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2018年10月8日月曜日

発酵式CO₂のメリットとデメリットとその対策(逆流・不安定など)

発酵式のメリット・デメリットとその対策

(2026/5/23 修正)

今回は発酵式CO₂をテーマに、述べていきたいと思います。
昔利用していましたので、当時の記憶をもとに、発酵式の特徴と弱点の解決策を紹介していきたいと思います。



発酵式CO₂の特徴


その1:発酵式CO₂添加は安い

さて、まずは寒天培地を作成した際の費用について、表にまとめてみました。

価格
ペットボトル ¥150
エアチューブ ¥300
三又分岐 ¥300
エアチューブコネクター ¥250
お菓子用寒天 ¥400
砂糖(1kg) ¥350
イースト菌 ¥300
発酵式対応CO₂ディフューザー ¥700
逆止弁 ¥150
合計 ¥2,900

ざっと、3000円弱でCO₂添加の第一歩を踏み出せます。他のCO₂添加方法と比べると、非常にコストパフォーマンスに優れています。では、実際に小型ボンベ式CO₂添加と値段を比較すると、どれくらい発酵式CO₂添加は安いのでしょうか?

以下で小型ボンベ式CO₂添加の一例を、紹介したいと思います。

価格
CO₂レギュレーター ¥5,000
CO₂ディフューザー ¥2,000
CO₂カウンター ¥1,000
スピードコントローラー ¥1,500
電磁弁 ¥7,000
CO₂ボンベ ¥500
耐圧チューブ ¥1,000
タイマー ¥1,000
合計 ¥19,000

上の例は、最小限の物品の購入で済ませていますが……、ざっくり見積もって15,000~20,000円。発酵式CO₂添加と比較すると、小型ボンベ式では約7倍もの初期費用が掛かってしまいます。もし、デザインで著名なアクアメーカー製のディフューザーやCO₂カウンターなどの添加器具一式をそろえる場合、出費は天井知らずになるでしょう。

発酵式は基本的に自作の世界です。一部流用できる器具こそありますが、ほとんどのメーカーは要となるボトルすら作っていません。言い換えれば、こだわれる部分は少ないです。万が一道具沼にはまっても、損失は最小限で済むはずです。

まとめると、発酵式CO₂添加は、学生さんや生徒さんでも簡単に始められる、低コストな二酸化炭素添加方式となっています。



その2:発酵という工程が、生物好きにはたまらない!

水槽が好きな人の中には、生物学が異常なほど好きな人が、少なからずいるように思えます。アクアリウムは、動物・植物・微生物に関するすべての知識をフルに動員して楽しめる趣味だからです。わたしを含め、そのようなタイプの人間がなぜアクアリウムにハマるの原因は、水槽からはフィールドワークに似た経験と満足感を得られるということです。時には、一筋縄ではいかない自然の儚さも堪能できます。5年やっても、10年やっても飽き足りない、スルメ系な趣味だと言えるでしょう。

そんな生物学好きなアクアリストにたまらないのが、イースト菌(酵母)を発酵させる発酵式CO₂です。これは、生化学における「呼吸」という分野の「アルコール発酵」そのもので、教科書の中の遠い世界の知識を身近に感じる、またとない機会となっています。

生物が好き! 実験が好き! そんな人にぴったりな方法です。



発酵式CO₂の弱点


≪注意:発酵式CO₂添加には危険が伴う≫

発酵式CO₂には、培地逆流や過剰添加常など、常に危険が伴います。当記事を参考に施し、生体の死亡などの損害があったとしても、当ブログは一切の責任を負いません。必ず、作業の実施とCO₂の添加は自己責任でしてください。



その1:培地逆流の危険と対応

方法に差はあれど、イースト菌を液体の中で培養することになります。そのため、夏場など発酵が活発な時期は、ボトル内の水にたくさんのCO₂が溶け込み、「強炭酸水」のような状態になることもあります。

もし、ボトルに強い衝撃を与えるとどうなるでしょう?
溶け込んでいた炭酸が一気に気体になり、チューブを駆け抜け、培養液と共に水槽へ逆流します。そして、その培養液には、アルコールや砂糖、さらにはイースト菌が多く含まれているので、強い白濁を引き起こします。糖を糧にして微生物が爆殖するからです。

このような時は、どのように対処すればいいのでしょうか?
まず、生体のダメージにならないようタイミングを見計らいながら、1/3~1/2換水を複数回繰り返して、濁りと培養液を水槽外に排出しましょう。アルコールと糖分を水槽内から可能な限り除去するのです。
可能であれば、エアレーションもかけましょう。もし増殖している微生物が好気性であるなら、繁殖によって酸素不足が起きるかもしれないからです。

白濁が消えるまでの間は、換水と強めのエアレーションを継続しつつ、水槽の状態を慎重に見守りましょう。



逆流を防ぐトラップを自作・設置する

ここではペットボトルトラップを自作し、水槽内への培地の逆流を防ぐ方法を紹介します。

  1. 炭酸用のペットボトルを用意
  2. キャップに千枚通しなどで2か所穴をあける
  3. 2つの穴にエアチューブコネクタを差し込み、上側にはめ込む
  4. コネクター周囲から空気が抜けないように、バスコークで接着する
  5. ボトル内側に飛び出たコネクターの一つに、エアチューブを接続する
  6. ストーンと培地の中間に挟み込んでできあがり!

(実は、エアレーションの音を抑える道具と同じ構造です)

コネクターさえあれば、接着剤の硬化時間を除いて30分ほどで簡単に作れます。仮に培養液が逆噴射されても、液体はボトルの下部に溜まり、CO₂は上部を通ってエアストーンへと送られる仕組みです。

発酵式CO₂添加用の噴出防止トラップの仕組み


その2:添加不安定

CO₂の発生は、酵母の代謝速度に左右されます。低温の時は反応速度が遅くなり、暖かな環境であれば速くなります。夏はCO₂が過剰になりやすく、冬はCO₂不足になりやすいというわけです。さらに、春や秋のように気温の変化が激しい季節は、CO₂は水に溶け込んで、pHやKHに作用するという化学的な特性があるため、結果として水質が不安定になります。pHや酸欠に敏感な魚には、なかなか困りものの問題だと言えるでしょう。

このように、発酵式CO₂添加は供給が不安定という問題が常につきまといます。しかし、先人の知恵により、いくつかの対策方法が知られています。具体的には、夏などで気温が高く、CO₂の発生が過剰な時は、ストーンまでの経路の途中に三又分岐を接続し、余分な分を大気に開放させます。このようにすれば、簡単に調節できますし、停止が難しい発酵式でも、夜間添加を停止させることができます。

では、冬で気温が低い時期や、春や秋などの気温が不安定な時期はどうすればいいのでしょう?
CO₂の発生量が少ない、あるいは不安定な時期は、単に栓の開け閉めだけではどうにもなりません。そこで考え出された、先人の知恵がこちらです。

発酵式CO₂添加装置をボトルごと水槽で保温する


発酵式CO₂添加装置を、小型水槽内に沈め、水槽用ヒーターで温度を一定に保つという方法です。もちろん、冷却ファンを取り付ければ、夏場の高温も対策可能です。なんとも荒療治な気もしますが、わたしも実際にやったことがあり、その効果は抜群だったと述べておきます。原理的には、実験室にあるインキュベーターやウォーターバスといったところでしょうか?

通年で培地の温度を一定に保つことができるため、CO₂の排出も安定し、扱いやすくなります。とは言え、安定性の他に、ボトル入りの水槽を管理する煩わしさも増えます。より手間を省きたい場合は、別の水槽を用意せず、添加する水槽にそのままボトルを浮かべてもいいのですが、……あまりにもデメリットと危険性が大きすぎるため、今回は割愛します。



その3:タイマーを利用しづらい

さて、CO₂の添加を自動で停止させたい時は、どうすればよいのでしょうか?
この時、やってはいけない方法は、CO₂の経路を塞いでしまうことです。発酵式CO₂添加では、電磁弁や三方分岐などでCO₂の経路を物理的に閉じてしまうと、ペットボトルの中ではCO₂が生成され続けるため、内圧が上昇し、最悪の場合はボトルが破裂する危険があります。したがって、栓を閉じて強制的に添加を止めるような行為は非常に危険です。もし安全に添加を止めたいのであれば、先述のとおり、三又分岐を挟み、CO₂を大気中に逃がす方法が有効です(ペットボトルのフタを開けてもOK)。多少お酒臭くなりますが、水槽への添加は安全に停止でき、添加量の調節も可能です。

しかし、この方法はタイマー制御には対応していません。忙しい社会人にとっては、毎回手動で操作するのは現実的ではありません。それでは、どうすればよいのでしょうか?
ここで活用できるのが、タイマーに接続したエアポンプによるエアレーションです。水中のCO₂は、大気中に逃げやすい性質があります。したがって、添加したくない時間帯には、エアレーションを作動させ、エアとともに大気に逃がし、添加したい時間帯にはエアレーションを停止するだけで、CO₂濃度のコントロールが可能になります。この方法であれば、高価な電磁弁を使わなくても、エアポンプとタイマーという比較的安価な器具で済ませることができます。

とはいえ、ひとつ大きなリスクがあります。それは、停電時の対応です。停電が発生すると、エアポンプは止まってしまいますが、酵母は電気に関係なくCO₂を作り続けます。結果として、CO₂が過剰に溶け込み、魚が中毒状態に陥る危険性があります。

このように、手軽な分だけリスクもあるのが、発酵式の難しいところです。安全性を最優先するのであれば、やはり最終的にはボンベ式に移行することが無難です。



その4:手間暇かかり面倒

元も子もない話ですが、数か月発酵式CO₂添加をしていると、段々と培地交換を面倒に感じてくるはずです。特に、作ることよりも、使い終わった寒天培地の清掃を煩わしく感じるでしょう。

まず「作る」についての解決策としては、1.5Lペットボトルなどの大きな容器を利用すれば、作り替えの回数自体を抑えられます。とはいえ、培地づくりに失敗すれば面倒なことになるのも確かです。そこで、まずは500mlのペットボトルで成功してから、1.5Lのペットボトルにチャレンジすることをお勧めします。

なお、前もって冷蔵庫などで寒天培地を作り置き保管しておくのは、あまりおすすめできません。ボトル内の水蒸気が冷えて水滴(凝固水)となり、滅菌されていない壁面をつたって、培地に垂れ、コンタミ(コンタミネーション:培地が意図せず腐ること)の原因になるからです。作ったら酵母を入れて、すぐ使うようにしましょう。(事実、寒天培地はインキュベーターなどを用い、無菌的に乾かして使うものです)

次に「片付け」についての解決策ですが、培地を取り除く前に、ボトルごとあらかじめ湯煎しておくと、スムーズに清掃できます。そして、そのままビニール袋などに出して、燃えるゴミとして捨ててしまいましょう。もしくは、寒天の濃度次第ですが、ぬるま湯を使ってじゃぶじゃぶと洗うと、うまく細切れになり、ボトルから出しやすくなることがあります。この場合も、そのまま流しに捨てることなく、排水カゴの中身を回収し、燃えるゴミの日に出しましょう。

どちらの方法も、お酒の香りが充満するので、よく換気しましょう。また、水道管で固まると詰まりの原因となるので、溶けている培地を流しに捨てるのはやめましょう。



発酵式CO₂添加はこんな人向け!!

発酵式は大変面白い方法です。しかし、なんだかんだ言って、デメリットの方が目立ちます。そういうわけですから、発酵式CO₂添加をお勧めできる人は……

  1. CO₂添加に興味がある初心者さん
  2. ガッツがある学生さん
  3. 微生物を愛でるのが好きな人
  4. 生物学の世界に深く入り込みたい人

そして、残念ではありますが、現実問題として、多くの人が発酵式CO₂添加を経験すると、ボンベ式CO₂添加に移行したくなるはずです。それほど不便なのです。

では、発酵式CO₂添加がまったくもって無駄か? と問われると、決してそうは思えません。

効率に代表されるような理屈や理論よりも、楽しさや美しさ、さらには癒しや育みといった体験を、この方法では堪能できるからです。酵母菌含め、生き物を育むことこそ労苦こそ、生物系趣味の真髄なのです。

こういった、現代社会にはない感性に訴えかけてくるものが、アクアリウムにはたくさんあります。そういった物事で表せないことを、「効率」の名のもとに「ぶった切って」もいいのか? わたしは疑問に感じます。

というわけで、今回はここまで。
長文を読んでいただき、ありがとうございました。



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