失敗は、時に良質な知識となる
今回は、大磯砂の酸処理中に起きたトラブルについて、その失敗談を読み物として綴っていきたいと思います。
なお、この記事は過去記事の修正時に削除されたパートが元ネタとなっています。どこかで目にした方もおられるかもしれません。悪しからず。
大磯砂を酸処理することに
これは、今から6年前のことです。その時、わたしは大磯砂の酸処理を実行しようとしていました。
そもそも、大磯砂は水草栽培には向いていません。なぜなら、貝殻に含まれる炭酸カルシウムが二酸化炭素や硝酸塩で溶け、弱アルカリ性に傾き、硬度を上げてしまうからです。結果、さまざまな問題が出てきますが、それを書き始めると本題が大きくそれるので、今回は割愛します。さらりと言うならば、水草が生長しづらくなるのです。
とにもかくにも、含まれる貝殻が、水草には良くありません。なら、前もって溶かしておけばいいじゃない! という発想で生まれたのが、今回の話のバックグラウンドである大磯砂の酸処理。具体的には、クエン酸水溶液に浸け込み貝殻を溶かす行為で、それで生まれるのが酸処理済みの大磯砂。こちらは硬度を上げも下げもしない底砂であり、まずこれを入手することこそ、ソイル以外を利用した水草栽培のスタート地点だと言える……かもしれません。
ただ、知っているのと実際にできるのは違います。今でこそ色々と書けますが、やはり当時のわたしは知識不足。とりわけ、知識と行動が結びついていなかったように思えます。それが理由で、トラブルは起きるのです……。
トラブルは道具の選択ミスから
6年前のある日、段ボールが届く。開けてみると中からは可愛らしい小さな袋、これは今回の酸処理のために注文しておいた大磯砂だ。何はともあれ、クエン酸に浸け込むため、まずは貝殻を除去し、その後洗浄することに。
そうは言っても、パッケージに入れた状態ではもちろんのこと、バケツの底ですら貝殻を見つけ取り除くには狭すぎる。こういうときは、ガサゴソとほじくり返しながら探すよりも、大きく広げて目を皿のようにするものだと相場が決まってるのだ。であるなら、大きく平たい「トレー」のようなものがあると便利なのだが、残念ながらわが家にあるそれらは全て食品用。おいそれとどこの馬の骨かわからない砂を乗せることなど到底できるはずもない。
何かよい物はないか……? と考えていた矢先、家族がテーブルに広げっぱなしにした新聞が目に入った。これなら大磯砂を大きく広げられそうだ。ちょうどいいことに中央に折れ目が付いているため、薬包紙のようにして利用すれば……サラサラと簡単にバケツに移動できるではないか! よいものを見つけた、と思わず小躍りしてしまう。
小走りでベランダへと向かい、まずは貝殻の除去。次いでバケツに移してそのまま風呂場へ直行して洗浄。濡れた大磯砂を再び新聞紙の上に乗せ、これを再び薬包紙のようにして洗濯ネットの中に入れれば、もう完璧じゃないかっ!
散らばる大磯砂、溶けたファスナー
思い付きの果てに……
スッ……バヒャン!!
が、すぐさま計画は狂い、作業は頓挫する。
手元のものが落下し、大小さまざまな散らばったような音がしたのだ。突然のことに目をパチクリさせてみるのだが、何が起きたのか皆目見当がつきそうにない。手に残る紙の感触を頼りに、狼狽しながら足元を見ると、新聞紙とその上に乗せた大磯砂の塊、そして周囲に散らばる無数の小石。最悪の光景に思わずしゃがみ込むしかなかった。
ここにきて、わたしはようやく事態を理解する。洗浄した大磯砂の水分を吸った新聞紙が、大磯砂の重さに耐えきれなかったのだ。結果、持ち上げた途端、掴んだ部分がちぎれ、底が抜けるようにして地面に落下。一部は残ったが、落下の反動で多くの砂は紙の外へ飛び出し、目の前の大惨事を生み出したようだ。
だが、このまま手をこまねいているわけにはいかない。今日1日で酸処理を終わらせてしまいたいからだ。だが、時刻はすでにお昼時を優に過ぎており、このままでは作業が夜まで続くのが確定だろう。急いでほうきで集め、ちり取りの上に乗せ、矢継ぎ早に元のバケツへと放り込む。その行き先は……、再びの風呂場である。
結局、溶けた新聞紙の断片に苦戦しながら再び洗い終えたのは、1時間後のことだった。青かった空はすっかり赤紫に染まり、夕飯を作らねばならない時間を迎えていた。
その後、諸所ありまして、酸処理にはたっぷり1週間使うことになりました。しかし、話はこれだけでは終わりません。酸処理後に別のトラブルが待ち受けていたのです。
トラブルは続く
ぐにょ……。
今度は1週間後、クエン酸水溶液から出した洗濯ネット、その取っ手を掴んだとき、それは起きた。つまんだはずのファスナーの取っ手が、すぐさま指の中で崩れていったのだ。これでは中身を取り出すことができない。仕方なく、今度は連なる歯を左右に噛み合わせる「スライダー」を押し下げて洗濯ネットを開いたのだが、こちらも……
ふにゃ……、ぼろ……。
なんと、それすらも崩れ落ちてしまったのだ! 悪いことに、ファスナーの裏側には金具が残っており、つっかえてもはや指で開けることもかなわない。100均で購入したもので、あわよくば洗濯物で利用しようと思っていたのだが、残念な結果となってしまったようだ。とにもかくにも、これでは到底大磯砂を取り出せない。
結局はハサミでネットを切ることで事なきを得たのだが、やはり気になるのは溶けた金属だ。どのような素材だったか不明だが、もし銅イオンが出ていたとしたら、生体への被害は甚大だろう。洗浄には十分に注意が必要になりそうだ。立て続けに起きるトラブル。増える追加作業。ただただ、ため息をつきながら手を動かすことしか、わたしにはできなかった。
んが、入念に洗浄したはずなのに、さらなるトラブルが襲い掛かってきます。しかし、それはまた別の機会に。
なお、この当時作成した酸処理済み大磯砂は結局使わず、現在はソイルを利用しています。
とにもかくにも、底砂と新聞紙の使い方には注意をしましょう。また、酸処理に100均の洗濯ネットはやめるべきです。なるべく、金属パーツのないろ材ネットを利用しましょう。巾着袋状のろ材ネットがおすすめです。
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(当時利用した大磯砂) |
思い返せば笑い話だが
以上のような連鎖的なトラブルが起きたのは今から6年前のこと。当時ですらアクアリウム歴10年以上ですから、知らないものはない! と自信を持っていたのですが、何事にも実際にやってみなければ分からないものですね。
しかし、失敗があるからこそ学びがあり、経験から知識が生まれて、そして、このような笑い話として文章化されるわけです。となれば、やはり行動は大切だと痛感させらる思い出となりました。
というわけで今回はここまで。
長文読んでいただきありがとうございました。
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