水槽に油膜ができるのはなぜ?
ある日ふと水槽を見たら、水面にうっすらと油のような膜が……。「これって大丈夫?」「魚に悪影響あるの?」と不安になったことはありませんか?
今回は、あることが原因で、水槽の油膜が発生するストーリーを紹介したいと思います。後半では、油膜が発生する4つの原因とその対処方法を解説します。
原因を知れば、対策も取りやすくなりますよ!
※
主人公とお師匠様に名前がないのは読みづらいという指摘を受けたので、今回から、便宜的に主人公にアクア、お師匠様にロゼッタとそれぞれ名前を付けることにしました。
今後とも二人のストーリーをごひいきにしていただければと思います。
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(これは20年前とフィクションが織りなす不思議な世界の物語)
話は、新規にポリプテルス水槽を立ち上げる前までさかのぼる。
ポリプと油膜
ポリプテルス水槽を立ち上げてみたものの
ポリプテルスは、プレコほど溶存酸素に気を遣わなくていい。
嘘か誠か分からない情報だが、当時のわたしには鵜呑みにしてしまった。
人間が寝ていることなど気にせず鳴り続けるエアポンプの音。
「使わなくていい」と言われれば、初心者は使わないものだ。
エアレーションなしで立ち上げ。
とはいえ、プレコ水槽で使っていたろ材をおすそ分けしていたので、実際にはすでに一連の硝化作用は完成している。
以前のように思い悩むことなんて、もうないのだ!
数日後のポリプテルス水槽は、見た目だけなら、大食漢が住んでいるとは思えないほど静かだった。
プレコ水槽のように四六時中ぶくぶくと泡が立っているわけでもなければ、真夜中にシャリシャリうるさいわけでもない。
朝一番に残飯と糞の処理をし、あとは定期的な水換えのみ。時には生餌を入れて心が痛むこともあったが、陽気で明るく、すぐに人馴れしてくれる古代魚たち。
「ポリプテルスは、なんて楽な魚なんだ!」
同じソコモノでも、気難しいプレコとは対照的な彼らに、すっかり魅了されてしまった。
……が、順調な日々こそ儚く消えるもの。
そう、トラブルはすぐにやってきた。
白銀の膜の原因は?
わたしは目を疑った。
水面に広がる、うっすらとした白銀の膜――油膜だ。
フィルターは外部式の立派なもので、ろ材も半分以上はプレコ水槽で使っていたもの。
確かに、ろ過バクテリアのバランスは崩れやすいかもしれないが、ここまではっきりとした油膜はそうそう出るものではない。
とにかく、エアレーションだ。
足りないのは、間違いなくエアレーション!
大慌てで庭の道具箱をあさり、ポンプにストーン、チューブを引っ張り出していると……
ピンポーン!
玄関のチャイムが鳴った。
「やぁ、今日はそっちから、ご登場かい?」
ロゼッタが駆けつけてくれた。
わたしの大学の学友にして、お師匠様である。
自室へ通すと、開口一番。
「あはは、すごい油膜だね」
呆気に取られたように言いながら、「ふむ」と腕を組み、水槽の前で服を正して正座した。
「立ち上げたばかりだよね?」
「はい。けど、プレコ水槽からろ材を半分持ってきたんです」
ロゼッタはハンドバッグからいつものように亜硝酸検査薬を取り出し、小さなケースいっぱいに飼育水をすくって数滴垂らす。
矢継ぎ早にスマホを取り出し、タイマーをセットした。結果が出るまで少しかかるらしい。
そうこうしているうちにエアレーションが完成したので、ストーンを放り込み、スイッチオン。
白く光る膜が、まるでガラスが砕けるようにサラサラと水面に落ちていった。
「ろ材はプレコ水槽から移したんだよね?」
「はい。かれこれ1年以上使ったものです」
「なら、バクテリアの種水としては悪くないな。さて、原因はなんだろう……」
ピピピピ!
スマホのアラームが鳴った。
餌で違う? 油膜の出やすさ
「さぁ、結果が出たよ!」
まるで分光光度計のセルのような真四角の透明ケース。
中の液体は明るいイエローに染まっていた。
「つまり、有害物質は出ていないみたいだ」
その言葉に胸をなで下ろすも、ロゼッタの視線はじっと水槽の脇を見つめていた。
「ところでアクアくん? それ、何粒あげたの?」
視線の先には、世のポリプテルスが好んで食べるという、”あの”餌。
「一日3~4粒ですが……」
「はー、なるほど。おそらく犯人はそれだねぇ……あはは」
「へえぇっ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げると、ロゼッタも目を丸くしていた。
やがてふっと笑い、熱弁し始めた。
「確かに、エアレーション不足だったし、もしかすると溶存酸素が足りず、ろ過能力が落ちていた可能性もある」
そのとき、目の前でポリプテルスのお尻から、太くて大きな真っ赤なアレがぷりんと出てきた。
あまりのタイミングに、ロゼッタは腹を抱えて笑いながら、言い切った。
「あはは、まぁ、その、ポリプテルスの食べる量と、餌の特徴の問題なのさ」
ぐうの音も出なかった。
だって、あの子たち、本当によく食べる。
「そんな美味しそうな香りのするものを4つも食べるんでしょう? そりゃ、油膜も出るさ」
言い方は軽いのに、言っていることはズシンと響いた。
が、そんなことなどお構いなしに、アルビノのパルマス・ショートボディが餌クレダンスを披露する。
まさか自分のことを言われているとは、夢にも思っていないのだろう。
・人間も食べれそうなぐらい、おいしそうな香りがする |
結局は水換えです。
しかし、まだ幼魚だ。餌の量を絞ってしまっていいのだろうか?
一抹の不安を感じたわたしは、思い切って聞いてみた。
「だけど、そんなに量が多いですかね?」
お師匠様は首をぶんぶんと振り、諭すように話しかけてきた。
「そこは、キミの水換えで解決さ!」
餌を減らすという話ではないようだ。
曰く、人工飼料でポリプテルスを飼ううえで、油膜は避けて通れないもの。
「プレコの糞や残飯掃除みたいなものだと思って、愛を注ぐしかないのさ?」
どうやら、わたしが思っている以上に、この水槽は手間がかかるようだ。
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それからというもの、いろいろあった。
夜中にパルマスが飛び出してベッドから拾い上げたり、ブティコフェリーを入れて喧嘩が勃発し、水槽が流木と土管だらけになったり、デルヘジィが加入して3匹で餌クレダンスを始めたり。
その一方で、糞取りと水換えに明け暮れる日々だった。
それでも、ふと水槽を見やると、水底に横たわる彼らの姿はどこか悠然としていて、どっしりと、そして愛嬌がある。
こんなに可愛さに見とれる熱帯魚はいるのだろうか?
「姿かたちは違えど、ソコモノはやっぱり楽しい」
そう呟きながら、今日も水換えの準備に取りかかる。
わたしと彼らとの水底生活は、まだまだ続くのだから。
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まとめ:油膜がでる4つの原因
というわけで、最後はストーリーのまとめです。
触れることが出来なかった事もありますので、捕捉しつつ解説していきたいと思います。
魚やエサから出る有機物
魚の排泄物や、食べ残したエサが分解される過程で、タンパク質や脂質などの有機物が発生し、それが水面に浮かんで油膜になります。もっとも多い原因だと言えるでしょう。
特に、過剰給餌(エサのあげすぎ)は要注意。消化されずに残った栄養分が汚れとして蓄積され、水質悪化の原因にもなります。
とは言え、肉食魚や与える飼料ではそうは言ってられない場面もあります。
エアレーションと合わせ、適宜水換えを行い、良質な水を保つよう心がけましょう。
バクテリアや微生物の代謝産物
ろ過フィルターや底床には、目には見えないバクテリアたちがたくさん住んでいます。これらの微生物が活動する際に出す「代謝産物」や、バクテリアの死骸が水面に浮かぶことで、膜状に見えることがあります。
とりわけ、夏場の高温や立ち上げ途中、さらには肥料や二酸化炭素を添加した際には、このバランスの乱れを疑うべきかもしれません。
対処法は状況によりさまざまですが、基本は水換えとエアレーションです。エアレーションが利用できない水草水槽では、サーフェイススキマーを利用してもいいでしょう。
手や器具についた油分
意外と見落としがちなのが人為的な油分。
水換えの際、掃除用の器具にハンドクリームや食べ物の油分が成分が残っていたりすると、それが水面に広がって油膜になります。
水換え前には手をよく洗いましょう。
エアレーションや水流不足
水面がほとんど動いていない状態だと、水に含まれる汚れや油分が滞留しやすくなり、膜のように広がってしまいます。
このような場合は、水面の揺れを作るような工夫が必要です。とりわけエアレーションの設置は効果絶大で、一瞬で油膜を消し去ることができるでしょう。酸素の供給にもつながるので一石二鳥です!
諸事情にて設置不可の場合、サーフェイススキマーや、水面付近にフィルターの排水パイプや水流ポンプを設置するなどしても代用可能です。
油膜は水槽内のバランスが崩れたサインとも言えます。原因を見極め、無理なく対処できる方法を選ぶことが大切です。見た目だけにとらわれず、水中の環境全体を見つめ直す良い機会として、前向きに対処していきましょう。
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