天敵!アンモニアはどこから来てどこへ行くのか?
どうもこんにちは。ごん太です。
最近は、削除した過去記事の中から内容が普遍的なものについて、加筆修正したうえでお届けしております。
さて、アクアリストがフィルターの仕組みや立ち上げの成行きを知るうえで、必須知識となるのが硝化サイクル。今回はそのスタート地点である、 アンモニアの生まれ方と行方について述べていきたいと思います。
硝化サイクルとは?
何はともあれ、まずは硝化サイクルについて触れておきたいと思います。
硝化サイクルとは、フィルター内で硝化作用を持つバクテリアたちがアンモニアを亜硝酸→硝酸と変化させ、無害化させることです。
そのため、硝化サイクルのスタート地点はアンモニアとも言うことができます。
一日スタートは日の出から。硝化サイクルのスタートは? |
食べたお肉の行方
アンモニアはどこからくるのか?
わたしには、軟骨魚類や硬骨魚類の代謝について詳しい知識はありませんので、ここではそれらは人間と同様だと仮定して話を述べていきたいと思います。
さて、上で述べた通り、硝化サイクルのスタート地点であるアンモニア。
1Lあたりわずか0.5mgあるだけで水槽内の魚たちが死に至るとされています。
この猛毒はどこから来ているのでしょうか? 魚のおしっこ? その通りです。
では、その尿に含まれるアンモニアは何から生まれたのでしょう?
キーとなるのはタンパク質です。
そこには窒素がありアンモニアとなる
全ては、タンパク質に富んだ食物を魚が摂取するところから始まります。そのタンパク質とは、大まかに言えばお肉のことです。
魚、鶏、豚、牛、カエルにヘビなどなど。すべてに含まれます。
それらが摂取されると、消化管で強酸や酵素によりる加水分解でバラバラになり、タンパク質を構成する基本単位であるアミノ酸にまで分解されます。
このアミノ酸には、アミノ基(-NH2)という窒素を含んだ官能基が必ずついています。これらはタンパク質をなす基本単位ですから、言い換えればタンパク質には必ず窒素が含まれるとも言えます。
そして、アミノ酸は消化器から体内に取り込まれ、血液に乗り細胞に分配され、様々な組織や器官で利用されることになります。
タンパク質の利用方法とアンモニアの生まれ方
ここからは、体に取り込まれた窒素の行方について。
さて、分解から生まれたアミノ酸ですが、【必須アミノ酸】という単語がある通り、一部の物は体内で合成できず大変貴重な物となります。そのため、アミノ酸を集めて全く別のタンパク質に再合成し利用されることになります。
しかし、それらが十分に体内にある場合や飢餓状態などにおいては、エネルギーにされてしまうアミノ酸もあります
この、アミノ酸からエネルギーを取り出す際にアミノ基は邪魔となるので、
脱アミノという反応が起きて、アンモニア(NH3)は生まれます。
結果的に体内ではエネルギーが生まれ、一方で不要なアンモニアが生まれることになります。このアンモニアは水中では猛毒ですから、もちろん体内でも猛毒です。人間の場合は、肝臓で尿素回路という化学反応をへて比較的無害な尿素にされ腎臓で濾され、最終的におしっこ(尿)として排出されます。
さてここで、改めてアンモニアが何かから生まれたか思い出してみましょう。
そうです。食べたお肉からですよね?
つまり言い換えれば、
お肉の搾りカス
と言うことができます。
様々なアンモニアの排泄方法
ここまでの話はあくまで人間の話。
ここからは、魚たちの排泄方法について簡単に述べていきたいと思います。
人間は陸地で生活している生き物です。常に乾燥にさらされ、水はとても大切なものです。なるべくなら排泄物に含まれる水分ですら節約したいところ。そのため、アンモニアは尿素というほぼ無害で溜め込みやすい物質に化学変化されます。それを腎臓で濾しつつ濃縮し、尿として排泄します。このようにすれば、少ない水でたくさんの窒素分を体外に捨てられるというワケです。
しかし、水が豊富にある水中で生きている魚(硬骨魚類)たちはどうでしょう?
淡水海水、浸透圧と内蔵による調節機構に違いはあれど、水そのものが無くて困ることはありません。
そのため、アンモニアとしてタンパク質の搾りかすを多量の尿と一緒に、水中にそのまま排泄します。
水分が不足すれば人間における酸素のごとく、口から吸い込めばいいわけですので、積極的に節水しようとはしないようです。
さて、話変わって出されたアンモニア。
海や湖、そして川はあまりにも広大であり、魚が出した猛毒物質であろうと素早く拡散するため、大きな問題にはなりません。
でも、水槽のように狭い水域ではどうでしょう?
アンモニアは猛毒。そのままでは大変なことになります。
そこで、登場するのがフィルターの中に住む硝化細菌たちです。
※
なお、サメなどの軟骨魚類は尿素として排泄します。
体外へ排出されたアンモニアの行方
ゴミからエネルギーを作る硝化細菌
さて、ここからの主役は硝化細菌。
魚がこれ以上利用できないと排出したアンモニア。この窒素のゴミとも言える猛毒からエネルギーを取り出す生物がいます。あぁ、なんと生物の多様性の素晴らしいことか。
まずは生物ろ過の1人目の立役者。亜硝酸菌です。亜硝酸を作るから亜硝酸菌。なんて簡単なネーミングなのでしょう!
亜硝酸菌はアンモニアを酸化させエネルギーを取り出します。これを使って二酸化炭素や水から炭水化物を作ります。そして搾りかすとして、窒素分を含んだゴミを出します。亜硝酸です。
次の立役者は硝酸菌。硝酸をつくるから硝酸菌。ね、簡単でしょ?
硝酸菌は亜硝酸を酸化させエネルギーを取り出します。これを使って炭水化物を作りこれをエネルギー源とします。その搾りかすとして、またまた硝酸という窒素を含んだゴミを出します。
亜硝酸菌と硝酸菌、名前こそ違いますがアクアリウムにおいてはその働きはとても良く似ていますね。この2種の微生物によって、冒頭で紹介した通り魚の排泄物であるアンモニアは、亜硝酸、硝酸と段階を踏んで無毒化されるのです。
なお、アンモニアからほぼ無毒化された硝酸は、多少水槽内にため込んでも大きな問題にはなりません。
そのため、フィルターの利いている定期的な換水により窒素分は水槽内から取り除かれることになります。
窒素循環
さて、話がだいぶ長くなってきました。
最後の主役は水草です。
植物が生長するために大切な三要素は、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)
。
このうち窒素分は硝酸という形で根から吸収され、今度は硝酸から亜硝酸へ、亜硝酸からアンモニアへと順に還元されていきます。最終的には窒素同化によりアミノ酸になり、植物体内でタンパク質に再合成された上で利用されることになります。
そして、この植物(水草)を魚が食べると……?
窒素は自然界の中を生物から生物へとグルグルと循環していることになります。
こういった流れを窒素循環と呼び、とりわけアンモニアから硝酸までの流れを硝化サイクルと言います。
自然界の中を窒素分は循環している。 |
というわけで、グルグルと生き物を巡る窒素のお話はここまで。長文読んでいただき、ありがとうございました。