エアチューブから空気が出ない? 原因とすぐできる対策
新しいエアチューブに交換したら、「エアストーンから泡が出ない!」というトラブルに見舞われたことはありませんか?
ポンプは動いているのに、チューブの先から出るはずの空気がぷつりと止まり、「故障?」と勘違いしてしまうことも。その原因は、意外にも単純な「チューブの長さ」にあることが多いのです。
この記事では、エアチューブから空気が出なくなる原因とその仕組みをストーリーとともに、ご紹介します。
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(これは20年前の物語)
初夏。梅雨入り前の空はまだ眩しく、透き通るような青さに染まっていた。
好天の下で訪れた店で、ついに2本目の水槽を手に入れた。エーハイムの30cmキューブ、それもハイタイプ。たった10cm高くなるだけでスリムかつスタイリッシュに映るその姿は、まるでモデルのようだった。
エアチューブ、気泡が出ない原因は
新しい水槽、新しいエアポンプ
いずれはセキショウモなど、背の高い水草でいっぱいにしたい。そんな未来を夢見ながら、機材もすべて揃えた。ヒーター、フィルター、ライト、そしてエアポンプ。おかげで財布はぺたんこになったが、新たな楽しみを前に気分は高揚していた。
ただ、決して順風満帆だったわけではない。エアポンプの位置がコンセントから離れているため、延長コードがなければ届かないのだ。
だが学生の懐事情。出費を抑えるため、長いエアチューブでなんとか創意工夫して乗り越えることにした。
が――
「なぜだ! なぜなんだ! エアが出ないじゃないか!」
設置してスイッチを入れた瞬間、うなりを上げるポンプとは裏腹に、泡はひとつも上がらない。あわててお師匠様に電話した。アクアリウム歴5年超え、わたしの頼れる先輩だ。
犯人捜し
「おじゃましまーす♪」
いつもの軽い調子で、すぐに来てくれた。
部屋に入るなり、ふんふんと鼻歌まじりに水槽まわりを見てまわる。エアポンプ、逆止弁、三又分岐、2つのエアストーン。
「あれー、おかしいなぁ」
首をブンブンと振ると、大きくため息をついた。
「エアチューブが折れてたり曲がってたりすると思ったんだけどさ」
エアチューブは柔らかい。だから途中で折れていたり、曲がっていたり、さらにはねじれていたりすると、そこが空気の通り道をふさぐ原因になるのだという。
そこに異常がないとなれば、一体なにが悪さをしているのか。わたしには皆目見当がつかなかった。
「これは、もしかすると……もしかするかもね」
真剣な眼差しに変わったそのとき、嫌な予感がした。
エアポンプだ。
あぁ、エアポンプを壊してしまったのだ。
そうに違いない。だからエアが出てこないんだ。
やがて、お師匠様がため息をついて髪をかきむしると、わたしの心は不安でいっぱいになった。
(どうすれば、治るんですか?)
今すぐ聞きたい。けれど、聞ける勇気が出ない。
たかが2000円。されど、学生の財布にとっては痛すぎる。
祈るような気持ちで結果を待っていると、飛び出してきたのは意外な提案だった。
「一応試してみるけど、ストーンを手で持ち上げてみて?」
「こ、こうですか?」
曰く、水圧に負けてエアが出なくなることがあるのだという。
恐る恐る、言われたとおりにストーンを持ち上げた――が、
……出ない。
エアポンプはブウウウ……と間の抜けた音を立てるばかり。
わたしは膝から崩れ落ちた。お師匠様も、眉間にしわを寄せている。
「てっきり、水深が深いのが問題だと、思ったんだけどなぁ」
やはり、エアポンプが悪いのか……?
ね? そうなんでしょ?
もったいぶらずに早くいってください!?
態度の煮え切らないお師匠様に、心の叫びばかりが大きくなる。
もう、こちらから、聞くしかない!!
がらんどうのように見えて
「エアポンプ、そんなに悪いんですか?」
今にも泣きそうな声で尋ねると、お師匠様は目をぱちくりさせたあと、ぱっと笑顔になった。
「ぷっ……くっくっくっ……」
鼻でくすくすと笑い、落ち着いていからから、今回の犯人について教えてくれた。
「違うよ、違う。おそらく原因はエアチューブだよ」
「へぇ? なんだぁ?」
全身から力が抜けた。
たしかに、エアポンプの出力が弱いという可能性もある。だが、使っているのは水槽に合った製品だ。ならば、他に原因があるはずなのだ。
「だけど、キミがせっかく買ったこのエアチューブ、無駄になりそうだよ」
「どうしてです? 折れてたり、曲がってたり、どこも悪いところはないんですよね?」
「実はね、エアチューブがあまりに長すぎると、それだけで空気が出にくくなるんだよ」
「えぇぇっ!?」
「そんなことで出なくなるの?」
知らなかったことが恥ずかしい。
だけど、冷静に考えれば辻褄が合う。
そして、考えれば、考えるほどに、穴があったら入りたい気持ちに苛まれる。
わたしの気持ちを察してのか、お師匠様は肩をポンと叩いてくれた。
「一見、中は空っぽでスカスカに見えるだろう? でも、空気が移動するとき、チューブの内壁と摩擦してるんだよ」
その結果、長ければ長いほど空気の抵抗が増して、ストーンまで届かなくなるのだという。
ストーンの種類や水深によっては、今回のように泡がまったく出ないこともあるらしい。
わたしは家族が使っていた延長コードを少しだけ借り、ポンプをコンセントのそばへ移動させた。
チューブを短くすれば、すべてがうまくいくはず。
お師匠様がハサミを構えて言った。
「いいかい?」
「もちろんです!」
ばっさりとチューブが切られ、再びストーンに接続された。
シュワァアーー
水中に、無数の小さな気泡が舞い始めた。
水槽が、生き返ったように見えた。
「やっぱりね」
お師匠様は今日も、満足げに笑った。
大きくすることの弊害
「もっとも、今回の場合はチューブを短くする以外にも、パワーのあるエアポンプに交換するって手もあったんだけどね。ただね……」
そう言って、お師匠様は指を振りながら説明してくれた。
「強力なエアポンプは、たくさんの空気を出すぶん、音も大きくなるんだ。でかいダイヤフラムがブンブン動くからね。もしかしたら、寝室ではうるさいかもね」
なるほど。静音性と性能はやはりトレードオフなのか。
わたしの部屋は寝室でもある。やっぱり延長コードを買って、チューブを短くつなぐのが正解だったようだ。
水槽の中、キラキラと泡が上昇していく。
小さなトラブルも、乗り越えればひとつの学びになる――そんな気がして、いや、恥ずかしいので無理やり、そう考えるようにした。
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・長ければ便利ではあるが…… |
あれ? ポンプが故障? ではなく、原因はエアチューブ!
というわけで、ここからは前半のストーリーの内容をまとめていきたいと思います。
本文の通り、エアチューブが長くなると、空気が出なくなることがあります。これは、空気や水の流れに対する抵抗が増え、押し出すために必要な力が大きくなるためです。
原因① 内部の摩擦による圧力損失
チューブの内側では、空気が常にチューブの壁面と接触しながら流れています。このとき摩擦が発生し、空気のエネルギーが少しずつ奪われていきます。
そのため、チューブが長くなるほど摩擦も増え、先端にたどり着くころには空気の勢いが弱まってしまうのです。これを「圧力損失」と呼びます。
チューブはできるだけ短く使用しましょう。それでも改善しない場合は、エアポンプの位置を水槽により近い場所へ移動させてみてください。
原因② チューブの折れ・曲がり・ねじれ
エアチューブはシリコンやPVCなどのやわらかい素材でできています。そのため、長すぎると自重で折れ、内部が潰れてしまうことがあります。
また、取り回しの過程でどうしても曲げたり、ねじったりしてしまいがちです。しかし、こうした曲がりやねじれは、空気の流れを妨げる原因になります。
特に鋭角に曲がっている箇所があると、そこが詰まりやすくなり、空気がまったく通らなくなることもあります。
設置後も、ポンプからエアストーンまでにそのような箇所がないかを確認しましょう。
チューブはできるだけまっすぐに設置するようにしましょう。
原因③ 水面からの高低差による水圧
エアストーンが水面よりかなり下にある場合、水圧の影響も無視できません。ポンプはこの水圧に逆らって空気を送り出さなければならず、その分余計な力を必要とするからです。
この水圧がポンプの力を上回ってしまうと、空気は出口に到達せず、泡が出なくなってしまいます。
このような場合は、エアストーンの位置をより水面に近い場所に移すか、より強力なエアポンプへの交換を検討しましょう。
まとめ
エアチューブから空気が出なくなるトラブルは、意外にも「長すぎるチューブ」や「取り回しの工夫不足」が原因であることが多くあります。
まずはチューブの配置を見直すだけでも、泡の勢いが大きく変わる可能性があります。ちょっとした調整が、魚たちの快適な環境づくりにつながるはずです。
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