指標生物知っていますか
今回はマツモについてのお話。
ところで、みなさんは指標生物を知っていますか?
気温や降水量、水質の清濁や日照など自然の大まかな状況をうかがい知れる生き物のことです。
これは小さな自然であるアクアリウムにも当てはまります。
「この水草が育つのなら水質が富栄養化しているな」
「あれが育たないのなら硬度が高いな」
分かりづらい水槽の住環境について推測するヒントとなるのです。
そしてこれは、しぶといの水草の代表格ともいえるみんな大好きマツモにも、まったく同じことが言えます。
では、マツモがぐんぐん伸びる環境ならどういうことを意味しているの?
今回はコレについて話をしていきたいと思います。
指標生物とは?
さて、まずは指標生物について少し深掘りしたいと思います。
その意味は冒頭で示した通りですので、ここでは具体例について紹介していきましょう。
川の底にいる水生生物は綺麗さの指標となる
実はわたし、最近よく釣りに行きます。
渓流と清流釣りで、ルアーも嗜みますが基本餌釣りです。となれば、餌を探すところからスタートになります。そう、石の裏に張り付いている虫をエサにするのです。もちろんそれらがなかった時の予備として、渓流ならイクラ、清流なら練り餌も持っていきますが、やはり現地の魚が食べている物が一番です。
例えば、ヤマメのいるような川は、山奥に近く水質が極めて綺麗。そのような渓流で石を手に取り裏を見てみるとヒラタカゲロウがついています。これがとてもいい餌となるのです。では、川をうんと下り、平地にあるような清流では?
オイカワがいるような川は人里に近く、渓流のそれと比べるとやや汚れています。そのためヒラタカゲロウなどが住むには適していません。しかし、案ずることなかれ。このような場所でも石の裏にクロカワムシ(ヒゲナガカワトビケラ)などがおり、これがいい餌となるのです。
さて、そういった川底の石の裏は、様々な生物の住処になっています。
ヤマメの餌となるヒラタカゲロウが住んでれば水質はきれいであることを示していますし、オイカワのいる川で石裏についている入るカワニナは水ややきれいであることを表しています。
また、すこし水がよどんでいる場所では、ユスリカの幼虫が張ってることがあり、そこは水質が汚いことを示しています。
彼ら川底に住む水生生物は、現地の水質を如実に体現しているのです。
以上は、あくまで、一番有名であろう河川の汚染度合いを示す生物についてのお話。
指標生物は、それ以外にもたくさんあります。
何の指標とするかは人間次第
たくさんある。
そう含みを持たせたのは、同じ水生生物でも違う指標生物として捉えることがあるからです。
渓流でイワナやオニヤンマがいるなら豊か、清流でアユやカワセミいるなら豊かであると。水の汚れ具合のではなく自然の豊かさを指標にもなります。
とはいえ、水質と多様性の双方の指標生物を照らし合わせてみると、一見同じようでも少し違います。具体的には、前者には指標とされていない魚や鳥が、後者には含められているからです。
おそらく、彼らは広い範囲を移動できるため、水質が悪化したならそこから逃れることができるのでしょう。であるなら、指標としては機能しづらい。
実際釣りをしながら河川を歩くと、その場所の種の豊かさと水の綺麗さは、おおむね通じているイメージがあります。
しかし、動物の移動力は高くコンクリート2面張りの護岸に天然アユが遡上する川もありますし、美しい渓相でも上流に里があるためウグイやカワムツしかいないような川もあります。
やはり、指標をごちゃ混ぜにしては実態を把握するのがややこしくなるのかもしれません。
以上の話を踏まえると、とにもかくにも、どのような形であれ、人間が見出した意味合いと生物が直結するなら指標生物だと言うことができるわけです。
それは植物バージョンの指標植物とて同じこと。
例えばソテツが自生するならなら気候が亜熱帯だと、アオコが浮いているなら水質が汚れていると、そしてアサガオの花弁が汚れるようであれば大気が汚染されているだろうと推測できるのです。
マツモを育てる意味
と、ここまで指標生物(指標植物)の話をしてきましたが、ここからはマツモの話。
指標植物としてのマツモ
実は、マツモは、水槽内での指標植物として機能します。
そもそも、この水草は金魚藻の一つ。貧弱な光量で旺盛に伸び水槽内の彩を飾り、時に金魚のおやつとなります。
そう! 餌を爆食いする中型魚の水槽でも、元気よく生長する植物です。
言い換えれば、汚れに強い。もっと細かく言えば、富栄養な水質が得意で、豊富な窒素源を成長力に変えてくれるタフな存在と言えるわけです。
しかし、これは逆に言い換えれば、マツモがよく育てば水が汚れているとも言えます。
現実的に、少しでも水替えをさぼるとあっという間に水面を占領。さらに水質が汚れてくると間延びした太い茎の姿に。水槽の主役となるほどの圧迫感を生みます。
逆に水質が綺麗なら、一向に成長しようとしません。
それどころか、生長不全で調子を大きく崩してしまうことも。
(ね、マツモは指標植物でしょう?)
というわけで、生長が遅い前景草を植えるような水草水槽の場合、コケが大敵。
コケを殖やさないようにするには、硝酸塩を少なめに管理する必要があるります。
マツモに当てはめると、これがなるべく伸びないように管理するのが望ましく、もし大きく生長するようなら、それはデリケートな前景草の栽培は難しいことを示しています。
とにもかくにも、マツモを入れておくだけで、水質の汚れ具合を把握できるのです。
観賞対象としてのマツモ
では、マツモが伸びまくる水槽はよろしくないかって?
決して、そういうことを言っているのではありません。
これはあくまでもアクアリストが勝手に意味を付けているわけで、マツモは悪くありません。
大変美しい水草ですから、せっかく綺麗に育つのならその環境をいかすべきです。
もちろん、ない物ねだりをして水換えをたくさんするのも1つの手ではあります。
水質を綺麗にすればマツモが育たなくなる=窒素源が減るので、万事解決するような気もします。
が、やはりそれは机上の空論。
せっせと肥料分を排出するため、カリウム欠乏や微量要素欠乏の症状が出て他の水草も調子を崩します。
最悪な場合コケが蔓延して逆効果になることも。
なら、肥料をふんだんに上げればいい?
となれば、コストの掛かる水槽になってしまいます。これを突き進むのは、いばらの道です。
(もしかすると、マツモは汚れの蓄積に対する指標になりますが、低栄養の指標としては利用しづらいのかもしれません。)
結局は、タンクメイトを選んだ時点で、栽培できる水草はある程度決まるわけです。ならその状況を楽しむのが最善であろう……。
プレコと水草の同居を実現する中で、越えがたい壁が立ちはだかることが多く、次第にそのように考えるようになりました。
育てる趣味だからこそ
指標はあくまでも指標。人間が意味合いを持たせたもので、美しさとは違うベクトルです。
また、指標で得た結果をあれがダメこれがダメと結論づけるのはいかがなものかと思います。これが良いあれがスゴイと良いところを見つけ、成長への糧とするべきです。
そんな風に書くのは、やはり生物系の趣味であり、育てることが醍醐味だからです。
完成したら飾っておくプラモデルとは違い、その水辺との関わり合いは永遠に続きます。
何もしなくても上手くいくときもあれば、悩んだ結果失敗するときもあります。
であるなら、強みを生かして程よい難易度とした方が、美しさと育てがいを求めるアクアリストのためにもなるはずです。
(なにより気が楽です)
以上、コケまみれの前景草とバキバキ伸びるマツモを目の前にして、ため息をつきつつ思いついたことを書いてみました。
というわけで今回はここまで。
長文読んでいただき、ありがとうございました。