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2026年5月5日火曜日

熱帯魚とブームで価格高騰に巻き込まれた話。その時の心構えとは?

ブームとの付き合い方

静かな水槽の世界にも、気づけばそっと押し寄せてくる「ブーム」の波があります。ある魚が注目されはじめ、雑誌や情報が増え、ふと見た値札に驚く――そんな変化に出会ったことはありませんか?
うれしさと戸惑いが入り混じるその感覚。気づいたときには、思ってもみなかったかたちで、その波の中に巻き込まれていることもあるのです。
今回は、20年前にプレコブームに巻き込まれた話から、そんなときの心構えについてストーリーで述べ行こうと思います。


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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。

奥へ奥へと突き進む。数多くの珍しい器具に目もくれず、店の最奥にある生体売り場へまっしぐら。意中の魚を探しているアクアリストは、いつだって血眼になって店内を歩いているものだ。

ここは著名な国道沿いの大型店。大きな駅で赤い電車に乗り換えてやってきた。探しているのは、憧れのプレコ、プラチナロイヤルだ。既に数店舗見て回っているのだが、どこにも見当たらない。ここでだめなら諦めようと、藁にもすがる気持ちでやってきたのだ。



プレコブームに巻き込まれ


高騰したプラチナロイヤル

目当てのエリアに入ると、1つ1つの水槽をじっくりと覗いて歩く。ずんぐりむっくりとした姿と、ガラス面に白いマーカーで書かれた名前だけが頼りだ。今更ながら当たり前だが、どこに何が飼育されているかという一覧はなく、ましてや「検索」もできない。それがアクアリウムショップという場所だ。探し歩くほかないのだ。

突然、白いボディに黒いラインが目に入った。10cm前後のプラチナロイヤルだ。わが家のプレコ水槽にはちょうどよいサイズだ。慌てて、水槽の隅に書かれた白い字を見る。

「え゛っ」

途端に手が震えた。見つめた先には¥18,000の値札があった。1年前に見たときは、その半額だった。明らかに値段がつり上がっている。残念ながら手持ちはなく、その日は失意のうちに店を後にするほかなかった。

最近、どうにもおかしいのだ



雑誌の特集で状況を知る

今日もいつものサークル棟へと急ぐ。午後0時、家路につく者、校外へ昼食に向かう者、そしてそのままアルバイトへ向かう者。大波のような学生の大軍を左右にさばきながら、真っすぐ伸び続ける白いビルと煉瓦造りの真っ赤な図書館、さらに大小の人為的な雑木林を通り抜け、構内の最奥へと向かう。そこでお師匠様とアクア談義をすることになっているのだ。

師:「よぉ!」

私:「この間、プラチナロイヤルを見つけたんですけど……」

師:「おぉ! どうだった?」

私:「高い! 高すぎますっ!」

師:「へ? 突然どうしたんだい?」

私:値段が上がっていたんです! 2倍もですよ!? 絶対に上がりすぎです!!

師:「あはは! キミにしては珍しく怒っているね?」

私:「そうなんです! 目を付けたときは、もっと安かったんですよ!?」

師:「あぁ、そうだったね。たしかグリーンロイヤルかプラチナロイヤルで迷っていた、あのときの話だね?」

私:「そうなんです。ちょっと前までグリーンロイヤル2~3匹分でお迎えできたんです! それなのに!!」

師:「むはは! まぁまぁ、ちょっとこれでも読んで落ち着きなよ」

私:「あ! アクアリウムの雑誌ですね? それも今月号! どれどれ……」

師:「ほら、見てごらんよ? 今月の特集記事がキミにぴったりだと思ってね」

私:「あぁ、本当です。プレコの特集がこんなにも……でも、どうして」

師:「にひひ、どうしてだと思う?」

私:「もしかして……最近、流行っているとかですかね?」

師:「その通りさ!!」

私:「えぇ? あのプレコが!?」

師:「そうなのさ。狭い界隈ではあるものの、火が付いたってわけだ」

私:「むむム……残念です」

師:「どうしてだい?」

私:「だって、わたしが最初にプレコの魅力に気が付いたんですよぉ?」

師:「アッハッハッハ!」

私:「むぅ……」

師:「とにかく、どちらが先かは知らないけれど、キミは自分の水槽に集中するあまり、世間から取り残されたんだね」

私:「がっくしです。でも、悔しいけど、こうやって色々な情報が出てくることは、いいことかもしれませんね?

師:「もちろんだとも!」

プレコブーム。最近、そういった流れがアクアリストの間で起きているらしい。
これは20年前の話です



ブームとの付き合い方

推している魚が世間一般に知られるのは嬉しいことだ。雑誌で特集が組まれるし、当然記事の質と文量も圧倒的に上がる。おまけに写真だってフルカラーで大きくなるし、専門の別冊が発行されることだってある。

だが、値段が高騰してお迎えできなくては意味がない。何度も特集ページを読んでは意気消沈していると、お師匠様から声がかかる。

師:「で、プラチナロイヤルは諦めるのかな?」

私:「たしかに現実は変えられません。でも、わたしの気持ちも変えることはできません」

師:「そうでしょう? アクアリストなら、忘れるとか、飼うのをやめるだなんてできやしないはずさ」

私:「そうなんです。プレコが好きです。だから、この趣味を始めたんです」

師:「なら、今は好きという気持ちだけで留めておいたらどうだい?

私:「ブームが去るまで我慢するということですか?」

師:「まぁ、それも1つの手だと思うよ?」

私:「言っていることはわかります。でも、わたしにだって物欲はあります。好きという気持ちと混ざって、どうしても忘れることができそうにないんです」

師:「アハハッ! そんな時は、あがいてみるのもいいかもしれないね」

私:「でも、探し求めたところで、果たして都合よくお迎えできるでしょうか?」

師:「んまぁ~、次第だね」

私:「そ、ソンナァ……」

師:「とにもかくにも、ボクはだね? 多少値が張っても、相思相愛になったほうが魚も飼い主も幸せだと思うんだよね」

私:「……」

師:「それに、プレコは一点ものだからね? 一つ一つの出会いを大切にしてほしいんだ」

私:「でも、まさかこんな形でブームに巻き込まれるだなんて、思いもよりませんでした」

師:「それがブームってやつさ。それに、今まで見向きもされなかったラインの太さや色の濃淡、スポットやヒレの長さなど、ちょっとしたことで価値が変わるのさ」

私:「だからって、こんなにも値段が上がることってありますかね?」

師:「にひひ、そもそも熱帯魚界隈はすそ野は広い。初心者さんも多いので、熱しやすく冷めるのは早いというわけさ

私:「うーん……ライバルは多いということですかね」

師:「そうだね。だから、ボクとしては少し待ってみるのをお勧めするよ」

私:「ブームはいつかは終わると?」

師:「そういうこと。ボクたちみたいなガチの生物系には、他の誰よりも熱い心があるんだから、流されずに時を待つのは、いとも簡単なことのはずさ」



必ずいつかは終わりが来る

結局は、いくつもの実店舗を巡り、悪あがきをしている最中にブームが終わり始める。ついていた値札も、あれよあれよという間に下がり始めたのだ。
よくよく考えてみれば、プレコは長命な魚であり、成長すれば巨大になる。欲しい人はたくさんいても、実際に最期まで飼う覚悟や設備、そして体力がある人は思いのほか少ないはずだ。いくら売り買いが加熱しても、終生飼育する実需は一定だ。ブームが早期に終息するのは明らかだったのだ。
供給過多となったその局面で、プラチナロイヤルは財布と相談して折り合いを付け、迎えることができた。運が良かったのかもしれない。

しかし、ブームとは厄介なものだ。
脳裏に深く刻まれることになった。

その後のアクアリウム業界全体としては、プレコ熱が冷めやらぬ中、ビーシュリンプへと突き進むことになり、そのあとはメダカブームへと突き進んでいく。色々な生体や器具が連鎖反応のように拡大しては、泡のように消えていった。
諸行無常とまで言わないが、待てば向こうからやってくることもある。もし意中の魚が高騰しているなら、一歩引いて見てみるのもありなのではないだろうか。水槽という趣味は、とても気が長くなるような年月を費やすものだ。情熱さえ持ち続ければ、いつかは妥当な値段でお迎えできるはずだ。

こうして迎え入れたプラチナロイヤルは、わたしが作ったプレコ水槽の1つのピークとなり、話は一気に数年飛ぶことになる。



まとめ

アクアリウムの世界には、静かに、けれど確実に訪れる「ブーム」という波があります。お気に入りの魚が注目され、雑誌で特集が組まれたり、情報が一気に増えたりするのは、うれしい反面、少し戸惑ってしまう瞬間でもあります。特に価格の高騰は、多くのアクアリストにとって悩ましい問題ではないでしょうか。

ですが、ブームはいつか必ず落ち着いていきます。熱が集まれば離れるのも早く、やがて市場は本来のバランスへと戻っていくものです。プレコのように長く付き合う魚であればなおさら、一時的な人気に左右されるよりも、自分のペースで向き合うことが大切になってきます。

「今すぐ手に入れたい」という気持ちと、「じっくり待つ」という選択。そのどちらも間違いではありませんが、水槽という趣味は時間をかけて育てていくものです。焦らず、流れを見守ることで、思いがけないタイミングで理想の出会いが訪れることもあります。

ブームに振り回されるのではなく、少し距離を置いて眺めてみる。そんな余裕を持つことで、アクアリウムはもっと深く、長く楽しめるものになるはずです。



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