小型水槽の生物ろ過強化ならスポンジフィルター!
テトラスポンジフィルターについて。
無骨を通り越して、もはや何とも言えない不思議な形状をしているこのフィルターですが、実は……というより多くのアクアリウムファンがご存じの通り、小型水槽との相性は抜群です。
今回はわたしの20年前の失敗談を紹介しつつ、その理由や気を付けたい欠点を述べていきたいと思います。
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かっこいい!
このような表現は似つかわしくないかもしれないが、わたしにはF-117ステルス戦闘機のような、独特ながらも洗練されたスタイリングに見えたのだ。
初めてのプレコでスポンジフィルターに救われる
立ちはだかる亜硝酸の壁
こうして初めてお迎えした熱帯魚は、セルフィンプレコの幼魚。体長は十センチにも満たず、まさしく食い盛りの幼い個体であった。二十年以上前の話である。
用意した水槽はテトラのセット品で、水量も二十リットル弱、ろ過装置は外掛けフィルターだった。今から考えれば、これから始めるアクアリウムの舞台としては少々貧弱であったが、そのときの情熱が結果として今に続くことになる。無理もなかった。
外掛けフィルターに文句を言うつもりはないし、水槽の容量が二十リットル前後で、初心者価格で売られていることに異議を唱えるつもりもない。だが、厳しかった現実に直面する。盛んに食べるプレコタブレットのおかげで、すぐに亜硝酸値が上昇し、水質は悪化の一途を辿り、危機的な状況となった。
セルフィンと言えどもプレコの幼魚。意外と繊細で環境の変化に弱く、だんだんと食が細っていくのが目に見えてわかった。付け焼刃の知識しかない初心者の自分にはどうすることもできず、焦りと無力感だけが募る。アクアリウムとはこんなに難しいのかと、身をもって知ることとなった。
神が宿ると信じることになったあの日
「何とかしなくては!」
焦燥感に駆られ、熱帯魚店に駆け込んだ。
限られた学生の財布に優しく、それでいてしっかりと効果があり、小型水槽にも設置できるろ過装置はないものか。
いくつか検討し、選択したのはテトラのスポンジフィルターだった。密なスポンジろ材、エアポンプ駆動、そして何より効き目がありそうな、オリジナリティあふれるデザイン。思わず一目惚れしてしまったのだ。
そして、設置から一週間。幸いなことに、みるみると亜硝酸値が低下し始め、水質が安定する兆しが見えてきた。
「これだけスポンジが大きければ、ろ過能力もさすがだな!」
とにもかくにも、選んだ道具の効果で、状況が瞬く間に好転。わたしは興奮しながらも胸をなでおろすのであった。
後になって考えれば、おそらく先に動いていた外掛けフィルターの生物ろ過が完成したのだろう。どのようなメカニズムが働いたにしろ、水槽に向かって柏手を打ち、手を合わせてひたすら水槽の神に感謝したことを昨日のことのように覚えている。
しかし、新たな問題も起きた。
プレコがスポンジの凹凸やパイプの隙間に隠れて、姿を見失うことが多くなったのだ。これでは鑑賞どころの話ではない。糞が落ちているのを見る限り、餌は食べているようだが……。
こうしてわたしは、プレコとの付き合い方を一つひとつ学んでいくことになり、器具も瞬く間に増えていくことになる。
それは別の機会に記そうと思います。
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メリット
生物ろ過能が強い
大きな魅力は、生物ろ過能力の高さです。
大きくむき出しになったスポンジろ材は、たくさんのバクテリアがしっかりと住みつくのに適しています。とりわけ小型水槽においては、フィルターの選択肢が限られています。今回の話のように「なんとか生物ろ過を強化したい!」というときには、ろ材全体が生物ろ過専用に集中しているスポンジフィルターに分があることは間違いありません。
小型水槽で困ったときに頼れる道具であるという点は、今も変わっていないようです。
さらに、プクプクとエアリフトで駆動してくれるのも好ましい点です。
内部的には、エアポンプの空気が上下に伸びるパイプの中で吐出され、コポコポと音を立てながら水面へと水を押し出す構造となっています。つまり、これはエアストーンによるエアレーションそのもの。そのため、溶存酸素量を上昇させる効果も期待できるでしょう。
ろ過とエアレーション、この2つを1つのスポンジフィルターで実現できるのです。これこそ、小さな水槽で好まれる最大の理由だと言えるでしょう。
稚エビや稚魚に最適
20Lにセルフィンプレコの幼魚というのは、今だからこそ初心者がおかした大きなミスだと断言できますが、基本的には小型水槽には小さな生体を入れるものです。もちろん、稚魚や稚エビにも適しています。
そしてそれらの生体は、ベタのように遊泳力が弱いものや、稚魚のように強い水流やフィルターの吸い込み口に吸い込まれてしまう種類もいます。しかし、エアリフト式なら流れが穏やか、吸い込み口全体が柔らかいスポンジ素材で覆われているため、小さな生体が吸い込まれる心配がありません。そのため、極めて小型水槽に向いているフィルターだといえるでしょう。
とりわけエビにとっては、表面が凸凹したスポンジや入り組んだパイプが、恰好の餌場や隠れ家になるようで、非常に相性が良いようです。
メンテナンスが簡単で壊れづらい
「スポンジフィルターは詰まりやすい!」と思う方も多いですが、その反面、とても簡単にメンテナンスができるのも特徴です。
水槽から汚れたスポンジを取り出し、飼育水を満たしたバケツの中で軽くもみ洗いするだけで十分です。
たしかに、何度も洗っているうちにスポンジがボロボロになって崩れてしまうこともありますが、交換用のろ材はそれほど高価なものではなく、さらにシンプルな構造でパーツも少ないため、故障によってろ過が停止する心配はほとんどありません。
ろ過性能やエアレーション能力を考えれば、これからアクアリウムを始めたい人にピッタリなフィルターです。無理に外部フィルターを使うよりも、むしろ良い選択肢だと思います。
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・過去記事より。実は1つ前の画像はAIに書き直してもらったものです。仕上がりは一目瞭然。orz |
デメリット
見た目が目立つ
凸凹した真っ黒なスポンジが壁面にあれば、誰だって「なんだこれ!?」となることは間違いなし。
どうしても目立ちやすいという欠点があります。せっかくレイアウトにこだわって美しく飾りつけた水槽でも、スポンジが見えると「ちょっと残念だなぁ」と感じることになるかもしれません。
そんなときは、流木や水草の陰に隠したり、側面に設置したり、黒系の背景に変更したりすることで、多少なりとも存在感を和らげられるはずです。
私個人としては、大自然の中にあるテントのようなものだと思うようにしています。つまり、アクアリウムらしさが出るフィルターであるととらえ、あえて隠さないというのもひとつの方策だと考えています。
物理ろ過力はやや弱め
たしかに、スポンジフィルターは生物ろ過には優れています。
しかし、物理ろ過の面ではやや力不足なところがあります。大きな糞や餌のカスなど浮遊物を完全に取り除くのは難しく、ごみの種類によっては詰まりやすいこともあります。
(とりわけ、プレコが生み出す流木の食べかすとは相性が良くないようです。……とほほ。)
そのため、物理ろ過を重視するなら、ポンプを電気で回す外部フィルターや上部フィルター、水槽サイズによっては外掛けフィルターと併用するのが良いでしょう。特に生体が多い水槽や餌の量が多い水槽では、物理ろ過の補助があると水質がさらに安定する傾向があります。
使い分けることで、それぞれのフィルターの良さを活かし、理想的な環境をつくりやすくなります。
エアーポンプだからこそ
ブーン……♪
あぁ! もう、うるさいっ!!
つまり、エアーポンプの「ブーン」という駆動音や振動が気になることがあります。特に夜の静かな時間帯や寝室の近くに設置すると、眠れなくなる人もいるはずです。
対策としては、水作水心などの静音タイプのエアーポンプを使ったり、防振マットを敷いて振動を抑えたり、消音チャンバーを利用したり……。実はこれは、長年アクアリウム愛好家たちの悩みでもあり、さまざまな対策方法が提案されてきました。
もし音に敏感であれば、機器選びと設置方法を工夫し、快適な環境づくりを心がけると良いでしょう。
というわけで、今回はここまで。長文読んでいただきありがとうございました。
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