混迷を深めるライト選び、その果てに……
水草用LEDライトを選ぼうとすると、見た目もスペックもよく似た製品が並び、「結局どれを選べばいいの?」と迷ってしまうことがあります。
実際、水草育成用として販売されているライトであれば、十分な光量や育成に必要な波長を備えた製品も多く、スペックだけで優劣を判断するのは意外と難しいものです。
**********************************
今、とある3機種で悩んでいる。どれも安いライトなので、10,000円もあればお釣りがくるものばかりだ。
本当は、もらったばかりのボーナスにモノを言わせて高級機種にしようとも思ったのだが……。迷う気持ちがいつしか負のスパイラルになり、一度は現物を見に行ったものの、気持ちが昂らず手を出すことを諦めたのだ。
まずは、水草用LEDライトがどのようなものか知ってからでも遅くはない。これがわたしの出した答えだ。しかし本音は、初めてLEDライトを買うので、失敗が怖くて必要以上に金銭的な負担をしたくないのだ。
悩んだら色温度も参考に!
候補を絞り込んで3機種。それでも……
――だが、ネットで情報を見返すと、ため息ばかりが漏れてくる。
山のようにある30cmキューブ用ライトの中から3機種を見繕ったのだが、どこをどう見てもそっくりなのだ。アルミでできたスマートなケースにアルマイト加工、十分な光量とスペクトル、水草もよく育つという評判があり、コストパフォーマンスにも優れている。
もちろん、その条件で探し出したのだから、似たようなスペックを持ち合わせていて当然なのだ。それでも、ライト沼で迷子になったわたしには、理由をつけて1つだけを選ぶだなんて到底不可能に思えた。
なら、いっそ阿弥陀くじでもしてみるか?
いいや、そんなのダメに決まっている。わが家の水草の将来がかかっているし、懐を痛めて購入するわけだから。納得のいく答えでないと、後悔することになる。
では、どうやってこの3台の甲乙を決めればいいのだろうか……。
水草用LEDライト選びを始めてから、こんなことばっかりだ。
色温度という基準
梅雨も終盤だというのに、歩道橋から見下ろす夜の街並みは、どんよりとした靄がかかっている。しっとりとした水蒸気を含んだ冷たいそよ風が、ビルの谷間を縫うようにして吹き込んで来る。どうやら、夏はまだ先のようだ。
今宵も、その先にある喫茶店で、わたしの水槽のお師匠様とアクア談義をすることになっている。今日こそ、LEDライトの迷いに決着を付けるのだ。
師:「えぇっ!? まだ決まってないの?」
私:「そうなんです。3機種まで絞ったのですが……」
師:「どれどれ? ……なるほどねぇ」
私:「どれも、値段も近いですし、光量・スペクトルともに申し分ないです」
師:「しかし、どれも銀色。アルミアルマイトでできたケースの据え置き型。代り映えしないねぇ」
私:「そうなんです……。どれを選べばよいものやら」
師:「まぁ、もしボクだったら、これを選ぶな」
私:「え?」
師:「ほら、この機種なら、ボクの水槽に、きっとぴったりさ! まぁ、今のLEDライトで間に合ってるけどね。なはは」
私:「え? どうしてすぐ決められるんですか? どれも似たような形だし、スペックだって……」
師:「決めた理由は色温度だね」
私:「色の温度?」
師:「詳細は物理の話になるから今日はしないけど、簡単に言えば光の色のことだね」
私:「光の色……ですか?」
師:「そうだとも。生物系人間の馴染みのあるところで言えば、例えば光のスペクトルでは、紫は400nm、赤は700nmというように数値で決まってるよね?」
私:「えぇ、そう習いましたけど?」
師:「それは別の方法で、光の色合いを数値で表すことができるのさ」
私:「それが色温度?」
師:「そうさ。赤に近いと温度が低く、青に近づくと高くなるように表記するわけ」
私:「??? 赤の温度が低い?」
師:「なははっ! そういう反応になると思ったよ。とにもかくにも単位はK。これは何かわかるよね?」
私:「K? カリウムじゃなくて?」
師:「まぁ、そうなるのは当然だよね? しかし、これは温度だって言ったはずさ?」
私:「うーん……? となれば、あぁ、分かりました。絶対温度のケルビンですよね?」
師:「その通り。光の色を絶対温度で表しているんだ♪」
私:「なるほど。色温度の話はともかくとして、お師匠様は光の色が大切だと言いたいんですね?」
師:「んははは、その通り!!」
色温度による視覚的な効果
わたしが似たような3機種で迷っている中、お師匠様は平然と1機種を選ぶと言ってのけ、光の色が大切だと言い切る彼女。困惑しつつもその真相を正そうと顔を直視すると、ショートヘアーを手で大きくすきあげた後、目をつむって首を振って見せた。
師:「まぁ、もしかしたらキミには参考にならないかもしれないけど、ボクならこの11000Kのやつかなって」
私:「あぁ、先ほどのライトですね。しかし、これを選んだ理由は、水草がよく育つからですか?」
師:「いやいや、ボクからも改めて言うけど、この3機種はどれも水草がよく育つという評判を聞くし、白色以外にも青や赤のLEDチップで補強されているだろう?」
私:「つまり、どれを選んでも、確実に水草が育つはずだと?」
師:「その通り♪」
私:「なら、どうして11000Kの物を選んだんですか?」
師:「だからぁ、そりゃ……ボクのセンスさ!」
私:「センス? 好みで選んだんですか?」
師:「あっはっは! その通り♪」
私:「一体どこが……」
師:「つまり話はこうだ。キミが候補に絞った3機種は、それぞれ8000K、10000K、11000Kの色温度を持っている」
私:「へぇ???」
師:「数値だけじゃ分かりづらいから、それぞれの色温度を低いほうから言い直すと、赤みの強い白色、白、青みがかった白というわけ。そしてボクが選んだのは青みがかった白だというわけさ」
私:「うーん、好みで選んだのは分かりました。でも、そこから先の話が読めません。青みがかった白の何が水草の育成と関係して……」
師:「ちょっと、ちょっと!? 何か未だに勘違いしてない?」
私:「え? でも、青と赤は光合成に関わりますよね?」
師:「だからぁ~~、どれも一応育つライトと言われているんだよ?」
私:「うん? もしかして……本当に単純にライトの色味だけで選んだんですか?」
師:「エッヘン♪ そうだとも!」
私:「えぇぇ?」
師:「まぁ、同一スペックでの比較になったら、最後は色温度の好みが落としどころなんだよね」
私:「なるほどぉ」
師:「それでも、いくつか注意点があるんだ」
私:「ボクの私感だけど、青が強ければ水がスキッとした明るい印象に、赤が強ければじわっとした落ち着いた感じになる」
私:「ふむふむ、多少の視覚的な効果があるんですね。だから、11000Kの物にしたと?」
師:「そういうこと♪ ボクは大昔、わずかな白濁が消えずに苦労したことがあるからね。水がスキッとしたイメージが強いほうがスキなのさ」
私:「そんなことがあったんですね」
師:「そのほかに、赤が強ければ赤系の水草や流木・ソイルが自然な印象に見えるし、青が強ければ緑の水草や青い魚が綺麗に見える効果もあるさ」
ライトで水槽の色合いが決まるからこそ
私:「それじゃあ、わたしも11000Kの物に……」
師:「あぁ、ちょっと待った方がいい」
私:「うん?」
師:「実は色温度による水槽の見え方って、人によって大きく差がでるんだ。同じ色温度でも、しっくりくる人もいれば、違和感しか感じない人もいる」
私:「うーん、それなら、現物を見てからの方がいいですね?」
師:「可能ならね? でも、最近はネット上にたくさんの写真が出回っているから、そういった物をよく見た上で、購入した方がミスマッチが少ないかもね……」
結局、迷いに迷い、調べに調べて、10000Kの物を購入した。
赤味が強い、水が綺麗に見えない、水草がぼやけていると評判は散々なものだったが、セールで500円安いという単純な理由でこちらにしてみた。
検討に検討を重ねた結果、結局はワンコインである。
しかし、実際に使ってみると、ネットに溢れている寸評ほど悪いものではないし、夕焼けが好きなわたしとしては、赤味については気にならなかった。
それどころか、思った以上に赤味が足りないようにさえ感じられた。
とは言え、たしかに強い拒絶感を持つ人は確実にいるようで、口コミでは厳しい論調で批評をしている人もいる。水槽に求めている風景は、人によってまちまちなのかもしれない。
とにもかくにも、LEDライトを購入する際は、必ず色味を確認した方がいいだろう。それほど、色温度は人による好みの差が激しいのだ。
まとめ
ライト選びで迷ったときに注目して欲しいのが「色温度」です。色温度とは、光の色合いを表す指標で、単位はK(ケルビン)。数値が低いほど赤みのある暖かい白色、高いほど青みのあるすっきりとした白色になります。同じ性能のライトでも、色温度が違うだけで水槽全体の印象は大きく変わります。
例えば、赤みのある光は流木やソイル、赤系水草を自然で落ち着いた雰囲気に見せやすく、青みのある光は水の透明感や緑の水草、青い魚を鮮やかに感じさせる効果があります。
どちらが優れているという話ではなく、どんな水景を楽しみたいかによって好みが分かれるポイントです。
ただし、色の感じ方には個人差があります。同じ色温度でも「きれい」と感じる人がいれば、「違和感がある」と感じる人もいます。そのため、口コミだけを参考にするのではなく、実際の点灯写真や動画を見比べて、自分の好みに合う色味かを確認しておくのがおすすめです。
水草が育つかどうかだけではなく、自分が毎日眺めていて心地よい景色になるかどうかも、LEDライト選びでは大切なポイントだと言えるでしょう。


0 件のコメント:
コメントを投稿