失敗から知る植物の生命力
ミクロソリウムを買ってきたら、思っていたよりずっと小さな株だった……。そんな経験はありませんか?「これ、本当に大きく育つのかな?」と、少し不安になってしまいますよね。
たしかに、ミクロソリウムは生長に時間がかかる水草ですが、強い水草なので小さな株でも十分に栽培を楽しめる水草でもあります。今回は、そんなミクロソリウムの意外な一面を覗いてみましょう。
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アカヒレの餌が底をつきそうだ。最近ショップに行けてないからだ。
仕事終わりはいつも20時を過ぎているし、帰路に1時間かかるため地元の店も絶望的。かと言って職場近くのショップは、ワンコインで買えるようなものがプレミアム価格で売られている。これが都心というものか。
しかし、幸いにして明日は休日。水槽の餌不足問題はすぐに解決できそうだ。
時間はかかるが強い水草
小さなミクロソリウムでも大丈夫?
そして休日、地元のショップへと久しぶりに向かうことになった。トラックの煤煙をかいくぐり、灼熱のアスファルトでできた横断歩道を渡った先にある。
倉庫のような建物に、簡素な自動ドア。一見小動物が販売されているのか怪しく思えるが、店内はしっかりと冷えており、エアコンから吹き出す冷気だけが真夏であることを伝えてくる。
ほっと一息ついてから、忘れぬうちにテトラプランクトンを1つカゴに入れて、物色スタート。熱心に店内を見て回ると、なんとミクロソリウムがワゴン販売で安売りされているではないか!?
早速家に連れて帰り、植栽開始。まずは、ビニール袋から取り出してポットを外し、やさしく包まれているウールを丁寧にはがしてあげる。すると、くるくると渦巻いたか細い根茎が見えてきた。
ふと、横に目をやると前もって準備してあった、活着させる相手となる流木が1つ。こころなしか嬉しそうにしている。次いで、洗浄に移ろう。
が、ミクロソリウムの葉をつまんで、洗浄液の入ったプラスチックポットに入れようとした時に聞き慣れない音が聞こえた。
ポトリ♪
小さな株から育てる楽しみ
なんと、株が2つに分裂したではないか。
いや、もしかして、茎が折れたのか。
慌てて双方の茎を確認してみると、断面には傷跡一つもない。どうやら、2株が1つのポットに押し込められていたようだ。密で小さな葉が付いた、理想的なサイズの株だと思ったのだが、まさかこんなことになろうとは。
いや、だから、安売りだったのか!?
とにもかくにも、その話は休日明けのアクア談義で話題となった。
師:「あはは! そりゃ、やられたね!」
私:「そうなんです。1株買い増したはずが、まさかの2株。ちょっとショックです」
師:「うはは、でも、逆に良かったんじゃないの?」
私:「えぇ、どうして?」
師:「だって、ほら? 数は倍になったんでしょ?」
私:「はあ、お師匠様はポジティブですねぇ……」
師:「これは失敬。でも、育つ楽しみが、2倍に増えるじゃない?」
私:「そう思いたいところなんですが、いくつか気になる点もあるんです」
師:「ほうほう、それはなにかな?」
私:「やっぱり、葉がスカスカで、これじゃあ見た目が……」
師:「1ポットに2株じゃ、1株あたりの葉の密度は半分だものね」
私:「そうなんです。言い換えれば、1ポットに2株分の葉が入っていたとも言えます」
師:「……まぁ、そういうことになるねぇ」
私:「わたしとしては、葉も小さくて、密な感じの素敵な子だと思ったんですが……」
師:「なははっ、そうなるよう、可愛がってあげるしかないね」
私:「むーん……。実は、もう1つ気になることがあるんです」
師:「うん?」
私:「あまりにも小さいから、もしかしたら上手く育たないんじゃないかって」
師:「それは、大丈夫なはずさ。きっと上手くいく♪」
私:「もう、お師匠様ってどうして、そんなに楽観的なんですか?」
師:「だって、ミクロソリウムってCO2添加がなくても育つくらい、すごく強い水草なんだよ?」
私:「そうですけど……」
師:「キミの水槽にはLEDライトもCO2添加もあるし、肥料だって入れてくれる。確実に育つに決まってるじゃない?」
私:「でも時間かかるのですよね?」
師:「いひひ♪ まぁ、それは否めないね」
私:「はぁ、やっぱり。トホホです」
師:「とくに小さな株から大きなサイズになるまでには、気を長くして待たないとね」
私:「うーん……ちょっと、損した気持ちです」
師:「今は損かもしれないけど、育てば得した気持ちになるさ!」
折れた茎も捨てないで!
私:「はぁぁ、思えば、セールに飛びついた自分が悪かったんです」
師:「ははは、バッドトリップ気味だね。まぁ、せっかくの機会だし、子株を含めた小さな株を育てる練習と思えばいいよ」
私:「そんなぁ!」
師:「何事も経験さ♪」
私:「でも!! ミクロソリウムで売ってる株はそこそこ大きいものが多いし……」
師:「うんうん」
私:「子株を自分で育てるぐらいなら、買ったほうが早いし安いって聞きます」
師:「まぁ、言いたいことは分かるよ。だけど、現実の栽培ではキミが買ったような小さな株を扱うこともあるんだ」
私:「子株から育て上げる以外でそんなことあるんですか?」
師:「もちろんさ。まず挙げたいのはトリミング。時として、茎ごとカットすることもあるのさ」
私:「えぇ? 丁寧に葉を1枚1枚カットした方がいいのでは?」
師:「だが、大きく草姿を変えたい場合、茎からカットした方が良いときもある」
私:「そんな大胆なことして大丈夫なんですか?」
師:「まぁ、なるべくならしないほうがいいんだけどね」
私:「やっぱり」
師:「もし、そういった切れ端ができるときは、なるべく葉の枚数が4~5になるように残してあげて……」
私:「ふむふむ」
師:「それを大切に育てれば、もう1株増えるというわけさ!」
私:「なるほど。トリミングついでに株分けというわけですね?」
師:「そうとも言えるね。しかしトリミングばかりではないさ。ミクロソリウムの茎は細い。不意に折ってしまった時でも、同じようなことになるさ」
私:「……つまり、本来捨てるような部分でも、上手いこと育てることができると?」
師:「その通り♪ 小さいからと言って、難しいことは一切不要。だってミクロソリウムは簡単な水草なんだから!」
私:「なるほど。じゃあ、あえて聞きますけど、その簡単なミクロソリウムの欠点と言えば?」
師:「そりゃあもちろん、何度も繰り返すけど……」
私:「時間ですね?」
師:「なはははっ! その通り♪ 実際、ミクロソリウムはそうやすやすと枯れる水草じゃあない。時間はかかるけどね」
私:「……CO2無し、貧栄養でも育ちますからね」
師:「だから、美しく育てることができた時の喜びは一入さ」
私:「なるほど……」
話はまだまだ続く
「もっと、お気楽にやってみたら?」
と彼女は言い、アクア談義はお開きとなった。
たしかに、ああだこうだと騒ぎ立てても、すぐには解決できない時間的感覚を持つ水草だ。わたしにできることは、環境を整えることと待つことぐらいだ。であるなら、どっしりと構えていきたいところだ。
あ……
しかし、すっかり小さな株について話し込んでいるうちに、肝心のことを忘れてしまった。
いま、残りの1株の活着相手がいない。現在、1株は流木へ、もう1株は緊急措置的にオモリを付けて無理やり沈めているのだ。このままではいけない。どうにかしなくては。
まとめ
ミクロソリウムは比較的丈夫な水草です。しかし、ショップで販売されている株はある程度大きく育ったものが多いため、トリミングやミスで小さな株を手にすると「ちゃんと育つのかな?」と不安になることもあるでしょう。
しかし、あまり心配する必要はありません。ミクロソリウムは生長こそゆっくりですが、環境が整っていれば小さな株からでもじっくり育てていけます。
時として、ミクロソリウムを育てていると、トリミングなどで茎ごとカットすることがあります。通常は葉を1枚ずつ取り除くほうが扱いやすいものの、草姿を大きく変えたい場合には、茎からカットすることもあります。
こうしてできた切れ端は、すぐに捨ててしまう必要はありません。葉をある程度残した状態で大切に育てれば、そこから新たな株として生長していくことがあります。
また、ミクロソリウムの細い茎は不意に折れてしまうこともありますが、そんなときも「もうダメだ」と諦めず、活用できる可能性があります。
ミクロソリウムの魅力は、こうした丈夫さにもあります。CO2を添加せず、エアレーションだけの環境でも育てられるほど、比較的扱いやすい水草です。
ただし、最大の弱点はやはり生長の遅さ。小さな株を大きく育てるには、それなりの時間が必要です。
だからこそ、焦らずじっくり育てていきましょう。小さな株が少しずつ葉を増やし、やがて立派な姿になったときには、きっと「育ててよかった」と思えるはずです。


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