安価な室内用LED電球で水草は育つのか?
「LEDに交換したのに、水草の調子がなぜか悪くなった」。そんな経験はありませんか。見た目は以前より明るくなり、水槽全体もきれいに見えるのに、水草は元気がなく、なぜかコケまで勢いを失ってしまうことがあります。実は、その原因は肥料やCO2ではなく、普段あまり意識しない「光のスペクトル」かもしれません。
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わが家の水槽には、1つ懸念すべき問題がある。水草を照らすライトだ。
水槽をやめて5年もの間に、世の中の光は蛍光灯からLEDへと革新を遂げている。しかし、わが家の水槽のそれは、学生時代に世話をしていた水槽のお古。つまり、蛍光灯なのだ。
蛍光灯から卒業したい!!
ミステイクはふとした思い付きから
マツモにミクロソリウム、どれも無事に生長してくれてはいるものの、最新式にすれもっと青々と生い茂るような気がする。そう考えたのが、そもそもの間違いだったのかもしれない。
調べるうちにLEDライトに興味を持ち、実物を見にホームセンターへ行ったのが運の尽き。たまたま目に入った室内照明用の物と比べ、水草用のものは、同等の光量でも格段に高いことに気が付いてしまったのだ。
となれば、それら廉価なLED電球をクリップライトに取り付け、水草を育てようとするのが、水槽を嗜むものとしては自然な流れ。
さっそくわが家の水槽にも、格安LEDの光が灯ることとなったのだが……。
コケすら生えない魔の水槽
駅を降りて、裏手の入口で入場料を支払い、大きな庭園に入り、ショートカットと称して黙々と反対側の出口を目指す。夕方の園内は西日と通り雨で蒸し暑く、木々は連なる葉を精一杯伸ばし、常夏の太陽を待ち望んでいるようだ。電車のクーラーで冷えた体を、木漏れ日に満ちた香りでなじませながら、夜の繁華街の方向へと歩き続ければ、目的地のいつものアクアショップまでもうすぐだ。
店内で合流し、二人して寡黙に巡りながら、手早く消耗品をカゴに入れつつ、新種の魚や舶来品の器具を目に焼き付ける。そして、お会計が済んだ後、近くの喫茶店になだれ込み、ぐだぐだとアクア談義を夜遅くまで繰り広げる。これが私たちの週末のルーティンなのだ。
師:「で、聞いた通り、マツモの栽培が上手くいってないんだって?」
私:「そうなんです。どうにこうにも、最近調子が上がってこないんです」
師:「ふーん。マツモ自体はとても簡単な水草なんだけどなぁ……」
私:「そのはずなんですが……、どうしてか生長速度が芳しくないんです」
師:「ふむ。それで、水槽は今どんな状況なのかな。コケまみれとか?」
私:「いえ、その逆なんです」
師:「うん? 逆ってことは……」
私:「コケすら、最近勢いに陰りがあるんです」
師:「え゛っ、あいつらが?」
私:「えぇ。でも、そんなことって、あるんでしょうか?」
師:「ふーむ、そうだねぇ……。最近、水槽に何か使わなかったかな?」
私:「使うって、何を?」
師:「例えば、魚病薬とかコケ取り用の薬剤とか?」
私:「いえ、幸いにして立ち上げ期間中に白点病にも罹らなかったので、そういったものは一切使っていません」
師:「しかしだねぇ、コケすら弱々しいだなんて聞いたことがないなぁ。絶対何かしてるはずなんだよなぁ」
私:「と、言われても……」
師:「なにか、器具で変えたものがないかい?」
私:「あぁっ!!」
師:「お、なになに?」
私:「最近、ライト変えたんです!」
師:「ライト?」
私:「はい。どうしても蛍光灯の古臭い感じが嫌だったので、LEDに交換したんです」
師:「ほぉ?」
私:「近くのホームセンターで、E26LED電球が安く売ってたので……」
師:「あ……、それ……。なんか悪い予感!」
私:「え……、LED電球だめなんですかぁ?」
スペクトルも重要な時代
ビルの2階にある喫茶店から外を見下ろすと、デパート街は煌々としたネオンに包まれている。いまだ上下8車線ある交差点には車と人がひしめき合い、時折クラクションや若者の歓声が聞こえてくる。どうやら今日もこのビル砂漠は、人のエネルギーで満ち溢れているようだ。
が、お師匠様は、外の喧騒など気にすることなく、こじゃれたペンダントライトが照らすほの暗い店内で、淡々と話し続けた。
師:「残念だけど、室内照明用LEDでは、水草が生長しづらいかもね」
私:「へ? どうしてですか。光量はすごく強くて、天井に水影ができるくらいなんですよ?」
師:「なはは、照明用だもの。たしかに、十分な光量はあるはずさ」
私:「では、それ以外の何がダメなんでしょうか?」
師:「そうだねぇ、キミ、高校レベルの生物は、ばっちしだったよね?」
私:「はい、受験で使いましたから」
師:「なら聞くけどさ、植物が光合成をするにあたって、何色が有効だったかな?」
私:「端的に言えば、青と赤です」
師:「で、実は、その青と赤が、安い室内用LED電球には含まれていないことが多いんだよね」
私:「え? あの電球にですか?」
師:「そうなんだ」
私:「でも、白色のLEDなんですよ?」
師:「そうだとも。それがどうかしたのかい?」
私:「その話は、なんだかおかしいです。だって光の三原色、赤、緑、青のLEDを混ぜて……」
師:「3色混ぜて白色にしている、だから、赤と青のスペクトルもあるはずだと、思いたくなるよね?」
私:「はい!」
師:「でも、実は違うんだ」
私:「え……、えぇぇぇ?」
師:「たしかに、3色混ぜて白色にしているものもあるけど、安物は、青色LEDの光を黄色の蛍光体に通して、白色を出しているだけなんだ」
私:「そうなんですか? 青色と黄色の2色だけで?」
師:「だから、青や黄色のスペクトルは多く含まれているんだけど、どうしても赤色が少なくなるんだなぁ」
私:「なるほどぉ……」
師:「もちろん、全くないというわけではないんだけどね……」
私:「でも、これでわかりました。だから水草が伸びないどころか、コケの侵略も止まってしまったんですね?」
師:「そういうこと。光のエネルギーなくして光合成は進んでいかないから、生長が止まってしまったんだ」
私:「うーん……、しかし、ライト選びが振り出しに戻ってしまいました」
師:「むはははっ!」
水草用ライト選びは深い沼
私:「蛍光灯から卒業するには、どんなライトを買えばいいのでしょうか?」
師:「なるべく、水草育成用ライトと銘打っているものを使えば、失敗は少ないはずさ」
私:「やっぱり、そうなんですね」
師:「選択肢はいくつかあるよ。安くて水草が育つものを求めているのなら、定番中の定番、縦長のライトを買うといい」
私:「どうして?」
師:「そういったものは、みんなが使っている。だから確実に水草は生長するはずさ」
私:「なるほど……」
水草育成用のライトを買えばいい、お師匠様は簡単に言ってみせた。
だが、現実は甘くない。その種類が無限にあるのだ。
明らかに水草栽培に不向きそうな観賞用と銘打っているものや、光量の弱いアーム式ライトを除いたとしても、未だ候補となる機種は山のようにある。
いったい、どれを買えばいいのだろう。正直、困り果ててしまったのだ。
(次回へ続く)
まとめ
水草が思うように育たないと、「肥料が足りないのかな」「CO2が不足しているのかも」と考えがちです。しかし、見落とされやすい原因の一つとして挙げられるのが照明です。
特に、水槽に慣れないうちは、廉価な室内用LED電球を水草水槽で使用してしまうことがあります。これは、蛍光灯の時代では通用していた手法ですが、今の時代ではトラブルの原因となることもあります。
LEDの時代では、見た目の明るさだけでは判断できない場面が多くなりました。水草は光合成によって生長しますが、その際に重要なのは光の強さだけではありません。青色や赤色など、光合成に利用しやすい波長が十分に含まれていることも大切だからです。
一般的な安価な白色LED電球の多くは、青色LEDと黄色の蛍光体を組み合わせて白い光を作る方式が採用されており、人の目には明るく自然な白色に見えます。しかし、赤色の光は少ない傾向があるため、水草に必要な光が不足し、生長が鈍る原因になることがあります。
しかし、このような環境は、はっきり言って極めて特殊です。なぜなら、水草だけでなくコケの勢いまで弱くなることがあるからです。生命力の強いコケでさえ、光合成に必要な光が不足すれば十分に育たなくなるのです。そのため、「水草もコケも元気がない」という場合は、肥料やCO2だけでなく、真っ先にライトに目を向けましょう。状況を打破する鍵が見つかるかもしれません。


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