別を超えて信頼し合っている友人だ。



ろ材選びは知識と経験の戦いだ

店に入るなり、わたしは外掛けフィルターの通水不良について説明した。

「わかった、ついにだね」

ロゼッタはどこか神妙な面持ちで、ろ材コーナーへと突き進んだ。
いつもは明るい顔で道具を解説してくれるのに、なんだか不安になる。

棚には、大小さまざまなセラミックろ材が美しく陳列されていた。
―これだ!

「あったよ、あったよ!」

わたしが手に取ったのは、雑誌でよく見かける、高品質を謳い文句にしたリング型ろ材。高級感ある白地の箱が、いかにも効きそうな風格を漂わせていた。

だが、すぐにロゼッタの鋭い指摘が飛んだ。

「外掛けフィルターのろ過槽って、狭いでしょ?」

う……。
痛いところを突かれてしまった。

「そんな大きなろ材入れたら、せいぜい20粒ってとこじゃない?」

その通りだ。これでは、ろ過層がスカスカになってしまう。
では、第二候補はどうだろう。

隣には、白くて不規則な形のセラミックろ材。外部フィルターメーカー製で有名なものが置いてある。量も多く、値段も手ごろで、表面積も高く詰め込みが利くと評判もすこぶる良い。
しかし、またしてもお師匠様は首を振った。

「たぶん……、たぶんだけど、それじゃあ、詰まるような気がするなぁ」

たしかに……。
言われてみればそんな気もしてきた。
今わたしが求めているのは、通水性があり、程よく小さいろ材だ。……あたりを見回す。
だが……

「思いのほか、選択肢は限られますね」
「その通りなんだ。小粒のリング状とか、ボール状が無難だろうけど……ねぇ?」

そうして1箱1箱に手を伸ばして選んでいるうちに、だんだんと価格が気になってきた。
どれも3,000円前後。先日買ったツインブリラントの1.5倍だ。
どうしようかとまごついていると、ロゼッタが声をかけてきた。

「ほら、こっち。上部フィルター用のろ材だけど、小さめのリングタイプで2,000円。用途も似てるし、きっと悪くないよ」

たしかに、これなら財布も傷まない。
ようやく定まった。

――そのとき、ロゼッタがぽつりと声を掛けてきた。

「ところでキミ、改造の方法知ってるの?」

・最近は多種多様なろ材が販売されている


水はただ流れるだけじゃない

外掛けフィルターの仕組みは、実に巧妙だ。

縦に入ったウールマットが通水性を確保しつつバクテリアの棲み家となり、活性炭が汚れを吸着する。効率的で、透明な水を維持するための工夫が積み重ねられている。

「もし、考えなしにセラミックろ材を入れれば、水の流れが大きく変わってしまうのさ」

そう言いながら、ロゼッタは店先の展示水槽に案内してくれた。
二人して、透明なクリアケースの中を上からのぞき込む。

外掛けフィルターの中で、水が静かに、しかし確実に、ウール全体を流れていく様子がよく見えた。

「ポンプから出た水が、上下に分かれてウール全体に行き渡っているでしょ? でも、ここにセラミックろ材を入れたら……」

――はっ。
ウールはただのフィルター材じゃない。水の通り道を「導く」壁としての役割も担っていた。結果、接水面を最大に確保しながら、効率的な導水路を構築していたのだ。
これなら、ウールであっても通水性は高いし詰まりづらい。

「つまりだね……」
「セラミックろ材を入れるなら、うまく流路を作らなければダメだということですね?
「ピンポーン♪ そうでないと、ろ材の中で水が淀んでしまうんだ~」

ロゼッタの目が一段と鋭くなった。

「それでも、きっとキミは専用ろ材を解体してまでやると思うだ。何があっても自己責任。それだけの覚悟、あるんだろうね?

――えっ、専用ろ材を!?

そうか! ウールに包まれている、あの骨組みだ。
これをうまく利用すれば、水の通り道を「導く」壁を簡単に作れるに違いない。
目から鱗だった。

「それで……?」
「……うん?」
「お師匠様! 骨組みを抜き取るところから教えてください!」
「えぇっ!? そこからかい!」

呆れ顔のロゼッタが、なんだか嬉しそうに笑った。



神話の終焉

あれから、セラミックろ材とプラ板、バスコークをそろえて改造に挑んだ。
結果、たしかに通水性は改善されたし、詰まりにくくもなった。

でも、掃除のたびに、ジャラジャラとろ材を全部取り出すのがとにかく面倒だった。それに、思っていたほど水がきれいになった実感は得られなかった。

「高価だから、もっとすごいかと思ってました」

そう漏らすと、ロゼッタは笑った。

「あはは、高いのはね、何年も使えるってだけ。それに、外掛けのろ過層はやっぱり狭い。ろ材の実力を全部引き出すには、数が足りないかもね

ロゼッタはにんまりと笑ってみせた。
まるで、こうなることを予見していたかのように。

そう、詰まっていたのはゴミではなく、わたしの理想だったのかもしれない。

・シポラックスミニも外掛けで使いやすいろ材の1つだろう


まとめ

というわけで、以下はストーリーで紹介した内容のまとめです。

まず押さえておきたいのは、外掛けフィルターの構造です。あの縦に入ったウールマット、ただのゴミ取りではありません。物理ろ過と生物ろ過の両方を担っているのは当然として、実はこれ、水の流れを“導く壁”としても機能しているんです。

これを取り外し、考えなしでセラミックろ材を詰めてしまうと、水の流れが乱れたり滞ったりしてしまいます。水がろ材の中にとどまってしまえば、バクテリアも活躍できず、逆に目詰まりやオーバーフローを招く可能性も。
そこで必要なのが「流れを導く構造の再構築」です。

たとえば、もともとのウールマットの骨組みを再利用し、プラ板などで穴を埋めるように仕切りを作ることで、水がセラミックろ材全体に均等に行き渡るよう工夫します。こうすることで、本来の性能を少しでも引き出せるようになります。

とはいえ、外掛けフィルターは構造が小さいので、高価なろ材を入れてもその実力をフルに発揮できるとは限りません。また、掃除のたびにろ材を全部取り出すのは、なかなか手間がかかるもの。

しかも、ろ材の入れ替えだけで劇的に水が変わる……なんてことは、実際にほとんど起こりません。

改造には工夫と根気、そして「自己責任」が求められます。わたしのように、ちょっと失敗しながら学ぶのもまた楽しいですが……。
より良いろ過、より良い水質を求めるなら、素直に別形式のサブフィルターを利用した方が近道です。

というわけで、今回はここまで。
同じことを考えている方の参考になれば幸いです。



0 件のコメント:

コメントを投稿