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2018年10月8日月曜日

発酵式CO₂のメリットとデメリットとその対策(逆流・不安定など)

発酵式のメリット・デメリットとその対策

(2025/6/4)

今回は発酵式CO₂をテーマに、述べていきたいと思います。
わたしも昔利用していましたので、当時の記憶をもとにし、発酵式のメリットとデメリット、そして解決策を紹介していきたいと思います。



発酵式CO₂のメリット


その1: 発酵式CO₂添加は安い

さて、まずは寒天培地を作成した際の費用について、表にまとめてみました。


価格
ペットボトル ¥150
エアチューブ ¥300
三又分岐 ¥300
エアチューブコネクター ¥250
お菓子用寒天 ¥400
砂糖(1kg) ¥350
イースト菌 ¥300
発酵式対応CO₂ディフューザー ¥700
逆止弁 ¥150
合計 ¥2,900

ざっと3000円弱でCO₂を添加の第一歩を踏み出せます。他のCO₂添加方法に比べると、非常にコストパフォーマンスに優れています。では、実際に小型ボンベ式CO₂添加と値段を比較してみると、どれくらい発酵式CO₂添加は安いのでしょうか?

以下で小型ボンベ式CO₂添加の一例を、紹介したいと思います。


価格
CO₂レギュレーター ¥5,000
CO₂ディフューザー ¥2,000
CO₂カウンター ¥1,000
スピードコントローラー ¥1,500
電磁弁 ¥7,000
CO₂ボンベ ¥500
耐圧チューブ ¥1,000
タイマー ¥1,000
合計 ¥19,000

上の例は、最小限の物品の購入で済ませていますが…、ざっくり見積もって15,000~20,000円。発酵式CO₂添加と比較して、小型ボンベ式では約7倍もの初期費用が掛かかってしまいます。デザインで著名なアクアメーカー製でディフューザーやCO₂カウンターをそろえる場合、出費は天井知らずとなります。

対して、発酵式は基本的に自作の世界です。一部流用できる道具もありますが、ほとんどのアクアリウムグッズメーカーが物品すら作っていません。万が一道具沼にはまっても、損失は最小限で済みます。

まとめると、発酵式CO₂添加は、学生さんや生徒さんでも簡単に始められる低コストな二酸化炭素添加方式となっています。



その2:発酵という工程が、生物好きにはたまらない!

水槽が好きな人の中には、わたしのように、生物学が異常なほど好きな人が、少なからず含まれるように思えます。なぜなら、アクアリウムは、動物・植物・微生物に関するすべての知識をフルに動員して、楽しめる趣味だからです。
そして水槽からは、フィールドワークに似たような経験と満足感を得られ、さらには、一筋縄ではいかない自然の奥深さも堪能できます。5年やっても、10年やっても飽き足らない、スルメ系な趣味なのです。

そんな生物学大好きなアクアリストにぜひ体験してほしいのが、イースト菌(酵母)を発酵させるという過程です。これは、高校生物の「呼吸」という分野で学習する、「アルコール発酵」そのもので、教科書の中の遠い世界の知識を有用に実現にできるまたとない機会となっています。

寒天培地で酵母を培養し、その代謝産物であるCO₂を取り出す。これはまさしく微生物学の実験そのもの。知的好奇心を大いに刺激してくれるはずです。

生物が好き! 実験が好き!
そんな人にぴったりな方法です。



発酵式CO₂のデメリット


≪注意≫

発酵式CO₂は常にリスクが伴うものです。当記事を参考に施して生体の死亡など損害があったとしても、当ブログは一切の責任を負いません。必ず、ご自身の責任において作業を実施し、CO₂を添加してください。



デメリットその1:培地逆流の危険と対応

寒天培地・液体培地などその方法に差はあれど、イースト菌を液体の中で培養することになります。そのため、夏場など発酵が活発な時期は、ボトル内の水にたくさんのCO₂が溶け込み、「強炭酸水」のような状態になることもあります。もし、ボトルに、これに強い衝撃を与えるとどうなるでしょう? 
溶け込んでいた炭酸が一気に気体になり、チューブを駆け抜け、培養液と共に水槽へ逆流します。そして、その培養液には、アルコールや砂糖、さらにはイースト菌が多く含まれています。その結果引き起こされるのが強い白濁です。糖を目当にした微生物が増殖し、水槽が数時間で真っ白になってしまうのです。

このような時はどのように対処すればいいのでしょうか?
まず、生体のダメージにならないようにタイミングを見計らないながら、1/3~1/2換水を複数回換水を繰り返して濁りと培養液を水槽外に排出しましょう。そして、アルコールと糖分を水槽内から取り除くのです。可能であればエアレーションもかけましょう。糖をエネルギー源にしている微生物は好気的な細菌であるなら、もし急激に繁殖すれば酸素不足が起きるかもしれないからです。

白濁が消えるまでの間は、換水と強めのエアレーションを継続しつつ、水槽の状態を慎重に見守りましょう。



逆流を防ぐトラップを自作・設置する

一度培地や発酵液の逆流が起こると、換水に追われ大変な作業量となります。それを防ぐためには、あらかじめ対策を講じる必要があります。ここではペットボトルトラップを自作し、水槽内への培地の逆流する方法を紹介します。

  1. 炭酸用のペットボトルを用意
  2. キャップに千枚通しなどで2か所穴をあける
  3. 2つの穴にエアチューブコネクタを差し込み、上側にはめ込む
  4. コネクター周囲から空気が抜けないように、バスコークで接着する
  5. ボトル内側に飛び出たコネクターの一つに、エアチューブを接続する
  6. ストーンと培地の中間に挟み込んでできあがり!
(実はエアレーションをの音を抑える道具と同じ構造です)

コネクターさえあれば、接着剤の硬化時間を除いて30分ほどで簡単に作れます。もし培養液が噴射されても、液体はボトルの下部に溜まり、CO₂は上部を通ってエアストーンへと送られる仕組みです。

発酵式CO₂添加用の噴出防止トラップの仕組み




デメリットその2:添加不安定

CO₂の発生は、酵母の代謝速度に左右されます。例えば低温の時反応速度は遅くなり、暖かな環境であれば速くなります。つまり、夏はCO₂が過剰になりやすく、冬はCO₂不足になりやすいのです。さらに、春や秋は気温の変化が激しく、CO₂は水に溶け込みpHやKHに作用するため、結果として水質が不安定になります。敏感な魚には、なかなかの困りものの問題です。

このように発酵式CO₂添加は、供給が不安定という問題が常につきまといますが、先人の知恵によりいくつか対策方法が知られています。例えば夏などで気温が高くCO₂の発生が過剰な場合、ストーンまで経路の途中に三又分岐を接続し、余分な分を大気に開放すれば、簡単に調節できます。もちろん、この方法を利用しすれば、停止が難しい発酵式でも、夜間添加を止めることもできます。

では冬で気温が低い時期や、春や秋などの気温が不安定な時期はどうすればいいのでしょう?
CO₂の発生量が少ない、あるいは不安定な時期は、単に栓の開け閉めだけではどうにもなりません。そこで考え出された先人の知恵がこちらです。

発酵式CO₂添加装置をボトルごと水槽で保温する


ペットボトルごと水槽へ沈めて温度管理する!
発酵式CO₂添加装置を、小型水槽内に沈め、水槽用ヒーターで温度を一定に保つという方法です。もちろん、冷却ファンを取り付ければ夏場も可能です。なんとも荒療治な気もしますが、わたしも実際にやったことがあり、その効果は抜群だったと述べておきます。原理的には実験室にあるインキュベーターやウォーターバスといったところでしょうか?

いずれにしても、管理する水槽が増えるという手間がありますが、通年で培地の温度は一定に保つことができるため、CO₂の排出も安定し扱いやすくなります。手間を省きたい場合は、別の水槽を用意せずに添加する水槽にそのままボトルを浮かべてもいいのですが、デメリットやリスクが大きすぎるため今回は割愛します。



デメリットその3:タイマーを利用しづらい

さて、CO₂の添加を自動で停止させたいときは、どうすればよいのでしょうか?
このとき、最も避けるべき方法は、CO₂の経路を塞いでしまうことです。発酵式CO₂添加では、電磁弁や三方分岐などでCO₂の経路を物理的に閉じてしまうと、ペットボトルの中ではCO₂が生成され続けるため、内圧が上昇し、最悪の場合はボトルが破裂する危険があります。したがって、栓を閉じて強制的に添加を止めるような行為は非常に危険です。もし安全に添加を止めたいのであれば、先述のとおり、三又分岐を挟み、CO₂を大気中に逃がす方法が有効です。多少お酒臭くなりますが、水槽への添加は安全に停止できます。また、添加量の調節も可能です。

しかし、この方法はタイマー制御には対応していません。忙しい社会人にとっては、毎回手動で操作するのは現実的ではありません。それでは、どうすればよいのでしょうか?
ここで活用できるのが、タイマーに接続したエアポンプによるエアレーションです。水中のCO₂は、大気中に逃げやすい性質があります。したがって、添加したくない時間帯にはエアレーションを作動させ、添加したい時間帯にはエアレーションを停止するだけで、CO₂濃度のコントロールが可能になります。この方法であれば、高価な電磁弁を使わなくても、エアポンプとタイマーという比較的安価な器具で済ませることができます。

とはいえ、この方法にはひとつ大きなリスクがあります。それは、停電時の対応です。停電が発生すると、エアポンプは止まってしまいますが、酵母は電気に関係なくCO₂を作り続けます。結果として、CO₂が過剰に溶け込み、魚が中毒状態に陥る危険性があります。

このように、手軽な分だけリスクもあるのが発酵式の難しいところです。安全性を最優先するのであれば、やはり最終的にはボンベ式に移行することが無難です。



デメリットその4:手間暇かかり面倒

元も子もない話ですが、数か月発酵式CO₂添加をしていると、段々と培地交換を面倒に感じてくるはずです。特に、作るよりも使い終わった寒天培地の清掃が煩わしく感じるでしょう。

まず「作る」についての解決策としては、1.5Lペットボトルなど大きな容器を利用すれば、作り替えの回数自体を抑えられます。とはいえ、培地づくりに失敗すれば面倒なことになるのも確かです。そこで、まずは500mlのペットボトルで成功してから、1.5Lのペットボトルにチャレンジすることをお勧めします。
なお、前もって冷蔵庫などで作り置き保管しておくのはおすすめできません。失敗の原因となりやすいコンタミ(コンタミネーション:培地が意図せず腐ること)の原因になるからです。作ったら酵母を入れてすぐ使うようにしましょう。

次に「片付け」についての解決策ですが、培地を取り除く前にボトルごとあらかじめ湯煎しておくと、スムーズに清掃できます。そして、そのままビニール袋などに出して、燃えるゴミとして捨ててしまいましょう。もしくは寒天の濃度次第ですが、お湯を使ってじゃぶじゃぶと洗うと、うまく細切れになりボトルから出しやすくなることがあります。この場合も、燃えるゴミの日に出しましょう。
どちらの方法も、お酒の香りが充満するのでよく換気し、溶けたものが水道管で固まるとつまりの原因となるので、なるべく流しに捨てるのは避けましょう。



発酵式CO₂添加はこんな人向け!!

発酵式は大変面白い方法です。
しかし、なんだかんだ言ってデメリットの方が目立ちます。そういうわけですから、発酵式CO₂添加をお勧めできる人は……

CO₂添加に興味がある初心者さん
ガッツがある学生さん
微生物を愛でるのが好きな人
生物学の世界に深く入り込みたい人

そして、残念ではありますが、現実問題として、多くの人が発酵式CO₂添加を経験すると、ボンベ式CO₂添加に移行したくなるはずです。それほどの不便さです。
では、発酵式CO₂添加がまったく持って無駄か? と問われると、決してそうは思えません。

効率に代表されるような理屈や理論よりも、楽しさや美しさ、さらには癒しや育みといった体験が、この方法では堪能できるからです。 それこそ、生物系趣味の真髄なのです。
このように、感性に訴えかけてくるものが、アクアリウムにはたくさんあります。そういった物や事で表せないことを、「効率」の名のもとに「ぶった切って」もいいのか? わたしは疑問に感じます。

というわけで、今回はここまで。
長文読んでいただき、ありがとうございました。



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