エアストーンからエアが出ない理由は?
水槽のエアストーン、せっかく取り付けたのに「なんだか泡が頼りない…」と感じたことはありませんか?
大きなストーンなのに泡が小さくチョロチョロ、そんな不思議な現象にはちゃんと理由があるんです。空気の通り道や水の深さ、配管の仕組みまで絡むちょっとした仕組みを知ると、今まで見過ごしていた泡の動きがぐっと理解できるようになります。あなたの水槽も、驚きの変化が待っているかもしれません。
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これは2000年代とフィクションが織りなす不思議な世界の物語。
夏の気配が、水槽越しにじわじわと迫ってくる。
部屋の気温はまだ本格的な暑さではないが、60cmのプレコ水槽の中では、3匹のプレコたちが落ち着かない様子を見せている。もしかしたら、これから訪れる地獄のような季節に気が付いているのかもしれない。
そんなのは幻想だと言われるだろうが、念願のプレコ水槽、小さな動きですら見逃すわけにはいかないのだ。
外部フィルターが二台とサーキュレーターが強い流れを生み出す。そこに、2213のディフューザーから出た泡が乗ると、綺麗にかつ静かに水槽の中にエアが舞った。
この組み合わせは最高だ。
しかし、以前2213が詰まってしまった時、このシステムに頼りきる怖さを思い知った。万が一水流が途絶えた時、エアレーションも止まってしまうことに危機感を覚え、1つの決断をすることにした。
ストーンを変えれば大きさで、水槽を変えれば水深で
夏だ、高水温だ、エアレーション増強だ!
勉強机の上で稼働している20Lの水槽。
そこにはブルーテトラ3匹が泳いでいる。彼らのために使っているのはニッソーθ6000。2穴タイプの強力なエアポンプで、毎分5.0L吐き出す怪物だ。その1穴がまだ空いている。これを使わない手はない。
さっそく、円盤型のエアストーンを買ってきて、ディフューザーの代わりにこれを取り付ける。直径13cm。大きくて頼もしい。さらに、勢いに任せてスポンジフィルターも追加で設置。
過保護すぎるなんて言わせない。
「これで完璧」
こんなことができるのも圧倒的なエアポンプのパワーがあるおかげだ。
満足げに水槽を見つめつつ、コンセントにプラグを挿した。
が、ほどなくして、わずかな不穏な音がする。
ちょろちょろ……
「ん!?」
胸がざわついた。
想像と違う情けないエアが、染み出るようにストーンから漏れ出ていたのだ。
![]() |
| ・スドーバブルメイトはエアセラへ。ラインナップにも変化があったようです |
原因の探求
「これが問題のエアストーンだね?」
急遽ロゼッタに来てもらった。彼女は水槽のお師匠様ともいえる存在だ。
残念なエアストーンを前に固まったわたしの顔を見て、お師匠様は苦笑いをする。
「にしても、随分と勢いがないね?」
水槽の前にしゃがみ込み、不思議そうに見つめると、ライトの光が黒髪に当たり、柔らかな濃淡が生まれる。
「そうなんです。ちょろちょろとしか出なくて……」
悔しさと不安が混じった声で答えると、わたしの頬を白肌の指でツンツンとしてくる。
普通の関係なら、ちょっとやそっとの恋心が生まれるかもしれない。だが、我々はオタク同士である。そんな感情は水槽を前にすると吹っ飛んでいくのだ。
「うーん、なんか以前も似たことがあったような……」
「はて?」
わたしは首を傾げる。
少し考え込んだ後、彼女は確信めいた眼差しを戻してきた。
「とにかく、エアストーンの大きさが問題だと思う」
「どういうことですか?」
「大きなエアストーンほど、たくさんの空気を出すでしょ?」
「それだけの量を送れなければならないというわけですね?」
「それもあるけど、大きな物ほど空気を出すための抵抗も大きいんだ」
「?」
わたしは理解しようと視線を彷徨わせた。が、どうにも理解できない。
「大きいものほど穴の数が多いでしょう? その数だけエアが通り抜けるときに抵抗が掛かるんだ」
「つまり、サイズに対して吐出量が足りていないってことですね?」
「おそらくね。なぜこうなっているかは、はっきりとは分からないけど」
とは言え……
「でもニッソーθ6000ですよ? 毎分5.0Lですよ?」
「そうなんだよねぇ……あ!」
と、件のエアチューブの根元に視線を落としていた彼女は、何やら気が付いたらしい。
「あぁ! ここ」
「え?」
「いやほら。三又分岐でタコ足配線にしてるでしょ?」
「ギクリ」
そして、エアポンプから滑るように隣の20L水槽へ目を走らせた。
「ポンプは勉強机の足元だよね。二穴のうち一本はブルーテトラへ。もう一本をプレコ水槽へとなってるね?」
「……はい。20Lではスポンジフィルターとエアレーション。プレコ水槽でもスポンジフィルターと円盤型のストーンを……」
「やっぱりね、それは無理があるよ」
「だって、5.0Lあるから大丈夫かなって」
お師匠様は少しだけ眉を下げる。
「あのね。数値上強くても分岐をすれば能力は落ちるよ」
「でも、20Lの方は問題なく動いてます」
彼女は静かに息を吸い、説明を続けた。
「そっちは小さなエアストーン。それに水深も浅い」
「水深?」
![]() |
| ・大きなエアポンプでも、使い方を間違えれば…… |
解決の糸口
お師匠様は強調するように指を一本立てた。
「本当なら、プレコ水槽なんだし、2穴計5.0Lを贅沢に丸ごと使うべきだよ。スポンジフィルターも利きが良くなるし、太いエアが立ち上るはずさ」
「でも!」
わたしは視線を落とす。1つの穴を20Lの水槽で使わなければならない理由があるのだ。
「止めるわけにはいかないんです。この水槽には外掛けフィルターが強すぎるみたいで、全部スポンジフィルターに任せてあるんです」
「ふーむ……仕方がないなぁ……」
お師匠様はしばらく釈然としない顔をしていたが、ひとまず理解を示すようにうんと頷いてくれた。
「なら、とりあえず別の小さなストーンを使ってみたらどうかな?」
彼女の気持ちが否定的な方向に傾く前に、大急ぎで押し入れに眠っていた青いストーンを取り出す。崩れかけて封印していたものだ。それでも、今の状況を打開するためにそっとエアチューブとつなげる。
シュワワワァァ♪
勢いよく泡が噴き出してきた。
その元気の良さを見ると、やっぱり胸が弾む。
「分かってくれたかな?」
「……大きすぎたんですね」
お師匠様は小さく笑いながら頷いた。
「ところでその円盤型のエアストーンは名前は何て言うんだい?」
「えーっと、バブルメイトS104A。直径13cmもあってプレコ水槽にはもってこいかなって思ったんです」
「あぁ! あれね。要求が毎分1.5Lのやつでしょ? ……ってダメじゃない?」
「え?」
彼女の脳内の計算機が一瞬で答えを出したようだ。
「二穴で5.0Lだから、1穴2.5L」
「……はい?」
「三又の分岐が均等だと仮定して、双方で1.25Lずつ。ということは?」
「もしかして足りてない……?」
「その通りだね。ちょっと足りないね」
お師匠様は真剣な眼差しで水槽を指した。
「さらにだ、60cm規格水槽は水深が36cmもあるんだ」
「ん? 水深とエアの出に何が関係しているんですか?」
「実はね、深いと余計に水圧が掛かるんだ。それがエアの出を妨げる」
「えぇ? だから、エアもちょろちょろに?」
「そういうこと」
わたしは即座に行動した。
円盤ストーンを再び取り付け直し、水面付近で手に持つ。
シュワワー!
手の中で力強い泡が弾けた。
胸の中で、原因と答えが一気につながった気がした。
「あぁ! こういうこと?」
「そういうこと♪」
「外部フィルター二台あるんだし、このスポンジフィルターを取るのはどうかい?」
もし、このエアストーンを使いたいなら、彼女の提案を受け入れるしかなさそうだ。
次なる選択へ
夜の静けさの中で、フィルターの低い駆動音だけが響いている。
焦りで眠れずにいたわたしは、落ち着きを取り戻すように水槽の前へ座り込んだ。
プレコのための大きなエアストーン。そして、その力を支える大きなエアポンプ。
さらに、ブルーテトラの生命線であるタコ配線。分かってはいる。全部、大切だと分かっているのに。
どうしても五月蠅くて眠れない。
今までは慣れで誤魔化していたけれど、今日その元凶に触れてしまったせいで、存在を意識してしまった。一度気になってしまうと、もう頭から離れない。
わたしは天井を見上げ、小さく息を吐く。
静かで、強いエアポンプを選ばなければならない。
だが、選択肢はあまりにも多い。
「なるべく静かで、確かなものを」
そう呟きながら、わたしは無数のレビューとにらめっこを始めた。
候補として浮かんだのは、水作 水心 SSPP-3S。
その話は、また別の機会にじっくりと語りたい。
まとめ
水槽のエアレーション、特に大きなエアストーンを使ったときに「思ったより泡が出ない」と感じたことはありませんか?
実はこれ、単にエアポンプの力不足ではない場合が多いのです。
まず、エアストーン自体のサイズがポイントになります。大きなエアストーンほど空気を通す穴が多く、それぞれの穴を通過する空気には必ず抵抗がかかります。
そのため、エアポンプから送られる空気量が充分でも、すべての穴を通過する際に圧力が抵抗で弱まり、結果として水中に送り出される泡の勢いが落ちてしまうのです。
さらに、水槽の水深も影響します。
水深があると、空気は水圧に逆らってエアチューブを通らなければならず、エアポンプへの負荷も大きくなります。浅い水槽では同じ量の空気でも勢いよく泡が立ちますが、水深が増すと抵抗が増して、泡の出方は抑えられてしまいます。
加えて、エアチューブを分岐して複数の水槽や複数のストーンに空気を送っている場合も注意が必要です。分岐が増えるほど、各ストーンに届く空気量は自然と減ってしまいます。
つまり、大きなエアストーン、水深のある水槽、そして分岐した配管が重なると、エアポンプの能力が十分でも泡の勢いが弱く感じられるのです。
これを解決するには、ポンプの力を一つに集中させる、ストーンを小さめにする、あるいは分岐を減らすといった工夫が必要です。
こうしたちょっとした調整で、思い描いたような力強い泡立ちを実現できるのです。


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