液肥よもやま話
CO2も添加している。ライトだって水草用を選んでいる。それなのに、どうにも葉や茎が頼りない。そんなことはありませんか?
水草を元気よく生長させるには、光やCO2だけでなく、さまざまな栄養分も必要です。とはいえ、液肥なら何でもよいわけではなく、種類によって含まれる成分や特徴も異なります。
今回は、園芸用肥料であるハイポネックスの流用の例に挙げつつ、選定の難しさを紹介したいと思います。
なるべく水草用液肥を使ってほしい理由
せっかくなら元気よく育てたい
水槽をのぞきこめば、小さくか細いミクロソリウムが4本、その傍らには華奢な葉を付けたマツモが連なる。アカヒレ軍団の喧嘩もこの子たちのおかげで終息しつつある。
たしかに、シェルターとしては大成功。
だが、思い描いた水草の姿となにか違う。体つきが、少々弱々しいのだ。せっかくなら、大きな葉に太い茎、もっと元気に育ててあげたいところ。
とは言え、CO2は既に添加してあるし、ソイルはそもそも将来導入予定のプレコのことを考えるなら、なるべく控えたい。
では、わたしに何ができるだろうか?
オフィスのロビーを出て、ビルに彩られた急な坂を上る。小高い丘の頂上に出ると、そこはこじゃれたレストランが建ち並び、街並みのどこをとっても映画のように美しく整っていた。
ふと、店頭にあるブラックボードに目が留まった。この地で働くサラリーマンにはとても手が届かないような価格がずらりと並んでおり、思わずため息がでる。
この国の中枢部から数kmも離れていないのだからさもありなん、と苦虫を嚙み潰したような顔で納得していると、やがて大きな交差点が目に入ってきた。
今日の向うショップまで、あともう少しだ。
ソイルより導入ハードルの低い液肥
真夏の夜の繁華街を早足で進んでいる。今日のお相手も、いつも水槽のことを教えてくれるお師匠様。彼女は外は暑いので先に店に入っているとメールで伝えてきたのだが……。
軒先に着いた途端、自動ドアが開き、その彼女の満足顔が出てきた。そして、きょとんとしているわたしに、ゆっくり大げさに首を横に振って見せた。
どうやら閉店時間となってしまったようだ。こうなれば仕方ない、わたしは少しばかり話すことでアクア分を摂取することにしよう。
師:「まぁ、お店は残念だったね」
私:「そんなこともあります」
師:「それで、新入りのミクロソリウムたちはどうなんだい?」
私:「生きてます。いたって順調です」
師:「うんうん。なら、このペースで定期的なメンテナンスを欠かさないことだね」
私:「でも、生きているだけで生長しているかというと……」
師:「ちょっと、水草の元気が足りないのかな?」
私:「そうなんです。もっと、水草が青々と生い茂る世界にしたいんです」
師:「なるほどね。今日の話はそれだね?」
私:「……はい。水草を入れてからというもの、アカヒレのいじめは収まりつつあります」
師:「シェルターとして機能しているみたいだね。しかし、だからこそ、別の問題に気が付いたということだね?」
私:「そうなんです!」
師:「しかし、さっき青々と生い茂るという言葉を使ってたけど、いったいどういう意味だい?」
私:「わたしが思うに、本来植物というのは、葉に張りがあり茎が立ち、数が集まれば鬱蒼としたジャングルの様相を呈してくるはずです」
師:「キミの水草たちは、違うと?」
私:「……わが家の水草たちは、なんというか全体的に水草たちが貧弱で……」
師:「ふむふむ」
私:「どこか血色が悪いというか、葉や茎がやせ細っているというか……」
師:「つまり、もっと水草たちを発色よく、ボリューム感を出したいんだね? しかし、CO2は添加してあるんでしょう?」
私:「はい……。それにライトも水草用になっています」
師:「なら、さらによりよく栽培するには、あと何を足せばいいのか? という質問だね?」
私:「そういうことに、なるかと思います」
師:「たしかキミの水槽の底床は大磯砂だったよね?」
私:「はい、そうですけど?」
師:「となれば、まずはソイルだね」
私:「ソイル?」
師:「ソイルはね? 根付く事以外にも水を軟水にして、それによりCO2が有効的に……」
私:「いえ、ちょっと待ってください。何回か話しているかもしれませんが、将来的には小型プレコを飼育したいんです」
師:「ふむー……。となれば、掃除のしやすい底床がいいはずだから、ソイルは厳しいね」
私:「はい。ソイルに変更する以外で何かいい方法はないでしょうか?」
師:「そう来たら、やっぱり液肥だね!」
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| ・ブランド料≒ノウハウ。行き詰ったときに使って救われたことも。 |
ブランド液肥とハイポネックスから液肥を考えてみる
――パタン。
21時半、近隣の席のノートPCがまた閉じられたようだ。夜も深まるとガヤつかせていたトーンが薄まり、次第にわたしたちの声が通るようになってきている。
閉店時間まであと30分。ラストオーダーを伝える店員が通り過ぎると、アクア談義はラストスパートのように熱を帯び始めた。
私:「液肥ですか……。でも、高いんですよね?」
師:「あはは、たしかに、そのように言う人はいるね」
私:「とくに、有名メーカーのものは、常用すれば目が飛び出るぐらいランニングコストがかかるとか?」
師:「水量の大きな水槽で水草をやっている人はね。キミの30cmキューブのハイタイプは何リットル入るんだっけ?」
私:「だいたい30Lです」
師:「なら、十分リーズナブルな範囲で収まると思うよ。そもそもそういった液肥は、コケのリスクを避けるため、用法用量通りの添加は難しいからさぁー」
私:「なるほど……。そんなにバカスカ使うものではないんですね?」
師:「そうなのさ。まぁ、そんな話はともかくとして、今日は安く液肥を調達できる方法を教えよう!」
私:「あ! やっぱりリーズナブルな物があるんですね?」
師:「もちろんさ! それは、ハイポネックスだよ」
私:「え……それって園芸用肥料ですよね?」
師:「そうだとも♪ キミはコスパがいいのが好きだと思ってね。今日はその話をしたいと思う」
私:「しかし、学生の頃何度も使ったことがあるので知ってますけど、……使って大丈夫なんですか?」
師:「ふふーん、よく気が付いたね♪ たしかにハイポネックスには幅広いラインアップがあって、商品によってはアンモニア態窒素が入っていることもある」
私:「アンモニア態?」
師:「文字通り、水槽の世界でざっくりというところのアンモニアさ!」
私:「それは……ちょっと怖くて使えないです」
師:「まぁまぁ、最後まで聞いて。実はそれが入っていない物もあるんだ!」
私:「そうなんですか?!」
師:「具体的に言えば、ハイポネックス開花促進液は窒素が入ってないから使いやすいし、値段も安い!!」
私:「おお!! それはすぐ買いですね。ちょっと園芸店いってきます!」
師:「ああ! ちょっと待って! それが、ちょっと面倒なことがあってね」
私:「何がですか?」
師:「濃度計算!!」
私:「げげげ!!?」
(ハイポネックス開花促進用ではありませんが、その難しさはコチラから)
師:「あ……もしかして、キミも苦手?」
私:「希釈の計算ですよね。はっきりいってあれは嫌いです。学生時代散々苦労させられましたので」
師:「まぁそーだよねぇ。しかし、但し濃度で添加してあげないと大変なことになるよ?」
私:「うーん……」
師:「それだけで心理的なハードルが上がるよね? でも問題はそれだけじゃないんだ」
私:「え?」
師:「実は、窒素分が含まれていないことでアクアリストに有名になったハイポネックス開花促進液だけど、実はちょっとした、いや大きな問題点があってね」
私:「計算以外にも?」
師:「そうなんだ。これ、なんとN-P-Kが0-6-4なんだ!」
私:「え……、リンもカリウムの1.5倍も添加されるってことですか?」
師:「お! 良く分かったね?」
私:「一応、生物系の大学出てますから! とすると、これがコケの原因に?」
師:「否定はできないね。だから、なるべくならアクア用を使いたいところだねぇ」
私:「そーですねぇ……。計算が得意で、適切に液肥を投入できるテクニシャン向けかもしれませんね」
師:「うまく使いこなせれば、有用なんだけどね」
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| ・一時ネットで話題になったものだが、やはり人と状況を選ぶ。 |
結局手にしたのは……
偶然通りがかったスーパーの生花部門、そこにはたまたま教えてもらったハイポネックス。一度は手に取ってみたのだが、購入することはなかった。実は先日、手ごろな価格のK液肥が見つかったからだ。つまり、無理してリスクを背負う必要はなくなったのだ。
しかし、つくづく実感するのは、水草用液肥の値段帯の面白さだ。もちろん有名ブランドの物はそれなりにするし、今回わたしが買ったものは名前も知らなかったような企業のもので、価格は2/3程度だった。
しかし、店舗を見れば、不思議と高いブランド品の方が棚がスカスカで、売れているようにも見える。その差はやはりブランドなのだろうか。それとも……
この世界は奥が深い。
まとめ
水草用の液肥にはさまざまな製品がありますが、価格帯は意外と幅広く、有名ブランドになるほど高価なものも少なくありません。
一方で、手ごろな価格の製品もあり、必ずしも高価なものを選ばなければならないわけではありません。
ただし、液肥なら何でも水槽に入れてよいというわけではありません。水草に必要な栄養素を補給できる一方、使い方を誤るとコケの発生につながる可能性があります。
特に、園芸用肥料を水槽に使う場合は、成分を確認しておくことが大切です。
たとえば、ハイポネックスには窒素を含まない「開花促進液」があり、N-P-Kは0-6-4です。窒素が入っていないため、水槽で気になるアンモニア態窒素を避けられる一方、リン酸とカリウムは含まれています。
そのため、単純に「窒素ゼロだから水草に最適」と考えるのは少し注意が必要です。
また、液肥は濃度計算や希釈など、慣れていないと少し難しく感じる部分もあります。水草の状態や水槽の環境を見ながら、必要な栄養素だけを適切に補うことが大切です。
価格だけで選ぶのではなく、成分と使いやすさまで確認して、自分の水槽に合った液肥を探してみるとよいでしょう。


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