男性にも使って欲しい手袋とハンドクリーム
底砂を洗ったあと、手がひりひりした経験はありませんか?
とくに大磯砂など天然の砂利は、細かな傷をつけやすく、思わぬ手荒れの原因になります。今回は、水槽の底砂を扱うときにおすすめの手袋と、作業後の手荒れを防ぐためのハンドクリームの選び方について、ストーリーとともに紹介します。
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(これは20年前とフィクションが織りなす不思議な世界の物語)
暖かな日の光が、白いビルの外壁を柔らかく照らしている。潮騒が微かに聞こえるたび、優しさにあふれた風が体を包み込んでくれるような……そんな気がした。
新しい底砂投入! 洗浄から手を保護する
今日は港町にやってきています
今日は、港町の熱帯魚ショップにお師匠様と一緒にやってきた。
お師匠様ことロゼッタは、水槽の大先生にして、尊敬すべき大先輩。
中学生の頃からすでに水槽を管理していて、生物のことになると話が止まらなくなる、筋金入りの生物オタクだ。
並んで歩いていると、どの2人組のもカップルらしく、手をつないでショッピングセンターに繋がる、高架の動く歩道へと吸い込まれていく。
年齢も服装も、わたしたちとそう変わらない。そんな人たちを見たせいか、気まずいような、ちょっとこそばゆいような空気が流れた。
わたしもロゼッタも、自然と目をそらして、俯いてしまう。
だが、赤いレンガの道を抜け、目当ての熱帯魚ショップが見えた瞬間、ロゼッタの表情がぱぁっと明るくなった。
「ふふん、さぁ、目的の店だ! 存分に見て回ろうじゃないか!」
袖をぐいっと引っ張られて、わたしも思わず笑ってしまう。ロゼッタのテンションは、いつも通り全開だ。
底砂洗いの後に残された傷
色とりどりの熱帯魚、整然と陳列された水槽用品、そして、清潔感のある明るい店内。
たしかに、もしデートでくるなら、うってつけの場所だろう。
だが、わたしが目を付けたのは、ひときわ大きなグリーンロイヤルプレコ。
ではなく、彼の足元。赤い底砂だった。
底にいることの多いプレコだからこそ、床の色が違うだけでこんなにも鮮やかに見える。
いつもの店で見慣れた魚種のはずだが、この店ではまったく違って見える。
となれば、すぐに取り入れたくなるのが、熱烈水槽ファンというもの。
憧れのその赤い水槽を真似して、わたしも「桜大磯砂」を買うことにしたのだが、嫌な記憶を思い出してしまった。
大磯砂をコメを研ぐように洗うと、気が付けば手がボロボロ。
爪は光沢を失い、爪は傷だらけで、手がひりひり。
「もう大変だったんですよ!」
そう漏らた先のお師匠様は笑っている。
それくらいならまだいい。
無菌操作が必要な実験の日には、消毒の70%エタノールが傷口に染みて、身悶えするほどの激痛に変わるのだ。
うんうんと頷いたロゼッタが、ぽんと手を叩いた。
「じゃあ、これから100円均一に行こう!」
熱帯魚ショップから100均へ ― 傷から学ぶ手袋のススメ
上下4層の、ショッピングモール。
地下に噴水があり、大理石の壁と柱で吹き抜けになっている。
どこを見ても、浮かれた二人組ばかり。
大人のデートスポットといっても過言でないこの場所は、ランチの価格のレストランでさえ学生の財布には厳しい。
なのに、そこにぽつんとある100円均一。
ザッ、ザツ、ザッ、ザツ、ザッ……
革靴の音が響く。
たくさんのスーツ姿の大人たちが、その横を通りぬけエレベーターホールに向かっていった。
観光地のように見えて、実はオフィスビルのエントランス。
なるほど――これがこの街の本当の姿のようだ。
「さぁ、こっちこっち!」
そんなことを気にすることもなく、ロゼッタは、わたしの手首を掴んで引っ張る。
半ば強制的に店内、そして着いたのは掃除用品売り場。
その角を、指をぴしっと伸ばして、笑顔で言う。
「これだよ! 手袋♪」
そして、両手を後ろ手に組んで、にやりと笑った。
長いうんちくが始まる合図である。
「そもそも、底砂には、川や海の天然素材が多いのさ。大磯砂ってのは――」
こちらも負けてられない。
「神奈川県大磯海岸で取れていた砂だって、聞いたことがあります」
「その通り! だからね、天然ものだね」
つまり、ゴミが入っていたり、尖く鋭い砂利が混ざっていることもあるあるらしい。
そこまで、言ったうえで、
「それに、偶然だったかもしれないけど、砕けて刃物みたいに鋭くなった貝殻が入っていたこともあるんだ!
と語気を強めた。
だが、あの中からすべての異物を取り除くなんて、至難の業のように思える。
「もちろん、最近は質も上がってきてるし、混入は減ってきてる。だけど、念のための備えは大事ってこと」
「だから、手袋なんですね」
「そういうこと♪」
「この間なんて、タバコのフィルターが入ってだんだから! もぅ、やんなっちゃう!」
軍手?ゴム?それとも……水槽に合う手袋、選び方のコツ
お師匠様はさらに説明を続けた。
「要は、手さえ保護できればいい。ビニールでも、ゴムでも、軍手でもいいんだよ」
「でも、軍手って濡れると……」
「そう。重くなるし、滑りやすくなるから注意してね。革はあまりお勧めできないな。濡れるとゴワつくし、乾くと臭くなる」
ううむ。
「だから、なるべく防水性があるものがいいかな。それと、綺麗なものを使ってよ?」
思ったより条件があるようだ。
「例えば、家にペンキ塗りで使い古したのが……」
「絶対にダーメ! 水槽には、清潔でキレイなものを使うこと」
思わず背筋を伸ばしてしまった。
たしかに、間接的に水槽の中に入るものだ。キャンプや掃除で汚れたものは極力さけるべきだろう。有機溶媒や塗料などがしみ込んだ軍手などはもってのほかだ。
「新品で、安くて、手軽なものを使う。使い捨て手袋でも、重ねて使えばOKだよ!」
「そ! れ! に!」
ぽんと人差し指を1本立て、わたしの頬に押しあてた。
「キミたちは、『オレ、手袋めんどくせえぇ~』とか言っちゃう人種でしょう?」
――図星だ。
「でも、生活してると、絶対に指をケガする日がくる。でも水換えは止まらない。だから、手袋は1つぐらい持っておくといいはずさ!」
なるほど……。
そこまで言われると、ぐうの音も出ない。
わたしは、これ以上ロゼッタを昂らせないよう、100円のゴム手袋をひとつ、そっとカゴに入れた。
手荒れに効く“保湿”の考え方
「それじゃあ、次行こう! 次♪」
再び、お師匠様は腕をぐいとつかみ、散歩が楽しくてたまらない小型犬のように前を歩く。
たどり着いたのは……
「最後はここ。素手で洗ってひりひりするなら、ハンドクリームさ♪」
化粧品売り場に立った瞬間、わたしより若い女性たちの視線が突き刺ささった。
「あの、……すごく、居づらいんですが?」
「おっと、これは失敬、失敬。裏の衛生用品コーナーに移動しよう」
気おくれしたこちらの心情など気にすることもなく、明朗な声で説明をする。
「手を保湿しておけば、手荒れの緩和になるからね。さっきも言ってたけど、キミの学部は無菌操作多いでしょ?」
そうなのだ。実験が週2である。手荒れは抑えたいところだ。
だが、さっき、ちらっとみた売り場で1つ疑問が生まれた。
「でも、種類がいっぱいありすぎて……どれを選んでいいか……」
天を仰いで笑いながら、言った。
「どれでもいいさ~。塗らないよりマシだよ」
たしかに、ヒリヒリと痛む手を放っておくより、ずっといいのかもしれない。
ハンドクリームを塗る日が来るとは夢にも思わなかった。
細くて白いロゼッタの手を見る。
たしかに、手袋もハンドクリームも必需品な人たちもいるのかもしれない。
ハンドクリームの落とし穴?水換え前の“手洗い習慣”が大切な理由
大きくうなずいたわたしに、ロゼッタは「ここが注意点」とばかりに手を叩いた。
でもね、塗ったまま水槽に手を入れたらダメ! 油膜の原因になるかもしれないから!」
「水換えのときは、ちゃんと手を洗ってから、ですね」
「そういうこと♪ 手洗いの習慣がついていいじゃない~?」
それに、今はネット通販でも買えるらしい。
「化粧品売り場に入りづらい時は、ネットを使えばいいんだよ。ね?」
ロゼッタはそう言って、ふっと笑ってみせた。
まとめ
新規に底砂を投入する際など、手で洗浄を行う場合には、手を保護するために適切な手袋の使用が重要です。
大磯砂などの天然素材には、鋭利な砂利や砕けた貝殻が混入していることがあり、素手で扱うと爪が曇ったり、手がひりひりと痛むことがあります。
さらに、近年では消毒用エタノールを使用する機会が増えており、傷口に染みて強い痛みを引き起こすこともあります。
手袋にはビニール、ゴム、軍手などさまざまな種類がありますが、水槽作業には防水性と清潔さが求められるため、使い捨てのビニール手袋や未使用のゴム手袋が適しています。
使用済みの軍手や汚れた手袋など、有機溶媒などが付着している可能性があるものは、極力使用を避けましょう。
それでも、ないよりはまし。
新品の軍手でも、十分に用を果たしてくれるはずです。
ダメにする覚悟があれば、革手袋でもいいでしょう。
また、洗浄後の手荒れを和らげるには、ハンドクリームの使用が効果的です。
ただし、クリームを塗ったまま水槽に手を入れると油膜の原因になるため、水換え前にはしっかりと手を洗う習慣をつけることが大切です。
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