活性炭って必要?アクアリウムでの役割と使い方
水槽の水がなんとなく黄ばんでいたり、流木を入れたら色がついてしまったこと、ありませんか?
そんなときに頼りになるのが「活性炭」というろ材です。わたし自身も、プレコ水槽を立ち上げたばかりの頃は、活性炭のありがたみを実感したものです。
今回は、そんな活性炭について、ストーリーとともに紹介したいと思います。
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(これは20年前の物語。)
最近、どうもプレコ水槽が茶色っぽく見える気がしていた。
透明だったはずの水が、いつの間にか琥珀のように色づき、ライトに照らされるたび、水面にやわらかな影を落とす。
「どうしてだろう……」
つい声に出して呟いてしまう。心当たりがないままでは、どうにも落ち着かない。
秋の空気はどこか澄んでいて、背中を押されるように、わたしはいつもの熱帯魚店へ足を向けた。
琥珀色の水
アクの正体
店の入り口をくぐると、タイミングよくお師匠様と鉢合わせた。
彼はわたしの学友であり、アクアリウムにおいては、わたしのすべてにおける“先生”でもある。
初めてプレコを飼ったときも、「流木が絶対いるから」と、強く推してくれた人だ。彼の言葉通りに流木を入れた結果、プレコはすぐに安心してくれたようだった。
水槽のことを話すと、お師匠様は微笑みながら言った。
「それは、流木のアクというやつさ~」
アク、という言葉を聞いて、わたしの頭には鍋に浮かぶ白い泡がよぎった。
しゃぶしゃぶをするときにすくうやつ。あるいは、タケノコを茹でたときに浮いてくる苦そうな液体。あれもアクだったはず。
ぐぅ……♪
「あはは、もしかして、食べ物のアクを想像してる? それとはちょっと違うんだよなぁ?」
上を見上げてぽかんとしていたのだろう。くすっと笑われ、すぐに補足が入る。
これはタンニンという成分で、流木からじわじわと染み出してくるものなのだそうだ。実は流木を買うときにも教えてくれたらしいのだが、水槽の立ち上げですっかりそんなことを忘れていた。
しかし、なるほどな、と思った。
最近、一晩中プレコが流木をガジガジとかじる音が聞こえる。削れた木が糞になり、フィルターに溜まっていく。
まるで、それは削り節のようにアクを水に溶かしているのかもしれない。
頭の中で簡単なメカニズムを組み立てていると、ふいにガシっと左腕を掴まれた。
「ほら、今日も困ってるんでしょう? こっちこっち!」
![]() |
・活性炭はパックに入れて販売されてることが多い。 |
化学ろ過の相性
今日も楽しそうに、わたしの袖を引っ張って、お師匠様はろ材売り場へ向かう。きっとこの人より水槽の話を楽しそうにできる人はいないんだろうなぁ……と、ぼんやりと思いつつ引っ張られていると、ポンと右手にパッケージを渡された。
迷いなく取り出して渡してきたのは、白地に茶色の小さな箱。
「活性炭だよ。ひかりウェーブ ブラックホールってやつがね、とにかくすごいんだなぁ」
今日も屈託のない太陽のような笑顔で笑って見せた。
「でも、どれくらいすごいんですか?」
「1日で水が透明になるぐらいさ!」
それはずいぶんと頼もしい言葉だった。
活性炭には吸着作用があり、アクだけじゃなく、においまで吸ってくれるらしい。なんでも、「化学ろ過」と言うのだそうだ。
フフン、と得意げな笑み。お師匠様はいつだって、こういうときはちょっと鼻高々になる。
「でもね、気をつけてほしいこともあるんだよ」
ぱっと表情が真面目に切り替わる。わたしも自然と背筋を伸ばした。
「アンモニアや亜硝酸はね、アクとは違って、活性炭じゃ吸着できないらしいんだ」
「でも、化学ろ過なんでしょう?」
「うん。昔は吸えるって言われてたんだけど、今は研究でそうでもないって」
つまり、見た目やにおいには効果的だけど、実際の水質管理はバクテリアや他のフィルターに任せるべき、ということらしい。
「ふぅーん……。それ以外に何か気を付けることって?」
「あとね、薬を使ってるときは絶対入れちゃだめだよ。薬の成分まで吸っちゃうから」
大学の薬理学の講義で聞いた話が思い出された。
たしか、色素系の薬は微生物に対して強い殺菌作用を持っていて……あれも、色素だった。アクも色素。つまり、吸着されるってわけだ。
「例えば、メチレンブルーとか、マラカイトグリーンとか。ああいうのは、十分に気をつけてね」
琥珀色と原風景
それからしばらくのあいだ、わたしはお師匠様のおすすめに従って、ブラックホールのお世話になった。
確かに水は透明になり、水槽はすっきりとした見た目になった。
しかし、プレコといえば流木。流木といえばアク。
数匹のプレコを飼育するようになった頃には、あの茶色く染まった水槽が、どこか落ち着いて見えるようになっていた。
最初のうちは「濁ってる」と思っていたその色が、いまでは、プレコの住むアマゾンの原風景を映しているかのようで、不思議なほどに美しく感じられる。
だからわたしは、あるときから活性炭を使わなくなった。
琥珀色のゆりかごの中で、今日もプレコが静かに、流木をかじっている。
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![]() |
・わが家の流木はすべて20年前に買ったもの。1つ1つの出会いを大切にしたいところ。 |
活性炭ってどんなもの?
というわけで、わたしは一時ヘビーユーザーだったものの、すっかり使わなくなってしまいましたが、ここではストーリーで紹介した活性炭の特徴をまとめてみたいと思います。
活性炭とは?
活性炭は、木材やココナッツ殻などを高温で焼いてつくられる炭素素材です。
ポイントは表面にびっしり空いている微細な孔。この孔が、水の中に含まれる目に見えない不純物を吸着してくれます。
どんな効果があるの?
流木から出るアクや、薬浴後の色素などを吸い取ってくれるため、水が透明になり、見た目がグッと美しくなります。また、魚の排泄物が原因のにおいを和らげてくれます。よほど拗らせたマニア(わたしのこと)でない限り、流木を使う水槽では必需品だといえるでしょう。
使い方のコツ
基本的には、フィルターのろ材スペースに入れて使います。
生物ろ材(スポンジやウールなど)の後方に配置することで、目詰まりを防ぎながら効果的に働いてくれます。
市販の活性炭はネット入りやカートリッジタイプが多く、扱いやすいのも魅力です。
注意点もいくつかある
活性炭は“使い捨て”です。吸着能力には限界があるので、2~4週間ごとの交換が必要です。
また、バクテリアが定着しないので、生物ろ過は別のろ材に任せる必要があります。
さらに、薬浴中は薬の成分まで吸ってしまうため、使用はNG。
そして現在では、アンモニアや亜硝酸は吸着できないといわれています。
わたしは、「吸着できる」と聞いて育った人間なので、……ブログ内でも間違って書いてたらごめんなさい。
まとめ
活性炭は、主に“見た目の水質改善”に特化したアイテムです。
ろ材として万能ではありませんが、きちんと使えば水槽環境をぐっと美しく、快適にしてくれます。
ぜひ、目的に応じて活性炭をうまく使いこなしてみてくださいね。
というわけで、今回はここまで。
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