あると便利なストレーナースポンジ
外掛けフィルターを使っている方なら、一度は気になったことがあるのではないでしょうか?
吸水口に取りつける「ストレーナースポンジ」。
実はこれ、地味ながらとても頼れる存在なんです。今回は、私が初めてストレーナースポンジを手に取ったストーリーとともに、その役割を紹介したいと思います。
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(これは20年前の物語。)
九月のある日、港町の熱帯魚店へと足を運んだ。
暦のうえでは秋に入っているはずだが、夕陽はまだ真夏のようにじりじりと肌を焼き、海から運ばれてくる風には湿った熱気がまじっていた。
ストレーナースポンジとお師匠様の教え
港町の先に
真新しい高架歩道を歩きながら、私は眼下に広がる街の風景を見下ろしていた。
夕日に照らされて朱色に染まるビル群と、その足もとに明滅する店舗のネオン。まるで未来都市と昭和の下町が同居しているような、不思議な彩りだった。
この開発地区の片隅に、目当ての熱帯魚店がある。
わたしは、お師匠様と呼んでいる、学友の熱帯魚の博士とともに、白いタイルが敷かれた歩道を歩いていった。
止まらない物欲とお師匠様の忠告
「それで、今日もウィンドウショッピングではないんでしょ?」
店に入るや否や、お師匠様がいつもの調子でニヤリと笑った。
図星だ。アクアリウムという趣味に足を踏み入れて以来、物欲が止まらない。先週は粘膜保護剤、先々週にはテトラのスポンジフィルター、さらにその前にはエアストーンとエアポンプ……。財布の中身が寂しくなる速度が、だんだん加速している。
「あはは、でもキミ、このままのペースでグッズあさってたら、いつか破産しちゃうよ?」
もちろん本当の意味での破産ではないが、今日もしっかりと釘を刺す。
けれど、立ち上げ初期のトラブルを乗り越えてきたわたしにとって、ろ過力への投資はもはや信仰にも近く、自然と口が開いて白状してしまう。
「しかし今日は、ろ過の強化、できれば改造してセラミックろ材をと……」
「えぇ? また買うの? それに外掛けフィルターの改造?」
お師匠様は目を丸くし、すぐさま腕を組んでじっとこちらを見つめてきた。そして、深いため息をひとつ。
「水槽の立ち上げが終わったばかりだもの、気持ちはすごくわかるよ。でもね……」
と前置きをしてから、ぴしゃり。
「せっかく立ち上がったばかりなんだから、ろ材をいじくるのは感心しないなぁ」
確かに、まだ亜硝酸が消えたばかりで、安定しているとは言いがたい。
スポンジフィルターを併用しているとはいえ、下手にいじって硝化細菌のバランスを崩せば、すべてが水の泡になる。
だが、せっかく電車を乗り継いでやってきたのに――。そう思うと肩の力が抜け、自然とうなだれていた。
そんなわたしの様子に気づいたのか、お師匠様が少し考えるそぶりを見せてから、口を開いた。
「うーん、だったら、こんなの買ってみたらどうかな?」
「この筒型のスポンジは?」
「ストレーナースポンジだよ」
値札を見る。なるほど、これならワンコインの浪費で済む。
大きなゴミとの防衛ライン
「キミはセルフィンプレコを流木のある水槽で飼育しているだろう? 何か困ったことがあるんじゃないかい?」
お師匠様が晴れやかな顔で、ブリスターパックをひとつ手渡してきて、にこりと笑った
「例えば、糞とか残飯とか、大変じゃないかい?」
「そうなんです。もう、すぐ引っかかってるんですよ。だから2~3日でそーっと濯ぐように掃除するようにしています」
その返答を聞いて、ご満足なのか口元がさらに緩んだ。
「なるほど、よろしい心がけだね♪ でも、こいつを使えばちょっとは楽になるかもよ?」
これは説明によると、これは外掛けフィルターの吸水口、つまりストレーナー部分にはめ込むスポンジなのだという。
通常のウールマットの前段に物理ろ過を担う層を追加できるので、ゴミによる目詰まりを減らし、流量の低下を防げるというのだ。
「そればかりじゃないんだよ~。砂利とか流木の欠片が吸い込まれて、ポンプのプロペラを壊してしまうのも防げるのさ!」
おおっ、と感心していると、さらに畳みかけてきた。
「さらにだ、なんと稚魚や稚エビが吸い込まれるのも防止してくれるんだ!」
勝ち誇った顔。たかだか円筒形のスポンジでここまで語れる人はいるだろうか。
呆然としていると、照れ臭そうに、もっとも今のキミには関係ないだろうけどねと付け加えた。
ふとした悩みと、アクアリウムの醍醐味
なるほど、便利そうだ。でも――。
わたしの脳裏にある疑問が浮かんできた。
「でも、ちょっと気になるんですけど……。これ、掃除をするときに水槽内にゴミが舞ったりしませんか?」
お師匠様はニヤリと笑って、ひとこと。
「痛いところ突いてくるねぇ~。そんなときは、魚を掬うネットをかぶせてから取り外すのさ」
たしかに、それならゴミが舞い上がらずに済む。
さらに、笑いながら続ける。
「でも、そんなことする人は少数派かもね。だって、水換えのときに掃除すればいいんだもの」
理屈のうえでは理解できる。けれど、じゃあゴミはどうなる? 水換えで全部流せるのか?
……なんだかもやもやしてくる。
「あははは、悩んでる悩んでる。でも、悩みながらお世話するのが、アクアリウムの本当の楽しみ方なのさ」
お師匠様はそう言い切ると、ケタケタと笑うのであった。
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ストレーナースポンジの役割
というわけで、ここからはストーリーのまとめとなります。
ゴミの侵入をしっかりガード
外掛けフィルターのポンプは、水を吸い上げる「ストレーナー」のすぐ近くにあります。
そのため、底砂の砂利や、小さな流木片などが直接ポンプに吸い込まれると、最悪の場合は故障につながることもあります。
そんなトラブルを防いでくれるのが、ストレーナースポンジです。
網目状になっているため、大きめのゴミをしっかりブロックしつつ、水だけをスムーズに通してくれます。
もちろん、残飯や魚のフンなどをストレーナースポンジでこし取ることで、フィルターのろ材が詰まり、通水量が低下するのを防いでくれる効果もあります。
外掛けフィルターのろ材は小さいですから、思いもよらぬほど効果があります。
とは言え、ストレーナースポンジが詰まってしまっては元も子もありません。過信せず定期的に掃除をしましょう。
小さな命を守るために
もうひとつ、大きな役割を果たしているのが「吸い込み防止」。
ネオンテトラやグッピー、メダカなど、小型魚の幼魚や稚魚たちはとても小さく、油断するとフィルターに吸い込まれてしまうことがあります。特に繁殖を考えている方にとっては、見逃せない問題だといっても過言ではないでしょう。
そんなときに、ストレーナースポンジをつけておけば、スポンジの目の細かさが吸い込みを抑え、小さな命をやさしく守ってくれます。
このような用途で利用する場合は、なるべく目の細かいものを選びましょう。
お手入れの注意点
定期的に洗おう
便利なストレーナースポンジですが、使いっぱなしでは逆効果になることもあります。
そもそも、スポンジを付けたとて、ゴミの総量はかわりません。
たしかに、専用ろ材とこのスポンジの2か所で漉しとることになりますが、こちらは吸水口でゴミをキャッチするため、どうしても目詰まりしやすくなります。
吸水量が落ちれば、必然的にろ過能力も下がってしまうため、週に1回程度、水換えのタイミングで軽く洗ってあげましょう。 このとき、水槽の飼育水で洗うのがおすすめです。これは、ストレーナースポンジにも硝化細菌が繁殖し生物ろ過に寄与している可能性があるためです。
外すときのコツと注意点
ストレーナースポンジは、フィルターの吸水口に取りつけることで、大きなゴミや稚魚の吸い込みを防いでくれる便利アイテムです。ですが、取り外すタイミングや方法によっては、水中にゴミが舞い上がってしまうこともあります。
ストーリー記事でも触れたように、もしもスポンジ内にたまったゴミが水中に拡散してしまい、そのままフィルターに吸い込まれたら本末転倒だと言えるからです。
そのため、慣れていないうちは、ストレーナースポンジの掃除は水換えと一緒に行うのがおすすめです。このとき、必ずフィルターの電源を止めてください。フィルターが止まっていれば吸水パイプから吸い込まれず、また水流がなければゴミが広がらないあkらです。
さらに慎重に取り外したい場合は、魚をすくうときに使うネットを活用してみましょう。スポンジの周囲をネットで囲んでから取り外せば、もしゴミが浮いてもそのままネットで回収できます。
少し面倒に思えるかもしれませんが、不慣れなうちは、このひと手間が水槽全体の美しさと安定につながっていくのです。
とは言え、数か月もすると、多くの初心者さんが「そんなの関係ない」とばかりに、ガバっと取るようになると思います。
交換タイミング
長く使っていると、スポンジはだんだんと硬くなったり、表面にヒビが入って崩れやすくなってきます。
そうなると、ストレーナースポンジとしての機能を果たしません。無理に使い続けず、新しいものに交換しましょう。
目立たないけれど、大事な役割を担っているストレーナースポンジ。
ほんのひと手間で、魚にもフィルターにもやさしい環境がつくれます。
見た目は地味でも、縁の下の力持ちなのです。
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