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2026年6月2日火曜日

マツモをシェルターにする理由。仕方なくホームセンターまで行った訳

水質浄化にシェルターなら、低光量で育つマツモ

水槽を立ち上げたばかりの頃は、不思議とあれこれ夢が広がるものです。どんな魚を泳がせようか、どんな水草を植えようか。そんな楽しい想像をしていると、思いもよらない問題に出会うことがあります。
今回の悩みは、アカヒレ同士のいじめ。そして、その対策を探しているうちに注目したのは、定番水草として知られるマツモでした。

陽性植物全盛の今、ショップでは脇役のような存在ですが、実はシェルター、水質浄化、育てやすさなど、立ち上げ期の水槽と相性の良い特徴を数多く備えています。

そんなマツモを求めて、ショップ巡りをするのですが……。


**********************************


アカヒレのいじめが始まった。がらんどうの水槽では、逃げる場所はどこにもない。残念ながら、水槽において、いじめの根絶は不可能だ。弱者を避難させれば次の弱者がターゲットとなり、強者を排除すれば次の強者が場を仕切り始めるからだ。

これを緩和するには、いくつかの選択肢がある。単独飼育にするか、それともタンクメイトを増やして縄張り意識を弱めるか。しかし、どれもこの水槽には適していない。なぜなら、立ち上げ中だからだ。

となれば、シェルターだ。先に挙げた2つに比べれば緩和する効果は低いものの、水槽に逃げ場を作れば、いじめられている生体が逃げ回るための時間稼ぎになるはずだ。

しかし、懸念事項もある。世に溢れている「シェルター」と呼ばれるものは、どれも角ばった無機質なものばかり。これでは、せっかく水が輝く有機的な曲線美の世界が台無しではないか。



マツモを求めて彷徨う


マツモをシェルターにすれば水質浄化に?

「なら、マツモなんてどうかな?」

と提案したのは、わたしの水槽のお師匠様。彼女は大学時代の友人で、わたしのアクアリウムライフの水先案内人とも呼べる人物だ。

たしかに、マツモなら光量が厳しい環境でも旺盛に育つし、生長すれば水質浄化に寄与する。立ち上げに有利に働くことは間違いない。

私:「なるほど。なら、今度の休日の前日の夜に、ちょっと買いに行きませんか?」

師:「おっ、いいね! そうしよう!」

こうして、週末のアクアショップ巡りが決まった。



マツモをシェルターにする理由

華の金曜日。飲み会の誘いを断り、ひとり地下鉄に乗る。目指すはアクアショップ。給料日直後ということもあり、街を歩く人並みはどこか足取りが軽やかで、笑い声も絶えない。

目的地の改札でお師匠様と合流し、二人でずんずんと地下道を進んでいく。気の遠くなるほど歩き続けると、やがて地下道の行き止まりにアクアショップが見えてきた。汗と香水が入り混じるギラギラと輝く繁華街。その真下にこんな水草のオアシスがあるだなんて、誰が想像するだろうか。

入口直前にして立ち止まって考え込むわたしをよそに、お師匠様はルンルンと店に駆け込んでいった。

私:「ところで、どうしてマツモなんですか?」

師:「うん? そりゃ、CO2添加要らずで、質素な水草育成用ライトでも育つからさ」

私:「うーん、なら、陰性植物じゃだめなんですか?」

師:「んーっと、アヌビアス・ナナとか、ミクロソリウム・プテロプスとか?」

私:「はい。これらも水草育成用ライトさえあれば育ちますし……」

師:「もちろん、水草だけなら、それでもいいとは思うよ」

私:「じゃあ、アヌビアスでも構いませんか? 昔使っていた流木も見つけましたし……」

師:「でも、シェルターが欲しいんでしょ?」

私:「えぇ、そうですけど……。いったい、どういうことですか?」

師:「思い出してほしいんだけど、陰性植物って硬いでしょ?」

私:「ん? 硬いって何がですか?」

師:「ほら、葉が分厚くて硬いじゃない。だからこそ、低い光量でも育つとは思うけどさ」

私:「あぁ、そうですね。たしかにちょっと張りがあったり、先端が鋭かったりしますね」

師:シェルターってさ、パニック状態で駆け込むものでしょ。もし葉の断面が鋭くて硬いとどうなる?

私:「あっ! 魚には硬い鱗があるとはいえ、葉の先端に引っかけて傷がつくかも?」

師:「そういうこと。特に、鱗に覆われていない背鰭尾鰭は裂けやすいんだ」

私:「なるほど。だから柔らかくて育ちやすいマツモをシェルターに」

師:「そういうこと。もちろん、水質浄化作用を見込んでいるところもあるよ?」

私:「立ち上げ中のわたしの水槽にぴったりということですね?」

師:「うんうん。それに、上手くピンチカットして増やせば、シェルターがどんどん増えていくというわけ」

私:「良いこと尽くめですね!!」



ポピュラーなようで案外マイナー

……が、今、わけあって、電車で20分ほど都会から離れた所にいる。どの店にもマツモが置いてないのだ。改札を出て広がるのは港の見える街並み。その先にある新興住宅地のど真ん中にあるホームセンターを目指している。

白を基調とした街並みと、ブルーのライトで彩られたベイサイドには、いくつものマンションが建ち並び、共働きの若いカップルが数多く住んでいる。住宅地でありながら不夜城でもあり、二車線の大通りに並ぶ看板の煌々としたライトが街の素性を言わんとしている。

例にもれず、その店にも電柱の上のハロゲンランプが闇夜にヌラヌラと光り輝いており、ひっきりなしに若い家族が出入りしていた。田舎育ちには理解できない光景に恐る恐る店に入ると、しかしそこは、きちんと整理整頓されたホームセンターとなっていた。一瞬にして変な汗をが吹き出したわたしのことなどお構いなしに、お師匠様は店の奥へ奥へと進んでいった。

私:「あ、待ってください!」

師:「ほら! こっちこっち」

私:「しかし、随分奥まで来ましたけど、売り場はまだですかね?」

師:「店が大きいからね。しかし、まいったね。最初の店は置いてなかったし……」

私:「その2軒目もありませんでしたし、3軒目はすでにシャッターが降りてました」

師:「むふふ、失敗したね。二人でショップ巡りするより、通販に頼ったほうが良かったのかもね?」

私:「そうかもしれません。しかし、定番のマツモがないなんて予想できますか?」

師:「ナハハ、大都会の大きな店には、金に糸目を付けぬ熱烈ファンが遠方からやってくるからね。どこにでもあるような水草なんか、ちょっとやそっとじゃ置かないのかもねぇ……」

師:「たしかに。どの店も舶来品のソイルとCO2添加、水草育成用ライトばかりでしたし……」

私:ああいう店には、ある種のスパイス的な役割があるからねぇ。定番商品に興味がない人が多いのかもしれないね

師:「しかし、うーん、寂しい限りです。あんなに育てやすくて綺麗な水草はないのに……」

私:「さぁ、ここはどうかな? ホームセンターだから置いてあるとは限らないよ?」

師:「えぇっ!? ホームセンターならあるかもって言ったのは、お師匠様じゃないですか?」

私:「アハハ、だってマツモは熱心なオタクでない人からしたら、ただの金魚藻にすぎないからね」

師:「金魚藻?」

私:「アナカリス、カボンバ、そしてマツモのことをまとめて金魚藻っていうんだ」

師:「うーん、なんとなく藻であることは分かったんですが、どうして金魚なんですか?」

私:それは、金魚のおやつだからさ! おやつであるからには、消耗品だろう?

師:「おやつに、アナカリスも、カボンバも、マツモも差がないと?」

私:「そういうこと♪ アナカリスやカボンバは置いてあっても、マツモが置いてないということもあるんだなぁ」

私:「えぇぇぇぇぇぇ……」

師:「さて、あるかな~♪」

私:「あっ! あった!!」

師:「良かったねぇ~。どれどれ、ワンパック300円!? 安いねぇ~」

私:「これで、うちの水槽にもマツモが。アカヒレにマツモ」

師:「なかなか渋い水槽だね♪」

私:「双方合わせて、たった1,000円前後ですよ?」

師:「ね。大切に育てれば綺麗になるのにね~」

私:「とにかく、無事に見つかってよかったぁ~」

師:「さ、終電も迫ってるから、早くレジに行こう!」



水草水槽へ向けて

と、なんだかんだあって、マツモを購入。駅でお師匠様と別れ、終電の数本前の電車で家へと帰ってきた。カルキ抜きした水で軽く洗ってから、ついでに買った水草おもりでまとめ、投入したのはいいものの……、この水槽にはまだまだ足りないパーツがいくつもあるようだ。

まずはライト。とりあえず水草が育てばいい。物置に古いアクア用蛍光灯が入っていたかもしれない。肥料はこれから水がどんどん汚れるから、無理しなくてもいいだろう。CO2器具も保管してあるから、せっかくだし使おうか。

あぁ、なんとも夢が広がる。水槽立ち上げ期特有の高揚感に包まれながら、その日は眠りにつくことになった。



まとめ

アカヒレのいじめ対策として、「シェルターを入れる」という方法は、定番のソリューションです。もちろん、単独飼育や飼育数を増やして縄張り意識を分散させる方法もありますが、立ち上げ直後の水槽では選択肢が限られることもあります。そんな時、魚が身を隠せる場所を用意しておくと、追われる個体の負担を和らげる助けになります。

そこで注目したいのがマツモです。マツモはCO2添加を必要とせず、比較的弱い照明でも育てやすい丈夫な水草です。生長が早いため、水質浄化にも期待でき、立ち上げ中の水槽との相性も良好です。さらに、柔らかく細かな葉を持つため、魚が慌てて飛び込んでも体やヒレを傷つけにくいというメリットがあります。

一方で、アヌビアスやミクロソリウムなどの陰性植物は丈夫で育てやすいものの、葉が厚く硬いため、シェルターとして考えた場合は少し事情が変わります。魚が勢いよく逃げ込んだ際、ヒレを引っかけて傷つける可能性もあるからです。もちろん美しい水草ですが……、「隠れ家」として見るとマツモには独自の強みがあると言えるでしょう(もっとも、いじめられている個体のサイズや生活スタイルにもよりますが……)。

しかし、いざ購入しようとすると、筆者のように意外な壁にぶつかることもあります。マツモは非常にポピュラーな水草でありながら、専門性の高いショップでは取り扱いがない場合もあるのです。高価なレイアウト向け水草が並ぶ一方で、昔ながらの定番種は見つけにくいことがあります。

それでもマツモは、安価で育てやすく、増やしやすい優秀な水草です。シェルター、水質浄化、レイアウト素材という複数の役割を1つでこなしてくれるため、水槽立ち上げ時の心強い味方になってくれるでしょう。魚にも水槽にもやさしい隠れ家を探しているなら、一度マツモを候補に入れてみるのもいいかもしれません。



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