真夏のフタ問題は自作で乗り越える
梅雨を迎え、そろそろ水槽の夏対策も必要になってきました。
水槽のフタを取り外す機会も増えてきましたので、過去の失敗談とともにフタをする理由について、述べていきたいと思います。
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20年以上前のこと。まだ秋の気配が浅く、じっとりとした蒸し暑さが残る夜だった。
大学帰りに飲み屋街を抜けて、その奥まった場所にある熱帯魚店へ2人で向かう。看板のネオンがにじむ静かな通りの先に、変わらぬ店の灯りが見えた。
ポリプテルス・パルマス アルビノショートボディとの思いで
つぶらな瞳に一目ぼれ
その日、ひと目で惚れてしまった魚がいた。
アルビノ個体で、白い身体をくねらせながら、水槽のガラス越しに餌をねだるような動きをしている。
「ポリプテルス・パルマスのアルビノ、ショートボディだよ」
水槽のお師匠様と一緒のタンクの中を覗き込む。
「かわいらしい顔してるだろ。よく懐くし、愛嬌もある。けどね、こいつは肉食魚なんだ」
魅入られるようにその姿を見続けたのち、今度は夢中でケータイを操作した。
ポリプテルスの生態、必要な設備、混泳の可否、餌付けのコツ……。
「気になっちゃった? でもね、セルフィンプレコと混泳させるのは、まだどっちも幼魚サイズだしやめておいた方がいいよ」
「じゃあ、じゃあもし、別の水槽を用意するなら?」
「それなら大丈夫。ただし、最初のうちは生餌が必要だし、こいつはジャンプ癖があるからね。」
「ソコモノなのに飛び出すってこと?」
「そういうこと♪ 水槽のフタは自作した方がいいかもしれない。とにかくプレコとは違った楽しさがあるはずだよ。」
あの日からちょうど1か月後。パルマスは、わが家の水槽にいた。
ありがたいことに、すでに人工餌に慣れていたようで、ひかりクレストキャットを落とすと、迷いなく飛びついた。
将来的には60cmワイド水槽が必要になると聞いていたが、当面はプレコから譲った45cmの水槽でしのぐことにした。
自作のフタは何とか間に合わせたが、暑い季節ではなかったので、ファンの通気口を開けたフタをそのまま使っていた。
小さな穴だ、問題ない。
だが、それが惨事を引き起こした。
フタしてあるに、どうして?
秋が深り静かな夜のことだった。
「ビシャッッ!!」
何かが跳ねるような音で目が覚めた。
もしかしてと思い、上体を起こして水槽を見る。やはり、ポリプテルスの姿がない。
あの小さな穴から飛び出したのだ!
床を見る。いない。
水槽のあるデスクを見る。いない。
一瞬、背筋が冷えた。
……そのときだった。
おなかの当たりの毛布の上で、白い何かがわずかに動いた。
いた。パルマスだ。
踏まないように立ち上がり、水槽のフタを開けて、濡らした手でそっと戻す。 幸い、目立った傷もなく、彼は何事もなかったかのように再び泳ぎ出した。
だが、安心するのも束の間。
「一度あることは二度ある」という言葉が頭をよぎる。
とりあえずタオルを詰めて応急処置を施したが、後日すぐに、穴のないしっかりしたフタを作ることにした。
あの夜の「ピシャッ」という音は、今でもフラッシュバックする。しかし、心配をよそに彼は愛嬌のある顔で、その後何年も水の中を泳ぎ続けた。
あの夜のことなど、まるでなかったかのように。
熱帯魚飼育におけるフタの役割と注意点
というわけで、今回はフタのお話。
夏になり水温が上がりやすくなると、水温が高くなった水槽を前に、とっさに冷却のためにフタを外す機会が多くなります。
とは言え、フタにはフタの役割があるのです。
「水温上がりやすいし、外しちゃおっと♪」
となる前に、今一度その役割を思い出してみましょう。
![]() |
・冷却ファンが取り付けられるフタを自作したいところ |
飛び出し防止
魚の飛び出し事故を防ぐためにも、フタは欠かせません。
前半ではポリプテルスが小さな穴から飛び出してしまった話を書きましたが、ジャンプする習性がある魚ばかりが飛び出す危険性があるとは限りません。
例えば水質の急変が起きれば魚は居心地が悪くなり、新たな水域を求めるようにして水槽から飛び出してしまうことがあります。また、頻繁に喧嘩が起きている水槽では、逃げ出すために魚が水槽から飛び出すこともあります。
とにもかくにも、水槽から出るということは、追い詰められた魚にとって、十分に選択し得る行動だということです。
もし自分がいないときに魚が飛び出せば、その後どうなるかは、容易に想像がつきますよね?
冷却ファンの使用時でも、可能な限りフタを利用するべきです。
水蒸気や熱が逃げ出すのを抑える
逃げ出すのは魚ばかりではありません。水分や熱も、フタがないと容易に逃げていってしまいます。
冬場に水槽でこんな経験をしたことはありませんか?
「あれ? また水位が減ってる?」
「ヒーターが連続稼働しているのに、全然温まらない!」
実はフタを利用すると、このような現象を防ぐことが可能です。
すなわち、水の蒸発を抑えることで水位を安定させやすくなります。水量が減らないため、水質の変動を防ぎやすく、頻繁な水足しの手間も減らすことができます。
さらに、水槽内の熱を逃がしにくくすることでヒーターの効率が上がり、電気代も節約できるようになります。とくに冬場の早朝は冷え込みやすいため、安定した温度環境を保つことが魚のストレス軽減にも繋がるはずです。
もちろん、これらがデメリットになり、夏場ではフタを外したくなるのですが……。
フタは自作しよう
残念ながら、日本のアクアリウム市場では、多種多様なフタのラインナップが揃っていません。
そのため、水槽サイズや飼育スタイルに合ったものは自作する必要があります。ホームセンターの素材を使えば、飼育環境に適した理想的なカバーを作ることができるでしょう。
ほら、こんなふうにファン付きのフタも作れたりするのです。
しかし、「うわ、めんどくさぁ……」と思わず口から心が漏れ出てしまう人もいるでしょう。
![]() |
・構造上、100%飛び出しを防止できるわけではないが、簡単に自作出来ておすすめです。 |
そんな方は、下の画像のように柵を付けてみてはいかがでしょうか?
こちらはジャンプ力のない魚限定という条件付きではありますが、私が実践した中では飛び出しが確認されなかった方法です。
とにもかくにも、暑くなる前に水温対策・飛び出し対策を終わらせておきましょう。
というわけで、今回はここまで。
長文を読んでいただき、ありがとうございました。
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