癖はあるものの、コリドラスがいるなら使いたい「田砂」
水槽の底で小さな魚たちがモフモフと砂をほじくる姿に、つい見入ってしまったことはありませんか?
その光景を支えているのが、実は田砂という底砂です。粒の細かさや適度な比重、丸みを帯びた形状が、コリドラスたちの自然な行動をそっと支えてくれます。
今回は、そんな田砂の魅力や扱い方のコツを、ストーリーで紹介したいと思います。
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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。
壁のように棚に並んだ水槽は、心地よい水音と特有の水の匂いが混じり合い、熱帯魚店特有の密林のような雰囲気を生み出している。湿気を帯びた空気の中で無数にゆらめく魚体は、どれをとっても本業にしていなければ実現できない光景であり、水槽マニアにとっては垂涎の的である。
今日も通い詰めているいつもの店に来ているのだが、最近はとある魚を好奇心の対象にしている。コリドラスだ。
最初のきっかけは単純だった。ポリプテルスに与えているキャットの餌は、コリドラスも大好物だという些細な話だった。だが、それを知ったうえで改めてショップの水槽をのぞくと、その存在は胸をつかむような愛着へと変わっていた。
つぶらな瞳で底砂をほじくり、モフモフと餌を探す姿。
これほど可愛い生き物はいるのだろうか?
田砂はコリドラスに欠かせない底砂
湧き水水槽を目指すために
まだまだ水槽に空きはある。
30cmキューブのハイタイプ水槽(約30L)だ。カージナルとラミーノーズが作り出した平和な水槽、なによりコリドラスも温和な性格。きっとうまくいくはずだ。
幸いなことにフィルターはエーハイム2211。外部フィルターであれば、配管を工夫すれば湧き水水槽だって可能だ。胸が高鳴り、水景のイメージが広がる。
そんな浮き立つ気持ちの前に、一つだけ欠かせない準備があった。
田砂だ。
コリドラスには昔から田砂が定番であり、湧き水には欠かせないものなのだ。
相性が良好な理由は?
桜大磯を抜き取り、ベアタンクのようにしていた30Lの水槽。そのガラスの底面は光を強く反射し、部屋の壁に大きな水影がゆらめいていた。
その揺らぎを眺めながら、お師匠様はため息まじりにわたしを見つめ、にじり寄った。
師:「で? 大磯も撤去して、いったい何をしようと? しかも、それを計1か月もボクに黙っていたんだね?」
私:「ちょうどテスト期間だったので……」
師:「キミねぇ……」
私:「でも、その後、すぐに夏休みになって……」
師:「ボクが実家に帰ったと? 去年も帰らなかったのに?」
私:「はい。他の人もみんな帰るものだから、お師匠様もてっきり……」
師:「はぁ……。まぁいいよ、それで今日は何をボクを呼んだ理由は?」
私:「その、今日はこれについて教えてもらおうかと……」
師:「――田砂!? はぁ。……しょうがないなぁ♪」
お師匠様はくっくと笑いながらウィンクしてみせた。そして、積まれた田砂の袋をさわさわと撫でてから頬擦りすると、先ほどとは打って変わって明るい雰囲気が漏れ出てくる。
師:「これを使うってことは、コリドラスだよね? いったい、どこに惚れたんだい?」
私:「砂をほじくりながら餌を探す姿……です」
師:「アハハ! そうだろうと思ったよ。誰しもがあの姿に惹かれるんだ」
私:「ですよね……」
師:「であるなら、田砂じゃないとね。鼻先を突っ込んでもらうにはさ!」
私:「ところで、ここまで準備して質問するのも変ですが、他の砂利ではだめなんですか?」
師:「あはは! だって、コリドラスだって生き物さ。何でもかんでも鼻を突っ込むわけじゃないんだよ? 例えば大磯砂をイメージしてみてよ?」
私:「たしかに……ちょっと大きすぎ重そうだし、きっと鼻は突っ込めないかもしれないですよね?」
師:「その通り。でも、田砂を使うのは軽いばかりでなく、他にちゃんとした理由があるんだ」
私:「軽いから田砂というわけではないんですね?」
師:
「そうなんだ。実は田砂は角ばった立体であるものの、その角は削れて丸くなっているものが多いんだ」
私:「角が削れている? ということは……」
師:「ずばり、鼻先を入れたときにヒゲや体表を傷つけないのさ」
私:「なるほど……コリドラスに向いている理由がたくさんあるんですね」
わたしが頷くと、彼女は大きく目を見開いて笑った。
細かい故の弱点も
早速、田砂の袋を開け、1袋分を水の入った大きなバケツに広げる。ぶわっと水底に一気に沈み込むと、なおも勢いは収まらず、壁伝いに水面まであがり、そして再びひらりひらりと落ちていく。
私:「水中で舞う姿は、なんともきれいですね……」
師:「そうだね。ふわりと舞う比重と細かさを持っているからこそ、コリドラスにも飼育者にも好まれるんだね」
私:「にしても……これで2袋、合計2kgかぁ……本当にこんなに必要なのかなって思ったけど……、30cmキューブハイタイプの底面にはちょっと足りないかも」
師:「ふふふ、そうだねぇ。やっぱり、粒が小さいからね」
私:「うーん、入ってる袋はこんなにも重いのに。もしかして、粒の大きさのせいですか?」
師:「ピンポーン正解! ほら、粒と粒が重なったときの“隙間”ってあるでしょう?」
私:「あっ! セラミックの生物ろ材みたいに、粒が小さいほど重なったときの隙間が小さくて、ぎっちり積めるみたいな話ですね?」
師:「そうそう、そういうこと。しかし、まさかここでろ材の話が出るとは思わなかったけどね」
私:「うーん、つまり、大きな水槽ほどお金がかかると?」
師:「そうとも言えるね。にひひ」
しかし、それ以上の田砂のデメリットにふと気が付く。それは、洗い終えた砂をがらんどうの水槽に移した時のことだった。
私:「うわっ、バケツの壁にベタベタと残ってる……!?」
師:「あはは、いっぱい残っちゃったね」
私:「これは……もしかして水の表面張力ですかね?」
師:「そうなんだ。軽いから簡単に張り付いちゃうんだよね」
私:「うーん……」
師:「でも、乾かしたら取れるから、庭やベランダに広げて乾燥してから回収だね。面倒でもひと手間かけてほしい」
私:「う~~~ん、細かくて軽い底砂って……よく思い返すと嫌な記憶が……」
師:「ふふふ♪ それはきっと、キミが以前使った真っ白な砂浜の砂の話だね?」
私:「おぉ、そうなんです。あれはあれで軽すぎて貼りついたり流失したりで、本当に苦労した底砂でした」
師:「あはは、それに比べると田砂はかなり良いほうだね。とは言え、プロホースでがっつり掃除するのはやや厳しいね」
私:「えぇ? それじゃあ、コリドラスの住環境が不潔に……」
師:「大丈夫。ソイルなんかよりは、ずっと掃除しやすいから、テクニック次第で問題なく使えるよ」
空の水槽にできた田砂の山を見つめると、後ろからお師匠様が今までの話をまとめた。
師:「とにもかくにも、適度な比重、十分細かい粒、そしてコリドラスが鼻を突っ込める。だからこそ愛される砂なんだよ」
その言葉に胸が大きく膨らんだ。
準備はOK
夕暮れが近づき、部屋の水槽群が淡い橙色を帯び始めた。
避難していた魚たちを戻すと、シャラリと音を立てて水槽へと舞い戻っていった。
ホースをさらに伸ばし、先端に切り落としたシャワーパイプを取り付け、これをそっと砂の中に埋め込めば簡易湧き水装置の完成だ。
コンセントを入れるとふわりと砂が浮き上がり、湧き水のように流れを作り出す。小さな水槽なのに、まるで小川の源流を閉じ込めたような趣があった。
「よし……できた」
胸の奥で満足がじわりと広がる。けれど、これはまだ序章にすぎない。砂も洗った。水も作った。環境も整えた。
――残るは、お迎えだけ。
(このコリドラスの話は、20年前の出来事なので、記憶が蘇り次第、書いていきたいと思う)
まとめ
田砂は、コリドラスの飼育に欠かせない底砂として、多くのアクアリストに支持されています。まず注目したいのが、粒の細かさと角の丸みです。コリドラスは底で餌を探す際、鼻先やひげを砂に突っ込む動作をしますが、角が丸い田砂なら傷つける心配がほとんどありません。そのため、魚たちは安心してほじくり回り、自然な行動を見せてくれます。観察する側にとっても、愛らしい仕草をじっくり楽しめる底砂です。
さらに田砂のもう一つの魅力は、軽すぎず重すぎない絶妙な比重です。水中でふんわり舞い上がる性質を持ちながらも、すぐに落ち着くため、水槽内で安定した環境を保てます。このバランスがあるからこそ、コリドラスは砂を掘る動作をストレスなく行い、飼育者も観察しやすくなるのです。
もちろん、田砂にも注意点はあります。粒が細かく軽めなので、掃除の際にプロホースで勢いよく吸い上げると、水と一緒に排出してしまったり、フィルターに入り込んでしまうこともあります。しかし、丁寧に扱えば管理は十分可能で、大きな問題にはなりません。少し気をつけるだけで、コリドラスの生態観察に一役買ってくれる頼もしい存在です。
まとめると、田砂は粒の細かさ、角の丸み、適度な比重という三拍子が揃った、コリドラスのための理想的な底砂です。上手に使いこなせば、水槽の中で元気に遊ぶ彼らの姿を安心して楽しむことができます。コリドラス飼育に欠かせない存在として、ぜひその魅力を実感しましょう。


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